週末公開の映画……2016.12.23

『こころに剣士を』☆☆☆☆
『Tomorrow パーマネントライフを探して』☆☆☆☆☆
『ポッピンQ』☆☆
『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間』☆☆☆☆
『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』☆☆☆☆☆
『ワイルド わたしの中の獣』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


いよいよ2016年最後の更新となりました。
どうですか?素敵な映画との出会いはありましたか?
心残りがひとつ。実は『君の名は』をまだ見てないんです(笑)。
そろそろ映画館も空くかなと、タイミングを見計らってるうちに今日まで来ちゃいました。
ずっと言い続けていることですが、映画の良し悪しは、個人の趣味趣向ですから。
食と同じで、アッサリが好きな人にコッテリを勧めても、美味しいとは言ってもらえないでしょ?
だから、ボクの☆が少なくても“駄作”だということではありません。
何か言葉が引っかかって、興味を持ったら是非映画館に足を運んで下さいねっ。
さ、今週は6本です!




『こころに剣士を』は、エストニアを舞台にしたフェンシング映画。

第二次世界大戦中はドイツに占領され、その末期からは旧ソ連に支配されていたエストニア。
戦時中、ドイツ軍に所属していたことで、今ではソ連の秘密警察から追われる身となったエンデルは、
田舎町のハープサルで小学校の体育教師として働き始めます。
何か課外授業を持たなくてはならないとなった時、エンデルは試行錯誤の末、
自分が選手として活躍していたフェンシングを選ぶんですね。
ところが、エンデルは子供が苦手。
最初は上手くコミュニケーションが取れなかったのですが、この子たちも親を戦争で奪われ、
エンデルを父のように慕っていると知るや、練習にも指導にも熱が入ります。
そんな時、レニングラードでフェンシングの大会があると子供たちは大はしゃぎ。
しかし、エンデルは「大会には出ない」とピシャリ。
レニングラードのような大都市に行ったら、エンデルは素性がバレて、秘密警察に捕まってしまうから。
子供たちのガッカリした顔を見て、エンデルは考えます。
この子たちを失望させていいのかと。遂には、大会に出場しようと決意するのでした…。

実在のフェンシングのスター選手を題材にした作品。
フィンランド、エストニア、ドイツの合作ですが、味付けは意外とあっさり(笑)。
日本のスポ魂ものが好きな向きには、ちょっと食い足りないかも。
それでも子供たちのフェンシングに懸ける思いには胸を打たれるはずです。
初めて用具を手にした時のうれしそうなこと。
目標がある、やり甲斐を見つける。
それが人生において、どれだけ大切なことか。改めて感じると思いますョ。
個人的にも、2016年は初めてフェンシングのお仕事をさせて頂いた年。
そんな部分からもお勧めの1本です。☆4つ。
「こころに剣士を」公式サイト



『Tomorrow パーマネントライフを探して』は、
環境を考えるドキュメンタリー作品。

2012年、世界的権威のある科学雑誌『ネイチャー』に、学者21人がある論文を発表します。
人類が今のままの生活を送ったならば、そう遠くない将来、人類は滅亡の危機に瀕するというものです。
ゆっくりとした上昇カーブを描いてきた人類の科学の進歩でしたが、ここに来て急速に上昇。
その加速の凄さが、地球環境を間違いなく破壊し、人間が住めない状況にするというのです。
フランスの人気女優メラニー・ロランは、そのニュースを初めて耳にした時、
お腹の中に子どもを宿していました。
自分の子どもの将来のために、どうしたらいいのか?
それを思った彼女は、夫や仲間たちと一緒に“新しい暮らしを始めている人々”に会いに行くんですね。
農業、エネルギー、経済、民主主義、教育の5つの分野に分け、
国も性別も年齢も超えた未来指向の生き方に触れていきます。
例えば、アメリカの自動車産業都市だったデトロイト。
ここはいわゆる“単一工業都市”で、自動車産業の斜陽と共に、工場は閉鎖され、従業員は失業。
人口は200万から70万人に減ったと。
そうなると、商売が成り立たないから、商店が減る。新鮮な野菜が手に入らない。
じゃ、どうしたかというと、自給自足を始めたんですね。
デトロイトには今、1600ものアーバンファームがあるそうです。
また、アメリカの政治は一部の大企業のための政治で、政治家は多額の献金をする企業を優遇する。
経済弱者への手を差し伸べることは後回しだと。
こんな民主主義に頼れるかと考えた住民たちが立ち上げたのが、バリーという名のビジネス連合。
そこには3万5000もの起業家が所属しているのですが、彼らはみんな“地元起業家”。
そんな彼らが全米で80ものネットワークを作り、地域と起業家で雇用を生み出し、
資金を再分配し、食料システムも作り、地域の富と雇用を3倍にも増やしているのだとか。
「トランプ氏じゃないけど、ヒラリー氏ではもっとない」。
先のアメリカ大統領選の結果は、こんな国民の思いが反映されてたんじゃないかと思うんですよね。
とにかく、ご覧になってみて下さい。「そんなの理想じゃん」と動かない人がいる一方で、
実際に町ぐるみ、地域ぐるみで、
未来をしっかりと見据えた生活をし始めている人たちがいるということに、
いい意味でのショックを受けますから。
この作品の評価が高いのも頷けます。☆5つ!
「Tomorrow パーマネントライフを探して」公式サイト



『ポッピンQ』は、東映アニメーション60周年記念作品。

卒業式を間近に控えた中学3年生の伊純。
親の仕事の関係で、東京に引っ越すことになっているのですが、
陸上部の県大会でパーソナルベストを出せず、
同じ陸上部の仲間に優勝をさらわれたことが、どうにも心残り。
放課後のトラックで何度もタイムを測っていたのですが、
それが優勝した同級生への当てつけだなんて陰口も叩かれてしまいます。
そんな中、迎えた卒業式の日。伊純は学校とは逆方向の電車に飛び乗るんですね。
ふと降りた駅の前は、キレイな海。
「こんな場所があったんだぁ」と感動している伊純は、不思議な何かを拾います。
すると、伊純の前に、見たこともない風景が広がります。
そこは“時の谷”。伊純が拾ったのは“時のカケラ”でした。
そこにはポッピン族が住み、伊純と心が通じる“同位体”のポコンが現れるんですね。
時間を司るポッピン族でしたが、謎の敵のせいで“時の谷”が危機にあると。
そうなると時空がおかしくなり、伊純も元の世界に戻れなくなるというのです。
“時の谷”には、伊純と同じように、様々な葛藤を抱いていた蒼、小夏、あさひ、沙紀がいて、
全員が心をひとつにして踊ることで“時の谷”を守れるというのです。
果たして5人は、ミッションをクリアして、元の世界に戻れるのでしょうか…。

『君の名は』の大ヒットで、アニメ映画にもより一層の注目が集まるようになった2016年。
そんな年に、東映アニメーションは60周年を迎えることになりました。
ただこの映画は、アニメ好きのコアファン向けの作品かもしれないなと感じました。
5人の少女の青春物語という側面はあれど、ポッピン族なる妖精が出てきて、
少女たちも可愛らしい衣装でダンスをする。
いわゆる“2次元”好きのオタクくんたちには、たまらないのかもしれませんね(笑)。
普段、アニメにあまり触れていない大人たちにまで広がるかどうかは、
若干疑問…といった感じでしょうか。可愛いかったですけどね(笑)。☆2つ。
「ポッピンQ」公式サイト



『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間』は、
伝説の黒人トランペッター、マイルス・デイヴィスの伝記映画。

ジャズの歴史を語る上で欠かすことのできない“帝王”マイルス・デイヴィス。
1975年に一度音楽活動を休止するのですが、慢性の腰痛に悩まされ、
ドラッグ、アルコールに依存するしかない生活。もちろん、トランペットを吹くことはありませんでした。
そんなマイルスの自宅に、ローリング・ストーン誌の記者デイヴがやってきて、近況を記事にしたいと。
当然拒むマイルスでしたが、デイヴの執念も並々ならぬものがあり、
マイルスに殴られても怯まず、「コロムビアから頼まれてきた」と嘘をつきます。
所属レコード会社と金の交渉がしたかったマイルスは、
ならばとデイヴを車に乗せ、コロムビアへと向かいます。
担当重役のオフィスに行くと、プロデューサーのハーパーと、
若きトランペッターのジュニアとの打ち合わせ中。
お構いなしに部屋へと入るマイルスに、
他の重役が、「君の音楽はレコード会社のものだ」と言うや、脅しで銃を発砲するマイルス。
この席にいたハーパーとの出会いが、後にトラブルを引き起こすことになります。
自宅に引きこもっていたマイルスが作っていた新しい音源テープを、彼らが盗み出してしまうのです…。

冒頭に“伝記映画”と書きましたが、マイルス・デイヴィスに詳しい音楽評論家氏の解説によると、
フィクションの部分も大きいようで、ジュニアという若きトランペッターは実在しないし、
新音源の盗難事件もなかったと言います。
それでも、苦悩に満ちた復帰までの5年間や、実在の元妻フランシス・テイラーとのストーリー、
マイルス・デイヴィスという人物の本質みたいな部分はしっかりと描かれているようです。
主演のドン・チードルの、初監督作品。
75年当時と過去との行き来が繰り返される内容なんですが、その切り替えにおいて、
少々演出過多かなと思うところはありますが、単なる音楽映画に収まらない、
サスペンス・アクション的な要素もあり、楽しめる1本になってると思います。
きっと、マイルス・デイヴィス本人の生き様が、
サスペンス・アクションだったということなんでしょうね。
マイルス・デイヴィスを、またジャズを知らない人にもお勧めです。☆4つ。
「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」公式サイト



『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』は、ドキュメンタリー。

世界的なバレエの殿堂“パリ・オペラ座”。
20年近く、芸術監督を務めたブリジット・ルフェーヴルの退任後、有力候補を押さえて、
史上最年少の若さで後任の芸術監督に抜擢されたのが、バンジャミン・ミルピエでした。
彼は、映画『ブラック・スワン』の振付師。
オペラ座での新作『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』が完成するまでの40日間にカメラは密着。
様々な困難と苦労と喜びのドキュメンタリーです。
階級制度を否定し、初めて黒人とのハーフのダンサーを主役に起用するなど、大胆な手腕に軋轢も生じます。
それでも、とにかく笑顔が多い。
この映画の印象を問われたら、間違いなく“ミルピエの笑顔”と答えるはずです。
あと、もうひとつ。オーケストラを率いるマキシム・パスカルという若き指揮者の教え方が素晴らしい!
オーケストレーションのあらゆる知識があるのでしょう。
その指示が実に具体的でわかりやすい。抽象的な比喩とかではないんですね。
これ、指導者や教師、講師など、教える側の人には、間違いなく勉強になるはずです。
とにかく、才能の塊みたいな人たちが集まったパリ・オペラ座。
リードする立場の人間は、そのすべてに長けていないといけないのですから、すごいことです。
見れば謙虚になれるかも?☆5つ。
「ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜」公式サイト



『ワイルド わたしの中の獣』は、オオカミを愛してしまう女性の物語。

恋人もなく、平凡な毎日を過ごす女性アニア。
ある日のこと、自宅近く の森にいる一匹のオオカミを見かけます。
オオカミはジーッとアニアを見つめていました。
初めて触れた“野生”に、アニアは惹かれてしまい、トラップを仕掛け、オオカミを捕獲。
自分の住む高層マンションに運び込むんですね。
そこから、人間の女性と野生のオオカミという、奇妙な共同生活が始まったのでした…。

ドイツ映画です。
これを“純愛”と言うには、ちょっとアニアがオオカミに惹かれる動機付けが弱い。
どんなに生活が平々凡々としていたとしても、オオカミに恋をするかは疑問ですもんね(笑)。
オオカミが“自由の象徴”だとしても、
そこから人間としての常軌を失っていくアニアの行動は理解が難しいかも。
ただ、針は確かに振り切れてます。
会社の社長のデスクの上に、それはしないでしょってシーンも。
まさに“野生”なんでしょうけどね。すごいです。☆2つ。
「ワイルド わたしの中の獣」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.12.16

『ヒトラーの忘れもの』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


2016年もラストスパート。
ボクの試写会への参加も時間との戦い(笑)。
最終的には何本になるか?ちょっと楽しみです!
さ、今週は1本です!


「ヒトラーの忘れもの」は、デンマークとドイツの合作映画。

第2次世界大戦終了後のデンマーク。
ナチス・ドイツの占領からは解放されたものの、海岸線にはドイツ軍の埋めた地雷がびっしり。
その除去に充てられたのが、置き去りにされたドイツ軍の少年兵たちでした。
彼らの監視役を務めるのは、デンマーク軍のラスムスン軍曹。
彼は祖国をメチャメチャにしたドイツ兵を、心底憎んでいたのです。
食事もろくに与えられず、地雷除去の経験もない少年たち。
極度の緊張から体調不良になる者が続出します。
ある日のこと、作業中に嘔吐し、誤って地雷が爆発。
作業中のひとりが両腕を吹き飛ばされてしまうんですね。
さらに双子の兄弟のひとりが爆死。
想像していたとはいえ、度重なる悲劇に、ラスムスン軍曹も、
少年兵にナチスの責任を負わせるのは違うのではないかと思い始めていたのです。
人としての優しさを取り戻し、少年たちとの接し方を変え始めたラスムスン軍曹でしたが、
安全なはずの浜辺を走っていた愛犬が、残っていた地雷を踏んで爆死すると、様相は一変。
再び、鬼の軍曹に戻っていたのです。
そんな時、大変なことが起こります。
近くに住む農家の幼い娘が、地雷原に迷い込んでしまいます。
少年兵のひとりが、身を挺して救出に入るのですが…。

なんとなく最初から「嫌だな…」と。
だって、地雷と少年兵ですから。必ずドカンとなって、命を落とすシーンが出てくるわけで。
その予感は当然の如く的中し、目は薄目に、片方の耳は押さえ、
101分の上映時間のほとんどを、極度の緊張状態でいることとなりました。
瀕死の状態で「お母さん…」と泣き叫ぶ少年兵の姿。あまりに酷い…。
でも、それが本来あるべき戦争映画なんですよね。
ボクらはスクリーンの中の作り物を見ている。
でも実際の戦争はと言えば、これが現実の恐怖としてそこに存在するわけですから。
だから戦争はやってはいけない。そう啓蒙するべきなんです。
「戦争映画は、できるだけ酷たらしく描くべきだ」。
昔、誰かが言っていた言葉です。それが如実に表れている1本だと思います。
薦めたいけど、薦めるにはちょっと躊躇する感情もある。そんな映画です。☆3つ。
「ヒトラーの忘れもの」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.12.9

『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』☆☆☆
『ヒッチコック/トリュフォー』☆☆☆
『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


12月です。
「忙しくて映画を見る暇なんてないよ」と言う人も多いでしょう。
でも、急がば回れ。
ちょっと一息入れるのも、仕事を効率的にするコツかもしれませんョ。
さ、今週は3本です!


『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』は、
デンマークの超人気レストラン『ノーマ』の東京初出店を追いかけたドキュメンタリー。

カリスマ・シェフのレネ・ゼネピがオーナーの、世界的超人気レストラン『noma(ノーマ)』。
提供するのは、それまでになかったジャンルの“北欧料理”。
北欧の食材だけを使い、独創的で、世界中の食通が唸る料理を提供し、高い評価を得てきました。
そんな予約の困難なこのレストランが、2015年1月、
東京のマンダリン・オリエンタルホテルに期間限定で店を出店。
総勢77名のスタッフと共に、いわばレストラン丸ごとで移動してきたのです。
食材は本店同様、その土地の食材、すなわち日本のもの限定。
北は北海道から、南は沖縄まで、食材探しの旅を1年以上続けたのですが、
それにもカメラは同行しています。
日本の食材でありながら、こんな調理法は見たことがないという料理が次々と発案されていく。
それでも、時間を掛けて考えたメニューをすべて白紙に戻すなど、
さすがのこだわりが見て取れるのも興味深いところ。
そんな『noma』の凄さは、以前公開になった、
もう1本のドキュメンタリー『noma、世界を変える料理』を見ると、よくわかりますョ。
併せて、是非どうぞ。☆3つ。
「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」公式サイト



『ヒッチコック/トリュフォー』は、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画について語った本
『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』にまつわるドキュメンタリー。

今でこそヒッチコック監督といえば“巨匠”ですが、数々のヒット作を世に出した後の、
1950年代後半になっても、アメリカでの評価は低かったのです。
フランスの映画評論家で、映画監督のフランソワ・トリュフォーは、その認識に意義を唱え、
ヒッチコックの手腕の素晴らしさを1冊の本にします。
それが『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』。
1962年の、ヒッチコック63歳の誕生日に、トリュフォーがヒッチコックへのインタビューを開始。
ユニバーサル・スタジオの会議室で丸1週間、録音テープは約50時間分。
そのインタビュー音源と貴重な映像、さらにヒッチコックに影響を受けたと語る、
現代映画界の著名な監督たちのコメントで構成されているのが、この映画なんです。
トリュフォーはヒッチコックに、
「インタビュー本出版の暁には、あなたが世界中で最も偉大な監督であると、誰もが認めることになるでしょう」と、
手紙を出して口説いたと言います。
その宣言通り、1966年にこの本が出版されると、ヒッチコック監督の評価はうなぎ登り。
1981年に日本でも刊行され、35年が経つ今でも、年に一度は重版となるロングセラーなんだそうです。
温故知新です。☆3つ。
「ヒッチコック/トリュフォー」公式サイト



『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』は、
大人気スマホアプリのアニメ映画化。

焔(ほむら)レン、水澤葵、神倶土(かぐつち)春馬、若葉皆実は、10歳の小学4年生。
4人は、街外れの研究所で「モンスト」と呼ばれる秘密の実験に参加していました。
彼らはそこで、現実世界にいるはずのないドラゴンを目撃するんですね。
大人たちの陰謀を知り、ドラゴンを元の世界に帰そうと旅に出る少年たち。
旅の目的地は考古学者だったレンの父が失踪した場所でもあったのです。
そここそが“はじまりの場所”。
4人は「モンスト」の本当の目的を知ることになるのでした…。

“ひっぱりハンティングRPG”として、世界累計約3500万人という利用者数を誇る、
スマホアプリ「モンスターストライク」。
1話7分のアニメをYouTubeで配信したところ、1年経たないうちに、
累計再生回数が世界で1億回を突破。それを受けて、劇場版アニメ制作が決定したそうです。
ユーザーがそれだけいるんですから、ひとり1回見たってすごいことですよね(笑)。
配信版のアニメでは、主人公たちは中学生。
敵対するライバルだったりもするのですが、この映画はその4年前。
まだ彼らが10歳の頃の“はじまり”の物語なんですね。
ボクはゲームをやらないので、感動は今ひとつでしたが(笑)、
モンハン好きは必見でしょう。☆3つ。
「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.12.1

『浅草・筑波の喜久次郎 浅草六区を創った筑波人』☆☆☆
『アズミ・ハルコは行方不明』☆☆
『古都』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


10月までで83本だった試写の本数ですが、11月の追い込みで、ようやく100本に届きました。
これは例年に比べると、かなりのスローペース。
サボってたわけじゃないんですョ(笑)。忙しくて時間が取れなかっただけなんです。
ここから何本増やせるか。数の多さは、いい作品と出会えるチャンスに比例しますもんね。
さ、今週は3本です!


『浅草・筑波の喜久次郎 浅草六区を創った筑波人』は、下町・浅草創世の物語。

啓介は、茨城県つくば市にある小劇団の主宰者。劇団の運営はままならず、劇場の家賃は滞納続き。
そんな時、劇場の持ち主の女性が、「私だけのために感動できる芝居をやりなさい。
そうしたら家賃の滞納は無しにしてあげる」と言うのです。
もちろんその条件を飲んだ啓介でしたが、簡単な話じゃない。
どんな芝居にしようか考え悩みながら歩いていた時、
啓介は脚本家の夢子と共にタイムスリップしてしまうんですね。
気付けばそこは明治時代の浅草の神社の境内。
見慣れない出で立ちのふたりは、たちまち街のゴロツキに絡まれてしまいます。
弱腰の啓介を助けてくれたのは、通りがかりの山田喜久次郎でした。
夢子を守れなかった啓介を一喝した喜久次郎でしたが、
ふたりが同郷の筑波人とわかると、家に招いてくれたのです。
それから啓介は、喜久次郎のもとで、男を磨く修行を積むことになるのですが…。

明治から大正にかけて、日本最大の娯楽街だった浅草六区。
ここに隆盛を築いたのは、ふたりの男の功績が大きいと。
ひとりは山田喜久次郎、もうひとりは興業師の根岸浜吉。共に筑波の出身でした。
喜久次郎がアメリカに負けない娯楽施設を作ろうとしていたのを、浜吉がバックアップ。
その男気溢れるふたりのやり取りを、タイムスリップした啓介は学び、
平成の現在に戻った時、芝居の題材にしようとしていたのです。
そんなファンタジーを織り交ぜながらの作品で、
喜久次郎には松平健が、浜吉には北島三郎が扮しています。
北島三郎が実写映画に出るのは、実に32年振り!
サブちゃん、健さんのコンビは『暴れん坊将軍』以来、14年振りだとか。
シンセサイザーの音色や、映画の端々に“B級感”が出ちゃってるのは少々残念ですが、
ふたりの大御所が締めるところを締めてます。
それだけでも見る価値があるかもしれませんね。☆3つ。
「浅草・筑波の喜久次郎 浅草六区を創った筑波人」公式サイト



『アズミ・ハルコは行方不明』は、山内マリコの人気小説の映画化。

従業員4人の小さな会社に勤める安曇春子、27歳。
会社ではセクハラまがいの言葉にウンザリし、家では祖母の介護に疲れた母の態度にウンザリし。
彼氏かと思っていた同級生の男は、春子からフェードアウト気味。
そんな生活に嫌気が差し、春子は町から姿を消したのです。
春子を探す“尋ね人”のポスターをネタに、
『キルロイ』を名乗る若者たちがグラフィティ・アートを始めます。
それを街中にペイントし、拡散。
ちょうどその頃、男性ばかりを狙う女子高生のギャング団が巷を騒がせていたのです…。

なんだか、あまりよくわからないかなぁ。実は書いててボクもわかってない(笑)。
アラサー、20代、女子高生という、3世代の女性の生き方を描いた青春映画とのことなんですが、
ボクにはうまく繋がらなかったです。あ、繋がる必要がないのかもしれませんが。
時間軸も前後したりするから、何が今で、何が過去なのかとか、ちょっとわかりずらかったです。
すみません、「わからない」ばかりで。これじゃ、マイナスプロモーションですね(笑)。
蒼井優も高畑充希も出てます。豪華ですョ。
もう1回見たらわかるのかなぁ。☆2つ。
「ブアズミ・ハルコは行方不明」公式サイト



『古都』は、川端康成の同名小説のその後を描いた作品。

京都室町の老舗、佐田呉服店。
主人の竜助のもとに嫁いだ千重子。ふたりには舞という大学生の娘がいました。
一流商社に入り、世間を知った後に呉服店を継いでもらいたい。
千重子はそう考えていたのですが、舞のほうは将来を決めかねていました。
それでも商社の就職試験を受け、面接で失敗したのに合格した舞は、親のコネで受かったと察知。
そんな生き方は嫌だと、千重子に内緒で商社に断りの連絡を入れてしまうんですね。
ぶつかる千重子と舞。
そんな時、書道の先生から、個展の助手としてパリに同行を頼まれた舞は、
父の後押しもあり、渡仏することにします。
実は、千重子には、生き別れになった双子の妹・苗子がいて、北山杉で林業を営む家に嫁いでいました。
苗子にも結衣という娘がいて、絵を学びにパリに留学していましたが、
壁にぶつかり、自らの才能に悩んでいたのです。
結衣を心配し、パリを訪れていた苗子は、結衣に北山杉の帯を手渡し、
千重子もまた、フランスに旅立つ舞に、北山杉の帯を渡すのでした…。

タイトルの通り、京都の風景がよく表現された映画です。
昔とは違い、同業の呉服店も次々と店をたたんでいく。
それでも娘のため、佐田の名のためと、奮闘する千重子の思いと、
現代の若者である娘の舞の気持ちは相容れないところがある。
それでもやはり母と娘なんですよね。
それは苗子と結衣もしかり。
さらに千重子と苗子も生き別れた双子の姉妹。不思議な縁で結ばれているのです。
日本人の生き様というか、義理人情や、老舗に生きる人々の心持ちというのでしょうか。
繋ぐことが運命なのか、変わることが運命なのか。
ただ、根っこは一緒。もしかしたら枝まで一緒。
だけど成る実は違う。それが現実だけど、食べてみたら味は同じ、成分は同じ、みたいな。
実は形を変えて“継いでいる”のかもしれません。
ボクが父の寿司屋を継がなかったけど、目の前のお客様一人一人に
「ありがとうございました!」と心から言っていた父の気持ち、
仕事の在りようを継いだのに似てるかも。そんなことを思ってしまいました。☆4つ。
「古都」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.11.22

『五日物語 3つの王国と3人の女』☆☆☆
『疾風ロンド』☆☆
『ブルーに生まれついて』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


マスコミ向けの試写会では、相変わらずマナーの悪い人が多い。
例えば先日、こんなことがありました。
エレベーターで降りる地下の試写室。
先に乗ってたボクが、エレベーターの“開”ボタンを押して、
走ってくる中年女性を待っててあげました。
その女性は、ハアハア言いながら乗り込んで来たかと思ったら、扉が開くなり我先にと受付へ。
お礼の言葉も何もないし、本当ならボクが先に受付を済ませるのが筋でしょ?
こんな人が映画を見て評論するなんて…。ちょっと考えて欲しいですよね。
さ、今週は3本です。


『五日物語 3つの王国と3人の女』は、
17世紀初頭に書かれた世界最初のおとぎ話の映像化。

不妊に悩む、ロングトレリス国の女王。魔法使いのアドバイスは、「怪物の心臓を食べなさい」。
夫である国王の命と引き換えに怪物を倒し、心臓を食らい、遂に念願の子どもを宿したのです。
ストロングクリフ国に住む老姉妹。皮肉なことに、美しい歌声が若き国王の心を捕らえてしまいます。
若い女性だと勘違いしている国王に、自分たちの老いた姿は見せられない。
しかし、姉は不思議な力で若さと美貌を取り戻し、妃の座へと登りつめたのです。
ハイヒルズ国の王女は、王である父が城外へ出ることを許してくれません。
ならば結婚して外の世界へと考えた王女。父は結婚相手を、ある試練を課して選ぶと公示。
その難関をパスしたのは、なんと醜い鬼だったのです…。

“3つの王国の3人の女”のサブタイトル通り、3つの国での物語が並行して進んでいきます。
「シンデレラ」や「白雪姫」、グリム兄弟にも影響を与えたと言われる
「ペンタメローネ『五日物語』」。
そこには51の民話が収められていて、すべてが繋がっているんだとか。
エロスとホラーが入り混じったような世界。独特の空気感がスクリーンを覆い尽くします。
自己中心的な女性たちの末路やいかに?
『ハリーポッター』のファンにお勧めできるかは微妙なところですが(笑)、
17世紀イタリアのバロック様式を再現したという映像は、ロケ地も含め、お見事の一言。
一見の価値はあるかと思います。☆3つ。
「五日物語 3つの王国と3人の女」公式サイト



『疾風ロンド』は、東野圭吾の小説の映画化。

医科学研究所の主任研究員である栗林は、とてつもなく危険な生物兵器
“K-55”が盗まれていることに気付きます。
所長のもとには「3億円用意しろ」と書かれた脅迫状が。盗んだのは葛原という元研究員。
解雇を逆恨みしての犯行でした。
ところが、所長に葛原死亡の電話が入ります。
生物兵器はいったいどこに隠されたのか?このままでは、あと数日で菌が拡散。
多くの人の命が奪われ、日本中がパニックになってしまいます。
手掛かりは“K-55”を埋めた場所を示す、テディベアの写真だけ。
果たして、栗林はそれを見つけることができるのでしょうか…。

ここまで読むと、正統派サスペンスのように感じるかと思いますが、
実はコミカルな1本。主演は阿部寛です。
テディベアがあるのは野沢温泉スキー場。
栗林は、極秘のうちにテディベアを発見せよとの任務を課せられるのですが、スキーも空っ下手。
すぐに足を骨折してしまう有り様。
いろんな登場人物が出てきて賑やかなんですが、ちょっとバカ騒ぎの感が否めず、
正直ボクはちょっと…。この手のコメディが好きな人には楽しめるかと思いますョ。
東野圭吾さんってこんなのも書くんですね(笑)。物言いが失礼ですみません。☆2つ。
「疾風ロンド」公式サイト



『ブルーに生まれついて』は、アメリカの天才ジャズ・トランペッター、
チェット・ベイカーの物語。

1950年代に人気を博した、白人ジャズ・トランペッターのチェット・ベイカー。
しかし、彼には常にドラッグの影がつきまとい、60年代半ばには、売人とのトラブルでアゴを砕かれ、
前歯をすべて失ってしまったのです。
その後遺症から、これまでのような演奏が出来なくなってしまいます。
苛立つチェットを支えたのは、彼の自伝映画で共演した、女優のジェーンでした。
場末のステージであろうと演奏を続けていたチェットは、徐々に昔の感覚を取り戻します。
そんなチェットに巡ってきた大きなチャンス。それはNYの名門バードランドへの出演でした。
しかしそこは以前、マイルス・デイヴィスら
黒人のスーパー・トランペッターたちに侮辱的言葉を浴びせられた場所。
再び、彼らの前でステージに立つチェット。果たして、見返す演奏は出来るのでしょうか…。

チェット・ベイカーは、ウエストコースト・ジャズを代表する白人トランペッター。
そのルックスから、“ジャズ界のジェームズ・ディーン”と呼ばれたとか。
黒人のものだったモダン・ジャズを白人がやるというのは、
白人のラッパーで認められたのがエミネムぐらいだというのと同じ感じ。
バニラ・アイスも、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックといった白人ラッパーたちも、
白人層にはウケたけど、あくまでポップスの枠を超えなかったわけですよね。
逆に言えば、白人にしか出せない味わいがチェット・ベイカーのトランペットにはあった。
その価値を、本人が素直に受け入れていたかどうかは、ボクらにはわかりません。
ただ、ドラッグに溺れていく背景には、よほどの精神的なプレッシャーがあったのでは?と推測します。
ラストは切ない。あまりに切ない…。
途中でちゃんと伏線が張られますから。それを見逃さないようにして下さい。
本物のアーティストって、崖のギリギリを歩くような、ヒリヒリ感で生きている。
まさに命を削ってでも表現したい何かがあるってことなのでしょう。満点!☆5つ。
「ブルーに生まれついて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.11.9

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』☆☆☆
『オケ老人』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


またまたやってしまいました…。ちゃんとチェックしてるはずなんですけど。ダメだなぁ。
先週公開の『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の紹介を忘れてしまいました。
今週改めてご紹介させて下さい。
それでは、今週は2本です!



『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』は、
1980年の大学が舞台の青春映画。

野球推薦で南東テキサス州立大学に入学することになったジェイク。
どんな毎日が待っているのか、ワクワクドキドキしながら、
これから大学生活を送る野球部の寮に向かいます。
迎えてくれたのは、野球エリートとは思えない、風変わりな先輩たちばかり。
早速出向いたのが女子寮!
夜にはディスコにカントリーバー、はたまたパンクのライブと遊び放題。
新学期が始まるまで、あと3日と15時間。
とにかく楽しもうとハシャぎまくるジェイクたちでした…。

1980年。携帯電話のコマーシャルでも価格に引っかけて取り上げられている年。
今から36年前。干支が3回りもしたんですね(笑)。
その頃、ボクも大学生。でもこんなにはっちゃけてはいなかったなぁ…。
まだあの頃、日本は純情な男女がいっぱい。今も昔も、アメリカは進んでるんだなと、改めて思います。
妬みやっかみとかじゃなく、そんなわけで、この映画の登場人物たちの行動が、
ボクにはリアリティを持って伝わってこないのですよ。羨ましいとは思うけど(笑)。
だから、あの当時、あるいはバブルの頃まで広げた時、
遊び呆けていたなぁという人には最高に楽しい1本かも。
青春時代のリトマス試験紙的に、ご覧になってみてはいかが?☆3つ。
「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」公式サイト



『オケ老人』は、杏の映画初主演作。

梅が岡高校の数学教師として赴任してきた小山千鶴。
元々、バイオリンをやっていた千鶴は、梅が岡のアマチュアオーケストラの素晴らしい演奏を聞き、
自分ももう一度趣味で音楽をやりたいと決意。
ホームページで連絡先を調べ、電話をかけると、意外にもすんなりOK。練習に参加することになります。
千鶴が練習会場の公民館で待っていると、やって来るのは楽器を抱えたお年寄りばかり。
不安に思っていた千鶴の予感は的中してしまいます。
梅が岡にはアマチュアオーケストラが2つあって、千鶴が感動したのは“梅が岡フィルハーモニー”。
連絡したのは“梅が岡交響楽団”だったのです。
「若い人が入ってくれるなんて」と喜ぶお年寄りたちを前に、「間違いでした」とは言えない千鶴。
実は、梅が岡フィルハーモニーは、梅が岡交響楽団から独立したメンバーが作った組織で、
コンサートマスターも大手家電量販店“OS電気”の社長。
対する梅が岡交響楽団のコンサートマスターは、すぐ近くに店を構える“野々村ラヂオ商会”の店主。
店の買収問題も絡む、敵対関係にあったのです。
そんな時、野々村社長が心臓の病気で倒れてしまいます。
代わりにコンサートマスターを頼まれたのは千鶴。
果たして、梅が岡交響楽団を立て直すことは出来るのでしょうか…。

人情コメディですから、なんとなく物語の筋は読めるかと思います。
こういう作品には、王道中の王道を行ってもらいたい。
ひねりはあまりいらないって感じでしょうか。
出演者がベテランの名のある役者さんばかり。
そのせいか、少しのtoo much感は否めませんが、それもまたご愛嬌(笑)。
高齢化が進む今の社会において、目標や楽しみを持つことの大切さを、
涙と笑いで教えてくれる1本だと思いますョ。☆3つ。
「オケ老人」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.11.2

『インフェルノ』☆☆☆
『種まく旅人 夢のつぎ木』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


すみません。先週10月28日公開の『インフェルノ』の紹介を忘れていました。
TVのCMで「公開中」の文字を見て、ドキッ(笑)。改めてご紹介しますね。
さ、今週は2本です!



『インフェルノ』は、ダン・ブラウンのベストセラーの映画化、第3弾。

ハーバード大学の宗教象徴学者、ロバート・ラングドン。
彼が目を覚ましたのは病室のベッドの上。
頭の傷の原因も、なぜここにいるのかもわからずにいると、謎の女が病室を急襲。
女性医師のシエナの助けで非常階段から逃げ出し、彼女のアパートへ。
ラングドンは、自分が狙われていることを悟ります。
ラングドンの洋服のポケットに、なぜか1本のペンライトが入っていて、
それが壁にボッティチェリの『地獄の見取り図』を映し出します。
手がかりを探っていくと、生科学者ゾブリストの、とある計画に辿り着くんですね。
「人口が増え続ければ、環境破壊は進み、人類は絶滅する。
ならば人口の半分を死滅させるウイルスを放とう」。
ウイルス放出の予告時間まで、あとわずか。
ラングドンは人類の危機を救うことが出来るのでしょうか…。

『ダ・ヴィンチ・コード』、『天使と悪魔』に続く、シリーズ第3弾。
あらすじは超シンプルに書きましたが、もちろん複雑に絡み合い、
それでいて明解に読み解かれていくという。
お恥ずかしながら、前2作を見ていないので、比較が出来ないのですが、あまりに壮大な謎解きが、
簡単ではないにしろ出来てしまうというところが、答えから逆算しているような感覚というのかなぁ。
すみません、それはちょっと感じてしまいました。
ただ、ドンデン返しはなかなかで、「えっ?そうなんだ…」というのはありました。
これはこれでひとつの様式美なのかもしれませんが。
前2作を見ないと、きちんと語れませんね(笑)。☆3つ。
「インフェルノ」公式サイト



『種まく旅人 夢のつぎ木』は、第一次産業をテーマにした“種まく旅人”シリーズの第3弾。

農林水産省の職員、木村治は、桃の栽培についてのレポートを書くために、岡山県赤磐市に赴任します。
市役所の上司から案内役を任されたのは片岡彩音。
女優を目指し、東京に上京したものの、桃農家をやっていた兄が倒れ、
その遺志を継ごうと故郷に戻って来ていたのです。
彼女が目指していたのは、兄が作った“赤磐の夢”という名の桃を、農林水産省に品種登録させること。
ところが、判定は“拒否”。彩音は桃を諦めると言い出したのですが…。

木村治に斎藤工、片岡彩音に高梨臨。フレッシュなキャスティングとなりました。
治はチャラい役人で、彩音は最初それが鼻について仕方なかったのですが、
治は彩音の桃に対する真剣さに昔の自分の農業への情熱を思い出し、
彩音の背中を押す存在になっていくんですね。
夢と情熱の王道を行く映画です。頑張ろうという気にさせてくれると思いますョ。☆3つ。
「種まく旅人 夢のつぎ木」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.10.27

『ザ・ギフト』☆☆☆☆
『92歳のパリジェンヌ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年は早いタイミングで、年末の忙しさがやってきてしまいました。ありがたい話なんですけどね。
ここから試写会に対する時間のやりくりが課題となってきます。
見たい作品もいっぱいありますからね。
なんだか体力勝負の様相を呈してきましたョ(笑)。頑張ります!
さ、今週は2本です!


『ザ・ギフト』は、サイコ・スリラー。

シカゴからカリフォルニアの郊外へと引っ越して来た、若い夫婦のサイモンとロビン。
サイモンは企業戦士として成功し、妻のロビンが子供を望んでいることもあって、
環境を変えることにしたのです。
転居先はサイモンの故郷。夫婦で買い物をしている時、偶然、高校時代の同級生と再会します。
彼の名はゴード。サイモンは、古い記憶を掘り起こすようにして、軽い会話を交わし、
連絡先を交換して別れたのですが、すぐにゴードから贈り物のワインが届きます。
この“ギフト”がふたりにとって、恐怖の始まりになるとは。
その時はまだ気づきもしなかったのです…。

“サイコ・スリラー”とプレスにもあったのでそう記しましたが、果たして“サイコ”なのか?
このへんは見る人によって、違うかもしれません。
ワインから始まるゴードの贈り物ですが、これがだんだんとエスカレートしていきます。
「ヤツと関わるな」。神経質になっていくサイモンに対し、ふたりの過去に何かがあったはずと勘ぐるロビン。
その昔を紐解くことにより、ロビンは精神的に追い込まれていくのです。
ホント、よく出来たストーリーだと思いますョ。話したいけど話しちゃったらつまらない(笑)。
「そっか…。ギフトか…」。ゾッとする感覚が秀逸です。☆4つ。
「ザ・ギフト」公式サイト



『92歳のパリジェンヌ』は、尊敬死がテーマの1本。

子供にも孫にも恵まれ、幸せな老後を過ごしているマドレーヌ。
ところが、92歳の誕生パーティーの席で、突然こう言ったのです。
「2ヶ月後の10月17日に、私は逝きます」。
周りはみんなビックリ。冗談ではないと知り、さらに戸惑いが広がります。
実はマドレーヌ、“ひとりで出来なくなったことリスト”を付けていて、
その項目がひとつ、またひとつと増えていくことを直視していたんですね。
みんなの迷惑になる前にこの世を去りたい。マドレーヌの考える終焉の美学。
とは言っても、もちろん家族は賛成できるはずもなく。
娘は母を説得しようと、これまでより多くの時間を割いて母と接するうちに、
マドレーヌの強い気持ちや、凛とした生き様を知り、徐々に心動かされていくのでした…。

リオネル・ジョスパン元フランス首相のお母様の話を、
娘で作家のノエル・シャトレが書籍化。その映画化です。
尊敬死を扱う作品が、最近のヨーロッパ映画の中で増えている気がします。
たまたまボクが見ているだけかもしれませんが。
“生き様=死に様”と言いますが、そのあたりはどうなんでしょうね。
ボクには正直わかりません。
なので、この作品をどう評価していいのか…。
少し前に『君がくれたグッドライフ』という、ベルギーの尊敬死の映画がありました。
あれは難病に悩む男性のお話でしたよね。
老い、病、尊敬死…。難しいテーマです。☆3つ。
「92歳のパリジェンヌ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.10.21

『スター・トレック BEYOND』☆☆☆☆
『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


昔の作品を探ろうと、自分のHPの映画のコラムをさかのぼって行ったら、
タイトルを見ただけで思い出す作品と、あらすじを読まないと思い出せない作品と。
印象の度合いが違うというか、やっぱりすぐにピンと来る作品は☆の数が多いものです。
さ、今週は2本です!


『スター・トレック BEYOND』は、シリーズ最新作。

宇宙船エンタープライズ号に乗って、
未知の宇宙領域の探査任務に当たっていたカーク船長たち。
ところが、突然、謎の異星人クラール率いる無数の攻撃機に襲われ、
エンタープライズ号は大破してしまいます。
乗組員は脱出ポッドで退避したものの、見知らぬ惑星にバラバラに不時着することに。
カークは仲間とエンタープライズ号の残骸を探し始めるのですが、
そこで1人の女性戦士イラと出会います。
彼女がカークを案内した場所にあったもの、それは100年前に突然消息を絶った、
“艦隊の英雄”エディソンが乗鑑していたフランクリン号だったのです。
その頃、エンタープライズ号を襲ったクラールたちは、
宇宙基地であるヨークタウンへの攻撃を開始しようとしていたのです…。

『スター・ウォーズ』と人気を二分する、SFの人気シリーズのひとつが『スター・トレック』。
熱烈なファンは“トレッキー”と呼ばれます。
ストーリーがよく練られているのはもちろんのこと、未来の話にも関わらず、
今回はちょいちょいアナログ的なものが出てきて、
それが有効に使われるというか、効果てきめんというか(笑)。
あまり言うとネタバレになりかねないので、軽く触れておくと、
ラジオがいい活躍をするんだなぁ。あ、このへんにしときます(笑)。
その“温故知新”を遊ぶみたいな、制作陣のセンスに拍手ですかね。
過去の作品を知らなくても、十分に楽しめますョ。☆4つ。
「スター・トレック BEYOND」公式サイト



『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』は、シリーズ4作目にして最終章。

違法な高金利で金を貸す、闇金の「カウカウファイナンス」。
社長の丑嶋のもとに、「カオルちゃん、いる?」と訪ねて来た貧相な男が。
中学時代の同級生、竹本です。
「友人としてなら金は貸さない。客としてならここは暴利だから他を当たれ」。
そう言い捨てる丑嶋でしたが、実は竹本は“誠愛の家”という貧困ビジネスの被害者になっていて、
仲間を助けるために金が必要だと言うのです。
思い返せば、中学時代から竹本はそんな男でした。
転校してきた丑嶋を、みんなで寄ってたかってボッコボコにしたのですが、
その輪の中にただひとり入らなかったのが竹本で、
丑嶋は大切なウサギを預けるほど心を許していたのです。
ところが、“誠愛の家”を経営していたのが、当時、丑嶋と対立し、
丑嶋に叩き潰された鰐戸3兄弟。
彼らはずーっと丑嶋への復讐のチャンスを待っていたのです。
竹本が丑嶋のもとを訪れたことで、すべての糸が繋がり、一気に時が12年前へと戻ったのでした…。

丑嶋の転校初日にヤキを入れたのが、今は丑嶋の右腕となっている柄崎。
金融のライバルの犀原茜も、彼らと深い因縁がある間柄。
すべてが「なるほど…」と繋がる“ザ・ファイナル”です。
その他にも、過払い金請求の法律事務所を経営する、いかがわしい弁護士が登場。
丑嶋の対決も見どころです。
余談ですが、貧困ビジネスを題材にした映画が、今年1月に公開された『蜃気楼の舟』。
あれを見ていたので、“誠愛の家”がすんなり入って来た感がありました。
“Part3”はちょっと…と思いましたが、最終章はストーリー的にも面白く見られました。
ウシジマくんの人格形成プロセス、あなたも知りたくないですか?☆4つ。
「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.10.14

『彼岸島デラックス』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


『彼岸島デラックス』は、人気コミックの映画化。

吸血鬼が支配する島、彼岸島。
そこに存在するのは3種の生物。
人間、吸血鬼、そして吸血鬼になりながらも人の血を吸うことを拒み続け、
怪物に変異した邪鬼(おに)。
宮本明は吸血鬼たちを倒すことのできる唯一のワクチンがあると知り、
1年振りに彼岸島に戻ってきたのです。
実は彼の兄、篤がこの島で消息を絶っていたのでした。
吸血鬼のトップに立つのは、
邪鬼をも自由に操ることのできるマスターヴァンパイアの雅。
雅を倒そうと、仲間と共にワクチンを探す明でしたが、
雅もそうはさせじと明たちを襲います。
そんな中、明は篤と再会するのですが、篤は雅の配下となっていたのでした…。

ヤングマガジンに連載されていた人気コミック『彼岸島』の映画化です。
ドラマにもなった人気作品ということで、ファンは間違いなく多いんでしょうね。
ただ、やっぱりこのコミックのファンが喜ぶタイプの映画かなと。
漫画の世界がCGも含め、実写映画化されて「おぉ〜」みたいな。
だって明のように行き来できるなら、ボクならとっとと島から逃げ出してますし、
吸血鬼たちもそこにとどまらずに勢力を広げに出るでしょ?
なんてこと言っちゃいけないんですけどね(笑)。
娯楽作品として楽しんで下さい。☆3つ。
「彼岸島デラックス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.10.6

『ある戦争』☆☆☆
『お父さんと伊藤さん』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会の受付開始時刻は、開映時間の30分前。
ただ、人気の作品になると、その時間では既に長蛇の列が出来ていることも。
だから、ついつい早めに到着するようにしちゃってます。
元々が“5分前の精神”の持ち主ですから、仕方ないんですけどね(笑)。
さ、今週は2本です!



『ある戦争』は、デンマーク映画。

平和維持軍の活動の一環で、アフガニスタンに兵士を送り出しているデンマーク。
タリバンの襲撃から民衆を守るために、命懸けの任務を遂行していました。
部隊の隊長であるクラウスは、国に妻と幼い3人の子どもを残してアフガニスタンへ。
部下の士気を上げるためにと、隊長自らもパトロール隊の一員として町の監視に出掛けた時のこと、
突然何者かから攻撃を受けたのです。
このままでは全滅してしまう。
そう思ったクラウスは、敵兵がいるであろう西の第6地区への空爆を要請するんですね。
しかし、それは敵兵を目視したわけではなく、あくまで推測でのもの。

仲間の砲撃に助けられ、命からがら基地に戻ったクラウスたち。
ところが数日後、司令官と法務官がやってきて、クラウスの取った行動は軍規違反で、
子どもを含む民間人11人が死亡。軍事法廷に掛けられると言うのです。
部下の命を救うためにはそれしかなかったと、クラウスは主張するのですが…。

こんなことが、現実として当たり前のようにあるんだなという1本。
あちこちに地雷が埋められていて、仲間が爆死する。
助けを求めに来たアフガニスタン住人が、翌日にはタリバンに殺されている。
命があることが奇跡のような過酷な環境の中で過ごし、敵襲に反撃したら、それは軍規違反だと。
狂気の戦地に、机上の正義が果たして適合するんだろうかというのを考えてしまいます。
戦争や紛争とは、本当に理不尽なものだと感じずにはいられません。☆3つ。
「ある戦争」公式サイト



『お父さんと伊藤さん』は、不思議な三角関係の家族を描いたヒューマン・コメディ。

彩と伊藤さんは、元々はコンビニのアルバイト仲間。
いい年をしてコンビニのバイトだなんて、人生の負け犬だと見下していた伊藤さんと、
彩はいつの間にか付き合い始め、一緒に暮らしていたのです。
2人が住むのは、都心から少し離れた2DKのアパート。
家庭菜園が出来る程度の庭もあり、和やかに暮らしてしたのですが、ある日のこと、
そこに突然、兄夫婦の家を追い出された彩のお父さんがやってきたのです。
「頑固で偏屈なお父さんと暮らすなんてまっぴらごめん」の彩。
優しく、穏やかな伊藤さんは、「まぁいいじゃない」と微笑んで受け入れようとしてくれます。
この生活をいつまで続けなくてはならないのか。
父は毎日、何をやっているのか。彩の悩みのタネになっていくのです…。

彩に上野樹里、伊藤さんにリリー・フランキー、お父さんに藤竜也という、
キャスティングを聞いただけで見たくなる1本です。
彩と年の離れた伊藤さんが、それはそれは穏やかで。
芯はしっかりしているのに、まず怒らないんですよ。ボクには欠けている部分です(笑)。
そっか、こう接すれば家庭は上手くいくのかと、頭ではわかってもちょっと無理かなぁ(笑)。
ラストは、その後の3人の関係を考えさせられる終わり方。なかなかです。☆3つ。
「お父さんと伊藤さん」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.9.27

『アイ・ソー・ザ・ライト』☆☆☆
『アングリーバード』☆☆☆
『シーモアさんと、大人のための人生入門』☆☆☆☆
『築地ワンダーランド』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ボクのラジオのレギュラー番組で、
食や音楽が題材の映画はなるべく紹介しようと思っているのですが、
ついうっかり忘れてしまうことがあるんですね。時には物理的に紹介できないことも…。
なんか作品に対して、申し訳ない気がしてしまいます。
できる限り“お返し”できるよう頑張らないと。
さ、今週は4本です!


『アイ・ソー・ザ・ライト』は、
29歳でこの世を去った伝説のシンガー、ハンク・ウィリアムスの物語。

1923年9月17日、アラバマ州に生まれたハンク・ウィリアムス。
生まれつき二分脊椎症という脊椎の障害を持ち、
生涯背中の痛みに悩まされたといいます。
幼い頃からカントリーミュージックに興味を持ち、
母が買ってくれたギターで、10代になると曲を書き始め、
アマチュアミュージシャンとして活動を開始。
当時は母がマネジメントを担当していました。
21歳で結婚。47年にメジャーレーベルからの歌手デビューを果たし、
ヒットも飛ばすのですが、公私共に問題が山積。
妻のオードリーは元々が歌手志望なのですが、実力が伴わない。
パーティー好きで、ハンクの印税は使いまくる。
ハンクはハンクで背中の痛みもあり、アルコールと女性に走る。
仕事のドタキャンも日常茶飯事に。
ハンクの才能を認めていたスタッフたちも、次々と離れて行ってしまったのです…。

29歳で亡くなるまでの、わずか6年間の歌手活動。
それでも“ルーツ・オブ・ロック”と呼ばれる
ハンク・ウィリアムスの半生を綴った映画です。
後のエルヴィス・プレスリーやビートルズにまで影響を与えたとされる彼の音楽。
“知られざる光と影”の“影”の部分にスポットライトを当てているので、
おそらく彼をよく知る自国アメリカの人には、より刺さる物語なんだろうと思います。
日本で言えば、演歌の大御所の知られざる半生みたいな感じでしょうか。
もちろんハンク・ウィリアムスを知らなくても、
ひとりの人生ドラマとして見ることが出来ますョ。☆3つ。
「アイ・ソー・ザ・ライト」公式サイト



『アングリーバード』は、人気モバイルゲームキャラが3Dアニメ化された作品。

平和を愛する飛べない鳥たちの島、バードアイランド。
そんな中で、レッドだけは異質の存在。
とにかく気が短くて、島のトラブルメーカーとなっていました。
ある事件がきっかけとなり、裁判所から、
怒りをコントロールするアンガーマネージメント教室に通うことを命じられたレッドは、
仕方なしにセラピーに通う毎日。
そこで知り合ったボムやチャック、テレンスとも距離を置く始末。
そんなある日のこと、島に一隻の船が近づいて来ます。 乗組員はブタのレオナルドとロス。
遠くピギーアイランドから2人で旅をしていて、
友好のためにやってきたと言いますが、どうにもうさん臭い。
しかし、疑うことを知らないバードアイランドの鳥たちは彼らを大歓迎。
レッドの忠告になど、耳を貸しもしません。
レッドはボムたちとレオナルドの船に忍び込むと、そこには無数のブタたちが。
そう、彼らは島を乗っ取りに来たのです。
そして、大切な卵を次々と盗んでいったのでした…。

異端の鳥、怒るレッドが大活躍の物語。
沖の船に飛び乗ろうにも、レッドでも飛べないわけですから、どうしたらいい?
ならばパチンコだと、大きなパチンコを作って飛べない鳥たちが飛んで行くという。
たくさんのキャラがスクリーンを埋める、賑やな映画です。
ブタに食べられてしまう前に、卵を取り返すことができるのか?
まさにゲーム感覚で楽しんで下さい。☆3つ。
「アングリーバード」公式サイト



『シーモアさんと、大人のための人生入門』は、
89歳のピアノ教師のドキュメンタリー。

人気俳優のイーサン・ホークが、自身の仕事の本質について悩みを抱えていた時、
とある食事会で知り合ったのが、当時84歳のシーモア・バーンスタイン。
数々の賞にも輝き、作曲家としても著名なピアニストです。
そんなシーモアさん、50歳の時に現役としての演奏活動にピリオドを打ち、
以降は後進の指導に専念してきたと。
音楽とは何か、芸術を表現するとはどういうことか、
また表現者はどうあるべきかなどを、
自身の決して平坦ではなかった半生からも教えていくという。
ピアノ・レッスンでありながら、人生をも優しく指南してくれるシーモアさんの、
素敵な言葉がいっぱい散りばめられた1本です。
もしかすると、あなたの座右の銘が見つかるかもしれませんョ。☆4つ。
「シーモアさんと、大人のための人生入門」公式サイト



『築地ワンダーランド』は、
世界で唯一無二のフィッシュマーケットである築地市場の日常を追ったドキュメンタリー。

今年2016年の11月2日、80年の歴史に幕を下ろすはずだった築地市場。
ところが移転問題に揺れ、その動向は日本中の注目するところとなっています。
この映画は、世界に誇る魚市場としての築地を映像で後世に残したいという思いから、
約16ヶ月もの間、時に早朝から深夜までカメラを回し続けたドキュメンタリー。
市場で働く人々の、魚に対する専門性と志の高さが、鮮明に描かれてます。
ユネスコの無形文化財にも指定された『和食』の達人たちも出演。
職人中の職人が、築地の仲卸人たちの目利きをこんなにも信頼してるんだというのに驚くはずです。
劇場で売ってるはずのパンフレットは“築地市場ガイドブック”になるかも。
TVなどでよく聞く、仲卸とか卸売会社などの言葉の意味がわかるのはもちろん、
なるほどこのまま場所だけ移すというのはいかがなものかと、
きっと考えてしまうと思いますョ。
歴史が構築してきたプロフェッショナルの職空間には、
言葉では言い表せないルールがある。
新しいところに移るなら、それを一から作り直さなくてはならない。
それをしてまで移転する価値があるとの大勢の判断だったのでしょうが、
そこに浮上した様々な疑惑。そして食の安全への疑念。
とにかく面白いです。
制作陣は、ここまで築地市場が注目を集めるとは想像もしていなかったはず。
ある意味、いい映画のプレモーションになりました。
なんて言ったら怒られるかな(笑)。
日本人なら見ておく必要のある1本です。満点の☆5つ!
「築地ワンダーランド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.9.21

『ハドソン川の奇跡』☆☆☆☆
『闇金ウシジマくん Part3』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


頂いた試写状にある試写の日程がすべて終わってしまい、
その試写状を捨てる時のイヤ〜な気持ち。
「見たかったのになぁ…」とか、「もし名作だったらどうしよう…」とか、
様々な思いが頭をよぎります(笑)。
でも、これも人と同じで“ご縁”なんですよね。
出会った作品を大切に、かな。
さ、今週は2本です!



『ハドソン川の奇跡』は、実話を元にしたストーリー。

2009年1月15日、155人を乗せたUSエアウェイズの1549便が、
NYのラガーディア空港を飛び立った直後、トラブル発生。
左右のエンジンが停止してしまいます。
原因は“バードストライク”。鳥の群れを吸い込んしまったのです。
上空わずか850m。その下は、160万人もの人が暮らす大都会ニューヨーク。
管制塔からは、近くの空港への緊急着陸を指示されるのですが、
機長のサリーはそれを拒否。ハドソン川への不時着を選択します。
事故発生から208秒。機長は、難易度の高い水面着陸を成功させ、
乗員、乗客すべての命を救ったのでした。
事故後、“ヒーロー”と称えられたらのも束の間。
事故調査委員会は「乗客の命を危険に晒す無謀な行為」として、
サリーたちを追及し始めたのでした…。

“ハドソン川の奇跡”と呼ばれた実際の出来事を、監督クリント・イーストウッド、
主演トム・ハンクスで映画化。
「皆の命を救ったのに、なぜ?」。
機長のサリーのみならず、みんながそう思うと思うのですが、
水面着陸はすごく難しく、危険を伴うと。
今回は上手くいったけれど、それよりも管制室からの指示に従って、
近くの空港に緊急着陸していたほうが安全だったのでは?ということなんです。
シュミレーションマシンでプロの操縦士が同様の状況からシュミレーションしてみると、
余裕を持って空港に着陸できる。何度やってもそうなると。
「墜落」という言葉に、「着水だ」と強く言い返すサリーたち。
サリーはベテラン機長としての“あること”に気付いていました。
それが自らを守る、大きな大きなポイントになるのですが、それはもちろんここでは話しませんョ(笑)。
“155人の命を救い、容疑者になった男”とプレスにキャッチフレーズがありますが、
マスコミや世間ってホントに怖いですよね。持ち上げといて、簡単に落としますから。
でも、信念を持って行動をする。それも瞬時の判断で、ためらわずに行える。
“備えよ、常に”。プロフェッショナルの仕事って、こういうことなんですよね。
それが出来る機長だからこそ、疑義をかけられても、
支え、手を差し伸べてくれる人が周りにたくさんいたんだと思います。
あ、この映画、上映時間が96分。コンパクトなのも秀逸です。☆4つ。
「ハドソン川の奇跡」公式サイト



『闇金ウシジマくん Part3』は、人気コミックの映画化。その第3弾。

10日で5割という超高金利闇金融のカウカウファイナンス。
それでも崖っぷちで後がない人間は、代表の丑嶋のところに金を借りに来るのです。
今回は2人。まずはフリーターの沢村真司。
「ネットで秒速1億」を謳うカリスマの無料セミナーを受け、
人生イチかバチかで100万円のリスクを取ろうと決意。
その元金をカウカウファイナンスに借りに来るんですね。
もう1人は大手企業のサラリーマン、加茂守。
妻帯者なのにキャバクラ通い。
業者にキックバックを求めたりして金を用立てていたのですが、
遂に底をつき、カウカウファイナンスにやってきます。
この男、他にも悪さをしてるようで、とにかく金がいると。
超高金利の借金を重ねていくのですが…。

主演は山田孝之。メガネの奥の瞳に感情がない…(笑)。
その演技というか、丑島の表情がすごいよなぁといつも思ってしまいます。
ただ、貸し手は仕方ないにしても、借り手の設定にも少し現実離れした感が否めず、
そのへんがどうかなと。
デフォルメがあまりにすごいと、リアリティは欠けちゃいますからね。
って、リアリティなんていらねーんだよって凄まれちゃうか(笑)。
ちなみにこのあと、いよいよシリーズ最終章の“ザ・ファイナル”が待ち構えてます。
この作品のファンは、Part3もちゃんと見ておきましょうね。☆3つ。
「闇金ウシジマくん Part3」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.9.16

『オーバー・フェンス』☆☆☆
『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


飛び石で祝日が散らばる今週と来週。
上手く休んで連休を取れるならいいけれど、
そうじゃないと手持ち無沙汰になることも。
そんな時は映画がお勧めです。このチャンスに是非!
さ、今週は2本です。



『オーバー・フェンス』は、函館が舞台の“訳あり”男女の物語。

少し前まで東京の建設会社に勤め、妻子もいた白岩義男。
今は離婚し、故郷の函館に帰郷。実家に戻るでもなく、
職業訓練校に通い、収入はといえば、わずかな失業保険だけ。
コンビニ弁当と2本の缶ビール。訓練校とアパートの往復。
人生を諦めたかのような生活を送っていました。
そんなある日のこと、訓練校の仲間に誘われて行ったキャバクラで、
ひとりのホステスに出会います。
鳥の求愛ダンスを得意気に踊る彼女。名前を聞けば「さとし」だと。
男性のような名前で苦労もしたと笑う彼女に、白岩は興味を抱きます。
昼間、遊園地で子供相手にアルバイトをしているさとしの笑顔を見て、
白岩は恋に落ちるのでした…。

白岩にオダギリジョー、さとしに蒼井優。個性派俳優の共演です。
さとしは心に傷を持っていて、突然感情を爆発させたりもする。
でも白岩も悩みを抱えているし、訓練校の生徒たちもそう。
みんな何か問題を抱きながら生きているんです。
タイトルは訓練校のイベントのソフトボール大会から。
だからといって、スカッと爽快感を求めちゃいけませんョ(笑)。
でも、人生ってそんなもんだよなとは思える作品です。☆3つ。
「オーバー・フェンス」公式サイト



『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』は、
スピルバーグ監督のディズニー作品。

ロンドンの児童養護施設で暮らす、10歳の女の子ソフィー。
毎晩なかなか寝付けず、その夜も窓から外を眺めていると、
突然見たこともない巨人が現れたんですね。
怖くなってベッドに潜り込んだソフィーでしたが、
毛布と一緒につまみ上げられて、ソフィーは“巨人の国”へと連れて行かれてしまいます。
巨人の名前はビッグ・フレンドリー・ジャイアント、通称BFG。
身長7m、世界中の声が聞こえるという大きな耳を持っていました。
よくよく話をすると、BFGは心の優しい巨人で、ソフィーと同じひとりぼっち。
似たような境遇もあって、ふたりは徐々に仲良くなっていくのでした。
BFGの仕事は、子供たちに夢を吹き込むこと。
“夢の国”で夢を摘んでは調合し、子供たちに夢を送り届けていたのです。
ところが、“巨人の国”にはさらに大きく、
凶暴な巨人が住んでいて、BFGをいじめに来る。
ソフィーも見つかったら食べられてしまう。 一度は危ないからと施設に帰らされたソフィーでしたが、
悪い巨人たちを退治しようとBFGに進言します。
そこで、イギリス女王に力を借りようと提案。ソフィーはそれを実行に移すのでした…。

意外や、これがスティーブン・スピルバーグ監督、初のディズニー作品。
小さな少女が、勇気を振り絞って、自分の何倍も大きな巨人の困難に共に立ち向かう。
友情、誠実、仲間を守るといったテーマを描いた作品です。
登場人物をそれぞれが何かに例えて見る、そんなファンタジー映画です。
幅広い層に受け入れられる1本だと思いますョ。
あれこれ言わず、素直にこの世界観に没頭できるか否かが、
評価の分かれ目かもしれません。☆3つ。
「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.9.7

『だれかの木琴』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


感性が豊かになる秋。
でも逆に、結末がわかってる悲恋ものの試写なんかは避けちゃいます。
だって悲しいんだもん(笑)。
たくさん頂く試写会の案内状。選り好みせずに行かないといけないんですけどね。
さ、今週は1本です!



『だれかの木琴』は、大人の恋愛サスペンス。

郊外の一軒家に引っ越してきたばかりの小夜子。
警備機器会社に勤める勤勉な夫と、真面目な中学生の娘との3人暮らし。
これといった趣味もなく、友人もいない。
毎朝2人を送り出すと、あとは家事をこなすだけの生活でした。
そんな小夜子が、近くの美容室を訪れます。担当は若い男性美容師の山田海斗。
海斗からの単なる来店御礼の営業メールが届くと、それに返信をする小夜子。
送信ボタンを押した時、小夜子の中で、何かがざわめき立ったのでした。
「新しいベッドを買ったんです」。
そんなメールを受け取って、戸惑う海斗。店の仲間は「誘ってるのよ」と冷やかし、
店長は「そういうお客さんは離れないから大事にしろ」と言う。
でも、海斗には嫌な予感がしていました。
必要以上に頻繁に来店し、メールも増え、会話から住まいを突き止める小夜子。
ドアノブに果物と手紙を引っ掛けて帰る。
遂には店が休みの火曜日に、家のチャイムを鳴らしてしまうのです。
その後も小夜子の行動は、どんどんエスカレートしていくようになるのですが…。

ごくごく普通の人妻が、ふとしたキッカケでストーカーへと変貌していく。
SNSの時代ならではの“思い込み恋愛”とでも言うのでしょうか。
一方的に愛情を抱いたことによる、
アイドル殺傷事件なんていうのも実際起きていますからね。
女性の髪の毛を触るのは、恋人か美容師か。
男性の中には、自分の彼女の担当美容師が男性だと、
ジェラシーを感じるなんて人、いませんか?ボクはイヤだなぁ(笑)。
なんでしょ、モヤモヤしたものが残ります。覚悟してご覧下さい(笑)。☆3つ。
「だれかの木琴」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.9.2

『アスファルト』☆☆☆☆
『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先週は、ボクが見させてもらった試写の中に公開作品がなく、2週間ぶりの更新です。
もう9月なんですね。早いものです。
さ、今週は2本です!


『アスファルト』は、フランスの団地映画。

フランス郊外の古びた団地の一室で、エレベーターの交換について、
住民が集まって話し合いをしています。
みんなで費用を分担しようということになったのですが、
2Fに住むスタンコヴィッチだけは、「自分は使わないから払わない」と。
そこでスタンコヴィッチだけはエレベーターを使用しない約束で話がまとまります。
ところが、ひょんなことから、スタンコヴィッチは車椅子生活を余儀なくされることに。
でも、お金を払ってないからエレベーターは使えない。
住人がエレベーターを使用する時刻をこまめにチェックし、
それを避けて深夜に外出するスタンコヴィッチ。
ある晩、たどり着いた病院の自販機の前で、夜勤の看護士とバッタリ。
恋に落ちてしまいます。
自分はカメラマンで、撮影のロケハンに来ていると嘘をつき、
彼女が深夜1時にいつもタバコを吸いに出ると聞いたスタンコヴィッチは、
またここで会う約束をするんですね。
深夜の逢瀬を重ねるうちに、心が通い始めたふたり。
スタンコヴィッチは思い切ってこう言ったのです。「君を撮りたい」。
約束の日、スーツに身を包み、安物のカメラを首から下げ、
車椅子でエレベーターに乗り込んだスタンコヴィッチでしたが、
皮肉にもハプニングは起こったのです…。

団地に住む人々の、悲喜こもごものオムニバス・ストーリー。
あらすじを紹介したのはスタンコヴィッチのものでしたが、他にも、
母親との関係が希薄でほぼ一人暮らしの10代の男の子と、
その向かいに引っ越してきた落ち目の女優との物語。
息子が収監されているアルジェリア系移民のハミダ夫人と、
なぜかこの団地の屋上に不時着したNASAの宇宙飛行士との共同生活などが、
折り重なるように繰り広げらるていきます。
決して恵まれた環境に生きているわけではない住人たちですが、彼らに訪れる、
心にぽっと灯りがともるような小さな幸せ。
ちょっぴりイギリス映画に近い感覚のフランス映画。
見ているボクらも、気がつけば微笑みを浮かべているような1本。
個人的には好きなタイプかな。秋に見るにはいいんじゃないですか?☆4つ。
「アスファルト」公式サイト



『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』は、
イリュージョン・アクション。

巨悪をマジックで倒す、正義の犯罪集団“フォー・ホースメン”。
彼らが再集結した目的は、
巨大IT企業オクタ社が発売するスマートフォンに隠された不正を暴露するため。
NYで行われるその新作発表イベントを乗っ取ろうと、
ウェイターやイベントスタッフになりすますメンバーたち。
早変わりで内部へと入り込み、遂にはCEOと接触。催眠術をかけ、
世界中に自らの口で悪事をしゃべらせるつもりでしたが、
なんとジャックしたはずの計画が、実は別の何者かにジャックされていたのです。
会場から逃げるフォー・ホースメンのメンバーたち。
あらかじめ用意しておいた逃走経路で行き着いた先は、なぜかマカオ。
そこに待っていたのは、昨年亡くなったはずの天才科学者ウォルター・メイブリーだったのです…。

2013年公開の前作『グランド・イリュージョン』の続編です。
イリュージョンものも謎解きが多いので、導入部だけの紹介にしておきますが、
ここからフォー・ホースメンのイリュージョンとウォルターの科学が対決していくという。
ボクは、前作は好きでしたねぇ。なんて言っちゃいけないんだろうけど(笑)、
仕掛けが大きくなり過ぎたかなぁ。
資料によれば、イリュージョンのほとんどが実際のイリュージョン。
つまりCGなどは極力使っていないとのことなんですが、そう思って見られないんですよ。
前作はネタばらしをされたらストンと腑におちたんですけどね。
ちょっと凝りすぎちゃったかな。
派手で華やかなサスペンス・アクションとして見れば楽しめると思いますョ。☆3つ。
「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.8.17

『ゴーストバスターズ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今週紹介する映画は、先週11日、祝日の木曜日に先行公開となってます。
人気の話題作だけに、もう見たという人もいるかもしれませんね。
それでは今週の1本です!



『ゴーストバスターズ』は、1984年の大ヒット映画の21世紀オリジナル版。

コロンビア大学で物理学を教えるエリンは、大学の終身在職権の審査中。
ところが彼女には、ちょっとした過去がありました。それは幽霊本を出したこと。
物理学の教授には間違いなくマイナスになるこの過去が、
共同著者のアビーが勝手に電子書籍化したことで発覚。
エリンは文句を言いに、アビーのいるビギンズ科学大学へと乗り込みます。
アビーはホルツマンという相棒と一緒に、今も超常現象を研究しており、
エリンこそ裏切り者だと口論になります。
そんな時、エリンが古い屋敷のゴースト騒ぎの調査を依頼されていることを明かすと、
アビーは出版取り止めを条件に同行させるよう頼んできます。
渋々屋敷に向かうと、なんと地下室から娘のゴーストが現れ、
その姿をビデオに収めることにも成功。
喜び叫ぶエリンの姿はインターネットで配信され、コロンビア大学のお偉方の知るところに。
大学をクビになったエリンは、アビーたちと共に、再びゴーストの研究に戻るのでした…。

ゴーストバスターズ結成のいきさつが、こんな感じ。
1984年の作品とは別のものとして、オリジナルのストーリーが展開していきます。
NYの街がゴーストでいっぱいになる。
背後にゴーストを操る黒幕がいて、それを退治するというお話。
その後、もうひとり女性が加わり、ゴーストバスターズは女性4人に。
この辺も21世紀版の特徴でしょうね。
理屈のいらない娯楽作品。前作へのオマージュも、あちこちに散りばめられていて、
新作なのに懐かしいと感じる人も多いはず。是非3Dでご覧下さい。☆3つ。
「ゴーストバスターズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.8.12

『X−MEN:アポカリプス』☆☆☆☆
『きみがくれた物語』☆☆☆
『ジャングル・ブック』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会に行くのも暑さとの闘い(笑)。
駅近ならいいのですが、結構歩くところは大変。
でも、中に入ると涼しいんですよね〜。冷房がありがたい…(^^)。
映画館もそんな感じですよね。夏はホッとする空間でもあります。
さ、今週は3本です!


『X−MEN:アポカリプス』は、シリーズ最終章。

紀元前3600年。
人類初のミュータントであるアポカリプスは、他の肉体に転移することでそのパワーを増強。
エジプトのピラミッドで、新たなミュータントの身体に移り換わろうとしていた時、
反乱が起き、ピラミッドが崩壊。アポカリプスは永い眠りにつくことになります。
人類の文明が堕落すると、自らが支配してそれを正そうとするアポカリプスは、
1983年、約5600年の眠りから目醒めます。
核兵器を作るまでになった人類に怒ったポカリプスは、
世界を滅ぼし、もう一度地球を構築しようと動き始めます。
なんとかアポカリプスを止めようと、X−MENたちは力を合わせ、
圧倒的な強さのアポカリプスに立ち向かうのですが…。

2000年から初期のX−MENが3つ作られ、その後、
『ファースト・ジェネレーション』、『フューチャー&パスト』と続いた3部作の完結編です。
のっけから映像の迫力に圧倒されます。それだけで☆4つです。
相手は“神”ですから、そりゃとてつもなく強い。
さらに考えてみて下さい。
なぜアポカリプスが破壊行為に走ったかと言えば、人間が堕落したからであって、
悪いのは人間なんですよね。なんとも複雑な構図…(笑)。
そのあたりにもメッセージ性が隠れているのでしょう。
とはいっても、難しい内容ではないので、大人も子供も楽しめるはず。
娯楽作品として、夏休みにオススメです。☆4つ。
「X−MEN:アポカリプス」公式サイト



『きみがくれた物語』は、
人気恋愛小説家のニコラス・スパークスの大ヒット小説を映画化したもの。

32歳のトラヴィスは、周りの友達がみんな結婚して家族を作っているのに、いまだ独身。
それなりに遊んで、自由を楽しんでいました。
そんなある日のこと、隣りにギャビーという小児科医を目指す女性が引っ越してきます。
トラヴィスの家の音楽がうるさいと、始めは口論から始まった関係でしたが、
ふとしたきっかけで親しくなっていきます。
ギャビーには結婚を前提とした彼氏がいたんですね。
それでもトラヴィスと出会って、生き方も含め、心揺れるギャビー。 一時はみんなの前から姿を消したギャビーでしたが、トラヴィスは彼女を追いかけ、結婚。
二人の子供にも恵まれたのですが、悲劇が起こります。
ギャビーが交通事故で意識不明の重体に陥ってしまうんですね。
なんとか生命は維持しているけれど、医師は「肉体に限界がくるのは90日」と宣告。
トラヴィスがギャビーの運命を決めなくてはなりません。その日が刻一刻と近づいてくるのでした…。

事故の原因がトラヴィスの遅刻にあった。
でも、その遅刻は仕方のない理由、トラヴィスの優しさにありました。
それでもトラヴィスは自分を責めます。
最愛の人がこういう状態になったら、あなたならどうしますか?
正直、あまり考えたくないシチュエーションですよね。
最近、ちょっとこういう状況設定が苦手になりつつあります(笑)。
結末はもちろん見てのお楽しみです。☆3つ。
「きみがくれた物語」公式サイト



『ジャングル・ブック』は、最先端の映像技術を駆使したディズニー映画。

ジャングルにひとり残された人間の赤ちゃんが、黒ヒョウのバギーラに助けられ、
母オオカミのラクシャに預けられて、ジャングルの子として育てられます。
彼に付けられた名前はモーグリ。
仲間に愛され、姿形は異なるものの、ジャングルの掟を守り、
ジャングルで生きようと決めたモーグリでしたが、
人間を嫌う残忍なトラのシア・カーンだけは、モーグリを認めようとしなかったのです。
シア・カーンは人間が操る“赤い花”、つまり火によって顔に傷を負っていたのです。
モーグリによってジャングルの仲間が犠牲になる日が来ると、周囲を脅すシア・カーン。
モーグリは考えに考え抜いた末、ジャングルを離れ、人間の村に戻ることを決意します。
しかし、シア・カーンの復讐心は、モーグリが立ち去ることではおさまらなかったのです…。

モーグリ以外の動物は、すべてがCGだというディズニーの意欲作。
それは最初から知って見たほうが楽しめると思います。
マイノリティとしてのモーグリが、自分らしく生きるためにはどうしたらいいのか。
それを探す旅でもあり、おわかりのように、ギスギスした現代の我々人間社会にも、
当てはまるところがたくさんあります。
『ジャングル・ブック』は、ウォルト・ディズニーの遺作となった、
1967年のアニメーション作品の実写化でもあります。
時代の先読み?いや、いつの世も変わらない人間の愚かな部分?
いずれにしても、ウォルト・ディズニーの最後のメッセージが届いてくる1本です。☆3つ。
「ジャングル・ブック」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.8.4

『花芯』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


久々の更新です。
この時期に公開となる映画の試写に行けてなかったというか、ポッカリ空いたというか(笑)。
暑いですからね。いいですョ、映画館。
さ、今週は1本です!


『花芯』は、瀬戸内寂聴が瀬戸内晴美時代に書いた、恋愛文学の映画化。

昭和21年、親が決めた許婚の雨宮と結婚した園子は、
雨宮に愛情を感じられないままに、男児を出産。
よき妻、よき母を演じていたのですが、雨宮の京都転勤が大きな転機となってしまいます。
夫婦で暮らす京都の下宿先は、とある未亡人の一軒家。同じくそこに宿を借りる、
夫の上司の越智という男に惹かれ始めてしまうのです。
真面目でつまらない雨宮とは、比べものにならないほど魅力的な越智。
聞けば未亡人ともただならぬ関係のよう。
園子の女の部分に火が着いてしまったのでした…。

瀬戸内寂聴の半自叙伝的小説とも言われ、
発表した昭和32年当時は“子宮”などの表現を多用した文章が過激だとされ、
批評家から散々叩かれたという問題作。
そもそも戦中には神社の裏手で兵隊と戯れたり、許婚の両親の前で悪態をついたりと、
思いのままに生きてきた園子ですから、越智への思いを雨宮にも正直に告げてしまうんですね。
確かに昭和32年当時では、こういう恋愛観はなかなか受け入れられなかったかもしれませんね。
それも女性の手による作品ですから。
主役の村川絵梨が体当たりの演技。それでも、トータルでの描かれ方はそれほどエロくはなく。
それがよかったか、もっとドロドロしたほうがよかったのかは、ご覧になった方が判断して下さい(笑)。
ちなみに『花芯』とは、中国語で“子宮”のことだそうです。☆3つ。
「花芯」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.7.22

『AMY』☆☆☆☆☆
『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』☆☆☆☆
『ファインディング・ドリー』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


『AMY』は、27歳の若さでこの世を去った、イギリスの歌姫のドキュメンタリー。

エイミー・ワインハウス。
1983年9月13日、イギリスはミドルセックス州エンフィールドの、
ユダヤ系の家庭に生まれた彼女はジャズが大好き。
16歳で音楽業界に飛び込み、19歳でソニーATV音楽出版と契約。
20歳でシングル「Stronger Than Me」、
アルバム『Frank』をリリース。高い評価を得ます。
23歳で発表したセカンドアルバム『Back To Black』のリードシングル
「Rehab」が世界中で大ヒット。
人気を不動のものにするのですが、それと同時にアルコールに溺れ、
付き合った恋人の影響で薬物にも依存。
奇行も目立ち、それは音楽活動に支障をきたすほどのものになっていきます。
エイミーが幼い頃に離婚した父親が、エイミーの元に戻って来る。
しかしそれは、どう見ても彼女が稼ぎ出すお金の元に戻ってきた。
グラミー賞にも輝き、地位も名誉もお金も得たけれど、失ったものはあまりに大きく…。
幼い頃からの親友は、本当に彼女のことを心配し、スターではないエイミー・ワインハウスの真の友でした。
でも、それ以外の人たちは…。あまりに周りの人間に恵まれなかった気がします。
「彼女はスターになって、天狗になるどころか戸惑っていた。不安と恐怖でいっぱいだったんだ。
自分を取り巻く状況に“どうしたらいいの”と言ってたよ」という、
元モス・デフのヤシーン・ベイの言葉があります。
エイミーは、ただただ好きな音楽をやりたかった。でも、世の中がそうはさせてはくれなかった。
2011年7月23日、27歳の若さで死去。死因は心臓発作でした。
幸せってなんだろう、成功ってなんだろう。そんなことを考えさせられる1本です。
ちなみにこの映画は、第88回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。☆5つ。
「AMY」公式サイト



『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』は、映画界を支えた伝説的銀行マンのドキュメンタリー。

オランダ人のフランズ・アフマンは、ロッテルダムの銀行に勤める銀行員。
そこでエンタテインメント事業部を立ち上げた際に、イタリア出身の大プロデューサー、
ディノ・デ・ラウレンティスのアドバイスで、“プリセールス”というシステムを作り出します。
これが製作資金集めに苦労する映画人たちに、絶大なる夢と希望を与えることになり、
その結果、新興の映画会社が斬新な企画で次々と大ヒットを飛ばしていくことになります。
例えば、『キングコング』(76年)、『スーパーマン2』(80年)、
『ターミネーター』(84年)、『ランボー/怒りの脱出』(85年)、
『プラトーン』(86年)、『氷の微笑』(92年)などなど。
20世紀後半だけで、その数900本以上!
そんなフランズ・アフマンが、末期のすい臓ガンを宣告された2010年。
愛娘のローゼマインが回すカメラに向かって、自分自身の人生を語ります。
また、彼に縁のある映画人たちが、フランズとの思い出を話しています。
お金の使い方というか、お金の持つパワーを上手く使えば、
こうして人は幸せに人生の幕を閉じられるのかという、
これまた別の意味で考えることの多い1本。
『AMY』と見比べてみるのも面白いかと思います。
ラストはぐっと来ますョ。☆4つ。
「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」公式サイト



『ファインディング・ドリー』は、03年に世界中で大ブームを巻き起こした
『ファインディング・ニモ』の続編。

ドリーはニモの親友。人間にさらわれたニモを探すため、
ニモのお父さんのマーリンと奮闘したのが1年前。
今はグレート・バリア・リーフの珊瑚礁で、幸せに暮らしていました。
ニモの学校の遠足に参加したドリーは、アカエイの大群に近づき過ぎて、
激流に飲み込まれてしまうんですね。
その流れの中で忘れんぼうのドリーは、自分の家族のことを思い出したのです。
でも、手がかりはたったひとつ。“カリフォルニア州モロ・ベイの宝石”という言葉だけ。
それでも家族を探したいというドリーを、今度はニモとマーリンが助けてあげようと決意します。
こうして、ドリーたちの冒険が始まったのでした…。

ディズニー/ピクサーの大ヒット作『ファインディング・ニモ』のスタッフが再集結。
アンドリュー・スタントン監督は、「ニモの続編は絶対にやらない」と宣言。
だからこの映画は、正確には“続編”ではないのかもしれません。でも、続編だな(笑)。
映像はキレイで、キャラクターも可愛らしく、個性的なタコなんかも出てくるし、
“ベビー・ドリー”なんて鉄板キャラもいて。ニモ・ファンにはたまらないと思います。
ニモのブームから13年。カクレクマノミ同様、
ナンヨウハギのブームが来るか、どうか?ちょっと注目したいですねっ。☆3つ。
「ファインディング・ドリー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.7.14

『AMY』☆☆☆☆☆
『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』☆☆☆☆
『ファインディング・ドリー』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


『AMY』は、27歳の若さでこの世を去った、イギリスの歌姫のドキュメンタリー。

エイミー・ワインハウス。
1983年9月13日、イギリスはミドルセックス州エンフィールドの、
ユダヤ系の家庭に生まれた彼女はジャズが大好き。
16歳で音楽業界に飛び込み、19歳でソニーATV音楽出版と契約。
20歳でシングル「Stronger Than Me」、
アルバム『Frank』をリリース。高い評価を得ます。
23歳で発表したセカンドアルバム『Back To Black』のリードシングル
「Rehab」が世界中で大ヒット。
人気を不動のものにするのですが、それと同時にアルコールに溺れ、
付き合った恋人の影響で薬物にも依存。
奇行も目立ち、それは音楽活動に支障をきたすほどのものになっていきます。
エイミーが幼い頃に離婚した父親が、エイミーの元に戻って来る。
しかしそれは、どう見ても彼女が稼ぎ出すお金の元に戻ってきた。
グラミー賞にも輝き、地位も名誉もお金も得たけれど、失ったものはあまりに大きく…。
幼い頃からの親友は、本当に彼女のことを心配し、スターではないエイミー・ワインハウスの真の友でした。
でも、それ以外の人たちは…。あまりに周りの人間に恵まれなかった気がします。
「彼女はスターになって、天狗になるどころか戸惑っていた。不安と恐怖でいっぱいだったんだ。
自分を取り巻く状況に“どうしたらいいの”と言ってたよ」という、
元モス・デフのヤシーン・ベイの言葉があります。
エイミーは、ただただ好きな音楽をやりたかった。でも、世の中がそうはさせてはくれなかった。
2011年7月23日、27歳の若さで死去。死因は心臓発作でした。
幸せってなんだろう、成功ってなんだろう。そんなことを考えさせられる1本です。
ちなみにこの映画は、第88回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。☆5つ。
「AMY」公式サイト



『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』は、映画界を支えた伝説的銀行マンのドキュメンタリー。

オランダ人のフランズ・アフマンは、ロッテルダムの銀行に勤める銀行員。
そこでエンタテインメント事業部を立ち上げた際に、イタリア出身の大プロデューサー、
ディノ・デ・ラウレンティスのアドバイスで、“プリセールス”というシステムを作り出します。
これが製作資金集めに苦労する映画人たちに、絶大なる夢と希望を与えることになり、
その結果、新興の映画会社が斬新な企画で次々と大ヒットを飛ばしていくことになります。
例えば、『キングコング』(76年)、『スーパーマン2』(80年)、
『ターミネーター』(84年)、『ランボー/怒りの脱出』(85年)、
『プラトーン』(86年)、『氷の微笑』(92年)などなど。
20世紀後半だけで、その数900本以上!
そんなフランズ・アフマンが、末期のすい臓ガンを宣告された2010年。
愛娘のローゼマインが回すカメラに向かって、自分自身の人生を語ります。
また、彼に縁のある映画人たちが、フランズとの思い出を話しています。
お金の使い方というか、お金の持つパワーを上手く使えば、
こうして人は幸せに人生の幕を閉じられるのかという、
これまた別の意味で考えることの多い1本。
『AMY』と見比べてみるのも面白いかと思います。
ラストはぐっと来ますョ。☆4つ。
「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」公式サイト



『ファインディング・ドリー』は、03年に世界中で大ブームを巻き起こした
『ファインディング・ニモ』の続編。

ドリーはニモの親友。人間にさらわれたニモを探すため、
ニモのお父さんのマーリンと奮闘したのが1年前。
今はグレート・バリア・リーフの珊瑚礁で、幸せに暮らしていました。
ニモの学校の遠足に参加したドリーは、アカエイの大群に近づき過ぎて、
激流に飲み込まれてしまうんですね。
その流れの中で忘れんぼうのドリーは、自分の家族のことを思い出したのです。
でも、手がかりはたったひとつ。“カリフォルニア州モロ・ベイの宝石”という言葉だけ。
それでも家族を探したいというドリーを、今度はニモとマーリンが助けてあげようと決意します。
こうして、ドリーたちの冒険が始まったのでした…。

ディズニー/ピクサーの大ヒット作『ファインディング・ニモ』のスタッフが再集結。
アンドリュー・スタントン監督は、「ニモの続編は絶対にやらない」と宣言。
だからこの映画は、正確には“続編”ではないのかもしれません。でも、続編だな(笑)。
映像はキレイで、キャラクターも可愛らしく、個性的なタコなんかも出てくるし、
“ベビー・ドリー”なんて鉄板キャラもいて。ニモ・ファンにはたまらないと思います。
ニモのブームから13年。カクレクマノミ同様、
ナンヨウハギのブームが来るか、どうか?ちょっと注目したいですねっ。☆3つ。
「ファインディング・ドリー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.7.8

『カンパイ!世界が恋する日本酒』☆☆☆☆
『ペレ 伝説の誕生』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


暑いですね!
涼を求めて映画館へ。今はいろんな割引があるので、例えば1000円で涼しく休めて、
最新映画も見られちゃうというなんていう日もたくさんあるんですョ。
利用しない手はないんじゃないですか?
さ、今週は2本です!



『カンパイ!世界が恋する日本酒』は、日本酒に関するドキュメンタリー。

和食ブームに乗って、世界中で日本酒への注目度が高まってきた昨今。
ちょっと変わった、インターナショナルな視点で
日本酒に携わる人たちを追ったドキュメンタリーです。
主役は3人。
まずは岩手県にある『南部美人』の5代目蔵元、久慈浩介氏。
歴史ある酒蔵の後継ぎながら、革新的なアプローチで日本酒を製造、販売。
伝統を受け継ぎながらも、新しいことにチャレンジしなければ生き残れないと、
海外へも積極的に出向き、日本酒の魅力を広めています。
次に、イギリス人のフィリップ・ハーパー氏。
オックスフォード大学を卒業し、日本の英語教師派遣のJETプログラムで来日。
滞在中に日本酒に魅せられて、なんと外国人として初めての杜氏になってしまったという。
そしてもうひとりが、アメリカ人のジョン・ゴントナー氏。
彼も同じくJETプログラムで来日するんですが、職場の同僚に勧められた“本物の”日本酒に感動。
JAPAN TIMESで日本酒のコラムを書き始め、
今では“日本酒伝道師”の肩書きで、英語の日本酒ガイドを多数出版するなどしています。
運命って不思議だなと思いつつ、これほどまでに人をひきつける日本酒の魅力とは何なのか。
ボクらも知らない奥深さを、外国の人から教えてもらうことになるはず!?
見たらきっと一杯やりたくなりますョ。☆4つ。
「カンパイ!世界が恋する日本酒」公式サイト



『ペレ 伝説の誕生』は、“サッカーの王様”と呼ばれた
ブラジルのサッカー選手、ペレの伝記映画。

ブラジルのスラム街に育ち、友達と大好きなサッカーを楽しむものの、
スパイクどころかボールすらなく、洗濯物を丸めたものを裸足で蹴る少年たち。
その中にペレはいました。
父親は元サッカー選手。ところが膝のケガが原因で、現役を引退。
貧しい生活を余儀なくされていたのです。
そんな夫の姿を見てきたペレの母は、彼がサッカーをやることに大反対。
それでも母親の目を盗んで出場した大会で、見事なテクニックを披露し、
スカウトの目にとまるんですね。
マンゴーの果実を使って、楽しそうにリフティングをする父子の姿に心を打たれた母は、
ペレにプロのサッカーチームへの入団を勧めます。
親元を離れ、サントスFCに入団したペレでしたが、言ってみれば完全なる自己流。
戦術など理解できるはずもありません。
しかし、裏を返せば乾いたスポンジのようなもの。
改めて基礎からサッカーを学んだペレは、すべてを吸収して、ぐんぐんと成長。
なんと17歳にしてサッカーW杯のブラジル代表に選ばれるんですね。
ところが、その頃のブラジルチームはといえば、どん底の状態。
ペレはチームの救世主になれるのでしょうか…。

サッカーにさほど詳しくない人でも、ペレの名前は聞いたことがあるはず。
それほどまでに有名な、サッカー界のレジェンドです。
本名、エドソン・アランチス・ドゥ・ナシメント。
1950年に自国でW杯が行われた時、ブラジルは決勝で敗れ、
悔しさに涙を流す父親に、
「いつか僕がブラジルをW杯で優勝させるから」と約束するんですね。
よくあるじゃないですか、小学校の文集に書いたことが現実となる。
まさにそんな感じでしょうか。
自分のスタイルを貫き通すことで、勝利と栄光を手にするその姿に、
ボクらは学ぶべきところが大きいかも。
ペレ本人もチラッと登場しますョ。探してみて下さい。☆3つ。
「ペレ 伝説の誕生」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.6.23

『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』☆☆☆☆
『二重生活』☆☆☆
『ふきげんな過去』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ボクが映画の試写を見せてもらえるのは、ラジオのパーソナリティをやっているから。
一番のお返しは番組で紹介することなんですが、タイミングが合わなかったり、
フリートークの時間がなかったりと、なかなか思うように出来ないのが現実。
もし、このコラムがきっかけで映画を見に行かれたなら、
様々なツールで次にまた広げて下さい。
それが実は大きな大きな宣伝パワーになるのですから。
さ、今週は3本です!



『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は、一風変わった青春コメディ。

普通の高校生の大助。
修学旅行で乗ったバスが事故に遭い、目覚めるとそこは地獄。
目の前に立っていたのは、地獄専属のロックバンド“ヘルズ”のリーダー、
赤鬼のキラーKでした。
地獄落ちに納得できない大助。
その一番の理由は、大好きだったクラスメートのひろ美とまだキスもしていないこと。
でも、聞けば、閻魔大王の裁き次第では、現世に戻れると言う。
ひろ美に会いたい一心で、大助の奮闘努力が始まったのでした…。

監督と脚本は官藤官九郎。メチャメチャ面白かったですョ。
地獄から抜け出すには、バンド対決で閻魔大王にいかにアピールをするかにかかっている。
大助はヘルズに入って、ひろ美に再会するために頑張るのですが、
何度も何度も様々なものに生まれ変わっては地獄に戻って来る。
輪廻転生の回数には限りがあるから、いよいよラストチャンス。
さぁ、どうなる?というお話。
主役のひとつが音楽、それもヘビメタ、ハードロック。
そこで、そのジャンルのたくさんの大物ミュージシャンが登場します。
Char、“よっちゃん”こと野村義男、ROLLY、憂歌団の木村充揮、
マーティ・フリードマン、 シシド・カフカなどなど。ホントに豪華!
キラーKにTOKIOの長瀬智也、大助に神木隆之介。
ボクらの世代なら、声を出して笑えるはず。
ホロリとする場面もあって、よく出来てます!☆4つ。
「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」公式サイト



『二重生活』は、心理エンターテイメント。

大学院で哲学を勉強する珠。
彼女は卓也というゲームデザイナーの恋人と同棲していました。
大学院の篠原教授と修士論文の打ち合わせをしながら、
生きる意味に悩む珠に、教授はある方法を提案します。
それは“哲学的尾行”。
無作為に選んだひとりの対象を追いかけ、
生活や行動を記録するというものでした。
迷いつつも、資料を探しに書店に足を運んだ時、
珠が偶然見かけたのは、マンションの隣りに住む石坂の姿。
美しい妻とひとり娘。
何不自由なく幸せそうに暮らしている印象でしたが、
尾行してわかった愛人の存在。
珠は尾行という行為に、危険なまでに引き込まれていくのでした…。

門脇麦、長谷川博己、リリー・フランキー。
なんとなく癖のある役者が顔を揃えました。
この尾行にはルールがあって、「対象と接触してはいけない」と。
ところが、尾行が石坂にバレてしまう。さぁ、一体どうなる?
珠は珠で、卓也に嘘をついてまで尾行を続け、部屋に朝まで戻らない日があると。
これまた“二重生活”な訳です。
結末が気になるストーリー展開。ちょっと大人の映画かもしれませんね。☆3つ。
「二重生活」公式サイト



『ふきげんな過去』は、小泉今日子と二階堂ふみのW主演作。

北品川の古びた食堂『蓮月庵』。
そこに暮らす18歳の果子は、毎日が退屈で退屈でたまりません。
今日も家族の実りのない話をボーっと聞いているだけ。
するとそこに、18年前に死んだはずの伯母、未来子が突然やってきたのです。
驚き喜ぶ祖母、なんとなくバツが悪そうな父、落ち着かない母。何かがおかしい。
爆弾犯としての前科があり、戸籍がないほうが都合がよかったと語る未来子を、
家族は果子の部屋にしばらく置こうと決めます。
苛立ちを隠せない果子でしたが、未来子の衝撃の告白が。
「あたしがあなたの本当の母親なのよ」…。

舞台設定が北品川という下町の食堂ですから、身近な感じがあるのですが、
ストーリーは少し現実離れしたぶっ飛んだ内容で。
そのギャップが面白いのかも。
また、それを演じるのが、キョンキョンと二階堂ふみという。
そんなキャスティングの妙もこの映画の魅力なんでしょうね。
季節は8月夏休み。陽炎、白昼夢。そんな言葉が合いそうな1本です。☆3つ。
「ふきげんな過去」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.6.16

『葛城事件』☆☆☆
『クリーピー 偽りの隣人』☆☆☆☆
『10 クローバーフィールド・レーン』☆☆☆
『トリプル9 裏切りのコード』☆☆☆
『レジェンド 狂気の美学』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


最近、あまり試写に行けないと言ってる中で、
今週はドドッとまとめて5本が公開となります。
正直、小出しにしたい気分…(笑)。
というわけで、今週は5本です!



『葛城事件』は、現代社会の病巣に切り込んだ人間ドラマ。

郊外の住宅地。主人の葛城清が、鼻歌まじりで壁の落書きを消しています。
書かれていたのは“人殺し”“死刑”などの文字。
いったいこの家に何があったのでしょうか?
町の金物屋を継いだ清は、自己中心的思考で、高圧的に人と接する人物。
家族に対しても、また他人に対してもそうでした。
その結果、妻は精神を病み、一見健全そうな長男も人間関係が上手く出来ない。
次男はいわゆるニートで働こうともしない。
長男は結婚し、家庭があるのに、会社をリストラされてしまいます。
それを誰にも言えず、出勤する振りをする毎日。
妻は耐えきれず、夢だったマイホームを出て行くのですが、そこへ清が乗り込んで大喧嘩に。
ぶちきれた次男が「一発逆転!」と言いながら、とんでもない行動に出てしまうのでした…。

2012年に『その夜の侍』で監督デビューを果たした、赤堀雅秋監督の第2作。
自身の立ち上げた劇団の舞台作の映画化です。
なるほど、元が舞台かと思うと納得の映画。
言ってることは、ご覧になれば感じてもらえるかと思います。
あるじゃないですか、独特の“舞台の匂い”って。
これが監督のオリジナリティなのかもしれません。
ただ、逆にそこの“溝”みたいなものが埋まってなかった気もするんですよね。
埋まんなくていいんだってことなのかなぁ。
救いのないモヤモヤしたものは、
この映画を見た人が必ず持たされるお土産みたいなものかもしれません。☆3つ。
「葛城事件」公式サイト



『クリーピー 偽りの隣人』は、サスペンス・スリラー。

高倉は犯罪心理学を教える大学教授。
しかし、その前身は刑事で、連続殺人犯の取り調べ中に逃走を許し、
一般人を犠牲にしてしまったという苦い過去がありました。
そんな彼が、ふとしたきっかけで、
6年前に発生した“日野市一家行方不明事件”に興味を抱きます。
大学の同僚と現場に足を運んだ高倉は、元刑事の直感で、何かを感じていたのです。
高倉には妻と愛犬がいて、新しい家に引っ越したばかり。
妻とふたりでご近所さんに挨拶回りをしていたのですが、
隣りの西野家のご主人がどうにも怪しい。
中学生の娘がいて、紹介されたのですが、後日その娘が高倉に言うのです。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」と…。

“クリーピー(creepy)”とは、
「ぞっと身の毛がよだつような」とか「気味が悪い」という意味だそう。
この映画にはネタバレ防止のためのNGがたっくさんあって、
確かに何も知らないで見たほうが、絶対に面白いと思います!
だから、ここまで(笑)。
自分の家のお隣りさん、どんな人だか、知ってますか?☆4つ。
「クリーピー 偽りの隣人」公式サイト



『10 クローバーフィールド・レーン』は、謎に満ち満ちた1本。

恋人と別れ、車を走らせていたミシェルが事故に逢ってしまいます。
気づくとミシェルはシェルターの中。体の自由は奪われ、携帯も繋がらない。
するとそこにハワードという中年の男が食事を持ってくるんですね。
「きみを救うためにここへ連れてきた」と語るハワード。
実はこのシェルターにはもうひとり、
自らこのシェルターに逃げてきたエメットという若い男性がいて、ここがどこなのか、
彼らは善人なのか悪人なのかもわからないまま、3人での共同生活が始まります。
ミシェルは隙あらばここから逃げ出そうと思っているのですが、
ある日、絶好のチャンスがやって来ます。
シェルターのドアまでたどり着いたミシェルに、ハワードが叫びます。
「ドアを開けるなっ。みんな殺されるぞ!」。
恐る恐るドア越しの景色を覗き見たミシェルの表情が、一瞬にして変わっていったのです…。

この映画もネタバレNGの要素がたくさんあって、これ以上は書けない(笑)。
試写状を見ても、ホラーか、サスペンスものか、はて何だろうという感じ。
ドキドキしながら試写に行ったのですが、ミシェル同様、
見ているボクらも眉間にしわを寄せながら、疑心暗鬼…。
ま、見てのお楽しみと言ったところですかね。
この手の映画にありがちな“ラストの着地しない感”ですが、
この映画にはちゃんとありました。そこはすごいなぁと思いました。☆3つ。
「10 クローバーフィールド・レーン」公式サイト



『トリプル9 裏切りのコード』は、アトランタが舞台のクライム・アクション。

アメリカで最も危険な都市と言われるアトランタ。
そこに、ロシアン・マフィアのもと、凶悪犯罪を繰り返す5人組がいました。
元特殊部隊の兵士、兄と元警察官の弟、ギャング対策班の現役警官に、殺人課の現役刑事。
もうこれきりにしたいと申し出ても、ロシアン・マフィアの女ボスがそれを許しません。
彼女は収監中の夫を救い出すために、
国土安全保障省の中にある重要機密のファイルを盗み出すよう、彼らに命じたのです。
これまでやってきた銀行強盗とはレベルの違うセキュリティーをどう破るのか。
そこで考えたのが警察の緊急コード“999(トリプル9)”を使うことでした。
アメリカの警官は仲間意識が強く、警官に緊急事態が発生すると、このコードを使用。
すると、ほとんどの警官がその現場に急行するため、
10分ほど、全職務がフリーズするというのです。
この10分間の空白を利用して、国土安全保障省を襲おうとする5人。
果たして、計画はうまくいくのでしょうか…。

5人のリーダーのマイケルは、女ボスの妹の恋人。
ふたりの間にいる息子を、ある意味、人質に取られているため、
ノーが言えない事情もありました。
5人の連携が完璧かと言えばそうでもなく、ほつれが見え隠れするところに危うさがある。
ドンデン返しももちろんあって、この手のジャンルが好きな人には、
楽しめる1本かもしれませんね。☆3つ。
「トリプル9 裏切りのコード」公式サイト



『レジェンド 狂気の美学』は、
“伝説”と呼ばれたイギリスの双子のギャングの物語。

1960年代のイギリス、イースト・エンドに、下層階級出身の、双子のギャングがいました。
レジーとロンのクレイ兄弟です。
レジーは頭も切れ、ビジネスにも向くタイプ。
一方のロンは心を病み、凶暴な性格で、同性愛者。
ふたりは圧倒的な強さと度胸でのし上がり、
アメリカン・マフィアの大物と手を組むことで、さらに勢力を拡大。
敵対する対抗勢力も蹴散らし、セレブの社交場を経営するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで、
ロンドンの街にその影響力を広めていったのです。
その頃、レジーに恋人が出来て、「ギャングはやめて」という言葉に揺れ、
ビジネスマンとしてやっていこうとも考えたのですが、
レジーが傷害容疑で収監されている間に、ロンがレジーの店でやりたい放題。
大繁盛店が一転、閑古鳥の鳴く店になっていたのです。
本気で殴り合う兄弟ふたり。レジーにとって、ロンはまさに危険な爆薬のような存在でしたが、
ふたりの絆の強さは、他人にはわからないほど強固なものだったのです…。

実話に基づく物語。
痛快で、豪快で、彼女を愛しているレジーも、彼女を泣かせるレジーも、どっちもレジー。
ある意味“別の生き物”でもあるレジーとロンを、
トム・ハーディが一人二役で見事に演じ分けています。
あの時代のファッションや街並みがまたオシャレで、
他国のギャングものとはひと味違った雰囲気がいいんですよね。
131分が短く感じるくらいでしたョ。トムの演技に☆5つ!
「レジェンド 狂気の美学」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.6.11

『シチズンフォー スノーデンの暴露』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


関東地方も梅雨入りし、雨の多い季節になりました。
ちょっと雨宿りで映画館。いい作品との出会いがあるかもしれませんョ。
さ、今週は1本です!



『シチズンフォー スノーデンの暴露』は、
第87回アカデミー賞・長編ドキュメンタリー映画賞受賞作。

スノーデン事件。
2013年に起きた衝撃的な事件を覚えているでしょうか。
アメリカのCIAやNSA(国家安全保障局)に勤務していた、
エドワード・スノーデンというひとりの若いエキスパートが、
実名で内部告発を行ったという事件。
その内容は、国家によるプライバシーの監視が、一般の国民を対象に、
かつてない規模で行われているというもの。
なぜ、スノーデンは危険を冒してまで、このような行動に出たのか?
その一部始終をスノーデンは世界中に伝えたく、これまで数多くの賞に輝いた、
ジャーナリストであり、ドキュメンタリー映画監督でもある、
ローラ・ポイトラスと接触。彼女にすべてを託したのでした。
この映画は、そんなスノーデン事件の、事件前からの映像です。
もちろん、本人も登場します。
9.11以降、アメリカが変わった。それが是か非かはわかりません。
それぞれに考え方があるでしょうから。
ただ、この映画を見ると、「そういうことが本当にあるんだ…」
というのを思い知らされます。
内容が内容だけに、サラッと紹介は終わりますが、まさに衝撃の1本です。
☆4つ。
「シチズンフォー スノーデンの暴露」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.6.2

『サウスポー』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


早いもので6月です。
5月はおかげさまで忙しく、なんと5本しか試写が見られませんでした。
そのうち3本がドキュメンタリー。
知らず知らずのうちに、あるいは意識してか、
ドキュメンタリー映画を“選んで”行っていたのかもしれません。
“事実は小説より奇なり”。
面白い作品は、本当に面白いですからね。
さ、今週は1本です!



『サウスポー』は、ボクシング映画。

43戦無敗の世界ライトヘビー級王者、ビリー“ザ・グレート”ホープ。
彼は養護施設出身の孤児で、最愛の妻も同じ施設で育ったモーリーン。
ふたりの間には愛娘のレイラがいました。
破格のファイトマネーを得るようになったビリーでしたが、ある晩のこと、
養護施設の寄付を集めるためのチャリティーパーティーに出席。
するとそこに、同じ階級のボクサーで、
何かと因縁をふっかけてくるミゲル・エスコバールがいました。
スピーチを終え、帰宅しようとするビリーたちに、ミゲルはまたも挑発的な言葉を発し、
妻を侮辱されたビリーはミゲルに殴りかかり、双方大乱闘となります。
その時です。一発の銃声が響き、モーリーンが腹部から血を流して倒れていたのです。
妻の突然の死を受け入れられないビリー。
日々の生活は荒み、ボクサーとしての栄光も失い、経済的にも困窮。
娘レイラとも離れ離れの生活を余儀なくされてしまいます。
もはや、あの強かったチャンピオンの姿はありません。
ビリーは伝説と化して、このままリングから消え去ってしまうのでしょうか…。

ドキュメンタリーじゃないかと思うような作品は、
1979年の映画『チャンプ』のリメイクだそう。
主演のビリー役には、身体を鍛え上げたジェイク・ギレンホールが扮します。
主題歌はエミネムの手によるものですが、そのエミネムは抗争で親友を亡くしていて、
遺された娘と結びつきを強くしたと。
そんなエミネムの実体験がこの映画には反映されているんだそうです。
愛する娘との生活を、また自身自身の栄光をも取り戻したい。
頂点からどん底に落ちた男の、再生の物語です。
そこにはカギとなる、ひとりの人間との出会いがあるのですが、
そこはあなたがスクリーンで確かめてみて下さい。
ボクシング映画はまずもってハズレがないというか、
ドラマチックな逆転劇は想像もつきやすいのですが、
この映画には想像もできないことがひとつ。
それは、ジェイク・ギレンホールの身体!
役作りのためにここまでしたかという、すんごい身体になっています。
そんな役者魂に☆1つ追加して。☆4つ。
「サウスポー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.5.25

『或る終焉』☆☆☆☆
『エンド・オブ・キングダム』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会場の空調の調整が難しい時期になりました(笑)。
暑がりの人もいれば、寒がりの人もいて。
ボクなんか完全に前者ですからね。
既に半袖ですが、それでも暑いとボーッとしてきちゃいます。
できれば、寒がりの人は1枚羽織るものを持ってきて…
なんて、勝手な言い分ですよね(笑)。
さ、今週は2本です!



『或る終焉』は、終末ケアの看護師の物語。

デヴィッドは、終末期患者専門の看護師。
彼は、身体的にも、精神的にも近しい部分に入り込み、
しっかり患者の信頼を得るのですが、それは患者の家族からすると、
時に嫉妬にも似た感情を抱かせるもの。
エイズの末期患者のサラを看取った次に担当になった、
脳卒中で半身麻痺の男性老人のジョンとは、ポルノを見るなど、
まるで10代の友達のような関係を築きます。
ところが、そんなふたりの様子を疑った家族は、
デヴィッドをセクハラで訴えると言い出します。
ジョンの心配をしつつも、家に近寄ることさえ禁じられてしまうデヴィッド。
次の担当患者は末期ガンの中年女性、マーサでした。
マーサは化学療法の副作用に苦しみ続けていて、
デヴィッドにあることを依頼します。それは安楽死の手伝いでした…。

監督はメキシコ生まれの37歳、新進気鋭のミシェル・フランコ。
監督の祖母が脳卒中で倒れ、身の回りの世話を看護師が行っていた時、
ふたりの間には、実の家族も立ち入れない、密接な関係性が築かれていたと言います。
そこに嫉妬する家族もいたくらい。
それでも祖母が亡くなれば、次の終末期患者のもとへと移っていく。
ミシェル・フランコ監督は、実の体験から、そんな看護師の心の内に興味を持ったといいます。
この映画、結末ばかりがクローズアップされますが(もちろん書きませんが)、
興味深いのは、やはり看護師デヴィッドの心理。
なんら答えも描かれてはいませんが、まるでサスペンス映画のように、
ドキドキかつモヤモヤしながらスクリーンを見つめ、会場を後にしても、
何かモヤモヤが続いていました。
今でも思い出すとモヤモヤが蘇ります。それがこの監督の手法でもあるようです。
ちなみに第68回のカンヌ映画祭で脚本賞を受賞しています。☆4つ。
「或る終焉」公式サイト



『エンド・オブ・キングダム』は、
2013年の映画『エンド・オブ・ホワイトハウス』の続編。

2年前に起きた、ホワイトハウスのテロで大統領を救い、
シークレットサービスの職に復帰したバニング。
彼には妻がいて、お腹の中には初めての子供がいたのです。
そんな幸せの真っ只中、イギリス首相急逝のニュースが届きます。
当然のことながら、世界中から各国首脳がロンドンに集結。
それはテロリストにとって、格好の舞台でもありました。
バニングも、アッシャー大統領の警護のため、身重の妻を残してロンドンへと向かいます。
すると、恐れていたことが現実のものとなってしまいます。
警官や衛兵に紛れていた武装兵が、街のあちらこちらで各国首脳を襲い始めたのです。
どんどんと増えていく犠牲者の数。アッシャー大統領にもテロリストの魔の手が伸びます。
バニングはこの危機から、再び大統領を守ることができるのでしょうか…。

伊勢志摩サミットにタイミングを合わせるかのように公開となるサスペンス・アクション映画。
もちろん何かあったら即刻公開中止?延期?でしょうから、
日本の警備体制が強固なものであることと、何も事件が起こらないようにと、
映画の配給会社は祈っていることでしょうね。
TVのニュースなどで、テロリスト役が刃物を持って暴れてるのを、
警察官が取り押さえるのを見ますが、“テロ対策”ってあんなんじゃ無理でしょ。
じゃなくて、こういう映画を見せたほうがいい(笑)。
もしかしたら、もちろんもっと深い想定で、ちゃんと訓練はしてるけれど、
手の内は明かせないから、あんなちゃちい訓練映像を流してるのかも。
というか、そうあってくれると信じたいですよね。
話が逸れてしまいました(笑)。大統領も体力勝負です。☆3つ。
「エンド・オブ・キングダム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.5.20

『君がくれたグッドライフ』☆☆☆
『シマウマ』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


9月公開作品の試写の案内が届きました!
今見るのはいいけど、あんまり先でも忘れちゃいますよね…(笑)。
さ、今週は2本です!



『君がくれたグッドライフ』は、尊厳死がテーマのドイツ映画。

ハンネスとキキは仲の良い夫婦。
彼らは仲間4人と6人で、年に1回の自転車旅行に出るのを恒例行事としてました。
行き先は持ち回りで決めるのですが、今年はハンネスたちの番。
その行き先がベルギーであることを告げると、
仲間たちからは「つまらない場所だ」とブーイングが。
しかし、ベルギーを選んだのにはある目的があったのです。
出発して2日目。
ハンネスの兄の家に立ち寄った時、なぜ今回はベルギーなのか、その意味を知らされます。
実は、ハンネスがALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、
余命3〜5年を告げられていたのです。
そこで、尊厳死が法的に認められているベルギーで、
みんなに見守られながら最期を迎えたいと。
動揺し、中には憤り、寿命の限り生きたらどうだという声も。
しかしハンネスは、「父親と同じ病気。
父の時のような辛く大変な思いはさせたくない」と、決意の固さを伝えます。
それぞれに複雑な思いを抱きながら、6人は自転車を漕ぎ始めたのでした…。

尊厳死の問題は決して簡単ではなく、身近にあって、初めてわかるものなんじゃないかなと。
それがないボクがどうこうは言えませんが、常に思うのは、人の命は必ず終わる。
それはいつ終わるかわからない。だから、今を楽しもうということなんですね。
楽しむというのは、遊び呆けてというんじゃない。
楽しむためには、その対極にある苦労や努力を知らなきゃダメ。
その辛い最中だとしても、ボクは“生きてる”って感じると思うんですよ。
サボるんでも一生懸命サボれって、これもいつも思ってます。
尊厳死に対し、イエスかノーかを問うのではなく、生きることに対して、
いろんなことを考えさせてくれる映画だと思います。☆3つ。
「君がくれたグッドライフ」公式サイト



『シマウマ』は、ヤングキングで連載中の過激なコミックの実写映画化。

美人局として金を稼いでいた倉神竜夫。
ところが、ヤクザを引っ掛けようとしてしまい、
そこからさらなる悪の道へと転がり落ちていくんですね。
竜夫に与えられたのは“回収屋”。
誰かから受けた屈辱を、実に残忍極まりない方法で復讐すること。
それが回収屋の仕事でした。
仲間といっても、一触即発の危険なメンバーたち。
そんな中で名前を“ドラ”と名乗り、仕事をする竜夫でしたが…。

小幡文生の原作は“絶対に読んではいけない漫画”と言われるほどの危険なコミック。
実際、ストーリーや映像も、
「これ、あまりにエグくない?」と口にしてしまいそうになるほど。
個人的にはいい影響を与えないんじゃない?と思ってしまいます。
“日本映画界の限界に挑戦”ともありますが、原作コミックのファンは、
実写が果たして満足のいくものか、試しに見に行くにはいいんじゃないですか?
眉間にシワの寄る場面が多過ぎたかな。それが狙いなんでしょうけど。☆2つ。
「シマウマ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.5.12

『園子温という生きもの』☆☆☆
『ひそひそ星』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


4月から、NACK5のボクのレギュラー番組
『Beautiful Songs〜ココロの歌』に、
フリートークの時間が増えました。
映画を紹介する機会も増えるかなと。ま、時間的に食が印象的に使われているとか、
番組的に音楽ものの映画だったりすると紹介しやすかったりします。
試写を見せてもらうお返しは、ちゃんとしたいですもんね。
さ、今週は2本です!



『園子温という生きもの』は、映画監督の園子温のドキュメンタリー。

『愛のむきだし』、『ヒミズ』、『新宿スワン』、『リアル鬼ごっこ』、
『みんな!エスパーだよ!』などの話題作で知られる鬼才・園子温(その しおん)監督。
1961年、愛知県豊川市に生まれ、幼い頃から漫画を読み、自らも書き、
また読書を好む少年で、12歳ぐらいになると、
映画館やTVで映画をたくさん見ては映画評を書くようになり、
自宅にあった8ミリで作品を撮るようにもなります。
そんな少年期を過ごした彼が、ミュージシャンとして、路上パフォーマーとして、
また前衛アーティストとして、
もちろん映画監督として活躍する“いま”に至るまでを振り返る、
ドキュメンタリー作品です。
“異端”と言われるほどの個性の強さが特徴で、
これほどまでにカラーが出る監督はごく僅か。
園子温作品と聞くと、「見てみたいよね」と思わせる、数少ない映画監督です。
二階堂ふみ、染谷将太、そして妻の神楽坂恵など、
近しい人たちのインタビューも織り交ぜつつ、
その才能の根元が垣間見える作品となっています。
しかし、よーく酒を飲んでます。肝臓が心配(笑)。
ちなみに監督は大島新。あの大島渚監督の息子がメガホンを取っています。
その大島新監督の言葉。「(彼の強い正義感は)必ず弱者の側に立つ」。
これは次の『ひそひそ星』を見るヒントになるかも。☆3つ。
「園子温という生きもの」公式サイト



『ひそひそ星』は、そんな園子温監督が28歳の時にシナリオを書いた作品。

遠い未来の宇宙。
人工知能を持ったロボットが8割を占め、人間は僅かに2割。
戦争や自然災害でどんどんとその数は減り、
人間は宇宙で絶滅危惧種に認定されていました。
そんな中、宇宙船レンタルナンバーZは、
人間の荷物をあちらこちらの星に届ける宇宙宅配便として運行。
乗組員はアンドロイドの鈴木洋子マシンナンバー722ただひとり。
彼女は、帽子、鉛筆、乳歯や一枚の写真など、ほとんどどうでもよさそうなものを、
かつては賑わっていただろう町の人間に届けます。
喜ぶ顔を見ても、人工知能の彼女にはその訳がわかりません。
そして、洋子は30デシベル以上の音をたてると人間が死ぬ危険性があるという
“ひそひそ星”へと、荷物を届けるのでした…。

28歳の園子温監督がシナリオを書き、大量の絵コンテまで書いたのに、
映画化が叶わなかった作品。
そのアイデアが、四半世紀経った“いま”映画になりました。
“昭和”を匂わせる、モノクロのSFファンタジー。
プレスの本人のコメントに、「これは記憶に関する映画だ。
三月十一日のあの日から今に至るわれわれの記憶と、
はるか昔からの遠い人間の記憶を重ねるファンタジーを届けたい」と。
なんか予言者のようというか、25年前に映画に出来なかったことが必然というか。
今回も、ロケ地に福島県双葉郡浪江町など、東日本大震災の被災地を使っていますが、
『ヒミズ』や『希望の国』といった作品で、
いち早く震災や原発を作品に反映させてきたように、
“三月十一日”というのは、園子温監督にとって、あまりに大きな出来事だったのでしょう。
前記の『園子温という生きもの』とWで見ると、理解しやすいかも。
事実、試写も続けて2作品というスケジュールが多かったです。
2013年に設立した自身の独立プロダクション、シオンプロダクションの第1回作品。
決して商業的映画でないのは、見ればわかると思います。☆3つ。
「ひそひそ星」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.5.6

『カルテル・ランド』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


試写会で、ボクも眠気覚ましに飴を舐めたりするのですが、
小袋に入ってるものだと、それを開ける音にも気を遣うもの。
銃撃戦やら大音量の時に、その音に紛れて袋を破ります(笑)。
ところが、場面にお構いなしで、粒のミントなどを振って出す人がいる。
めちゃめちゃ気が散ります。というか、現実に引き戻されてしまいます。
繰り返しになりますが、マナーが悪いのはマスコミの試写会の方かもしれませんね。
さ、今週は1本です!


『カルテル・ランド』は、麻薬を巡るドキュメンタリー。

メキシコのミチョアカン州には、テンプル騎士団という麻薬カルテルがあり、
抗争や犯罪が日常化しています。
そんな中、医師のホセ・ミレレスが立ち上がり、自警団を結成するんですね。
政府も警察も腐りきっていてあてにできない。ならば自分たちで銃を持とう。
家族は自分たちの手で守るんだ、と人々に呼びかけます。
その声は時に反対を受けながらも徐々に浸透し、賛同者を増やし、
各地で麻薬カルテルを撃退するほどの勢力になっていったのです。
ところが自警団が大きくなると、今度は自警団の中に腐敗が生じてくる。
ついには堂々と麻薬を扱う者まで出てくる始末。
そんなある日のこと、ミレレスの乗った飛行機が、
ミチョアカンで墜落事故を起こしてしまうんですね。
奇跡的に命は取りとめたものの、後遺症の残る身体になってしまいます。
暗殺では?との噂もささやかれる中、
今度は政府が無認可の自警団に認可を与えたいと言い出したのです。
信用ならないと拒むミレレスに対し、幹部の数名は政府に賛同。
実はこれこそ、腐った政府による懐柔作戦。自警団は骨抜きになっていきます。
これがフィクションじゃなく、ドキュメンタリーというところがすごい…。
性善説と性悪説の議論にも発展しそうなメキシコの現実。
ホセ・ミレレスは町医者とはいえ、やはりメキシコでは裕福なほう。
一方の絶望的貧困層にとっては、巨大な組織の傘の下で、
麻薬の製造や売買にかかわることが、唯一の生きる術だったりもするのです。
この映画では、メキシコと国境を接するアリゾナ州のアルター・バレーで、
アメリカの退役軍人が不法難民や麻薬の流入を阻止しようと作った、
別の自警団の活動も追っています。
改めて日本は平和でいい国だなぁと。
この映画を見ると日本に生まれたことに感謝すると思いますョ。☆3つ。
「カルテル・ランド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.4.30

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』☆☆☆
『ノーマ、世界を変える料理』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先日、劇場で映画を見た時のこと。
ご存知のように、上映前に、マナー啓蒙のミニ・ムービーが流れます。
それを見ながら、ふと思ったんですね。
「マスコミ試写会のほうが、絶対にマナーが悪いぞ」と。
携帯の画面を見る、前の座席を蹴る、でかい声であくびをする…。
マスコミの試写でこそ、あのマナー注意の映像を流して欲しいものです。
さ、今週は2本です!



『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は、マーベル・スタジオ最新作。

世界中の危機を救ってきた“アベンジャーズ”のメンバーたち。
しかし、その陰には一般市民が巻き添えになり、死傷しているという事実もありました。
そこで、“アベンジャーズ”を国連の管理下に置こうという案が出され、
メンバーの中でも意見がぶつかり合います。
それについて、アイアンマンとキャプテン・アメリカの対立は激しさを増す一方。
そんな時、ウィーンでテロが発生し、アフリカの小国ながら、理想の国づくりを掲げ、
国民に絶大なる人気を誇った、ワカンダの国王が犠牲となってしまいます。
容疑者として指名手配されたのは、キャプテン・アメリカの無二の親友、
ウィンター・ソルジャーでした。
「確かに洗脳されていた時期もあった。しかし彼は、絶対に犯人じゃない」。
友の無実を信じるキャプテン・アメリカとアイアンマンとの間で、
それぞれの仲間を巻き込んでの“禁断の戦い(シビル・ウォー)”が始まったのです…。

ボクらの世代で言えば、ウルトラマンvsウルトラセブンとか、
仮面ライダー1号vs2号とか、そんな感じでしょうか。
TVのコマーシャルなどでは、サプライズキャラも明らかになっちゃってますが、
チラシでは内緒みたい。ま、一応、“蜘蛛隠れ”ってことで(笑)、隠しておきましょう。
どのキャラがどっちにつくかは、見てのお楽しみです。
ただ、この映画が言いたいのは、テロ撲滅のために西洋諸国がアラブの国を空爆してるけど、
そこには何の罪もない一般市民が巻き込まれ、犠牲になってるんだということ。
この映画では、その犠牲者の遺族が力で大国に挑もうとも、
それは無理だとわかっている。
だから策略を練って、内部で衝突を起こさせようと。
暴力の連鎖、復讐の連鎖は、誰かがどこかで止めないといけない。
また、過剰に大きくなった力は、脅威にもなる。
それぞれが何かの例えとして描かれてます。
エンターテイメントとしての笑いもあるし、何より豪華オールスター戦!
難しいことを抜きにしても、わかりやすい映画だと思いますョ。☆3つ。
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」公式サイト



『ノーマ、世界を変える料理』は、
デンマークの人気レストラン“ノーマ”のドキュメンタリー。

デンマークのコペンハーゲンにあるレストラン「ノーマ」。
オーナーシェフのレネ・レゼピは、25歳の時に「ノーマ」を創業。
コンセプトは、北欧産の食材だけを使った“北欧料理”。
実はこれまでに存在しなかったジャンルの料理に挑んだのです。
初めは鼻で笑われた船出でしたが、レネの創造性と巧みの技は、
世界中のグルメたちの舌を唸らせ、
イギリスのレストラン誌が選ぶ“世界ベストレストラン50”で1位に4度も輝く、
名実共に世界一のレストランになったのです。
しかし、“好事魔多し”。2013年のことでした。
ノロウィルスによる食中毒が起こってしまうんですね。
頂点からどん底へ。果たして、「ノーマ」は再び輝きを取り戻せるのか?
その栄光と苦難の5年間を追ったドキュメンタリーです。
1月末に公開となった映画『99分、世界美味めぐり』にも登場するかなと思いましたが、
取り上げられることはなく。もしかすると取材を断った?
それぐらい、このレネ・レゼピという若きオーナーシェフは料理に真摯で、かつ厳しい人。
その裏にある生い立ちや、様々なものが影響を与えてるんだなとわかります。
お皿の上の芸術を眺めつつ、単なるグルメ作品に終わっていないところに、
深みを感じる映画です。☆3つ。
「ノーマ、世界を変える料理」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.4.22

『ズートピア』☆☆☆
『花、香る歌』☆☆☆☆
『レヴェナント:蘇りし者』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


春眠、暁を覚えず。
お陰さまで毎日忙しく、ついつい試写を後回しにし、
睡眠を優先させてしまう今日この頃…。
いけません。でも、眠いんです(笑)。
さ、今週は3本です!



『ズートピア』は、ディズニー・アニメの最新作。

田舎のニンジン農家に生まれ育った、ウサギの女の子、ジュディ。
彼女には夢がありました。
それは、“動物の楽園”ズートピアに行って、警察官になること。
しかし、警察官になる動物は、サイやカバなどのタフな動物だけ。
両親からも反対されてしまいます。
それでもジュディは頑張って、警察学校を首席で卒業。
史上初のウサギの警察官としてズートピアに配属されるんですね。
ところが、与えられた任務は駐車違反の取締り。
人のために働きたいと張り切っていたジュディにとっては、ガッカリな仕事でした。
取締りの最中に、困っていたキツネの親子を助けるのですが、
これがなんと詐欺師!ジュディの心は打ち砕かれてしまいます。
その頃、ズートピアでは動物の失踪事件が続発。
手が足りないことから、期限付きで捜査に加わったジュディは、
ここぞとばかりに張り切るのですが…。

ズートピアの住人は、性別も、年齢も、学歴も、出身地も、見た目も違うと。
実は人間社会と一緒なんだと、監督からのメッセージ
そして、「もしその“違い”を個性として認め合うことが出来たら、
私たちの人生はもっと豊かになるでしょう」と。
確かに、人種、宗教、思想と、我々は様々ですからね。
それにしても、理想郷であるズートピアにも警察がある。
つまり、人間(動物?)在るところ、犯罪は起きるってこと。
これもまた真理なのでしょう。
ジュディは善と悪に翻弄されながら、頑張って生きていきます。
でも、それが人生の経験値なんだな。“駄作を知って、名作を知る”です。
チビっちょいキャラクターたちは、相変わらずメチャメチャ可愛いですョ。☆3つ。
「ズートピア」公式サイト



『花、香る歌』は、韓国映画。

19世紀後半の朝鮮時代末期。
女手ひとつで育ててもらった幼いチェソンでしたが、その母を亡くし、
チェソンは妃楼に預けられます。
チェソンが暮らす村にやってきた、パンソリの一団が唄う“沈清歌”に心打たれ、
号泣してしまうチェソンに、パンソリの大家であるジェヒョが近づき、
「涙のあとは笑顔になれる。それがパンソリだ」と言って頭を撫でてくれたのです。
その時、チェソンはパンソリの唄い手になろうと心に決めたのでした。
ところが、女性がパンソリを唄うことは固く禁じられていた時代。
それでも、何度も何度も門を叩いては断られ、
挙げ句の果てには男装までして、
なんとかジェヒョのもとで修行を受けられるようになります。
しかし、禁を破ったふたりに待っていたのは、過酷な選択だったのです…。

パンソリとは、韓国の伝統芸能で、唄者が鼓手の伴奏に合わせ、
唄と言葉と身振りで物語を唄い上げるもの。
実在の人物たちの物語だそうです。
物事には必ず先達がいて、厳しく辛い努力と苦労で、後人に道を拓いてきた。
この映画もそんな大切なことを、改めて教えてくれる1本です。
日本でも女性の男性部門への進出が言われる昨今。
“お隣り”韓国の映画が、その覚悟と歴史を指し示してくれると思いますよ。☆4つ。
「花、香る歌」公式サイト



『レヴェナント:蘇りし者』は、レオナルド・ディカプリオ主演作。

19世紀初頭、開拓時代のアメリカ西部。
ハンターのヒュー・グラスは、息子のホークと共に、
ミズーリ川沿いを進む白人隊のガイド役を務めていました。
ところが、娘をさらった白人を探している先住民のアリカラ族に襲われ、
ルートの変更を余儀なくされます。
その案に不満なのが、ジョン・フィッツジェラルドという男。
彼は、先住民族であるポーニー族との間に子供を作ったグラスを忌み嫌っていたのです。
それでも隊長はグラスの意見を尊重。船を使わず、山沿いを歩くルートを選ぶのですが、
途中でグラスが熊に襲われ、重傷を負ってしまうんですね。
まず助からないだろうと思われたグラスを置いて、隊長は息子のホークと、
ふたりを慕うブリジャーと、
自ら志願したフィッツジェラルドにグラスの最期を看取れと命じ、先を急ぎます。
ところが、グラスの生命力は強く、なかなか息を引き取りません。
しびれを切らしたフィッツジェラルドは、自らの手でグラスを殺そうとするのですが、
それを目撃したのがホーク。フィッツジェラルドはホークを殺してしまいます。
身動きが取れず、息子の死を、現場から逃げ去るフィッツジェラルドの姿を、
ただ見つめることしか出来なかったグラス。
身体が癒え、なんとか動けるようになったグラスの、過酷な復讐の旅が始まったのです…。

ヒュー・グラスは、開拓時代の伝説。実在の人物だそうです。
グラスを演じたレオナルド・ディカプリオに、
アカデミーは遂に主演男優賞をあげたと話題になりましたよね。
他にも、監督賞と撮影賞を穫りましたが、ストーリーよりも、
とにかく過酷なサバイバルの様子に息を飲み続ける。そんな映画です。
ディカプリオに、これで主演男優賞がいかなかったら、
アカデミーはディカプリオが大嫌いでしょというぐらい、
ある意味“ドM”な作品。
2時間37分、お腹いっぱいになります(笑)。
見ればわかります。お祝いに、☆を1つ増やして、☆4つ。
「レヴェナント:蘇りし者」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.4.16

『オマールの壁』☆☆☆☆
『グランドフィナーレ』☆☆☆☆
『ハロルドが笑う その日まで』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


春休みからGW。アニメ映画が多くなる季節です。
アニメも“食わず嫌い”じゃなく、チャレンジしてみてはいかがですか?
子供向け主人公の映画でも、大人がポロポロ涙を流している…
なんてことも多いようですョ。
さ、今週は3本です!



『オマールの壁』は、パレスチナ映画。

ヨルダン川西岸地区。
パレスチナとイスラエルを分断する“分離壁”が、果てしなく続くパレスチナの町に、
青年オマールは暮らしていました。
イスラエル軍の監視の下、時に発砲を受けながらも、壁を越え、
幼なじみで親友のタレクとアムジャドに会いにいくオマール。
3人はある武装組織から銃を入手し、イスラエル軍を襲撃する計画を立てていたのです。
それとは別に、オマールには目的がありました。
それは、タレクの妹ナディアと会うこと。ふたりは密かに恋人関係にありました。
ある日のこと、オマールがイスラエル兵から暴行を受け、
その報復もあって、軍の襲撃を決行します。
その数日後、3人はイスラエルの秘密警察に捕らえられてしまうんですね。
絶対に口を割らないオマールでしたが、巧妙な罠にハマり、
ナディアの名も出され、スパイになるよう脅かされてしまいます。
そこからです。幼なじみ3人の関係に亀裂が入り出したのは…。

中東パレスチナ問題は、解決の糸口すら見えずに一進一退。
そんな中で生きる若者たちの、リアルな青春群像です。
2014年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品。
“運命のいたずら”なんて言葉がありますが、いたずらのレベルが違う。
自分が生きていくのに精一杯の環境で、他人を思いやるのがどんなに大変か。
恋愛ひとつとっても、こんなにも難しいのかと、
平和な日本に暮らせる幸せを感じずにはいられなくなります。
オマールの純粋さ、誠実さ、まっすぐな生き様は、
そんな過酷な環境の中だからこそ光ります。
若干、人間関係がわかりづらい部分もあるかも。ご覧になる際には、
パレスチナ問題や、彼らの宗教観を下知識としていれるためにも、
パンフレットを買うことをお勧めします。
見終わってストーリーを確認すれば、「なるほど…」と思うはずです。☆4つ。
「オマールの壁」公式サイト



『グランドフィナーレ』は、イタリアの名匠、パオロ・ソレンティーノ監督最新作。

スイス、アルプスの高級リゾートホテル。世界中のセレブたちが集うこのホテルで、
のんびりバカンスを堪能しているフレッド・バリンジャー。
指揮者として大成功を収め、富も名声も手にした80歳の老人です。
そんなフレッドのもとに、イギリス女王陛下の伝令がやってきて、
勲章の授与と共に、陛下の誕生日に、
不朽の名曲「シンプル・ソング」の指揮を依頼されるんですね。
ところが、フレッドは即座に断ります。
「あの曲は、もう指揮しない」。
フレッドの心は頑なでした。
役作りに悩む人気俳優、フレッドの親友でもある映画監督、
さらにはフレッドの娘など、様々な人生を抱える人々がフレッドの余生に関わります。
そこで、フレッドはある決意をするのですが…。

あらすじを書きながら、「おそらく伝わってないな」と(笑)。
この高級リゾートホテルが、単なる老人のためのケアハウスではなく、
現在進行形で生きる人も、未来に向かう子供の存在もあって、
そんな中に人生のフィナーレを迎えようかというフレッドのような人物もいると。
“21世紀の映像の魔術師”と呼ばれたパオロ・ソレンティーノ監督の映像は、
確かに美しく、それだけで引き込まれていくのですが、
時に人間がベルトコンベアーに乗せられた、
無機質な“物”であるかのように描かれたりもする。
それすら美しいのですが、生気に満ちた人と、脱け殻のような人間との対比のようにも思え。
それは年齢に関係なく、です。
フレッドは、まだどっちにも振れることができる、80歳の老人。
でも彼はある出来事から一方を選択するのです。
見応えのある作品だったと思います。
大きなスクリーンでご覧になることをお勧めします。☆4つ。
「グランドフィナーレ」公式サイト



『ハロルドが笑う その日まで』は、ノルウェー映画。

ノルウェーの小さな街で、40年以上に渡り、
妻とふたりで小さな家具店を営んできたハロルド。
その家具は、何世代にも渡って使える“伝統”に誇りがあった。
ところが、目の前に“壊れた頃にはまた新しい家具が出る”
がモットーの量販家具店、IKEAが建つんですね。
客はみんなそっちに流れ、ハロルドの家具店は閑古鳥が鳴くように。
そうして閉店を余儀なくされてしまうのです。
それが原因か、痴呆が進んだ妻を施設に入れたハロルドは、
ある大胆な行動を決意し、自らの店に火を放ちます。
それの計画とは、
IKEAの創業者イングヴァル・カンプラードを誘拐することだったのです…。

サスペンスではない、コメディタッチの誘拐映画。
大企業の創業者が実名で出てくるところに話題性もあるようです。
あ、もちろん、本人役は役者さんが務めてますが。
道中の様々な出会いが、ストーリーの味付けになっていますが、
確かにどこの国でも今はこんな感じかなと。
職人の業より、廉価な大量生産の時代なのかも。
お国柄は違えど、ボクらにもリアルに響く部分はあると思いますョ。☆3つ。
「ハロルドが笑う その日まで」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.4.8

『更年奇的な彼女』☆☆
『孤独のススメ』☆☆
『さざなみ』☆☆☆
『シェーン』☆☆☆
『モヒカン故郷に帰る』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


風邪やらウイルス性の胃腸炎、さらにインフルエンザなどが流行っていて、
試写会場のようなクローズドの空間はちょっと心配。
映画館に足を運ぶのにも、マスクはして行った方がいいかもしれませんね。あなたも気をつけて!
さ、今週は5本です!



『更年奇的な彼女』は、『猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン監督の、
“彼女シリーズ3部作”の完結編。

大学の卒業式。
チー・ジアは大好きな彼に、ウェディングドレス姿でプロポーズをします。
学内も認めるお似合いのカップル。もちろん答えは“YES”だと思っていたら、
彼の口から出たのは意外な言葉でした。
「ボクはまだ結婚するつもりはない」。
チー・ジアは失意のどん底に突き落とされ、26歳になった時、
“若年性更年期”と診断されてしまいます。
卒業後は、親友のリン・シューアルと一緒に暮らしていたチー・ジアでしたが、
ある日のこと、家の前でホームレスに絡まれてしまいます。
それを助けてくれたのが、大学時代に最も冴えない男と言われていたユアン。
ユアンはずーっと、チー・ジアに思いを寄せていたのです。
それがきっかけで、女2人と男1人の奇妙な共同生活が始まったのです…。

韓国のチョン・ジヒョン主演『猟奇的な彼女』、
日本の綾瀬はるか主演『僕の彼女はサイボーグ』
に続く、中国のジョウ・シュン主演の映画が『更年奇的な彼女』。
クァク・ジェヨン監督の彼女シリーズは、
これで韓国、日本、中国と、アジアの3部作となりました。
『猟奇的な彼女』もそうでしたが、主役の女性がぶっ飛んでるのは今作も一緒。
そのぶっ飛び方や、破天荒なヒロイン像に、ボクは正直引いてしまいましたが、
同じ試写に来ていた知り合いのラジオのディレクター氏は、
「こういうラブ・コメは最近少ないし、あちこちに仕掛けがあって。
フリが好きな監督なんだなって、ボクは面白かったですョ」と言ってました。
お褒めのコメントはそちらに任せます(笑)。☆2つ。
「更年奇的な彼女」公式サイト



『孤独のススメ』は、オランダ映画。

オランダの田園地帯に住む、初老の男性フレッド。
ここはプロテスタントの教会を中心とした規律正しい厳粛な村。
フレッドの生活も同様にきっちり、かっちりとしたもので、
亡くなった妻と疎遠になった息子を思いながら、定時に起き、定時に食事をし、
決まった音楽を流し、祈りを捧げる。そんな毎日を過ごしていたのです。
ところが、ある日のこと、フレッドの前に、無精ひげの見知らぬ男が現れます。
以前にも金を貸して返さなかった男です。
罰として命じた庭掃除を頑張る姿を見て、フレッドは夕食をごちそうするのですが、
ナイフもフォークも使えない。
「一から教えなくては」。
フレッドは男を家に泊めることにしたのです…。

人と交わることのなかったフレッドに、
同性の変なおじさんとはいえ、同居人が出来たと。
こんな村ですから、当然、風当たりも強ければ、変な噂も流れます。
ところが、フレッドを非難する隣人もまた、寂しかったりするんですよねぇ。
退屈というとちょっと表現は違うけど、村民にとっては大きな出来事も、
ボクらにとってはあんまり大した話じゃなく(笑)。
シチュエーション的には国民性の違いが出るかなぁ。
幸せってなんだろうと、映画を見ている脳と、また違う脳で考えるような、
そんな映画かもしれません。☆2つ。
「孤独のススメ」公式サイト



『さざなみ』は、本年度アカデミー賞主演女優賞ノミネート作品。

イギリスの小さな地方の町に暮らす、結婚45年目の夫婦、ジェフとケイト。
子供がいない代わりに、毎日同じように過ごす生活が夫婦の幸せで。
朝の犬との散歩、ケイトの料理と一杯のワイン、
ケイトはジェフの細かいクセやこだわりも知っていて、
そのルーティーンこそが幸せだったのです。
ふたりは仲のいい友人たちを招いて、結婚45周年のパーティーを企画しており、
ケイトはそれを一番の楽しみにしていたのです。
そんなある日のこと、ジェフに1通の手紙が届きます。
50年以上前に付き合っていた恋人、カチャの遺体が雪山で見つかったという報せです。
カチャは山のクレパスに落ち、行方不明だったのが、温暖化で雪が溶け、
当時のままの姿で発見されたというのです。
「ぼくのカチャ」。ジェフの心はあの頃に戻ってしまったかのよう。
ケイトの心に、小さなさざ波が立つのでした…。

主演のシャーロット・ランブリングが、
本作で今年度のアカデミー賞の主演女優賞にノミネート。
この結婚のためにと犠牲にしたものも多く、
ささやかな幸せを幸せと思い込もうとしていたのに、
ケイトはジェフに届いた1通の手紙と、ジェフの昔を懐かしむ姿に失望していくんですね。
それは45年の夫婦生活を、すべて否定するほどの失望感。
夫は感じていないんですよ。それほど重要なことだとは。
そうしたズレって、実際にボクらの結婚生活にも存在しますよねっ。
これがいわゆる男と女の価値観の違い。いかんともし難い…(笑)。
でも、45年を自分で否定しちゃったら、もったいないと思うんですよ。
だってもう戻らないんだもの。
あ、これがオス的思考なのかな(笑)。しまった…。
熟年夫婦にとっては、いい教科書になるかもしれませんョ。☆3つ。
「さざなみ」公式サイト



『シェーン』は、あの不朽の名作のデジタルリマスター版。

アメリカの南北戦争終結後の、西部開拓時代。
美しい妻マリアンと息子のジョーイと暮らす開拓民のリーダー、ジョーは、
土着の悪徳牧場主のライカーとのトラブルに頭を悩ましていました。
そんな時、ふらっと現れた1人の流れ者が、
ライカーたちの嫌がらせから家族を守るのに力を貸してくれた。
そのお礼にと、家に泊まらせることにするんですね。
彼の名はシェーン。物腰は柔らかく、銃の腕の立つ、隙のない男。
ジョーはもちろん、ジョーイとも仲良くなったシェーンでしたが、
ライカーたちが黙って見ているはずがありません。
ついに仲間を殺されたジョーと開拓民たち。
ライカーと決着をつける時がやってきたのです…。

1953年の大ヒット映画。
公開60周年を記念して、3年前にブルーレイにはなったようですが、劇場版としては初めて。
当時も、ヒーローは“滅私”なんですよね。誰かのために命を張る。
アメリカの理想のヒーロー像はそうだったのに、権利ばかりを主張し、
自由の意味を履き違えて。どこで曲がってしまったのでしょう。
またこういう映画で軌道修正できればいいのに。なんて思ってしまいました。☆3つ。
「シェーン」公式サイト



『モヒカン故郷に帰る』は、コメディタッチに描いた家族再生の物語。

東京で売れないバンドマンをやっている永吉が、
妊娠中の恋人の由佳との結婚を報告しようと、瀬戸内海の島、戸鼻島に帰ります。
酒店を営む父、治は、7年振りの長男の帰省がうれしいのに、素直に喜べず。
それでも島のみんなを集めて大宴会を催したのです。
ところが、治がその途中に倒れてしまうんですね。
病院に連れて行き、検査の結果が末期がん。
「いいからもう東京に帰れ」という治の言葉に、素直に船に乗る永吉と由佳。
ひとり家で夕食をとっていた母、春子でしたが、「ただいま」の声にビックリ!
永吉と由佳は観光船に乗って、あたりをぐるっと回ってきただけだったのです。
最期は自宅でという父の願いを尊重し、治が家に帰ってきます。
さぁ、家族の再生が始まります…。

永吉の頭がモヒカンで、父・治は矢沢永吉命。
母・春子は大のカープファン。実はもうひとり、弟の浩二もいます。
治は地元の中学校の吹奏楽部で指揮をとっていて、課題曲は「アイ・ラヴ・ユー,OK」。
そう矢沢永吉の代表曲です。
この曲が、ぎこちない中学生の演奏が、意外といい味付けになってます。
松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ等々、個性派の役者陣がスクリーンを飾ります。
ちょっとだけ、親孝行したくなるかも?☆3つ。
「モヒカン故郷に帰る」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.4.1

『見えない目撃者』☆☆
『蜜のあわれ』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


『見えない目撃者』は、中国と韓国の合作映画。

音楽に没頭する弟に音楽を辞めさせようと、警察官候補生だった姉のシャオシンは、
弟をライブハウスのステージから連れ去ります。
車に乗せられた弟は、激しく抵抗。そのせいで車は事故を起こし、弟は死亡。
シャオシンは視力を失ってしまいます。
あれから3年。雨の夜に、シャオシンが乗ったタクシーが、何かにぶつかったのですが、
運転手は「犬をはねただけ」と主張。
感覚の鋭いシャオシンは、はねたのは人だと確信。
運転手は被害者をトランクに乗せ、現場から逃走したことに気付いていたのです。
警察に行って事件を知らせても、目の不自由な彼女の証言を、最初は相手にしてくれませんでした。
ところが、シャオシンの鋭い観察力を知ることとなり、逆に捜査への協力を依頼されるんですね。
しかし、これが、最近頻発している女子大生連続失踪事件に繋がっているとは、
まだ誰も知らなかったのです…。

韓国の映画監督、アン・サンフン監督の、2011年作品『ブラインド』を、
自らがバージョンアップさせた中国版。
中国では興行収入43億円の大ヒット作となったそうです。
ボクはその『ブラインド』を見ていないので比較対称は出来ませんが、
タイトルの通り、着眼点は面白いなと。
はじめのサスペンスの部分ではぐんぐん引き込まれていったのですが、
なんだか途中から「ん?」って感じ。
映画が別物に変わってしまった感じがしちゃったんですよね。そこが残念…。
裏を返せば、韓国で大ヒットした原作の『ブラインド』がすごく気になりました。
見比べてみると面白いかもしれませんョ。☆2つ。
「見えない目撃者」公式サイト



『蜜のあわれ』は、室生犀星、1959年の幻想小説の映画化。

和装の老作家と、人の姿に変われる金魚の赤井赤子。
赤子の妖艶で奔放な性格に魅せられている老作家 は、
赤子とのやり取りが生きる糧にもなっているよう。
ある日のこと、老作家の講演にじーっと聞き入る、儚げな女性がひとり。
手には老作家の署名入りの水筒が。
赤子が気になって聞いてみると、その女性は老作家への恋慕から蘇った、幽霊だったのです…。

金魚と、幽霊と、室生犀星自身を投影したと言われる老作家との“三角関係”。
映像化は不可能とされてきた幻想小説を、見事にスクリーンに描き出した、秀作だと思います。
金魚に二階堂ふみ、老作家に大杉漣、幽霊に真木よう子。
金魚の赤子が自分を「あたい」と呼び、老作家は作家然とした物言いをし。
エロスの中にも、大正レトロの時代感覚があり、
個性的でかつポピュラリティも併せ持つという、実に興味深い1本です。☆4つ。
「蜜のあわれ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.3.25

『スイートハート・チョコレート』☆☆☆☆
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先々週お話しした、ボクの中高の同級生、
篠原哲雄監督の『スイートハート・チョコレート』が、いよいよ公開となります。
作品の公式HPを探したら存在せず、フェイスブックでPRをしているんですね。
今風だ(笑)。
どうぞ、応援してあげて下さいね!
さ、今週は2本です!



『スイートハート・チョコレート』は、篠原哲雄監督による日中合作映画。

上海から、真冬の北海道・夕張にやって来た、留学生のリンユエ。
ひょんなことからレスキュー隊員の守と出会います。
若いふたりは恋に落ちるのですが、守が急に亡くなってしまうんですね。
上海に帰ったリンユエは、守の遺志だったチョコレートのお店を開きます。
食べた人が幸せになるというリンユエのチョコレートでしたが、
彼女自身は守のことが忘れられず、幸せとは言えない毎日を過ごしていたのです。
そんな中、リンユエと一緒に上海に渡り、親友として彼女を見守っていた男性がひとり。
守の兄貴分だった総一郎です。
実は彼も、密かにリンユエに恋心を抱いていたのです…。

ボクがこの映画を見たのは、2012年秋の東京国際映画祭。3年半前です。
すこーし記憶が薄れてるかも(笑)。多少、編集を変えたところもあるそうです。
公開になったらまた見にいかなくちゃ。
日本と中国、亡くなった後輩の彼女に思いを寄せてしまう…。
国境を越えた男女3人の、10年愛の物語です。
篠原哲雄作品には、食べ物が効果的に使われるものが多く、今回はチョコレート。
甘く、そしてホロ苦く。
主演はリン・チーリン。久石譲さんの音楽も素敵ですョ。
まずはシネ・リーブル池袋で3月26日(土)から。
是非、ご覧になってみて下さい!☆4つ。
「スイートハート・チョコレート」公式サイト



『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』は、
謎のストリート・アーティストのドキュメンタリー映画。

正体不明、世界各地でゲリラ的に作品を描くことで知られる謎の芸術家、バンクシー。
壁、路上、建物の扉など、どこであろうともキャンバスにしてしまうバンクシーが仕掛けた、
ニューヨークでの展示。
その方法は、毎日1点、ニューヨークのどこかに作品を残すというもの。
バンクシー・マニアは、それを探してニューヨーク中を駆け巡ります。
いわば、ニューヨークを舞台にした“宝探し”。
インターネットと連動して、街中が大騒ぎになったのです。
そんな1ヶ月を追ったドキュメンタリー。バンクシーを知らない人も多いと思います。
正直、ボクもそんなひとりでした(笑)。
遊び心?それとも社会的メッセージ?作品自体にも、その方法論にも、
オリジナリティが溢れていますよね。
人々を熱中させる何かを感じてみて下さい。☆3つ。
「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.3.10

『アーロと少年』☆☆☆☆
『エスコバル/楽園の掟』☆☆☆
『人生は小説よりも奇なり』☆☆
『母よ、』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


ボクと中高同級生の映画監督、篠原哲雄監督の2013年の作品
『スイートハート・チョコレート』が念願の日本公開に!
まずは3月26日(土)、シネリーブル池袋から。
日中合作だったのですが、両国関係がギクシャクして「お蔵入り?」という時に、
『お蔵出し映画祭』なるものがあるんですね。
そこでグランプリに輝いたのがきっかけとなり、公開に至ったとありました。
負けちゃいないけど(笑)、“敗者復活”。大切な映画祭だなと。
作品は、また公開週にご紹介しましょう!
さ、今週は4本です!



『アーロと少年』は、ディズニー/ピクサーの最新アニメ。

恐竜たちが闊歩していた太古の地球。
草食恐竜は畑を耕し、農作物を作って暮らしていました。
山の麓に住む、草食恐竜の夫婦に子どもが生まれます。
卵から一番最後に出てきたのが、ちっちゃくて臆病なアーロでした。
時が経ち、すくすくと育つ子どもたちでしたが、アーロだけはどうにも気が小さい。
訓練のため、お父さんはアーロを山に連れて行くのですが、突然の嵐で、
なんとお父さんはアーロをかばって濁流に飲み込まれてしまうんですね。

悲しみに暮れながらも、お母さんを助けようと必死で頑張るアーロたち。
そんなアーロの前にひょっこり現れたのが、以前食糧を盗みに来て、
アーロが見逃してあげた人間の子でした。
アーロは少年を追いかけ、一緒に川に流されてしまいます。
気付いた時、ふたりは見知らぬ土地に。
何もできないアーロに救いの手を差し伸べてくれたのはその人間の少年でした。
彼もまた、家族を失っていたのです…。

ストーリーに目新しさは感じませんが、とにかく登場するキャラクターが可愛い…。
いつも以上に丸っこいんです(笑)。
初めてできた友達との出逢いと別れ。例えてみれば、夏休みに田舎でできた友達と、
新学期が始まるからとサヨナラしなくちゃならない、あのキュンとしたせつなさ…。
ピクサーのスタジオ設立30周年、
あの『トイ・ストーリー』から20年という記念すべきCGアニメです。
その進化にも注目しつつ、童心に帰って、大人も十分感動できる1本だと思いますョ。
☆4つ。
「アーロと少年」公式サイト



『エスコバル/楽園の掟』は、実在のコロンビアの麻薬王、
パブロ・エスコバルを描いた映画。

カナダから兄弟でコロンビアに渡った、サーファーのニック。
青い海と白い砂浜に小躍りしていると、地元のギャングに脅かされてしまいます。
気丈に放っておいたのですが、遂には街で暴行を受けるハメに。
同じ頃、ニックは地元の美しい女性マリアと恋に落ち、
彼女が敬愛するという叔父さんを紹介されます。
彼こそがパブロ・エスコバル。
議員でもあり、貧しい地元に病院や学校を建て、周りから尊敬される人物でした。
しかし、彼には裏の顔があったのです。それは、残忍な麻薬カルテルのボスとしての顔。
ニックを襲ったギャングたちは、見るも無惨な姿で殺されてしまったのです。
エスコバルはニックを家族のように受け入れてくれました。
しかし、それこそが地獄の始まりだったのです…。

怖いです。これが実話に基づくというから怖い。
某元野球選手の薬物事件でもそうですが、結局は脅されて、金を巻き上げられ、
体だけじゃなく、人生のすべてを失うハメに。
骨の髄までしゃぶられるから“シャブ”って言うんだと、昔聞いたことがあります。
自分は特別だなんて思って近づくと、人生がとんでもないことに。
“君子危うきに近寄らず”。この映画のニックはあまりに不運でしたが、
甘い話には裏があることを、肝に銘じておきたいものです。
これはもうホラーです。☆3つ。
「エスコバル/楽園の掟」公式サイト



『人生は小説よりも奇なり』は、同性愛カップルの物語。

NYマンハッタンに暮らす、70歳を過ぎた画家のベンと、50代半ばの音楽家のジョージ。 ふたりはゲイのカップル。機も熟したと、交際39年目で結婚に踏み切ります。
仲間のみんなに祝福されての結婚。ところが、世間はそうはいかなかったのです。
ジョージは仕事にしていた音楽教師を、同性愛を理由にクビになってしまいます。
収入が激減し、今の住まいを売らざるを得ない。
一緒に暮らせないどころか、どこかに居候するしかない。
ベンは甥の家に、ジョージはゲイの友達のところで別々に生活を始めます。
転がり込んだ先にはそれぞれの生活スタイルや事情がある。
どうにも打ち解けられないベンとジョージ。
熟年ゲイ・カップルの仲はどうなってしまうのでしょうか…。

決して偏見はないし、同性愛の友達もいるんですが、
ごめんなさい、どうにも感情移入ができなくて。
ボクの映画の見方が、入り込めないと作品自体を高く評価できない見方なんですよね。
このへんが映画評論家とは違う、ただの映画好きなのかなぁ。
評論家さんだと、もっと細に入り、評価するのでしょうね。
日本でも、最近注目されつつあるテーマでもあります。
幸せと苦悩を学ぶにはいいかもしれません。☆2つ。
「人生は小説よりも奇なり」公式サイト



『母よ、』は、家族の絆を描いた映画。

女流映画監督のマルゲリータ。
社会派のお堅い映画を得意とする彼女は、新作を撮影中。
ところが、これがトラブル続き。
別れた夫との間にもうけたひとり娘は反抗期だし、何より、
大好きな母が入院してしまったのです。
病状は重く、日に日に悪化する姿をなかなか受け入れられないマルゲリータ。
兄は甲斐甲斐しく母の見舞いに来ているのに、自分は映画の撮影で、
二流のアメリカ人俳優に振りまわされている始末。
そんな時、ついに医師から、母の余命があと僅かだと宣告されてしまったのです…。

身近な身内の死を題材に自分の人生を考える。
イタリアの巨匠、ナンニ・モレッティ監督作品です。
家族の在りようは国民性で違うのかなとも思いますが、根っこは間違いなく一緒。
ただ、マルゲリータの映画監督としての仕事描写がどうなんでしょう、
そんなことあるの?って思っちゃった時に、
入り込んでた感情がちょっと冷めちゃいました。
自国を含め、海外でも高い評価を得ているようですから、
あくまでボクの個人的な感想です。
どうぞ自身の目で確かめてみて下さい。☆2つ。
「母よ、」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.3.4

『オートマタ』☆☆☆
『幸せをつかむ歌』☆☆☆☆
『セーラー服と機関銃―卒業―』☆☆☆
『星が丘ワンダーランド』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今年のアカデミー賞が発表になりました。
主演男優賞はレオナルド・ディカプリオ。5度目のノミネートでの受賞。
作品は試写で見させてもらいましたが、
あれで獲れなければもうディカプリオにこの賞はないなという演技。
なんて言うんでしょう、そこまでやるかってぐらいの汚れ役?
その主演映画『レヴェナント:蘇りしもの』は、公開週にご紹介しますね。
また、外国語映画賞はカンヌのグランプリに続き『サウルの息子』が受賞。
こちらはご紹介済み。気になる方は、1月のバックナンバーをご覧下さい。
さ、今週は4本です!



『オートマタ』は、近未来SFサスペンス。

太陽の異変で地球が砂漠化し、人口が99.7%も減少してしまった2044年。
ハイテク大手のROC社は、人工知能を搭載したオートマタという人型ロボットを開発。
人間が出来なくなった屋外の作業だけでなく、
家事はもちろん、性の処理までも行うようになっていたのです。
そこで、人工知能が人の知能を上回らないように、ふたつの制御機能が付けられていました。
1:生命体への危害の禁止
2:自他のロボットの修正、改造の禁止
ところが、ROC社調査員のヴォーカンの元に届いた知らせは、耳を疑うものでした。
機能異常を起こしたオートマタには、明らかなはずの所有者がおらず、
内部がかなり改造されていたのです。
自分たちで改造した?だとすれば、制御機能2の喪失です。
改良部品の出元が稼動中のオートマタのものだと判明。
そのオートマタを探し当て、近づこうとしたら、
まるで自殺を図ったかのように自らオイルをかぶり、バーナーで火を点けたのです。
明らかに人工知能に変化が起こっている。ヴォーカンは危機感を募らせるのでした…。

車の自動運転に代表されるように、
人工知能がSFの世界だけのものではなくなっている現代。
人工知能が人間の知能を超えるのは、そう難しいことではないと言われます。
でもそうなると、人間にとってよろしくないどころか、
最大の悪は人間だと、人間を滅ぼしに来る。そんな映画は過去にもありましたよね。
この映画はどこに着地するのか、それはここには書きませんが、
この手の映画も着想だけでなく、着地の斬新さ、
それもかなりの斬新さが求められるんだろうなと思います。
でも、近未来の映画なのに、どことなく昭和の匂いがするのは、
調査員のキャラが醸し出す、いい意味での古臭さなのかもしれません。
☆3つ。
「オートマタ」公式サイト



『幸せをつかむ歌』は、メリル・ストリープ主演作。

LAの小さなロックバーで歌うリッキーは、
ハウスバンド“リッキー&ザ・フラッシュ”の紅一点。
一度は結婚し、二男一女を授かったものの、自分の夢のために離婚。
今は離れ離れに暮らしていたのです。
そんなリッキーのもとに、娘のジュリーが離婚して、
かなり落ち込んでいると元夫から電話が入ります。
いまさらどの顔でと躊躇したリッキーでしたが、愛する娘のピンチとあってはと、
娘たちの暮らすインディアナポリスに飛ぶんですね。
最初は冷たくあしらわれたものの、そこは母と娘、次第に打ち解けてはいったのですが、
元夫の再婚相手が戻ると、明らかに自分の居場所がなくなってしまいます。
息子たちとも何か噛み合わない。リッキーは母親失格を改めて痛感させられたのでした。
LAに帰ったリッキーの元に、息子の結婚式の招待状が届きます。
ジュリーの時のように、出席しないほうが彼のため。
それでもリッキーは、勇気を振り絞って、再びインディアナポリスに向かったのです…。

革のジャンバーに長いチェーン、ド派手なメイクと、
場末のロック歌手になってしまった母親を、
久々に会った子どもたちが受け入れられないのも当然で。
それでも自分のスタンスを崩さないリンダ。
自分の真の姿で傷ついた娘に接し、そのままの自分で息子の結婚を祝う。
等身大だからこそ輝く“何か”がそこにはありました。
80年代の洋楽ファン必見なのは、
バンドのメンバーでリックを支えるギタリストのグレッグに、
あのリック・スプリングフィールドが扮していること。
年を重ねてもカッコいいですョ。
それにしてもメリル・ストリープの才能ってすごい!
特訓の成果で、歌はもちろん、ギターも弾けるようになったとか。
天才って、努力の人でもあるんですよねっ。☆4つ。
「幸せをつかむ歌」公式サイト



『セーラー服と機関銃―卒業―』は、角川映画40周年記念作品。

一見、普通の女子高生でしかない星泉。
しかしその実体は、泉の亡き伯父からヤクザの『目高組』を受け継いだ4代目組長。
しかし、敵対する浜口組と、
地元商店街だけには手を出さないとの約束を交わし、目高組は解散。
今は元組員たちと“メダカカフェ”を経営していたのです。
ところが、高校の同級生から
「モデルクラブに騙されて、多くの女子高生が泣いている」と、泉に相談が。
若い衆を使って探りを入れたところ、そこには第三の組織、堀内組の関与が判明。
堀内組は警察や市長選の候補までをも取り込み、
この町のすべてを乗っ取ろうと企んでいたのです。
そうはさせじと、『目高組』の4代目組長・星泉は立ち上がったのです…。

赤川次郎の大ヒットベストセラーを薬師丸ひろ子の主演で映画化したのが1981年。
「カ・イ・カ・ン…」の流行語を生んでから35年。
今度は平成の美少女、橋本環奈を主役に迎えての映画化です。
ひとクセもふたクセもある俳優陣が脇を固め、環奈ちゃんファンのみならず、
楽しめる作品になっています。
ま、娯楽アクションですから、難しいことは言いますまい(笑)。
そういえば、ボクは昔、主題歌「セーラー服と機関銃」の歌詞の中で、
「夢のいた場所に…」を「夢の板挟み…」だとずっと思ってたっけ(笑)。
角川映画、40周年おめでとうございます。☆3つ。
「セーラー服と機関銃―卒業―」公式サイト



『星が丘ワンダーランド』は、世界的CMクリエーターの柳沢翔、初長編監督作品。

星が丘駅の駅員として働く温人。
幼い頃、両親の離婚を経験し、母親から赤い手袋の片方を手渡されます。
「温人が持っていて。いつか必ず取りに行くから」。
そんな母が“星が丘ワンダーランド”という、
まもなく閉鎖が告げられた地元の遊園地で、遺体で発見されるんですね。
母は300万円もの大金を持っていたという。
自殺だとする警察の見解を信じられず、自ら調査を始める中で、
母には新たな家庭があり、二人の姉弟がいることがわかります。
様々な人生が交錯する中で、温人が見つけた母の死の真相とは…。

最近では少なくなったオリジナル脚本。面白かったです。
ミステリーの要素があるけれど、根底に流れるのは“家族の愛”。
さびれた遊園地、温人が扱う小さな駅の忘れ物。
いろんなシチュエーションにノスタルジックなものが散りばめられていて、
ミステリアスなんだけど、温かい。そんな不思議な感覚が魅力の1本です。
CMクリエーターだけに、映像へのこだわりも見どころだと思います。☆4つ。
「星が丘ワンダーランド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.2.26

『偉大なるマルグリット』☆☆☆☆
『女が眠る時』☆☆☆☆
『黒崎くんの言いなりになんてならない』☆☆☆
『ザ・ブリザード』☆☆☆☆
『珍遊記』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先日、1本試写を見終えたところで、案内板が次の上映作品と入れ替わりました。
それが、どうしても見たい1本で。
試写状はなかったのですが、名刺と素姓を明らかにして、見させてもらいました。
ありがたいことです(^^)。
その映画に出演していた女優さんと、実は彼女がまだ駆け出しの頃に仲良しだったんです。
今じゃビッグになってて。ボクも頑張らなきゃって思います。
さ、今週は5本です!



『偉大なるマルグリット』は、実在の人物をモデルにした“愛と情熱の人生オペラ”。

1920年のフランス郊外。マルグリット男爵夫人の邸宅では、
恒例のチャリティー音楽会が開かれていました。
そこに、野心に溢れた若い男性がふたり、新聞記者のボーモンと、
まだ無名の画家のキリルが忍び込みます。
いよいよ主役の登場となり、マルグリットが歌い始めたのですが、
ふたりは「嘘だろ」と吹き出してしまいます。
それもそのはず、マルグリットは絶望的音痴だったのです。
それでも貴族の礼儀だからと、拍手喝采の来客たち。
翌日、ボーモンは半分茶化し、
半分はある意味本音で「心をわし掴みにする声」と新聞に書くんですね。
その記事に気をよくしたマルグリットは、ますます歌への情熱が高まります。
知らぬはマルグリットばかりなり。
著名なオペラ歌手を先生にし、パリでリサイタルを開くと言い出したのですが…。

1944年に76歳でカーネギー・ホールの舞台に立ち、
ものすごく音痴なのに多くの人から愛された
フローレンス・フォスター・ジェンキンスという人物をモデルにした映画。
でも、伝記映画ではなく、あくまでモデルだとのこと。
この人は、お客さんが笑うのは、自分の歌を楽しんでくれているからだと、
信じて疑わなかったそう。ある意味、幸せですよね。
裸の王様は、裸の王様のままなら幸せな訳で。
でも、大抵の人は途中で“裸だったのか”と気付いてしまうのです。
じゃ、マルグリットは?
是非、劇場でご覧になってみて下さい。☆4つ。
「偉大なるマルグリット」公式サイト



『女が眠る時』は、豪華俳優陣による“セクシー・サスペンス”。

作家の清水健二は、妻で編集者の綾と、郊外のリゾートホテルに来ていました。
処女作がヒットしたのに、2作目は振るわず、3作目に至っては、
いまだに手がついてすらいない。
そんな状態ですから、健二は作家を諦め、就職しようと心に決めていたのです。
すると、プールサイドで綾が健二に耳打ちをします。
「ねぇ、向かいのふたり、あれ絶対に父娘じゃないわよね」。
そこにいたのは、初老の男性・佐原と、若く美しい女性・美樹でした。
背中に日焼け止めのクリームを塗りながら、若い身体に触る佐原。
倦怠期の妻には無い魅力に、健二の好奇心が湧き立ちます。
後日、佐原と接触した健二は、ふたりの関係に引き込まれ、
狂気と犯罪の匂いすらする渦の中へと、自らを沈めていくのでした…。

ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、リリー・フランキーなど、
個性の強い役者たちと、香港出身のウェイン・ワン監督がタッグを組んだ1本。
独特の空気感の中で物語は進みます。
何が虚で、何が現実なのか。
ボクも後でストーリーを振り返りながら、つじつまを合わせてみましたが、
それらが繋がった時にニヤリとしてしまう読後感のようなものが良く。
映像では表すことが難しいものを、よく表現したものだなぁと、
おそらくあなたも感じるはず。面白かったですョ。☆4つ。
「女が眠る時」公式サイト



『黒崎くんの言いなりになんてならない』は、人気少女コミックの実写映画化。

冴えない女子高生だった由宇は、親の転勤で、寮のある春美高校に転校。
これを機に、自分を変えようと決意します。
ところが、入寮初日に春美寮の副寮長で“黒悪魔”と呼ばれる同級生の黒崎に、
「お前は俺に絶対服従だ」と言い渡されてしまうんですね。
それを見ていた“白王子”こと白河が、
「ボクが由宇ちゃんの疑似彼氏になってあげる」と宣言。
実は、黒崎と白河は幼なじみの親友同士。白河は全校女子の憧れの的。
一方、黒崎のドSな言動に惹かれる女子も多かったのです。
真逆なイケメンふたりに翻弄されながらも、なんだかふわふわしてる由宇。
そんな時、由宇に初めてできた友だちの芽衣子から、
「黒崎くんが好き」と打ち明けられたのです。
「応援するね」と言った由宇でしたが…。

典型的な10代の学園ラブコメディ。
それぞれに突出したキャラですが、不自然さがまったくなく、
スーッと物語の世界に入っていけました。
“エロキュン・ラブストーリー”とあるように、ドキッとするシーンも。
ただ、ボクが高校時代に読んだ、妹の少女コミックと本質は変わらないんだなと。
そこにちょっと安心したかも(笑)。
オジサン世代も、たまにはこの手の映画に足を運んでみてはいかがです?☆3つ。
「黒崎くんの言いなりになんてならない」公式サイト



『ザ・ブリザード』は、実話を元にしたサバイバル・ムービー。

1952年2月18日未明、マサチューセッツ州を猛烈なブリザードが襲います。
何隻もの船が遭難する中、大型タンカーのペンドルトン号も被害に遭い、船体が真っ二つに。
船長らがいた船首は、海の底に沈んでしまったのです。
アメリカ沿岸警備隊のチャタム支局にペンドルトン号遭難の報が届いたのですが、
この悪天候で救助船を出すのはまさに自殺行為。
さらに悪いことに、出せるのは小型の救命艇しかないと。
それでも若き隊員のバーニーは救出に向かう決意をします。
彼には昔、遭難者を救えなかった苦い経験があったから。
「もう誰も死なせはしない」。
強い意志で、バーニーと仲間たちは荒れ狂う海に出て行ったのです…。

実話です。すごい。
エンドロールに当時の写真や新聞記事が出ます。最後まで、席は立たないようにして下さい。
実は、ペンドルトン号にも、船を熟知したリーダーのシーバードが生き残っていて、
そこに勇気と信念のバーニーが向かう。
定員12名の救命艇に32人の生存者。ふたりの男のリーダーシップが奇跡を生みます。
また、バーニーには知り合ったばかりで、惹かれ合っている初恋の女性ミリアムがいました。
まだ女性が控えめに生きるのをよしとしていた時代、ミリアムの強さが光ります。
見どころはそこにもあるはずです。
ボクは2Dで見ましたが、3Dでの上映。3Dの方が絶対にオススメだと思います。☆4つ。
「ザ・ブリザード」公式サイト



『珍遊記』は、伝説のギャグ漫画の実写映画化。

高尚な僧侶の玄奘。 天竺に向かう旅の途中、たまたま立ち寄った家のじじいとばばあに、
手に負えない不良少年である山田太郎をなんとか更正させて欲しいと頼まれるんですね。
大魔神さながらの山田太郎に、宝珠の力で立ち向かう玄奘。
苦闘の末、なんとか太郎の力を封じ込めるのですが、
なんの因果か、天竺まで一緒に旅をすることに。
さぁ、珍遊記の始まり始まり…。

1990年から週刊少年ジャンプで連載が始まった、漫☆画太郎のコミックの映画化。
単行本は累計400万部とも言われる、大ヒット・コミックです。
ほら、小学生は、う○こやち○こが大好きだから(笑)。
でも、大人はどうかなぁ…。
主演は松山ケンイチと倉科カナ。倉科カナちゃんの僧侶姿がカワイイ(*^_^*)。
ですが、ここはひとつ冷静に。ボクは大人だからね(笑)。☆2つ。
「珍遊記」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.2.19

『クーパー家の晩餐会』☆☆☆
『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』☆☆☆
『Maiko ふたたびの白鳥』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


もう花粉が飛び始めているそうで、花粉症の人は大変な季節がやってきました。
試写室のくしゃみも気になりますが、こればかりは責められません。お大事に!
さ、今週は3本です!



『クーパー家の晩餐会』は、
『I am Sam アイ・アム・サム』のジェシー・ネルソン監督作品。

クーパー家にとってクリスマスイブというのは、年に一度、家族みんなが集まる記念日。
ところが、それぞれが問題を抱えていて、
それぞれがそれをひた隠しにしてパーティーに臨もうとしていたのです。
例えば、家長のサムとシャーロットは、40年も連れ添ったのに離婚を決意していて、
出来の良いシャーロットとよく比較されていた妹のエマは、万引きで捕まり、パトカーの中。
サムとシャーロットの息子のハンクはリストラに合い、
3人の子供たちにクリスマスプレゼントも用意が出来ず、
娘のエレノアは偽の婚約者を連れてくる。実はエレノアには不倫相手がいたのです。
そんな中、祖父のバッキーが倒れて病院に運ばれてしまいます。
クーパー家のクリスマスイブは果たして…。

家族それぞれをオムニバス形式で描いた人生ドラマです。
この映画には、ストーリー以外にも素敵な演出が散りばめられていて、
料理と音楽が素晴らしい。ボクは父子3代で歌うラストシーンが好きかな。
クリスマスシーズンに上映すればいいのにって、ちょっと思っちゃったけど(笑)、
心にポッと灯りが灯るような作品です。☆3つ。
「クーパー家の晩餐会」公式サイト



『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』は、
イギリスの人気TVドラマの映画特別編。

数々の事件を解決してきた、名探偵シャーロック・ホームズと相棒のジョン・ワトソン。
今回の舞台は、1895年の冬のロンドン。
古い花嫁衣装を着た女性を見て、恐れおののく男性がひとり。
それもそのはず。その女性は彼の妻で、その妻は数時間前に自殺していたのですから。
復讐の念と共にベーカーストリートを徘徊する、死んだはずの妻の姿。
シャーロックとジョンのふたりは、奇妙な事件の謎解きに挑むのでした…。

TVシリーズは“現代版シャーロック・ホームズ”。
つまり、インターネットやSNSを駆使して難事件を解決していくのですが、
この特別編では、そんなふたりを逆に19世紀に戻しちゃおうと。
イギリスでは大人気のTVシリーズですから、自国での評判はきっと高いんでしょうね。
知らなくても十分に楽しめますが、
登場人物のキャラや背景がわかっていたほうが楽しめるだろうことは確か。
探偵ものが好きだという人は、期間限定上映のようです。お早めにどうぞ!☆3つ。
「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」公式サイト



『Maiko ふたたびの白鳥』は、世界的プリンシパル、西野麻衣子を追ったドキュメンタリー。

6歳でバレエを始め、15歳の時に親元を離れてロンドンのロイヤルバレエスクールに留学。
19歳でノルウェーの国立バレエ団に入団し、
25歳で東洋人初のプリンシパルに抜擢された西野麻衣子。
その後、7歳年上のニコライと結婚。
キャリアを重ねながらの結婚生活でしたが、お腹の中に新たな生命を宿すことになります。
周りには妊娠したことを知らせず、舞台に立ち続けたのですが、
さすがに隠し通せなくなり、スタッフに妊娠を告げ、出産の準備に入るんですね。
そして無事、元気な男の子を産みます。
すると、迷うことなく、すぐさま現役復帰を宣言する麻衣子。
ブランクが大きく影響するバレエの世界で、彼女が復帰作に選んだのは、
至難の業とされる“32回転”が待つ「白鳥の湖」だったのです。
ノルウェーで、彼女を知らない人はいないと言われるほど有名な西野麻衣子。
実はコテコテの大阪人。
厳しくも深い愛情を注いでくれた母とのやり取りは、まさに関西弁のオンパレード(笑)。
働く女性が子供を出産し、例えば職場に戻る際には、乗り越えるべき壁が立ちはだかるのかも。
でも、彼女の生き様が、頑張れば不可能なことはないんだよというのを教えてくれるかのよう。
女性必見の1本かもしれません。☆3つ。
「Maiko ふたたびの白鳥」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2016.2.10

『ドラゴン・ブレイド』☆☆☆
『火の山のマリア』☆☆☆
『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


風邪が流行ってます。
試写室でお隣りさんがゴホンゴホンと咳をすると、ちょっと困っちゃいます。
狭い室内ですもんね。風邪が移らないか心配で、映画に集中できなくなっちゃいます。
インフルエンザも患者が急増してるとか。
まだまだ寒い日が続きます。健康には気をつけて。
さ、今週は3本です!



『ドラゴン・ブレイド』は、ジャッキー・チェン主演作。

紀元前50年の中国。シルクロードの国境付近では、36もの部族が利権争いをしていて、
地域の治安維持は、フォ・アン隊長率いる西域警備隊の任務でした。
ところが、そのフォ・アンと部下たちが金貨密輸の容疑をかけられてしまいます。
誰かの陰謀で、まったくの濡れ衣だったのですが、部下の命を守るため、
フォ・アンは罰を受け入れ、シルクロードの辺境にある雁門関の砦の修復作業に向かいます。
15日以内に修復が終わらなければ、囚人たちは処刑せよという地方長官からの達しがあり、
なんとしてでも完成させなければと思っていた矢先、
見たことのない軍勢が砦になってきます。
それは、将軍ルシウス率いるローマ帝国軍がだったのです…。

書いたあらすじは、ほんのさわりの部分。
砦にやってきたローマ帝国軍、実は権力争いに巻き込まれ、
命を狙われた幼い後継者を助け、逃亡して来た一派。
ローマ帝国軍の敵対勢力が後を追ってくるのですが、
それはシルクロードの利権をも奪いにも来たと。
フォ・アンはそうはさせじと立ち向かいます。
しかし、ジャッキー・チェンは1954年生まれですから、今年62歳。
アクションも凄い!若い!まさに壮年の星(笑)。
スケールの大きな映画に、刺激をもらいに行って下さい。☆3つ。
「ドラゴン・ブレイド」公式サイト



『火の山のマリア』は、グアテマラ映画。

グアテマラの先住民族であるマヤ人の、17歳の少女マリア。
両親は火山のふもとで農業を営んでいるのですが、作物が多く取れなければ、
農場主に農地から追い出されてしまいます。
思うように作物が実らないマリアの家族は、地主のイグナシオにマリアを嫁がせようと考えます。
ところが、マリアは同じコーヒー農園で働くペペという若者に恋していたんですね。
アメリカに行くと言うペペに、連れて行ってと頼むマリアでしたが、
処女をくれるならと言われて関係を持ち、妊娠してしまうんですね。
そして、ペペはマリアの前から消えてしまいます。
怒り、落胆する両親でしたが、マリアは母に背中を押され、
お腹の子を出産しようと決意するのでした…。

南米メキシコの南に位置するグアテマラ。
人口の約46%がマヤ系の先住民だとか。あのマヤ文明の人々です。
昔からの伝統や習慣を守るという生活を送っているせいもあり、貧困率は80%以上。
16世紀にスペイン人に征服されてから主要な言語となったスペイン語がわからず、
教育や契約などの面で、差別や詐欺にあってきたといいます。
そんな中で、望まない命を宿してしまったマリア。
母はなんとか堕胎させようとしたのですが、ことごとく失敗。
結果、「この子は生きる運命にある」と、母も娘の出産に力を貸すんですね。
自然と人間の生命力の映画です。
ハリウッドものとは違う、ザラッとした感覚が新鮮だと思いますョ。☆3つ。
「火の山のマリア」公式サイト



『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』は、
テレビ東京の人気旅バラエティーの映画化。

太川陽介と蛭子能収のふたりに、マドンナがひとり参加して、
ローカル路線バスだけを乗り継いで、目的地まで行こうという旅バラエティーの映画版。
今回のマドンナは三船美佳。旅の舞台は日本を飛び出し、台湾。
3泊4日で、台北から最南端のガランピ灯台まで。
高速を使わないローカル路線バスのみで、インターネットを使わずにゴールを目指します。
言葉はもちろん通じないし、さらに大型の台風21号が台湾を直撃。その影響でバスが運休に。
果たして3人は期限内に台湾を縦断できるのでしょうか?
先日、台南で地震があり、ビルが倒壊。
映画の公開はどうなるんだろうとちょっと心配してましたが、
興行収入の一部を被災地に寄付するという形で、予定通りの公開となったようです。
3者3様のキャラクターが映画の中でもよく出ていて、
番組のファンならずとも楽しめると思いますョ。☆3つ。
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2016.2.6

『オデッセイ』☆☆☆☆
『ザ・ガンマン』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


1月の試写の本数は16本。まずまずの滑り出し(笑)。
1、2月はイベント等が少ないので、比較的時間が取れます。
できるだけ足を運ばせてもらおうと思ってます。
さ、今週は2本です!



『オデッセイ』は、マット・デイモン主演の近未来サバイバル・ストーリー。

人類による有人火星探査が可能になった近未来。
3度目のミッションには6名のクルーが参加していました。
ところが、猛烈な嵐に襲われ、マークは突風に吹き飛ばされてしまうんですね。
必死の捜索も虚しく、マークの姿は見つかりません。
このままでは全員が命の危険にさらされると、船長は地球に戻ることを決断。
マークは死亡したと発表されます。
ところが、なんとマークは生きていたのです。
なんとか人工居住施設に戻り、どうしたら自分は地球に帰れるかを考えるマーク。
4度目のミッションは4年後。
つまり、この火星で、ひとりぼっちで4年間も生き延びていなければならないのです。
水も、酸素も、食料も、すべて自分で作り出さなくてはならない。
不毛の地、この火星で、です。
絶望的な状況の中、それでもマークは諦めなかったのです…。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』や『グラディエーター』などでおなじみですよね。
2時間22分の大作ですが、まったく長く感じないどころか、自分もNASAの職員になって、
マークの救出劇を固唾を飲んで注視しているかのよう。

原作は、当時無名だった作家のオンライン小説。
それがこんな壮大な映画になるのだから、今らしいと言えば今らしい誕生秘話です。
もし自分がと考えるとゾッとしますが、諦めないことと、仲間の絆とプロ意識と。
どんなに科学が進歩しようと、最後は人なんだというのを再確認できる映画かもしれません。
☆4つ。
「オデッセイ」公式サイト



『ザ・ガンマン』
は、ショーン・ペン主演作。

アフリカのコンゴ共和国。NGOで働くジムの素顔、それは特殊部隊の傭兵でした。
すると、鉱山の利権に絡む大臣暗殺の狙撃犯としての任務を言い渡されます。
実行犯は即刻、国外退去の掟があり、ジムにはアニーという恋人がいたのですが、
何も告げずに突然姿を消さねばならなかったのです。
ジムが音信不通になったことで失意のアニーは、依頼主と傭兵たちとの仲介役で、
実力者のフェリックスと結婚してしまうんですね。
8年後、自らの行為を償うかのように、アフリカの小さな村でNGOとして働いていたジム。
そんなジムが突然命を狙われます。
思いあたる節を辿ると、大臣暗殺の任務に当たった仲間がみんな消されていることが判明。
一体なぜ?ジムは巨大な敵と戦うことになるのでした…。

ショーン・ペンといえば、先日、メキシコの麻薬王逮捕のきっかけが、
彼と会っていたことだと話題になりましたよね。
捕まった麻薬王はショーンの大ファンで、脱獄中に会いに来たとか。
曲解されて、ショーンが巨大組織から狙われなければいいのですが。
映画さながらの恐怖でしょう。
さて本作ですが、そんなショーン・ペンが、初めてアクション映画に挑戦した1本。
それでも、まったく違和感もなく、鍛え上げた身体をこれでもかと披露しています(笑)。
フェリックスはアニーのことが好きで、ジムを狙撃犯にしたのには、
ジムをアニーの前から消す狙いもありました。
8年も前のことなのに、今さら邪魔者になるのには訳がありました。
ずっと思い続けていたアニーとの再会も喜ばしいものではありませんでした。
それでも、自分と、愛する者のために、ジムは戦うんですね。
1960年生まれの55歳。このカッコよさは中年、壮年男性の希望だと思います。☆3つ。
「ザ・ガンマン」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2016.1.29

『99分、世界美味めぐり』☆☆☆
『蜃気楼の舟』☆☆
『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』☆☆☆
『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


寒くて、シャワーを浴びたり、お風呂に入るのがおっくうになるせいか、
試写に来る人の中に臭い人が増えた気がします。
早めに行って、せっかく見やすい席を取っても、前後左右が臭いと最悪…。
あとはニットの帽子。始まったら脱げって。後ろの人は見えないョ。
丸いボンボンが付いてるのなんて最悪!
もちろん、ボクの前にいたら注意するけど。困ったものです。
さ、今週は4本です!



『99分、世界美味めぐり』は、美食家が世界を巡るグルメ・エンタテイメント。

ミシュランの星は、シェフにとっての、大きな目標のひとつ。
毎年発表されるその評価にドキドキするのは作り手側もそうですが、食する側もまたしかり。
現代はSNSなるものがあり、昔のような“口コミ”とは違うタイプの
“ネットコミ”が今や一番の影響力を持っています。
この食のドキュメンタリー映画に出て来るメインの5人は、
“フーディーズ”と呼ばれる、ネット上で多大な支持者を持つグルメたち。
三ツ星レストラン全109軒を完全制覇した、シェル石油の元重役を始め、
様々な美食家たちの食の動向を追うのですが、その影響力からか、
取材お断りの店までもが厨房に彼らを招き入れたり、
超一流の料理人が自ら接客したりと、それはそれはVIP待遇。
その一方で、ネットの評価に批判的なシェフも登場。
ボクのような、あまりネット信者とは言えない向きには溜飲が下がる場面もあり(笑)、
単なるグルメ映画になっていないところが面白いかも。
秘境の地に建つレストランや、盛り付けの妙など、
知られざるこだわりを見られるのは率直に楽しいと思います。
映画も食も、自分の“好き”が一番ですから(笑)。☆3つ。
「99分、世界美味めぐり」公式サイト



『蜃気楼の舟』は、日本の歪んだ社会構造に一石を投じた作品。

豊かな国と言われながら、ホームレスが数多いる日本。
そのホームレスたちを言葉巧みに連れ去り、狭くて汚い小屋に詰め込み、
彼らに申請させた生活保護費をピンハネし、金を得る。
与える食事は粗末なもの。病気になろうが、命を落とそうが我関せず。
それが“囲い屋”と呼ばれる、違法な闇の職業です。
ひとりの青年が、その囲い屋のメンバーとして働いていました。
ある日のこと、勧誘したホームレスの中に、彼は自分の父親を発見するんですね。
認知症が進んだのか、息子を息子として識別できない父を車に乗せ、
複雑な心境と共に、青年は郊外にある囲い屋の施設へと向かうのでした…。

着眼点は確かに面白く、興味を抱かせる題材です。
ただ、抽象的な表現が多く、ダイレクトに届かない。
おそらく監督の意図は、観る側に何かを考えて欲しいということなんだと思います。
それが果たしてどう伝わるかなと。
伏線や仕掛けも確かに散りばめられていて、
ラストは「おそらくこういうことだろう」と、光射す未来を思わせるのですが…。
厳しい現実は厳しく描いたほうが、より伝わると思うのですが。☆2つ。
「蜃気楼の舟」公式サイト



『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』は、家を巡るサスペンス・ドラマ。

母親と息子の3人で慎ましやかな生活を送っている、シングルファザーのデニス。
ところが、不況のあおりで仕事が無くなり、住宅ローンを滞納。
裁判所から自宅と土地の明け渡しを命じられてしまいます。
すると、不動産業者と保安官がやってきて、強制執行だと、
猶予を与えられることもなく、家を追い出されてしまったのです。
仮の住まいにと選んだ安モーテルは、デニスと同じような境遇の人たちでいっぱいでした。
我が家を取り戻したい。
その一心で仕事を探すデニスでしたが、彼を雇ってくれたのは、
皮肉にも強制執行の日に来た不動産ブローカーのリックでした。
リックは法の抜け穴をうまく利用して、差し押さえ物件で荒稼ぎをしている不動産王。
もちろんそのやり方は非情なもの。
それはデニス自身も自らの体験でわかっていたはずなのに。
自分がやられたことを、他人にしなくてはならない。
心の葛藤と闘いながらも、デニスはリックの右腕へと成長していくのですが…。

アメリカのリーマン・ショックによる大不況に、人々は翻弄されてきました。
その余波は日本も含む世界中に及んだのですが、
アメリカではごくごく普通に暮らしている人々でさえ、普通に暮らせなくなるという。
金が人を狂わせるとはまさにこういうことなのでしょう。
リックが「アメリカは勝者の国。負け犬に手なんか差し伸べない」と口にしますが、
そんなところは確かにあるんでしょうね。
自由とか、権利とか、幸福の考え方がどうも少し違っている印象はありますもんね。
よく言う、出発点で僅かにズレた角度は、最初は些少なれど、
進めば進むほど大きく広がっていく。それがアメリカなのかも。
そんなことを考えさせられてしまいました。☆3つ。
「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」公式サイト



『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』は、
世界三大オーケストラのワールドツアーを追ったドキュメンタリー映画。

1888年に創立されたオランダのオーケストラが、ロイヤル・コンセルトヘボウ。
創立100年にあたる1988年に、国王からロイヤルの称号を与えられた、
いわゆる王室御用達のオーケストラです。
そんな彼らが創立125周年の記念として行った2013年のワールドツアー。
ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、アジア、オーストラリアの6大州を回った一大公演です。
そこには音楽を愛する様々な人々が暮らし、クラシック音楽が、
生活に糧と潤いを与えていたのです。
社会情勢も経済状況も宗教観も違う、そんな世界中の人が、それぞれの立場で聴く音楽。
そこには悲喜こもごもの人生エピソードがありました。
もちろん、楽団員の人生も描いていて、こちらも世界中から集まっているから、
背負っているものもまた様々。
こうやって書くと、「オーケストラのメンバーと、
クラシックを愛する人のドキュメンタリーでしょ。重くない?」と言われそうですが、
いやいや。シンバル担当の男性奏者の心の内なんて、聞いたことありますか?
じーっとその時を待つシンバル奏者の心中の告白(笑)。
ユーモアも交えてのロードムービー。
クラシックの敷居が少し、いや、かなり下がるかもしれません。
是非ご覧になってみて下さい!☆4つ。
「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2016.1.20

『愛しき人生のつくりかた』☆☆☆
『ザ・ウォーク』☆☆☆☆
『サウルの息子』☆☆☆☆
『ビューティー・インサイド』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


2016年のボクの映画活動も、ようやく動き出したなと。
時間ができると試写に足を運ばせてもらってます。
先週までで、まずは7本。寒さに負けず、動け動けです(笑)。
さ、今週は4本です!


『愛しき人生のつくりかた』は、家族の在りようを描いたフランス映画。

パリに暮らす老女のマドレーヌ。3人の息子を育て、孫にも恵まれ、
ゆったりとした老後を過ごしていたものの、長年連れ添った夫に先立たれてしまいます。
マドレーヌの長男ミシェルは、40年勤めた郵便局を定年退職。
暇を持て余し、高校教師の妻との関係もギクシャク。
一人息子のロマンは大学生。将来を決めかねている彼は、祖母マドレーヌの一番の話し相手でした。
そんなマドレーヌがケガをして、病院に運ばれてしまいます。
3人の息子は一人暮らしが悪いと、マドレーヌを老人ホームに入れてしまうんですね。
ロマンは、マドレーヌがそんなことを望んではいないと承知していたので、
ちょくちょく話をしにホームに顔を出していたのですが、ある日のこと、
彼女がホームから姿を消してしまいます。慌てふためく家族たち。
するとロマンのアパートに1枚の絵葉書が届きます。
見慣れた文字に、消印はマドレーヌが話していた思い出の地のもの。
ロマンはそこへ向かって、車を走らせるのでした…。

3世代の人生の物語。
誰もが居場所を見つけたくても、見つけられずにいるようで。
監督のジャン=ポール・ルーヴは、そんな普通の日常を描きたかったと語っています。
いかにもフランス映画といった感じで、
好きな人にはこのテイストや空気感が心地良いんだろうなと思います。
個人的には、もう少しメリハリを求めちゃうかなぁ。
この作品に、というのではなく、個人的に好きな映画はという意味です。☆3つ。
「愛しき人生のつくりかた」公式サイト



『ザ・ウォーク』は、実話の“完全映像化”。

フィリップ・プティはフランスの大道芸人。彼の芸は“綱渡り”。
8歳の時、初めて見たサーカス団の綱渡りに魅せられ、独学で綱渡りを練習。
パリの街で、綱渡りを披露してはお金をもらう大道芸人となったのです。
ある日のこと、雑誌に載っていたNYに建設中のワールドトレードセンタービルの記事を見て、
彼の綱渡り魂に火がつきます。
この世界で一番高いツインタワーにワイヤーを掛け、命綱なしで渡ってみせようと。
少しずつ仲間を増やし、着々と計画を進めるフィリップたち。
決行の時を1974年8月6日の午前6時と決め、ワールドトレードセンタービルへと向かいます。
予想だにしなかったトラブルも乗り越え、ワイヤーを掛け、高所に付きものの強風の中、
フィリップは、遂に第一歩を踏み出したのです…。

ワールドトレードセンターは、9.11のアメリカ同時多発テロで失くなってしまったあのビルです。
高さ528m、ビル間42.67mを命綱なしで綱渡りだなんて、
考えただけでもお尻のあたりがムズムズしちゃいますよね(笑)。
でも、フィリップ・プティというフランス人男性は、それに挑んだんです。
プロセスの面白さと、綱渡りのドキドキと、上映中はずっと楽しめる1本だと思います。
3Dだから、臨場感は半端じゃない。
ある瞬間、体が反応してヒュッと身をよじったら、隣りの人に笑われてしまったほど(笑)。
上手く作ってありますョ。高所恐怖症の人、覚悟して見に行って下さいねっ。☆4つ。
「ザ・ウォーク」公式サイト



『サウルの息子』は、第68回カンヌ国際映画祭グランプリ作品。

1944年のドイツ、アウシュヴィッツ収容所。
ナチスによるユダヤ人の大量虐殺が続く中、連日大勢のユダヤ人が連行されて来ました。
その場で労働力になると判断されたユダヤ人は、ゾンダーコマンドと呼ばれる特殊部隊に入れられ、
ユダヤ人の服を脱がせ、ガス室に誘導し、金品を集め、遺体を運び出し、室内を清掃、
遺体を焼却炉で焼き、灰を川に捨てるという、一連の作業に従事させられるのです。
しかし、彼らとて順に命を奪われる運命。わずかな延命と引き換えに、同胞を死に導くのでした。
ある日のこと、ゾンダーコマンドのひとりであるサウルは、ガス室で死にきれず、
軍医によって命を断たれた少年が、自分の息子であることに気づきます。
ユダヤ教では死者を復活させるために、死体はそのままであることが必要で、
何とか息子の亡骸を持ち出して土葬にしたいと画策するのです。
さらに、ゾンダーコマンドの中には、謀反を計画しているものもいて、ついにそれを実行。
混乱に乗じて、サウルは息子を手厚く葬ることができるのでしょうか…。

監督はこれが長篇デビューとなった、ハンガリー系ユダヤ人のネメシュ・ラースロー監督。
彼の祖先もまた、ホロコーストの犠牲者だそう。
映画の世界でありながら、映画でしかあり得ないだろうことが、
現実に起こっていたんだという事実に愕然とします。
人はここまで残酷になれるのかと、生々しい描写に顔をしかめることでしょう。
ゾンダーコマンドとして感情を捨てたサウルにも、自分の息子の死に直面したことで、
絶望の中にも人としての尊厳が蘇ります。
重い気持ちになりますが、でも戦争の狂気を、
戦争を知らないボクらの世代が垣間見るにはいい作品ではないでしょうか。
戦争を題材にした映画は、生々しく残酷であったほうがいい。
実際の戦争苦はないほうがもちろん幸せだけど、こういった痛みは感じておいたほうが、
わずかでも“学び”になると思うから。☆4つ。
「サウルの息子」公式サイト



『ビューティー・インサイド』は、韓国のファンタジーロマンス。

18歳のある日、寝て起きると外見が別人になってしまうようになったウジン。
その姿は、男女、年齢、人種を問わず。
最初は現実を受け入れられずにいましたが、
人に会わないで生活を成り立たせるためにはインターネットを活用するしかないと、
デザインの才能を活かし、家具のデザイナーとして活動を開始。
今ではオーダーメイドの人気家具デザイナーになっていました。
そんなウジンが欲しい部品を探しに、アンティーク家具の専門店に行った時のこと。
家具に詳しく、家具を心から愛している女性店員のイスに出会い、一目惚れ。
イスはウジンの作る家具の大ファンでもあったのです。
別人の姿で毎日のように彼女に会いに行っては、
初めて出会ったかのように会話を交わし、帰るだけのウジン。
彼は決断します。イケメンに変わった時にイスに告白しようと。
そしてそれは実行され、仲良くなるふたり。
しかし、眠ってしまえばウジンの容姿は変わってしまう。
なんとか寝ずに三日三晩、ふたりは一緒の時を楽しみます。
ところが、次の朝の約束にウジンは現れなかったのです。
つい眠ってしまい、まったくの別人に変わってしまったからなのでした…。

123人1役。なかなか考えつかないアイデアに拍手ですね。
ウジンの現状には、理解者がふたり。母と親友のサンベクです。
そのサンベクがウジンのビジネスを支えてもいます。
また、自分の“真実”を残しておこうと、
インターネットに日々の画像を撮り残しておくウジン。
あらすじは、まだホンのさわりの部分。
イスは傷つき、ウジンも何とかイスの誤解を解き、
理解してもらいたいと考え、行動に出るんですね。
タイトルからもわかるように、「容姿じゃなく、中身で人を愛せますか?」
というテーマなんですが、ひとつだけ疑問を呈せば、ウジンは経済的に成功してるのです。
ゆえに、「容姿じゃなく、お金も無いけれど、
中身で人を愛せますか?」だったらどうだったか…。
頑張ってお金稼がなきゃ(笑)。
でも、卓越したオリジナリティには拍手です。
「どうなるんだろう…」とハラハラドキドキは続きましたから。☆4つ。
「ビューティー・インサイド」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2016.1.7

『イット・フォローズ』☆☆☆
『ピンクとグレー』☆☆☆
『ブリッジ・オブ・スパイ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


新年あけましておめでとうございます。
昨年は133本の映画を見させてもらいました。
心揺さぶられる作品との出会いも多々ありました。
今年もそんな出会いを楽しみに、
皆さんの映画鑑賞の作品選択の参考にもなればと書き進めていきたいと思います。
ただ、いつも言ってるように、映画は“好み”です。
こってりしたラーメン好きの人に、あっさりを勧めても美味しいと感じないように、
あくまで嗜好品なんですよね。
読んで何か引っかかったら、どうぞ自身の目で確かめに行って下さい。
そのお役に立てればと思っています。今年もご愛読よろしくお願いします!
では、今週は3本です!



『イット・フォローズ』は、新しいタイプのホラー映画。

19歳の少女ジェイは、ヒューとデートで映画館へ。
ところが突然気分が悪くなったと、ヒューはジェイの手を引いて外へ出てしまいます。
ヒューの家に行ったジェイは、初めてヒューと結ばれます。
ところがその後、ヒューはジェイを睡眠薬で眠らせて廃墟に連れて行き、
下着のまま手足をイスに縛り付けるんですね。
目覚めたジェイにヒューは、こう告白します。
「あるものがつけて来る。それに捕まったら死ぬしかない。
悪いけれど、それを君に移した。
それは誰かに化けていて、移された人にしか姿は見えない。
それはゆっくり歩いてくるから、とにかく逃げろ。
そして、それに捕まる前に誰かに移せ」と。
その瞬間から、ジェイの恐怖の日々が始まったのでした…。

“イット=それ”ですから、タイトルは「それが付いて来る」。
ホラー映画も何か新しいものを考えないと、ということなのでしょう。
その斬新さがホラーファンに受け入れられるかどうかは、それこそ好み。
意見が別れそうな気がします。
よくありがちな、音で驚かせることに頼らなかったのは、潔かったと思います。☆3つ。
「イット・フォローズ」公式サイト



『ピンクとグレー』は、NEWSの加藤シゲアキが書いた小説の映画化。

11歳の蓮吾が住む団地に、ひとりの少年が引っ越して来ます。彼の名は大貴。
すぐにふたりは仲良くなり、高校も同じ高校へ進学。
ギターを趣味とし、幼なじみのサリーに恋心を抱く、
どこにでもいる普通の高校生でした。
そんなふたりに転機が訪れます。
渋谷で読者モデルにスカウトされ、芸能の世界に入ります。
蓮吾はある仕事がきっかけで、一気にスターの座に登りつめたのですが、
大貴のほうはエキストラ止まり。一緒に住むほど仲の良かったふたりの間に亀裂が入り、
結局ふたりの仲は壊れてしまうんですね。
それから5年、同窓会が開かれ、大貴と蓮吾は久々の再会を果たします。
気まずくなって会場を後にした大貴に、蓮吾から電話が入り、
ふたりきりで飲み直すことに。
すると、ぎくしゃくした関係はどこかへ消えて、
そこにいたのは、仲のいいあの頃のふたりでした。
蓮吾の部屋に泊まり、朝を迎えた大貴。
気付けば蓮吾はすでに外出していて、テーブルの上には手紙とカギが置かれていました。
手紙に書かれた時間に、指定された場所へ向かった大貴。
カギを開けて部屋へ入ると、そこには首を吊った蓮吾の姿が。
そして足元には6通の遺書があったのです…。

プレスにあった“62分後の衝撃”。
時計を気にしながら試写を見てましたが、なるほどそういうことかと。
NEWSの加藤シゲアキというアイドルはすごいですね。
こんな小説が書けるのかとビックリ!
小説を読んだ人も多いかと思いますが、
そこからの展開は知らずに見たほうが面白いと思うので、ここまでにしておきます。
最近は、天が二物も三物も与えるんですね。☆3つ。
「ピンクとグレー」公式サイト



『ブリッジ・オブ・スパイ』は、スティーヴン・スピルバーグ監督、
トム・ハンクス主演、コーエン兄弟脚本の話題作。

1957年、冷戦状態にあったアメリカとソ連。
そんな中、NYでルドルフ・アベルという男がFBIに逮捕されます。
容疑はソ連のスパイ。連邦刑務所に拘留され、裁判になるのですが、
アベルの弁護をする国選弁護士として選ばれたのが、ジェームズ・ドノヴァンでした。
ドノヴァンは迷います。敵国のスパイを弁護するということは、
自分自身のみならず、家族をも危険に巻き込むことになるから。
妻のメアリーも反対したのですが、ドノヴァンはアベルの弁護を引き受けるんですね。
敵国の人間であろうとも、“自由の国”アメリカで、アメリカの法によって裁きたい。
そこには法に携わる人間としての志があったのです。
裁判に向け、アベルと話し合うドノヴァンでしたが、そこで感じたこと、
それはアベルの祖国への忠誠心でした。国は違えど、祖国への愛情は同じ。
ふたりの間には互いへの尊敬も生まれていたのです。
世論も死刑が確実と言っていた裁判で、懲役30年の刑を勝ち取ったドノヴァンでしたが、
その判決に世間の風当たりは強く、心配していた家族への誹謗中傷も現実のものになり、
家族はバラバラになってしまいます。
それから5年、アメリカの偵察機がソ連の領空で撃墜され、
パイロットのパワーズが拘束されてしまいます。
最新鋭機の情報が流れてはと、CIAはアベルとパワーズの交換を画策するんですね。
この難しい任務に、再びドノヴァンが指名されるのでした…。

実話に基づくストーリー。
実はもうひとり、アメリカの大学生も捕らえられていて、
ドノヴァンは2vs1の“人質交換”を画策します。
その交換場所がベルリンにあるグリーニカー橋で、
戦時中には東西ベルリンを分断していた橋。
この映画、“正義”と“信念”がテーマだと思います。
敵国のスパイ=悪かといえばそうじゃない。逆の側に立てば、
祖国のために命を賭けて任務にあたっている真っすぐな人間だと。
法の世界に身を置くドノヴァンの正義と信念がアベルを、またパワーズたちを救います。
東西ドイツを分断する“ベルリンの壁”が出来上がる瞬間など、
見るべきところはあちこちに散りばめられた作品。
ただし、この映画の根底に流れる国への思いが、
ボクら日本人の中で薄れてしまっているとしたら、
この映画の感想は他国の人とは違ってくる気もします。
さぁ、あなたはどう感じるでしょう。☆3つ。
「ブリッジ・オブ・スパイ」公式サイト