『毒舌弁護人 正義への戦い』★★★
(満点は★★★★★)
イスラエルとハマスの紛争がニュースになるたび、映画『ガザの美容室』を思い出します。
日本では18年6月に公開になったこの映画、監督はガザ生まれの双子の男性監督。彼らは言います。
「テレビやマスメディアは死ばかりを伝えるけど、まるで爆撃がないガザには価値がないかのよう。あらゆる困難をものともせずに暮らし続ける人々の人生を語ること。それがボクらの使命だと思う」。
劇中、美容室は様々な理由で髪を整えに来る女性で溢れ、日常を生きる姿が描かれています。
外でハマスがマフィアの一掃をはかり、戦闘が始まると、爪を塗る手も震えます。
今回の紛争は規模が違いますから、人々の恐怖と悲しみ、そして怒りはいかばかりか…。それはもちろん、イスラエル、パレスチナの双方に言えるわけで。
戦争はダメです。戦争に正義はありませんから。絶対にダメです。
ボクのコラムでも紹介しています。気になる方は、18年6月の映画コラムをご覧になってみて下さい。
さぁ、今週は1本です!
『毒舌弁護人 正義への戦い』は、香港映画。
ラム・リョンソイは治安判事。連日の裁判に辟易としていて、その勤務態度が、反目する上司の知るところとなり、閑職に左遷されてしまうんですね。
年齢も50歳を過ぎ、友人の勧めもあって、ラムは判事を辞め、法廷弁護士へと転身。すると、周りは一転華やかな世界となり、財テクの話や、パーティーに明け暮れる日々。仕事にも身が入りません。
そんな時、児童虐待の案件が舞い込みます。
容疑者は元トップ・モデルでシングルマザーのツァン・キッイ。殺されたのは、口が不自由な7歳の娘エルサ。
父親は、香港財閥チュン家の婿養子、チュン・キンイ。そう、不倫でできた子どもだったのです。
ツァンは無実を訴えます。
「万一、有罪になっても短期で済む」と、あくまで楽観的なラムでしたが、いざ裁判が始まると、チュン家の手回しや裏工作によって証言が覆され、ツァンは禁固17年の実刑を言い渡されてしまいます。
愕然とするラム。
このことが、忘れかけていたラムの正義心に火を着けたのです…。
香港では、これまでハリウッド映画が市場を席巻し、興業成績の上位を独占していたのが、ここに来て風向きが変わってきたと言います。
その代表的な事例がこの作品。なんと香港映画の歴代興業収入No.1に輝いたそうで、香港の映画界にとってはエポックメイキングな出来事だったよう。
ラムは、女性弁護士のフォン・カークワン、ラムを兄貴と呼ぶ通称“御曹司”と、3人でチームを組んで裁判に臨みました。
あれから2年。大手の弁護士事務所を辞め、心を入れ替えたラムは、粉骨砕身、事件を捜査。ツァンの無実を確信し、ツァンに再審を申し出ますが、彼女の心は固く閉ざされたまま。
なんとか口説いて再審の弁護を任されますが、今度はその先にある、強大なチュン家の圧力と戦わなければなりません。
事件の真実は?ツァンの無実を勝ち取ることができるのでしょうか…というお話。
ただ、ラムの態度が最初から酷すぎて、「なんだコイツ」と思ってしまったので、正直、マイナスからの加点式でもボクはプラスにまで達しませんでした。
それでも香港の観客に受け入れられたのは、“勧善懲悪”。権力の圧に対し、ラムのみならず、この映画全体が、戦う姿勢を見せているんですョ。今の香港の人々にとっては、心の底でふつふつと湧いている何かに触れたんじゃないかなと。
あ、あんまり言うとネタバレになっちゃうかな(笑)。
足したり引いたりで、評価はこんなところに落ち着きました。★3つ。
『毒舌弁護人 正義への戦い』公式サイト
|