週末公開の映画……2013.12.18

「ウォーキングwithダイナソー」☆☆☆☆
「永遠の0」☆☆☆
「パリ、ただよう花」☆☆☆
「ファイアbyルブタン」☆☆☆
「プレーンズ」☆☆☆
「麦子さんと」☆☆☆


今の時点で、2013年に観た映画は139本。あと1本か2本観る予定ですから、今年は140本ぐらいかな。
本当に素晴らしい作品たちに触れることができました。ありがたいことです。
このコラムを参考に映画館に足を運んで頂いた方がいらっしゃったら、これまた感謝です!
食と同じで、映画も“好み”ですから、違った見解があっていいかと思います。
いつも言うように、「ご自身の目で確かめてきて下さい」です。
今年最後は6本です!



「ウォーキングwithダイナソー」は、BBC制作の3D恐竜映画。

約7000年前の地球。そこに生息していたのは、今では絶滅した恐竜たちでした。
住むのに適したアラスカの大地には、多くの種類の恐竜がいたのですが、
草食恐竜のパキリノサウルスもその中の一種族。
卵の中から次々と子供が産まれ、その瞬間から弱肉強食の生存競争が始まります。
一番小さなパッチは、兄弟にはねのけられて、餌にありつけない始末。
その後も大陸大移動、肉食恐竜との闘い、自然災害などの厳しい環境を生き抜き、
パッチも大きく成長していくのです…。

パッチは一度鳥のような肉食恐竜に襲われ、右の耳に穴が開いてしまいます。
これが彼のトレードマークに。
3Dらしい3Dですョ。BBCのネイチャーものには素晴らしい作品が多いのですが、
その恐竜バージョンで、こちらはストーリーが付いているという。
まるで“動く恐竜図鑑”。肌感とかすごいですョ。
大人も子どもも楽しめる、テクノロジーの進歩を感じる1本です。☆4つ。
「ウォーキングwithダイナソー」公式サイト



「永遠の0」は、百田尚樹のベストセラー小説の映画化。

祖母の葬儀に参列した健太郎は、祖父から衝撃の事実を知らされます。
祖父と健太郎とは血のつながりがなく、血縁上のおじいさんは別にいるのだと。
その人の名は、宮部久蔵。太平洋戦争で特攻隊として戦死したとか。
健太郎は祖父のことを調べようと、宮部の戦友たちを訪ねるのですが、
誰もが“臆病者”と罵るのです。
ただひとりの戦友、景浦を除いては…。

小説を読んだという人も多いでしょう。
「何としても生きるんだ」と、命の大切さを訴え続けた宮部は、抜群の飛行技術を持ちながら、
常に戦闘とは離れたところにいました。それゆえ臆病者呼ばわりされたのです。
守るべきものがある時に、周りに何を言われようと自分の信念を貫く。
簡単にできることではありません。
その宮部がなぜ特攻を選んだのか?
物語の肝はここにあるんですね。
映像にしたがゆえの迫力と、映像にしたがゆえの描き過ぎと、
ボクは正直、どちらもあるかなと思いました。後者はなくてもいい。
ちょっともったいない気がします。
健太郎の、宮部に対する心の変化を表すために、最初の行動があまりに非常識なのも頂けないし。
原作がいいだけに、☆2つという訳にはいきません。“命の大切さ”。
伝えたいことには共感ですから。☆3つ。
「永遠の0」公式サイト



「パリ、ただよう花」は、北京出身でパリ在住の中国人作家リゥ・ジエの、自伝的小説の映画化。

北京で出会った恋人を追いかけ、パリまでやってきたホア。
思いが届かず捨てられてしまったホアは、ふとしたアクシデントから、
マチューという若い建設工と知り合います。
半ば強引に身体を求められるホア。戸惑いながらも次第に惹かれていくホア。
ところが、マチューの溺愛とホアへの執着に、ホアは別れを切り出すんですね。
それでもズルズルと関係を重ねるふたり。
ホアは北京で通訳の仕事があると、故郷へ帰るのですが…。

元カレを追ってパリまで来るホアと、そのホアをホア以上に追い求めるマチュー。
ちょっと特殊な恋愛模様(笑)。
だからこそ、物語になるのかもしれませんが。
マチューの行動に責任感がまったくなく。
結婚しようと言うけれど、結婚できない状況だったり、
ホアの素性を調べるために、友達を使って卑劣な行動に出たり。
女性ってこんな典型的なダメンズにハマってしまうんですかねぇ。
こうなると、どっちもどっち。もうどうにでもなりなさいと覚めた目で見ちゃいます。
あとは官能の世界をお楽しみあれ(笑)。☆3つ。
「パリ、ただよう花」公式サイト



「ファイアbyルブタン」は、パリの老舗ショーパブを描いたドキュメンタリー。

1951年創業のショーパブ“クレイジーホース”。
ヌードとアートが融合した、パリのナイトショーの最高峰と呼ばれるこの店のステージを、
80日間だけ、クリスチャン・ルブタンが演出しました。
クリスチャン・ルブタンとは、ブランドを超えてハイヒールをデザインする伝説のデザイナー。
2012年、自身のブランドが設立20周年を迎えた記念にと、音楽をデイヴィッド・リンチに依頼し、
ここクレイジーホースで、『ファイア』と名付けた“女性美の完成型”を表すエンタテイメントを創ったのです。

その伝説のステージを、出演者たちの話を交えて紹介する3D映画。
確かに綺麗でしたョ。ただ、エロティックさを感じながったのが、いいのか悪いのか。
そんな目で見るもんじゃないと、お叱りの言葉が聞こえて来そうですが…(笑)。☆3つ。
「ファイアbyルブタン」公式サイト



「プレーンズ」は、ディズニーのアニメ作品。

田舎の農場で、農薬散布機として働くダスティ。
彼の夢は世界一周レースに出場して、チャンピオンになること。
ただ、レース用飛行機じゃないダスティに、周りの目は冷ややかだったのです。
親友の燃料トラックのチャグと、フォークリフトのドッティを除いては。
そんなダスティに奇跡が起こります。
ラッキーが重なり、なんと世界一周レースの予選を通過してしまうんですね。
ところが、ダスティには欠点がありました。飛行機なのに、高所恐怖症だったのです。
海軍を引退後、プライドはそのままに静かに暮らす戦闘機スキッパーの指導のもと、
夢を叶えようと頑張るダスティ。
自分の弱さを克服して、世界一周レースで優勝することができるのでしょうか…。

『カーズの世界が、大空に飛び出す!』。
もうこのキャッチコピーだけでイメージが湧くと思います。
イメージできるのはいいことだけど、裏を返せば、想像がついちゃう。
ストーリーしかり。新しい感動はあまりなかったかなぁ…。
ただ、悪い作品とかではないので、評価を下げる必要もなく。
お子さんと行く冬休みの映画としては合格点では?
逆に今の子どもはこのタイプの映画じゃ満足しなかったりするのかな。
お父さん、お母さん、いかがです?☆3つ。
「プレーンズ」公式サイト



「麦子さんと」は、堀北真希主演のハートウォーミングな1本。

母の遺骨を抱いて、田舎の駅に立つ麦子。
亡くなったばかりの母の故郷に、納骨にやってきたのです。
3ヶ月前のこと。父の死から3年経ったある日、
突然、自分たちを捨てて出ていったはずの母が舞い戻ってきたのです。
声優を夢見る麦子は兄と二人暮らし。
母の面影もなかった麦子にとって、突如として現れた母親を名乗る女性は他人のようなもの。
冷たく当たっていたのですが、それでもやはり母と娘。
次第に母親というものを意識し始めるのです。
でも、小さな揉め事は日常茶飯事。
そんなある日のこと、声優の専門学校の案内を勝手に開けられたことに腹を立てた麦子は、
決定的な一言を口にしてしまいます。
「あたし、あんたの事を母親だなんて思ってないからっ」。
その数日後、母は末期のガンで死んでしまったのです…。

麦子が母の故郷に戻ると、みんなが「彩子ちゃん?」と声を掛けます。
彩子とは母の名前。まるで生き写しのように麦子と母は似てたんですね。
埋葬許可証を紛失し、再発行して送ってもらうまでの間、母の故郷で過ごす麦子。
まったく知らなかった母の素顔を、そして麦子への思いを、ここで知ることになります。
親子ってそんなものだと、いつも思うんですョ。言葉にしなくてもちゃんと通じ合ってる。
でも言葉にしなくちゃわからないのも事実。だって人は超能力者じゃないんだから。
こういう映画を見ると、親の顔が見たくなったりするものです。
帰省前にご覧になってみてはいかがです?☆3つ。
「麦子さんと」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.12.11

「カノジョは嘘を愛しすぎてる」☆☆☆☆☆
「ゼロ・グラビティ」☆☆☆☆
「バックコーラスの歌姫たち」☆☆☆☆☆
「ブリングリング」☆☆☆


あまり期待し過ぎて試写に行くと、意外とガッカリしたりもします。
“逆もまた真なり”。だとすると、あまり期待せずに行くと、
意外と面白い作品に出会える可能性もあると。
今年も見逃してないかなぁと、不安になる12月です(笑)。
さ、今週は4本です!



「カノジョは嘘を愛しすぎてる」は、人気コミックの映画化。

人気バンドのCRUDE PLAY。
“クリプレ”の愛称で呼ばれるこの4人組の音を支えるのが、サウンドクリエーターの秋でした。
実は秋はクリプレのオリジナルメンバー。
ところがデビューに際して、プロデューサーの高樹から、
「演奏はスタジオミュージシャンを使う」と“あてぶり”を強要され、
納得できずにグループを脱退。裏から仲間を支えることを決めたのです。
高校の同級生と組んだ大好きなバンドで演奏できないもどかしさや、
恋人である歌手の茉莉が高樹と関係を持つような芸能界の汚い部分に、秋は苛立ちを覚えていました。
そんなある日、突然、秋は理子と出会います。
秋が口ずさんでいた歌を耳にした理子は、そのメロディーに立ち止まらざるを得なかったんですね。
秋は冗談のつもりで、「一目惚れって信じますか?」と。
すると理子は、「はい!」。
運命の出会いはこうして生まれたのです…。

マッシュルームのような髪型の理子。秋は自分の素性を隠して、理子と接します。
茉莉のこともあって、「歌を歌う女の子は嫌いだ」と言う秋。
ところが理子は素晴らしい声の持ち主。クラスメートとバンドを組んでいて、
練習していたところを、通りかかった高樹に聞かれ、スカウトされるんですね。
真実を秋に言えない理子でしたが、秋もまた同じ。
そんなふたりがスタジオでバッタリ会うのは時間の問題で、
そこから互いを知り、交際を始めるけれど…という音楽と恋の物語。
原作は青木琴美の大ヒットコミック。
業界の“裏”も、すべてがそうかは別にして(笑)、よく描けてました。
だからボクなんかにもストンと腑に落ちて。
亀田誠治が音楽を担当。劇中歌もすごくいいし、
理子を演じる大原櫻子はオーディションで発掘したという新人なんですが、
歌メチャメチャ上手いです!
実際に理子のユニット、MUSH&Co.と、CRUDE PLAYはCDデビュー。
映画からヒットが出そうな予感!
近年稀に見る“業界映画”の秀作だと思います。満点☆5つ!
「カノジョは嘘を愛しすぎてる」公式サイト



「ゼロ・グラビティ」は、サンドラ・ブロック、
ジョージ・クルーニ主演のスペース・サスペンス・エンターテイメント。

上空60万メートルの無重力空間“ゼロ・グラビティ”。そこは音も酸素もない暗黒の空間。
ただひとつ、青く美しい地球が、奇跡のように浮かんでいるだけ。
そんな中、ベテラン宇宙飛行士のコワルスキーと、
女性メディカル・エンジニアのストーン博士は、シャトル船外で通信システムの故障を直していました。
すると地上から緊急通信が。ただちに船内へ戻れというのです。
破壊した人工衛星の破片が計算通りに散らず、軌道に乗ってものすごい勢いで回っていて、
このままだとシャトルにぶつかり、船体は粉々になると。
帰船が間に合わなかった彼らに、凶器と化した破片が次々襲いかかります。
シャトルから切り離されたアームに繋がっていたストーン博士は、
一瞬にして漆黒の宇宙空間へと放り出されてしまったのです…。

上映中、ボクはずーっと力が入ってました(笑)。
沈黙と破壊の音の差がすごい。
大体これから何かが起こるってわかってるから、のどかな沈黙が怖いったらありゃしない(笑)。
コワルスキーはこれが最後のミッション。ストーン博士も地上では娘が待つ身。
事故後、奇跡的に繋がったふたりは、何とか生きる算段を考えるんですね。
ただし、ボンベの中の酸素にも限りがあると。
もちろん話はこの辺でやめておきますが、映画とはいえ、パニックにならない精神力はすごいなと。
見ている側がちょっと息苦しくなるような作品です(笑)。
大きく深呼吸できる幸せに感謝です。☆4つ。
「ゼロ・グラビティ」公式サイト



「バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」は、アーティストのライブやレコーディングで、
コーラスを務める女性たちにスポットライトを当てたドキュメンタリー。

実力は間違いなし。なのに主役にはなれない、あるいは“ならない”。
そんなバックコーラスの女性たち。
彼女たちにはたくさんのドラマがありました。
かつて、ステージにおけるコーラスは白人女性のお仕事。可愛いお飾りだった時代。
ところが、音楽を心から愛するトップシンガーたちは“本物”を求めたのです。
ミック・ジャガー、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダー、スティングなど、
世界のトップ・アーティストがバックコーラスの“歌姫”たちを語ります。
打ち込みの音楽が主流になり、コンピューターで音程の修正ができるようになると、
もっと安上がりな歌い手に仕事が回り、実力派コーラスの彼女たちにはお声が掛からなくなる。
生活のためにハウス・キーパーに職を変える人もいました。
自分がメイド服を着て掃除をしている金持ちの家のリビングから、かつての自分の歌声が聞こえて来る。
「アタシは一体何をやってるんだろう…」。
もう一度、彼女はNYに向かったのです。もちろん、大好きな歌を唄うために。
ひとつだけエピソードを紹介しましたが、とにかく深い。
さらに先に挙げた、一流アーティストたちの言葉がまた深い。
見れば必ず何か勇気をもらえる、そんな1本だと思います。
ボクはもしかしたら2013年のNo.1に、この映画を挙げるかも。そんな作品です。
もちろん満点!☆5つ!
「バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」公式サイト



「ブリングリング」は、実話に基づくストーリー。セレブの家を専門に狙う、若き窃盗団の話です。

クラスで“キモい”と煙たがられてたマークに、声を掛けてくれた唯一の女子がレベッカでした。
レベッカの友達ニッキーとクラブへ行くマーク。
実はニッキーも、母が宗教じみたスピリチュアルにハマっているという、複雑な環境の家庭に育ち、
モヤモヤとした毎日を過ごしていたんですね。
「誰か遠出してる知り合いはいない?」。
突然のレベッカの質問に、マークがジャマイカに家族旅行に行っている知人の話をすると、
「行こう」。その家に忍び込み、盗みを働こうというのです。
高級ブランド品を始め、予想以上の収穫に気をよくした彼らは、
クラブで会ったセレブの家に狙いを定めます。
「パリス・ヒルトンがパーティーで戻らないらしい」。
そして、なんとパリスの家に盗みに入ったのです。
仲間は増えて5人に。次々、空き巣を繰り返す彼ら。
ところが幼さゆえに、秘密を守っていられない。
「誰にも言わないでよ」。
噂は広がり、当然、警察の耳にもその話は届くのでした…。

というか、セレブの家がセキュリティー会社にセキュリティーを依頼していないはずがなく。
彼らの悪事はすべて防犯カメラに。
あまりにバカだと思って見ちゃうと、緻密に計画を練り込んだ歴代の盗人キャラたちとは雲泥の差。
大胆とかではなく、呆れて冷めて見てしまいます。
派手さと華やかさがスクリーンを覆うけど、中身は空っぽ。
ただ、それもある意味、映画らしくていいのかな。
ただひとつ、ニッキーがこの犯罪や自分の将来について語るシーンがあるんだけど、
そこに病めるアメリカの誤った自由、権利、人権、人格、
そんな“今”が表れているような気がしました。☆3つ。
「ブリングリング」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.12.2

「愛しのフリーダ」☆☆☆☆
「受難」☆☆☆
「りんご農家の少女」☆☆


12月はTCKの仕事が年末だけなので、週末を除けば少し余裕があるかなと期待したけど、
やはりいろんなことが年末進行で前倒し。結局忙しくなりそうです(笑)。
試写も何本見られるかなぁ。
さ、今週は3本です!



「愛しのフリーダ」は、ビートルズのファンクラブの会長だった女性のドキュメンタリー。

1961年のリヴァプール。
OLとして働いていたフリーダは、同僚とキャヴァーン・クラブにランチに出掛け、
そこで演奏していた4人組の音楽に衝撃を受けます。
彼らこそ、ザ・ビートルズ。
その日から、彼らのライブに通い詰め、メンバーとも親しくなります。
すると、バンドのマネージャーから、会社を作るから秘書にならないかと声を掛けられるんですね。
ふたつ返事でOKを出すフリーダ。
そこからリヴァプールの4人組は、彼女が想像していた以上のビッグスターになって行くのです…。

今まで、自叙伝も何も出したことのないフリーダが、
なぜ今、自身とビートルズのことを話す気になったのか。
それは、「孫を見た時、伝えたいと思ったの。
いつか猫を抱いた白髪の私を見た時“平凡な人生だった”と思うかもって。
60年代に生き、人生を楽しんだ私を誇りに思って欲しいの」。
メンバーが妹のようにフリーダを可愛がったのはなぜか。
バンドへの愛と、仕事への厳しさと。理由が容易にわかりますョ。☆4つ。
「愛しのフリーダ」公式サイト



「受難」は、グラビア・アイドル、岩佐真悠子主演作。

修道院に育ち、天涯孤独のフランチェス子。
汚れなき彼女は、男女の交際やセックスに疑問を抱いていたのです。
すると、フランチェス子のアソコに顔ができ、「オマエはダメな女だ」と罵るのです。
毎日、口を開けば罵倒する男の顔に、フランチェス子は“古賀さん”と名前を付け、
孤独を紛らわすために、一緒に暮らしていこうと決めたのです…。

奇想天外な話。原作は姫野カオルコの小説です。
ストーリーはボクには今イチでしたが、岩佐真悠子がまさに体当たりの演技。
オールヌードで頑張ります。そこに☆をプレゼント(笑)。
男性諸氏!オススメですゾ(笑)。☆3つ。
「受難」公式サイト



「りんごのうかの少女」は、青森出身の女性監督による42分の映画。

りん子はりんご農園に生まれた津軽娘。
中学生なのに学校にも行かず、
恋人の健一郎たちと家出を繰り返しては、家族を困らせていたのです。
懸命にりんご農家を守る母・真弓。なぜなら夫の玉男は事故で死んでしまったから。
なのに悪態をつくばかりのりん子。遂には、りん子がとんでもない行動に出ます。
金をせびりに来たのを断られたりん子は、なんとりんごの木に火をつけたのです…。

すべて津軽弁で、すべて津軽ロケ。工藤夕貴、永瀬正敏が両親を演じます。
津軽弁は外国語のように難解ですが、逆に手作り感は生まれたかも。
ただ、インデペンデント系にありがちな抽象的な表現が、
残念ながら見る側に刺さらず、42分でも長く感じたというのが正直な感想です。
亡くなった父親が、娘に馬をプレゼントするとあったので、
期待して見に行ったのですが…。ごめんなさい。☆2つ。
「りんごのうかの少女」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.11.29

「アイ・ウェイウェイは謝らない」☆☆☆
「グリフィン家のウェディングノート」☆☆
「REDリターンズ」☆☆☆☆


12月ですね。師走の慌ただしい中、急いた気持ちを落ち着かせるのに映画はもってこい。
ま、中にはさらにアクセルをふかしちゃうような作品もありますが(笑)。
さ、今週は3本です!



「アイ・ウェイウェイは謝らない」は、中国の芸術家で活動家のドキュメンタリー。

北京オリンピックのメインスタジアムである“鳥の巣”の設計に携わるなど、
世界的に著名な中国の現代芸術家、アイ・ウェイウェイ。
その過激な発言や行動が国にとって危険分子と見なされ、当局による軟禁状態に置かれます。
そんな中で発信する、限定140文字のツイッター。
辛辣なメッセージを送るのも彼にとってのひとつの芸術なのかもしれません。
08年に起きた四川大地震。亡くなった5000人以上の学童の死を独自に調査。
国の姿勢を問うのと、自身の正義とその両方からの行動でした。
ツイッターで呼びかけたボランティアが多数参加して行われたこの調査がまた当局の怒りを買うところとなり、
警察の暴行を受け、頭にケガを負い、入院。手術を余儀なくされます。
一方、地震の犠牲になった子供を追悼する、9000もの通学カバンで作ったアートは人々の心を打ち。
この温度差に民衆は、疑問と憤りを感じるのです。
そんなアイ・ウェイウェイを、アメリカの監督が追ったドキュメンタリー。
今の中国の問題点が浮き彫りになります。
人を抑圧で永遠に支配することはできないんだと、わからなくてはいけませんね。☆3つ。
「アイ・ウェイウェイは謝らない」公式サイト



「グリフィン家のウェディングノート」は、結婚式がテーマのドタバタコメディ。

何でもオープンなグリフィン家。ところが、オープン過ぎて問題も山積。
次男のアレハンドロの結婚に久々に一家が勢揃い。
実はパパのドンと、ママのエリーは熟年離婚をしていて、ドンはエリーの友達だったビービーと事実婚。
長男ジャレドはみんなが知る童貞で、長女のライラは不妊で旦那とうまくいってない。
アレハンドロのフィアンセ、メリッサの両親はいまだに結婚に反対。
実はアレハンドロはコロンビアからもらい受けた養子だったのです。
そのアレハンドロの母は信心深く、育ての親のドンたちが離婚しているなんて知ったら激怒すると。
そこでドンとエリーは昔のように夫婦を演じるのですが、面白くないのはビービー。
流れでドンとエリーが関係を持っちゃったと知ったから、さぁ大変!
そのビービーが結婚式の給仕に紛れて働いているではありませんか。
このウェディング、果たして無事にお開きとなるのでしょうか…。

ドンにロバート・デ・ニーロ、エリーにダイアン・キートン、ビービーにスーザン・サランドンなど、
そうそうたるメンバーが出演してるのですが、とにかく品がない(苦笑)。
よく受けたなと思うぐらいの品のなさ。
でもこれがアメリカンジョークなら、日本人の感性には合わないんじゃないかなぁと。
もちろんボクだけかもしれませんけど。ごめんなさい、個人的には…。☆2つ。
「グリフィン家のウェディングノート」公式サイト



「REDリターンズ」は、豪華スターの競演による、アクション・エンターテインメント。

CIAのエージェントを引退し、恋人のサラと平穏で幸せな日々を送っていたフランク。
ところが周りがそうはさせてくれず、元相棒のマーヴィンにつきまとわれます。
結局、トラブルに巻き込まれることになるフランクたち。それを楽しんでるかのようなサラ。
トラブルの元は“ナイトシェード計画”という、
米ソ冷戦時代にあった核に関する秘密計画で、天才と呼ばれたベイリー博士が考えたもの。
フランクとマーヴィンがそれにかかわっており、
その分解した小型の核爆弾を奪っただろうとの嫌疑をかけられていたのです。
まったく身に覚えがないフランクとマーヴィン。しかし、この話には大きな大きな裏があったのです…。

REDは“Retired Extremely Dangerous(引退した超危険人物)”の略。
ブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、イ・ビョンホン、
アンソニー・ホプキンス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ…。
それはそれは豪華な顔ぶれが集まり、ド派手なアクションを披露。
舞台もアメリカ、パリ、ロンドン、モスクワなどなど、世界中を飛び回ります。
ストーリーもしっかり練られていて、秀逸。まったく飽きのこない1時間56分。
さすがハリウッドだなと思わせる、娯楽映画らしい娯楽大作です。☆4つ。
「REDリターンズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.11.20

「かぐや姫の物語」☆☆☆☆
「ジ、エクストリーム、スキヤキ」☆☆
「遥かなる勝利へ」☆☆☆
「ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス」☆☆☆


試写を見ながら後ろにゴン。隣りのオジサンの動きです。その度にこっちの椅子も揺れる…。
フッと現実に戻っちゃうんですよね。わかんないのかなぁ。あらゆることに鈍感なんでしょう。
そんな人が映画を評価できるのか、いつも疑問に思ってしまいます。
さ、今週は4本です!



「かぐや姫の物語」は、高畑勲監督作品のジブリ ・アニメ。

竹取りの翁がいつものように山に入ると、根元の光る竹があり、
そこからニョキニョキと筍が伸びてくるではありませんか。
中から出て来たのは、玉のような女の子。
慌てて帰宅すると、おばあさんもビックリ!
神様がふたりに育てろと授けて下さったんだと、大事に慈しみながら育てます。
その子は不思議なことに成長が早く、近所の子供たちから“たけのこ”と呼ばれ、
元気に野山を駆け回って遊んでいたんですね。
しかし、おじいさんは考えます。この子を高貴な姫に育てるのが使命なのではないのかと。
おじいさんとおばあさんは、女の子を連れて、京の都へ行き、お姫様修行を受けさせます。
名のある方に名付けを頼むと、あまりの美しさに驚きながら、
“かぐや姫”と命名。かぐや姫の美しさは、瞬く間に都中に広がっていったのでした…。

ベースはボクらが知っている『かぐや姫』です。
このあと、かぐや姫はたくさんの殿方の求婚を、無理難題を突き付けては断り、
最後に翁に“罪を犯した罰”でこの地に来て、
“償いの期限が終わったから月からの迎えが来る”と。
その罪と罰、月での約束事とは一体何なのか。
それを高畑勲監督が昔勤めていた会社で、数十年前に考えさせられたそうです。
その時はボツになったアイデアを、今蘇らせたという。すごい裏話ですよねっ。
善意と善意がぶつかり合うと、善意が生まれる。
でも人間ですから、ちょっぴり、欲とか邪な考えが混ざる。
すると哀しみも生まれてしまう。
月に帰るとすべての記憶は消えてしまう。それは生まれ変わりの考えにも似て。
ふと思う記憶の奥の奥の記憶。
「この世は生きるに値する」。
確かに。ボクもそう強く思います。☆4つ。
「かぐや姫の物語」公式サイト



「ジ、エクストリーム、スキヤキ」は、井浦新、窪塚洋介共演作。

彼女に食わせてもらう、ヒモのような生活をしていた大川の元に、学生時代は親友だったけど、
ある出来事から絶縁状態にあった洞口がやってきます。15年振りの突然の訪問。
迷惑そうな大川でしたが、何となくの会話が成り立ち、
ふたりは大川手製のブーメランを飛ばしに行こうと、大川の彼女の楓と、
洞口の元カノの京子を半ば無理矢理誘って、車を海に向かって走らせます。
寄せ集めのギクシャクした4人の旅が始まったのです…。

いいとか悪いとかじゃなくて、個人的に面白いと思えないタイプの映画なんですよ。
自堕落な人間が、なんか人生哲学っぽいことを言って、これまた目的のない抽象的な行動に出る。
そんなぼんやりした姿勢で、新たなことが見つかるはずはないっていうのがボクの考え方だから。
それが正しいなんて言ってませんよ。ボクはそういう生き方だから、
この手の話は響かないって言ってるだけ。誤解のないように(笑)。
仏像買って返したり。ごめんなさい、意味わかりませんでした。☆2つ。
「ジ、エクストリーム、スキヤキ」公式サイト



「遥かなる勝利へ」は、ロシアの巨匠、
ニキータ・ミハルコフ監督の戦争スペクタクル3部作の完結編。

第二次世界大戦の真っ只中。ロシア革命の英雄でありながら、
政治犯の汚名を着せられたコトフは、懲罰部隊の兵士として最前線にいました。
泥酔した上官の命令はドイツ軍要塞への正面攻撃。
突っ込めば犬死に、命令に背けば銃殺という状態に、
「戦えば生き残れる可能性はある」と説くコトフ。
案の定、多くの犠牲者を出し、作戦は失敗に終わったものの、コトフは生き残り、
気付けば、ひとりの男の運転する車でモスクワへと向かっていました。
コトフを待っていたのは、最高指導者のスターリンだったのです…。

スターリンがコトフに命じた指令は耳を疑うもので、コトフは絶望感に覆われます。
その一方で、コトフにはひとり娘がいて、そのナージャは父の生存を信じ、
どこかで必ず会えるはずと、軍務に就いていたのです。
戦争の悲惨さに声を失ったナージャ。父との再会は叶うのですが…。

前2作は見てなくても、わかる作品です。
戦争の不条理さがあちこちに描かれていて、父娘の再会のシーンは…何とも言えません。
150分とちょっと長いかなというのは否めませんが、少しのユーモアも交えて、
飽きさせないようにと工夫している姿勢は伺えます。
まさに大作を見る覚悟でどうぞ(笑)。☆3つ。
「遥かなる勝利へ」公式サイト



「ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス」は、ポリスのメンバー、
アンディ・サマーズが語るポリスのドキュメンタリー。

スティング、スチュワート・コープランド、そしてアンディ・サマーズ。
イギリスを代表するロック・バンドがポリス。
パンク・ムーブメントの最中にデビューを果たし、豊かな音楽性から、
パンクとは一線を画したサウンドで人気のバンドへと成長。
80年代初頭を代表するバンドのひとつになりました。
ただ、バンドに付き物のメンバーの仲違いは、ポリスにもあり、遂には解散してしまうんですね。
そんなポリスの結成、成功、確執、解散、
再結成をメンバーのアンディが赤裸々に語ったドキュメンタリー映画です。
ファン必見ではありますが、ポリスのファンじゃなくても、
音楽が好きなら、「へぇ〜」と楽しめると思います。
最後は再結成で元に戻るんだから、やっぱり音楽的なリスペクトが互いにあると、
居心地がいいんだろうなと。
「お前しかいないんだ」と言われた恋人同士みたいで(笑)、
ある意味うらやましいですよね。☆3つ。
「ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.11.13

「悪の法則」☆☆☆
「ジンクス!!!」☆☆☆
「ファッションを創る男―カール・ラガーフェルド―」☆☆☆
「ふたりのアトリエ〜ある彫刻家とモデル」☆☆☆


早くも来年3月公開の映画の試写状が届いてます。
競馬も先々を考えるので、「早いなぁ」と感じることが多いのですが、映画も、ですよね。
でも、まだあと2ヶ月近くある2013年をしっかりと頑張りましょ。
さ、今週は4本です!



「悪の法則」は、リドリー・スコット監督の、豪華キャストによる最新作。

メキシコ国境に近い街で弁護士業を営む、“カウンセラー”と呼ばれる男がいました。
彼は美人CAのローラとの結婚を決め、幸せの絶頂にいたんですね。
カウンセラーには、レストランを経営するライナーという友人がいて、
派手好きなライナーには、元ダンサーの恋人マルキナがいました。
実はライナーとカウンセラーはビジネスパートナー。
そこには裏社会に通じているウェストリーというブローカーも噛んでいたのです。
ウェストリーが言います。
今回のビジネスは多額の利益を生む反面、取引先は残虐なメキシコ人組織。
奴らは人間とは別の種族だから気をつけろと。
その心配がまさか現実のものになろうとは、誰も思ってはいなかったのです…。

マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、
ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット。豪華な俳優陣の名前が並びます。
人は自分のことを過信して、自分だけは大丈夫だと思っている。
根っからの悪人じゃなくても、悪いことに手を染めようと思う気持ちは誰にもあって、
踏み入ってしまうと気づかないうちに深みにはまっている。そして、抜け出せなくなる。
こんなはずじゃなかったのにと思っても後の祭り。
引き返す、または降りるチャンスはいくらでもあったのに。
そんなお話のようです。
もしこの映画のキャスティングが、この顔ぶれじゃなかったらどうだったんだろう?
単にどんどん悪い方へと転落していく男の話でしかないんじゃないかなと思ったのも正直なところ。
その“転落のサスペンス”は、なかなかのハラハラものでしたが、
ストーリーの奥深さは、ボクのセンスのなさでは感じられなかったかなぁ。☆3つ。
「悪の法則」公式サイト



「ジンクス!!!」は、日本と韓国が手を組んだ1本。

ある思いを抱いて韓国から日本にやってきた、留学生のジホ。
日本の大学で見かけた楓に、無理やり友達になろうと迫ります。
渋々、友達付き合いを始める楓。
その楓には雄介という幼なじみがいて、互いに気にはなってるのに思いを伝えられずにいたのです。
そんなふたりを見て、ジホは韓国式の恋愛指南をするんですね。
メールの文言、笑顔の作り方、あれやこれやとお節介なジホに、
面倒くささすら感じる楓でしたが、次第に良き相談相手になっていきます。
そして、雄介との仲にも変化が見えてきたのです…。

ジホにはK―POPのアイドルグループ“T―ARA”のヒョミンが扮します。
日本と韓国の友情物語。映画はアジア各国で公開されるよう。
でも“ジンクス”って、悪い方に使うもの。破るべきものが“ジンクス”なんですけど(笑)。
だから“ゲン担ぎ”は“ラッキー・ジンクス”なんて言い方もしますよね。
ま、それは置いといて(笑)、国同士がいがみ合っている時こそ、民間での交流が大事。
頑張って欲しい1本です。☆3つ。
「ジンクス!!!」公式サイト



「ファッションを創る男―カール・ラガーフェルド―」は、
シャネル、クロエ、フェンディなどを手掛けてきたカリスマ・デザイナーの伝記映画。

ココ・シャネル亡きあと、低迷していたシャネルを再興したのが、カール・ラガーフェルド。
襟の高いシャツにサングラス。後ろで束ねた髪。
その独特のルックスに隠された素顔は、これまでベールに包まれていたのです。
監督のロドルフ・マルコーニはラガーフェルドに認められ、2年間の密着取材を許されます。
撮影時間は300時間。
その中でラガーフェルドが心を許してるなぁという場面がちょくちょく出てくるんです。
そんな意味で、この映画は成功だと思います。
カリスマと呼ばれる人の言葉は時に理解を超えますが、「深いなぁ」と思わせる言葉もいっぱい。
刺激をもらいに行ってみてはいかがですか?☆3つ。
「ファッションを創る男―カール・ラガーフェルド―」公式サイト



「ふたりのアトリエ〜ある彫刻家とモデル」は、スペイン映画。

1943年、ドイツの占領下にあったフランスの、とある村に住む彫刻家のマーク・クロス。
80歳になる老彫刻家の創作意欲を奪ったのは、戦争でした。
ところが、昔、彼のモデルをしていた妻のリーが、市場でひとりの若い女性を見つけます。
彼女の名はメルセ。
リーはメルセに言うんですね。
「あなたの体は夫好みだわ」。
実はメルセはスペインの収容所から逃げて来たので、行くあてもなく困っていたのです。
山小屋のアトリエで、戸惑いながらもモデルを始めるメルセ。
クロスの創作意欲に、再び静かに火がついたのでした…。

全編モノクロで描かれている作品です。
生と死、若さと老い。いろんな哀しみと、新たな一歩と。
対照的なあれやこれやが内包されていて、もしかしたら死ですら次へのステップなのかもと、
そんなことを考えさせられる内容です。
芸術家の心理も描かれていて、芸術とは根気と閃きの賜物なんだなと。
この結末をハッピーエンドと思うか否かも、きっと意見の分かれるところでしょうね。
☆3つ。
「ふたりのアトリエ〜ある彫刻家とモデル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.11.5

「いとしきエブリデイ」☆☆☆
「清須会議」☆☆☆☆
「四十九日のレシピ」☆☆☆


空いているスケジュールに試写会を埋めていったら、あらパンパン。
もう、あっという間に年末です(笑)。
でも、こうして感性に刺激を与えてもらってるんですから、幸せですよね。
ちゃんとみなさんに還元しなきゃ。
さ、今週は3本です!



「いとしきエブリデイ」は、普通の日常が幸せと教えるイギリス映画。

ノーフォークの小さな村に住むある家族には、父親がいません。
父イアンは刑務所に服役中だったのです。
ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナ。
4人の兄妹と母カレンの5人暮らし。
面会には兄妹が順番に行くのですが、今日はロバートとカトリーナの番。
あとのふたりはお隣さんに預けられます。
父と会った帰り際、末っ子のカトリーナは離れたくないと泣きじゃくるのでした…。

と、まぁ導入部です。
劇中、時が流れ、父は釈放されるのですが、その間に起きた出来事を知り、ショックも受ける。
でも女性が女手ひとつで家族を養うのは大変。
その起因は、そもそもイアンが犯罪を起こさなきゃよかったんだから。
当たり前の日常を幸せと思えるか否か。
失って初めてわかることもいっぱいありますからね。
ちなみにこの4兄妹は実の兄妹。ひとりがオーディションに受かって、みんなが出ることに。
ずーっとではないものの、5年間、季節、季節で追って撮ったとか。
大きなハプニングが起こるわけじゃない映画ですが、成長のリアリティはそこにあります。☆3つ。
「いとしきエブリデイ」公式サイト



「清須会議」は、三谷幸喜監督最新作。

1582年、本能寺の変で織田信長が死去。
跡目相続で、後見人に名乗りを挙げた柴田勝家と羽柴秀吉。
勝家はしっかり者の信長の三男を推挙、秀吉はうつけの次男を推し、清須会議に臨みます。
出席者は4人。勝家、秀吉に加え、丹羽長秀と池田恒興。
信長の妹、お市の方の胸中もはかりつつ、それぞれの思惑がぶつかり合いながら、
会議は進むのでした…。

「これは評定という名の戦である」。
日本史上初めて会議で歴史が動いたとされる清須会議。
TVや雑誌などでもご存知かと思いますが、豪華キャストが揃いました。
中でも秀吉役の大泉洋はハマりましたね。ドンピシャです。
役所広司が“大和ハウス的”コミカルな役どころで、これまたいい味を出し。
こうなると悪いけど、剛力彩芽ちゃんあたりだと霞んじゃうんだなぁ。時代劇だしね。
三谷幸喜監督にしても、前作が今ひとつ、いや、今ふたつ、みっつだったので、
ここで名誉挽回!面白かったですョ。☆4つ。
「清須会議」公式サイト



「四十九日のレシピ」は、温かい家族のドラマ。

熟年の熱田良平は、突然妻の乙美を亡くし、まだボーッとして過ごす日々。
そこにやってきた元気いっぱいの女の子、イモ。
聞けば、乙美がボランティアで手伝っていた厚生施設でお世話になったと。
自分が死んだら良平を手伝って、四十九日は大宴会でやってねと頼まれていたと言うのです。
そこに夫の浮気で離婚の危機にある、ひとり娘の百合子が帰ってきます。
見知らぬ少女の存在に驚く百合子でしたが、
イモが開いた“四十九日のレシピ”は確かに母が遺したもの。
ならばと良平も重たい腰を上げ、みんなで四十九日の大宴会に向けての準備を進めるのでした…。

人は身内のことですら知らないことが多い。
この映画のひとつの“肝”に、乙美の人生年表があるのですが、
これがなかなか埋まらない。
余白だらけの人生なんて…。
いやいや、そんなことはないのです。
みんな素敵な時間を生きているんだってことを教えてくれる1本です。
最後いかにも予定調和的な感じが否めないのが残念だけど(笑)、
それでも見てる側の心は動きます。それで十分かな。☆3つ。
「四十九日のレシピ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.11.1

「ある愛へと続く旅」☆☆☆
「恋するリベラーチェ」☆☆☆


10月までで見た映画は121本。今年は例年より少ないかなと。
あと2ヶ月でどこまで見られるか?頑張ります!
今週は2本です!



「ある愛へと続く旅」は、ペネロペ・クルス主演の愛の物語。

サラエボに留学していた女子大生時代のジェンマ。
アメリカ人のディエゴと出会い、一瞬で恋に落ちます。
ふたりは結婚。ローマで暮らし始めたのですが、サラエボが紛争で大変なことになっていると。
それを知ったカメラマンのディエゴは、人道支援活動に参加しようとひとりサラエボに向かうのです。
危険だからと残されたジェンマも制止を振り払ってサラエボへ。
ディエゴの子供が欲しいジェンマでしたが、肉体的理由で夢が叶わず、代理母を探します。
若いロック歌手志望のアスカがそれを受諾。
男の子が産まれるのですが、戦況が悪化。ローマへ帰る決意をします。
ところがディエゴはパスポートが無いとの理由で、飛行機に乗る直前、ジェンマと息子を見送ることに。
それがふたりにとって、永遠の別れとなってしまったのです…。

映画はローマで暮らすジェンマの生活から始まります。息子のピエトロは16歳、再婚した夫は軍の大尉。
そこにサラエボ時代の旧友から電話が来る。
難しい年頃の息子を連れてサラエボに旅行に行くのですが、そこで知る驚愕の事実。
深いというより、戦争、紛争は残酷だということ。
命を繋ぐ、人を愛する。
シンプルにそれができる、平和な世の中がどれだけ素晴らしいかを痛感させられる1本です。
サラエボ紛争の時代はニルヴァーナがデビューした頃。
BGMで彼らの音楽が流れた瞬間、渋谷のCDショップにいた自分の姿を一瞬にして思い出しました。
日本に生まれてよかった…。正直な感想です。☆3つ。
「ある愛へと続く旅」公式サイト



「恋するリベラーチェ」は、実在のアーティストの物語。

ヴワツィーウ・ヴァレンティノ・リベラーチェ。
1919年生まれのエンターテイナーで、派手な装飾のピアノで歌う、大人気歌手。
彼の元にはたくさんの人が出入りしてましたが、実は彼は同性愛者。
そのことは一部の人しから知らなかったのです。
スコットという青年がLAのゲイバーで、ボブという振り付け師と知り合い、
ボブとリベラーチェが仲良しだったことから、スコットとリベラーチェが接近。
ふたりは親密な仲になっていきます。
リベラーチェはスコットに住み込みの私設秘書にならないかと誘い、スコットは了承。
リベラーチェの豪邸は、ふたりの愛の巣に変わります。
お金も、車も、宝飾品も、スコットに与え続けるリベラーチェでしたが、
男女の仲と同じで、恋はそう長く続くとは限らない。
ふたりの間に、ギクシャクした空気が流れ始めたのです…。

70年代はまだゲイが市民権を得ていない時代。
リベラーチェにとっての同性愛はイメージを壊すスキャンダルになりかねない
火薬のようなものだったのです。
スコットの前にもリベラーチェには若い男がいて、
「二の舞だぞ」と警告されても「ボクだけは違う」と思っちゃう。
このあたりも男女の関係と同じ(笑)。ま、恋愛ですから、男も女もないのでしょう。
なんだゲイ・カップルの痴話喧嘩か、と言う無かれ。
驚くのは、リベラーチェにマイケル・ダグラス、スコットにマット・デイモンですから。
ラブシーンもあるんですよ(笑)。ちょっとビックリしませんか?
その話題性に☆3つ。
「恋するリベラーチェ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.10.23

「潔く柔く」☆☆☆
「グランドイリュージョン」☆☆☆☆☆
「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」☆☆☆


またここに来て、多忙な日々に“超”の文字がつくようになりました(笑)。
日程が終了して、ゴミ箱へと捨てられてしまう試写状たち…。
あの中に名作もあったろうにと思うと切ないものです。
人間と同じで、出会うも、出会わないも運命だったんじゃないかなと、
そんなふうに考える今日この頃。
正直今ひとつと感じた作品も、運命的出会いだったかと思えばかわいいものです(笑)。
さ、今週は3本です!



「潔く柔く」は、いくえみ綾の超人気コミックの映画化。

カンナとハルタは幼なじみ。
同じ高校に進み、クラスメイトの朝美と真山を加えた4人の仲良しグループで、
いつも一緒に行動していました。
ところがカンナが真山に告白されて、戸惑いながらも2人きりで行った花火大会の夜、
ハルタは交通事故で死んでしまうのです。
ハルタの携帯にはカンナへのメッセージが打たれていました。
それからカンナは恋することができなくなってしまったのです。
大人になり、映画の宣伝会社に勤めるようになったカンナは、出版社の赤沢と出会います。
嫌なヤツだと思いながらも、なぜか気になる存在に。
実は赤沢にも、辛い過去があったのです…。

原作は04年から10年にかけて連載され、単行本は13巻。
300万部近くを売る、伝説の少女コミックだとか。
主演は長澤まさみと岡田将生。
なんとなくこんな感じかなぁというのは見えるかもしれませんね。
収まるところに収まる安心感のようなものはあるかなと。まさに☆3つな感じです(笑)。
「潔く柔く」公式サイト



「グランドイリュージョン」は、トリック・エンターテインメント。

スライハンドマジシャン、脱出アーティスト、メンタリスト、ストリートハスラーと、
特殊な技能を極めたスーパーイリュージョニストの4人組“フォー・ホースメン”。
彼らはエンターテインメントなショーとして、
公開の場で銀行や資産家のお金を次々奪っていくんですね。
その盗みにポリシーはあれど、証拠はない。
警察も、逮捕はするけどすぐに釈放する始末。
ホースメンの次の標的は?そして彼らの真の正体とは…。

いやぁ、よくできてましたョ!
敢えてストーリーもざっくり紹介しましたが、
見て楽しむにはこれぐらいがちょうどいいはず。
そのストーリーに矛盾はないし、コレ、脚本が秀逸です!
映像にするのは大変だったはず。
久々にこの手の作品で心の底から「面白いなぁ!」と思いました。
何度も見ると、きっと面白さが倍増する、そんな作品です。
噂によると、もう続編らしきも決まってるとか?
是非ご覧になってみて下さい!☆5つ。
「グランドイリュージョン」公式サイト



「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」は、香港のサスペンス・アクション。

香港の繁華街で起こった爆破事件。
同時に警官5人が拉致されるという事件も起こり、テロと誘拐事件と断定。
捜査の指揮を執る“行動班”の副長官のリーは、拉致された5人の中に、
自分の息子がいると知り、非常事態を宣言するのですが、
「親族が関与した事件の指揮は執れない」規定を破るリーに対し、
“管理班”の副長官であるラウは職権乱用だと詰め寄ります。
というのも、リーとラウは、次期長官候補のライバル同士だったから。
その後、犯人から身代金要求の電話が入りますが、この一連の犯人とのやり取りの中で、
身代金の一部をラウが着服したとの疑惑が浮上。
今度は汚職事件へと発展していったのでした…。

あまりうまく話せてないなと思いつつ(笑)、
でもこれまた詳細に書くのはマイナスプロモーションになっちゃう気がして。
複雑怪奇に入り乱れた香港警察の内情を描き出した作品です。
ここまでじゃなくても、やはり部署、部門でメラメラ燃えるライバル心というのがあるのでしょう。
意外な黒幕にビックリするかも?そして彼らの正義とは?☆3つ。
「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.10.18

「キタキツネ物語−35周年リニューアル版−」☆☆☆
「眠れる美女」☆☆☆
「ブロークンシティ」☆☆☆
「マイク・ミルズのうつの話」☆☆☆☆


先日、話題の邦画を見に、映画館に行きました。
平日とはいえ、混んでるんだろうなと心配して行ったらガラガラ…。
意外と空いてるんですね。
この時間に映画を見に来られる人ってどんな人なんだろうと、
自分を棚に上げて考えちゃいました(笑)。
さ、今週は4本です!



「キタキツネ物語−35周年リニューアル版−」は、
1978年に公開された動物ドキュメンタリーのリニューアル版。

北海道のオホーツクに、流氷と共にやってきた一匹のキタキツネがいます。
恋をして、子をもうけ、過酷な環境の中で生き抜いていく姿を描いた作品で、
35年前には一大ブームを巻き起こし、劇場前には長蛇の列。
TVで公開するや45%近い視聴率を取ったという伝説の映画なんですね。
今回のリニューアルにあたっては、
“子別れ”という最後で最愛の親子の儀式を入れたいと、
3シーズンかけてやっと撮れたそのシーンを挿入。
また、キタキツネや彼らを見守る木がしゃべるというのが新たな演出で。
擬人化することでドキュメンタリーの良さが無くならないかとの不安にGOサインを出した決め手が、
「今は白い犬がしゃべる時代だから」(笑)。
あれから35年。この映画を見ると、正直、時代は変わったかなぁという気がします。
あなたはどう感じるのでしょう?☆3つ。
「キタキツネ物語−35周年リニューアル版−」公式サイト



「眠れる美女」は、尊厳死がテーマのイタリア映画。

09年にイタリアで起きた尊厳死問題。
21歳で交通事故に遭い、17年も植物人間でいた女性の延命措置を、
両親が停止したいと訴えたもので、
国会はもとより国中を巻き込んでの一大論争となっていたのです。
そんな中、3つの話が進みます。
自らも妻の延命措置を停止させたことがある国会議員と、そんな父に不信感が拭えずにいた娘。
今、まさに植物人間状態の娘を持つ、元大女優。
薬物中毒で自殺願望の強い女と、生きる希望を与えたいと粘り強く治療にあたる男性医師。
生きる権利と死ぬ権利。
何が正しくて、何が間違いなのか。
それぞれの立場で“命”を考えるのでした…。

少々テーマが重いので、眉間に力を入れて見るタイプの映画かもしれません。
生死というのは自分の意思で決めるものではありませんが、植物人間になってしまうと、
死を選ぶという負の選択すらできなくなってしまう。
本当にこの状態で生き長らえていくことが、本人にとって幸せなのだろうかと、
周りは悩むわけですよね。
本来その選択は、常に“生きる”という
前向きなものに限って選ぶことができるものであって欲しいと思うのですが、
それもキレイ事かなと。難しい問題です。☆3つ。
「眠れる美女」公式サイト



「ブロークンシティ」は、マーク・ウォールバーグ、ラッセル・クロウ、
キャサリン・ゼタ=ジョーンズの豪華競演作。

警察を訳ありで辞職したビリーは、
浮気調査が専門の三流私立探偵として生計を立てていました。
そこへかかってきた1本の電話。それは“訳あり”にも少々関わっていた、
NY市長のホステラーからのもので、妻の浮気を調査して欲しいと。
調べてみると、浮気相手は、何と市長戦で接戦を演じている対立候補、
ヴァリアントの右腕と呼ばれるアンドリューだったのです。
妻からは「これが単なる浮気調査だと思う?」と、より多くの金額を提示され、
手を引くことを求められますが、ビリーは断ります。
するとアンドリューが何者かに殺されてしまうんですね。
市長の妻が話す驚愕の裏側。ビリーは自分も利用されていたことに気づくのですが…。

「この街は壊れてる(ブロークンシティ)」というセリフに象徴される、巨大な汚職の物語。
“ノンストップ・クライムサスペンス”というキャッチフレーズが確かにピッタリです。
軸となる俳優陣が豪華だと、それだけで映画が締まる感じがします。
煌びやかなNYの街。
その裏側に渦巻く、汚い金への執着が産むドロドロのストーリー。
ある程度の贅沢が出来れば、有り余るほどのお金なんて必要ないと思いません?
人間の欲は、げに恐ろしいものです。☆3つ。
「ブロークンシティ」公式サイト



「マイク・ミルズのうつの話」は、ドキュメンタリー。

映画監督のマイク・ミルズが自作映画のPRで来日した時、カフェで錠剤を飲む女性を見て、
これまでの日本とはおそらく違う、アメリカ的な何かが入り込んでるなと感じたそう。
それは、サプリメントを違和感なく取り入れる生活習慣。
さらに“うつ”がものすごく増えていると。
でも2000年までは、うつは精神科医の専門用語で、なぜ爆発的に広まったのか、
それを調べてみたそうなんですね。
すると1999年に、ある製薬会社がTVコマーシャルを打ったことに辿り着きます。
「心の風邪を引いてませんか?」。
うつは心の風邪だから、薬を飲めば数日で楽になると。
同時に“うつネット”なるもので自己診断ができるようになっており、
精神科医への診察を勧めていたと。うつへのハードルが急に下がった瞬間でした。
映画では複数のうつ病患者の日常を映していて、何がいいとか、悪いとか、
そんな監督の主張はないのですが、明らかに抗うつ剤が必要な患者さんと、
そうじゃなく、薬を飲み始めてしまったことで、
薬の常習性から抜け出せなくなってしまっている患者さんもいる。
「今はうつとの戦いじゃなく、抗うつ剤との戦いなんです」と語る女性もいて、
「そうだ、抜け出せ!頑張れっ」と声を掛けたくなります。
みんな人生にはうまくいかない時があって、そんな時は頭も痛ければ、気分も落ち込むんです。
それを「うつ病かも…」と素人判断して、安易に薬を服用するとこれが大変なことになる。
うつへの扉を開いちゃうんですね。
軽い薬から、どんどん重い薬へ。映画で描かれている重要な部分です。
この手の映画は、あまり一方面からだけ見てはいけないもの。
でも、おそらくうつじゃない人も薬がうつ病にしちゃう。そんな印象をボクは持ちました。
判断するのはあなたです。是非見てみて下さい。☆4つ。
「マイク・ミルズのうつの話」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.10.10

「カイロ・タイム〜異邦人〜」☆☆☆
「トランス」☆☆☆☆


映画「そして父になる」を、遅ればせながら見てきました。
福山雅治演じる野々宮に、自分を重ね合わせてしまいました。
正直、ボクもあんな感じです。違うのはお金持ちじゃないってところかな(笑)。
プライドと自尊心のギリギリのところに立ち、言ってることは正論でも、
時に“真っすぐ=尖った”言葉で人を傷つけちゃう…。
彼はそれでも離れていかない奥さんがいるからいいけど、ボクの場合はね。こ
んな性格、人格だと知りつつ、好きでいてくれる人が現れない限り独り身だなと(笑)。
そのほうが人を傷つけなくていいのかもと、映画の主眼とは違ったところで見て、
少々落ち込んだりもして(笑)。ま、それもまた人生。
今、メチャメチャ楽しいから、今のままがいいのかもしれませんしね。
ひとつ得れば、ひとつ手放さなくちゃいけないかも。
今、放すものは何ひとつありませんから。
さ、今週は2本です!



「カイロ・タイム〜異邦人〜」は、『映画で行く、“おとなの女の一人旅”』シリーズ第1弾。

女性誌のベテラン編集者として長年勤めてきたジュリエットは、
初めて長期休暇を取り、エジプトのカイロを訪れます。
目的は、国連職員の夫、マークに会いに行くこと。
マークは紛争地であるパレスチナのガザ地区にいて、ジュリエットが空港に着いた時、
迎えにきたのは夫ではなく、昔マークの警備を担当していた、エジプト人のタレクでした。
タレクは今、親のカフェを継いでいたのですが、マークからの信頼は厚く、
いつ戻れるかわからない自分に替わって、
ジュリエットの面倒を見て欲しいと頼まれていたのです。
好奇心旺盛なジュリエットは、
夫不在の淋しさを紛らわすためにひとりで町を歩こうとしますが、異国の地で、
異文化の町で、危ない目にも度々遭うことに。
そんな時、いつも助けてくれたタレク。
長い時間を共にするふたりの間に、特別な感情が湧いてくるのでした…。

子育ても一段落した女性が、夫がいながら、
心の隙間を埋めてくれる男性に胸をときめかせる。
ご婦人たちがちょっと憧れる“いけない秘めごと”ですよね(笑)。
ピラミッドの町を旅して、開放感から恋をして。
それを映画の中で、ヴァーチャルで楽しんでもらおうという企画のよう。
第2弾は来春公開予定だそうです。
世のご主人たち、あまり奥さんを放っておいてはいけませんョ(笑)。☆3つ。
「カイロ・タイム〜異邦人〜」公式サイト



「トランス」は、ダニー・ボイル監督最新作。

ゴヤの名画“魔女たちの飛翔”が出品されたオークション会場。
約40億円という高値でハンマーが落ちた瞬間、ガス弾が投げ込まれ、会場内はパニックに。
競売人のサイモンは、緊急時のマニュアル通り、絵画を袋に入れ、
隠し金庫へと向かったのですが、そこにはギャングのリーダー、フランクがいたのです。
実はサイモンとフランクはグル。
ところが、サイモンが筋書きと違う行動に出ます。
なんとフランクの首筋にスタンガンを突きつけたのです。
フランクに殴られたサイモン。
その際、頭を強打し、サイモンは記憶の一部を失ってしまうんですね。
袋を奪ったフランクがその袋を開けてみると、中にあったのは額縁だけ。
絵はどこかに消えていたのです。
サイモンを問い詰めるフランク。しかし、サイモンには記憶がない。
どこに隠したかはもちろん、なぜ隠したのかも。
フランクは催眠療法を思いつき、エリザベスという女性催眠療法士に
サイモンの記憶を呼び戻すよう依頼するのです…。

物語は、サイモン、フランク、エリザベスの3人を中心に展開し、
それぞれがひとクセもふたクセもあるキャラクターだから面白い。
よく考えられた謎解きのミステリー映画です。
この手の映画の際によく書く言葉ですが、あんまりあれこれ話すのは野暮(笑)。
「トレインスポッティング」や「スラムドッグ$ミリオネア」の監督ですから、
捻らないわけがない。すべては劇場でご覧あれ。☆4つ。
「トランス」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2013.10.3

「今日子と修一の場合」☆☆☆
「飛べ!ダコタ」☆☆☆
「パッション」☆☆☆☆
「フローズン・グラウンド」☆☆☆
「レッドドーン」☆☆
「R100」☆☆


最近、映画の試写かなと思って行くと、そうではなく、
BSなどのTVドラマの試写だったりすることがあります。
先日見たのも、nottvで10月5日(土)から放送の
「ハウス・オブ・カード 野望の階段」というドラマの試写で、1話と2話を見てきました。
でも全13話なので、なんかモヤモヤしたままで(笑)。
ストーリーは、とある政治家が、官房長官の座をもらえるからと粉骨砕身、
大統領候補のために頑張ったのに、当選したにもかかわらず、官房長官は別の人間に。
その復讐をやんわりジワジワとしていくというお話。
海の向こうでも“倍返し”なんですね(笑)。
主演はケヴィン・スペイシーですから、面白かったですョ。
よかったら是非ご覧下さい。
さ、今週は6本です!



「今日子と修一の場合」は、奥田瑛二監督作品。

南三陸町の漁師の妻として、ごく普通の生活を送っていた今日子。
夫が病気になり、生保レディとして働き始めたのですが、成績が上がらず、
上司に言われるがままに身体を売っての営業を始めるのですが、それが家族にバレて、離婚。
たった一人の息子とも会えなくなってしまったのです。
今日子はあてもなく東京へ。そこで風俗のスカウトの男と出会うんですね。
南三陸町に住む修一は大学を目指す受験生。
リストラされて荒れる父に努力を否定され、父が母に暴力を振るった瞬間、
修一は父を殺してしまったのです。
刑期を終え、社会に戻った修一は、東京の小さな町工場で働きます。
そんな時、東日本大震災が起こるのです。
あの地震が、今日子と修一の人生を、さらに変えていくのでした…。

交わるような、交わらないような、今日子と修一。
でも間違いなく、震災がふたりの人生をも揺らしました。
それがどちらの方向に向き直って、着地するのか。それを考える映画かなと。
すっきりはしません。これが奥田瑛二監督独特の空気感。健在です。☆3つ。
「今日子と修一の場合」公式サイト



「飛べ!ダコタ」は、実話に基づくストーリー。

終戦間もない、昭和21年1月。佐渡島の高千村に、一機の飛行機が不時着します。
それはイギリスの輸送機、ダコタでした。
村の人々はざわめきます。戦争で負傷して、もう当たり前の日常を送れなくなった若者もいる。
命を落とした者もいる。ついこの前まで敵国として戦ってきた国の人間を助けるべきか、否か。
それでも、“困った人を助けるのが佐渡ん人間”というしきたりに従って、
なんとか再びダコタを飛ばそうと、村中が力を合わせるのでした…。

今から67年前に実際にあった出来事を映画化。
周辺国との関係がきな臭い今の日本において、こんなことがあったんだよというのを、
ひとつの教訓として感じたい1本でしょうか。
国と国とはいがみ合っていても、個と個ならそんなことはないのにね。
スケールの大きさこそありませんが、飛行機ものがブームの2013年。
その中の1本として見ておくといいかもしれません。☆3つ。
「飛べ!ダコタ」公式サイト



「パッション」は、“ヒッチコックの後継者”と評された、ブライアン・デ・パルマ監督の最新作。

広告会社の重役にまで登りつめたクリスティーン。
彼女の仕事ぶりに憧れ、クリスティーンを支えていたアシスタントのイザベルは、
野心家のクリスティーンに自分のアイデアを盗まれ、手柄を取られてしまうんですね。
その後、恋人も、仕事も、名誉も、すべてを奪われたイザベルの心に、
クリスティーンへの殺意が芽生えてきたのです。
そしてそれを実行する時が来たのでした…。

非常にシンプルなあらすじですが、スリルとサスペンスですから、
これ以上語るのは野暮ってなもので(笑)。
美しい女性同士の愛憎劇。この復讐劇は面白かったですョ。
冒頭の話じゃないけど、“倍返しだっ”(笑)。
人はこういうストーリーに快感を得るのかもしれませんね。☆4つ。
「パッション」公式サイト



「フローズン・グラウンド」は、ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック主演のサイコ・サスペンス。

モーテルの一室で助けを求める17歳の娼婦、シンディ。
警察が事情を聞くと、客の男に殺されそうになったと。男の名はロバート・ハンセン。
ところが彼にはアリバイがあり、善良な市民として評判の人間だったのです。
客と娼婦の痴話ゲンカだろうと、一度は捜査を打ち切った警察でしたが、アラスカ州警察の部長刑事、
ハルコムは何かがおかしいと、再捜査を始めるんですね。
「ハンセンは限りなく黒に近い」。
そう確信しても、逮捕にはシンディの協力が欠かせないと。
ところが、17歳の若さで何度も人に裏切られ、
人を信じることができなくなっていたシンディはまた騙されるのではと、協力を拒むんですね。
その身に再び危険が迫っていることを、シンディは気づいていなかったのです…。

12年に渡り、24人以上の女性を監禁、暴行し、
最後はアラスカの荒野で“人間狩り”の的にするという残忍な手口。
83年に起きた、実際の事件に基づく話だというから驚きです。裁判で出た判決は、懲役461年!
本当は人を信じたいシンディの人生までをも、ハルコムは救いたかったのでしょう。
結末はわかっているとはいっても、ハラハラドキドキ。楽しめる1本ですョ。☆3つ。
「フローズン・グラウンド」公式サイト



「レッドドーン」は、北朝鮮に占領されたアメリカが舞台のサバイバル・ムービー。
アメフトの人気選手のマットは、試合に負け、気晴らしに彼女とパブに出掛けます。
マットの兄で、海兵隊員のジェドが一時休暇で帰郷していて、
反目していた兄弟も久し振りの再会を果たすのです。 そんな時、停電が起こります。
すぐに回復するだろうとの予想はハズれ、それぞれ帰宅。
翌朝、目覚めたのは鳴り響く銃声の音ででした。
いったい何が起こっているのかもわからないまま外に出ると、
戦闘服に身を包んだ北朝鮮の兵士たちに町は取り囲まれていたのでした…。

そこから大事な人を守るためのサバイバルが始まるんですが、見ていてふと思ったんですね。
「ちょっと待てよ?これって敵が北朝鮮である必要がないんじゃない?
エイリアンでもいいんじゃない?」。
その感想を宣伝会社の人に話すと、「そうなんです…」。ダメじゃん(笑)。
サバイバルものが好きなら楽しめるかな。☆2つ。
「レッドドーン」公式サイト



「R100」は、4作目となる松本人志監督作品。

有名家具店に勤める片山貴文は、
謎のクラブ『ボンデージ』に入会してしまいます。
日常生活の中に突然現れるボンデージ姿の女性たち。
そのプレイは確かに刺激的なんですが、徐々にエスカレート。
会期は1年で、途中で脱会できないという決まりがあり、片山は辞めたくても辞められなかったのです。
仕事や生活に支障をきたすからと、意を決して組織と戦おうとするのですが、
その行動が巨大組織の怒りを買うことになったのです…。

松本人志監督作品はわからない(笑)。 ホントに申し訳ありませんが、凡人のボクにはわかりません。
簡単に言えば、笑いの種類とか、ツボが違うんでしょうね。
タイトルの意味がわかっても笑えませんでした。
かなりマニア向けの、それも松本人志マニア向けの映画であることは間違いなさそうです。
ごめんなさい。☆2つ。
「R100」公式サイト

 
 



 
 
 週末公開の映画……2013.9.26
「謝罪の王様」☆☆☆
「タンゴ・リブレ 君を想う」☆☆☆
「椿姫ができるまで」☆☆☆☆


9月に入って、試写を見るペースが少し落ちました。
お陰さまで仕事が忙しく、どちらを優先する?といった時に、試写は後回しにせざるを得なくて。
そうすると気になるんですよね、見られなかった映画が(笑)。半分、脅迫観念に近いかも。
それほどまでに映画って魅力的だということの裏返しでもあるのですが。 さ、今週は3本です!


「謝罪の王様」は、宮藤官九郎・脚本、水田伸生・
監督、主演は阿部サダヲのオリジナル・コメディ。

「弁護士に相談する前に、まずは東京謝罪センターへ!謝って済むから警察はいりません!」。
そんなキャッチフレーズで“謝罪師”の仕事をする黒島讓。
そんな彼の元に、次々と依頼が舞い込みます。
ヤクザの車に自分の車をぶつけちゃった世間知らずの帰国子女。
セクハラで訴えられている下着メーカーの社員。
バカ息子が起こした事件のために開いた謝罪会見で余計にひんしゅくを買った大物芸能人夫婦。
娘が幼い頃、つい手を上げてしまったことをずーっと心の傷として抱く国際弁護士。
そして、黒島自身。
破天荒な謝罪の仕方で、果たして相手は許してくれるのでしょうか…。

賑やかというか、うるさいというか、全編ハイテンションなので、正直少々疲れます(笑)。
ただ、マスコミ用にと配られたプレスからして遊び(謝罪?)がいっぱい!
笑いのツボで評価は変わるはずで、個人的にはあんまり好きなタイプじゃないのですが、
ここまで徹底するならという感じ?感動とかは求めずに見に行って下さい。☆3つ。
「謝罪の王様」公式サイト



「タンゴ・リブレ 君を想う」は、ベルギー、ルクセンブルク、フランスの合作映画。

刑務所の看守として働くJC。
真面目な彼の趣味は、週に1度、教室で習うタンゴぐらいでした。
ある日、その教室にアリスという女性がやってきます。
彼女と踊ることになったJCは、胸をときめかせるんですね。
ところが、職場の刑務所で、面会に来たアリスの姿を見つけます。
なんと彼女はある事件の共犯者2人と付き合っていたのです。
ひとりとは夫婦、ひとりとは愛人として。
男は共にアリスを共有しているとの意識で、トラブルもなく仲良しなのでした。
不思議な三角関係にもうひとり、アリスには15歳になる息子もいたのです。
そんな自由な生き方を貫くアリスに、JCはますます惹かれていくのでした…。

もちろん、看守と囚人の家族が接近するなんてタブーですが、
アリスに惹かれるJCは気持ちを止められなくなる。
生真面目な男が陥る禁断の恋。そこに情熱のタンゴが絡んでくる。
タイトルから想像するに、もっと音楽、すなわちタンゴにスポットライトが当たってるのかと思いきや、
タンゴは重要なれど、ツールのひとつ。
物語性に重きを置いているようです。その辺に肩透かしを食らわないよう。☆3つ。
「タンゴ・リブレ 君を想う」公式サイト



「椿姫ができるまで」は、ドキュメンタリー。

今年はイタリアのオペラの巨匠、ジュゼッペ・ヴェルディの生誕200年。
それを記念して、ヴェルディ作のオペラの舞台裏を描き出したドキュメンタリー映画です。
2011年の夏、南仏の由緒ある音楽祭で上演された『椿姫』。
主演の名優ナタリー・デセイに、演出家のジャン=フランソワ・シヴァディエは熱を持って演技指導。
自身の『椿姫』の解釈を伝えるのです。
時にぶつかり、そして理解し、ひとつひとつのシーンを積み重ね、構築していく。
他の出演者しかり、思いが強いからこそ、ぶつかり合うのです。
この映画を見て、すごく思ったことがあります。
それは、「思いを共有できなければ、いいものは絶対に作れない」ということ。
俳優陣が、音楽監督が、演奏家が、衣装担当が、またメイク担当が。
すべての人が演出家の思いをきちんと理解し、みんなのベクトルが同じ方向を向いている。
もしかすると作品の解釈は違うかもしれない。
それでも向くべき方向はこっちだと、意思の疎通ができているんですね。それこそが大切なことだと思うのです。
ぶつかり合うのも、そんな前提があってこそ。じゃなければ、個の主張に終わってしまいますから。
芸術のみならず、様々な場面に言えること。勉強になりますョ。☆4つ。
「椿姫ができるまで」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2013.9.20
「ビザンチウム」☆☆☆

台風が過ぎて、秋の気配が深まってきました。映画のシーズン到来ですね。
さ、今週は1本です!



「ビザンチウム」は、ヴァンパイアもの。

16歳のエレノアは、8歳上のクララと共に放浪の旅を続け、
辿り着いたのは、とある海辺のリゾート地。
どんな男をも魅了する妖艶さを持つクララは、“ビザンチウム”という
古ホテルを経営するノエルという冴えない男を手玉に取り、そこを住処にしたのです。
一方のエレノアは、自分に似た孤独の影を持つ若者フランクと知り合います。
フランクは白血病を患っていて、永くは生きられない身。
それでもふたりは恋に落ちるんですね。
しかし、エレノアには人に言えない秘密があったのです。
実はエレノアはヴァンパイアで、人の生き血を吸いながら永遠の命を生きてきたと。
クララも同じヴァンパイアで、姉ではなく母親だったのです。
これを知った人間は、皆殺される定めにあったのですが、
“心”を持つエレノアはクララのやり方に我慢ができず、誰かに知ってもらいたいと、
200年にも渡る、自分の生い立ちを記した書物をフランクに託すんですね。
動揺しながらも、すべてを明かしてくれたエレノアへの愛が深まるフランク。
しかし、エレノアの行動に、クララが気づいたのです…。

他にも物語には伏線があって、なぜクララがヴァンパイアになったのか、
エレノアもそうならなければいけなかったのか。
そこにもドラマがあって、実は追われる身のこの母子に、安息はなかったのです。
200年も逃げ続けるのは疲れますよねぇ(笑)。
ゾンビもヴァンパイアも、人間臭さがあると物語になるんだなぁと。
何となくもの悲しいストーリーに、この映画の良さがあるような気がします。☆3つ。
「ビザンチウム」公式サイト
 
 



 
 
 週末公開の映画……2013.9.14
「劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐」☆☆
「ストラッター」☆☆☆
「ベニシアさんの四季の庭」(☆は無し)
「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」☆☆
「Miss ZOMBIE」☆☆☆

映画の試写かと思ったら、CS放送の海外TVドラマの試写だったなんてことがあります。
最近は海外の著名な映画監督が、映画はリタイアしてTVに進出することも多いそう。
変化の始まりでしょうか?
さ、今週は5本です!



「劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐」は、
人気TVドラマの映画化。

日米でほぼ同時に起きた、コンピューターウイルスによる送電線破裂事件。
日本では鉄道が、アメリカではFBIの一室が爆破されたのです。
ウイルスを解析した結果、マドカという謎の女性が作った
“ウィザード”と呼ばれるウイルスの仕業と判明。
マドカが犯人である可能性が高いと、日米が合同で捜査を始めます。
そのFBI側の捜査員の中にアタルがいました。
アタルは生まれついてのサヴァン症候群。コミュニケーションは苦手でも、
一度見聞きしたものは忘れない記憶力と解析能力は抜群で、
FBIの内部組織“SPB”で訓練を受けていたのでした。
実はマドカもSPB出身。アタルとは大の仲良しだった彼女が本当に犯人なのか、
だとしたら狙いは何なのか?アタルたちは、事件の真相に迫るのでした…。

2012年4月から放送された、中居正広主演の人気ドラマの映画化。
ボクはドラマを見ていなかったので知らなかったのですが、
かなりギャグを織り交ぜてるんですね。
それがあまり笑えなかったのと、障害を持つ人はドキッとするんじゃないかというセリフもあって、
正直ギリギリかなと。ラリーさんの英語の発音も、うーん(笑)。
「劇場版 謎解きはディナーのあとで」と似た感想でしょうか。
おそらくドラマで好きだった人には“あのキャラが帰ってきた!”と受け入れられるんでしょうね。
ごめんなさい。☆2つ。
「劇場版 ATARU‐THE FIRST LOVE & THE LAST KILL‐」公式サイト



「ストラッター」は、250万円という低予算で作られたロック・ムービー。

ブレットはロック・バンドのリーダー。
ところが、メンバーのひとりが突然の脱退宣言でバンドは解散。
追い討ちをかけるかのように、恋人だったジャスティーンからも、突然、別れを告げられてしまいます。
悪いことに、彼女の新しい恋人は自分がリスペクトしているミュージシャンのデイモンだと知り、
自暴自棄に。
楽器店でアルバイトをするも、実が入るはずもありません。
ところがそこにデイモンがやってきて、自分もジャスティーンとは別れたと。
妙な友情が芽生えたふたりは、一緒に仕事をし始め、音楽仲間に誘われて、
演奏ツアーへと旅立つのでした…。

インディーズ映画で成功した面々の、様々な援助でできたという低予算ムービー。
そのB級感は、返って“味”になっていると思います。
音楽と恋と挫折と達成感。誰もが身近に感じる、青春というテーマですからね。
ロード・ムービーと言ってもいい構成で、
アメリカらしいカラッとした空気感もまた、B級映画ならでは。
好きな人は好きだと思いますョ。☆3つ。
「ストラッター」公式サイト



「ベニシアさんの四季の庭」は、日本に暮らす英国貴族の女性を追ったドキュメンタリー。

ベニシア・スタンリー・スミスさんは、
1950年、イギリスの貴族の家に生まれた正真正銘のお嬢様。
ところが、その暮らしに本当の幸せはないと、祖国を旅立ち、
世界中を放浪するんですね。
そして辿り着いたのが日本。京都大原の地でした。
住まいは築100年以上の古民家で、たくさんの草花が咲くこの家の庭が大好き。
自然と調和した彼女の生活がNHKで取り上げられ、話題になっていったのです。
結婚、離婚、再婚、夫の浮気、娘の身体の問題など、生きていれば大変なことはいくらでもある。
大切なのは、どんな時も前向きに、笑顔と感謝を忘れないこと、と語るベニシアさん。
日本に来て43年だそう。
当の日本人が忘れてしまった大事なことを思い出させてくれるドキュメンタリーかもしれません。
「ベニシアさんの四季 の庭」公式サイト



「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」は、
ヨーロッパの4監督で作るオムニバス映画。

ポルトガル北西部の古都・ギマランイス。
国家発祥の地と言われ、2001年にユネスコの世界遺産に登録。
2012年、EUによって欧州文化都市に指定され、
1年間集中的に文化行事を展開する中で、このオムニバス映画も企画されたとか。
アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラの4監督の作品。
“ヨーロッパ映画界を牽引する4人の巨匠たちが競作!”とのキャッチ・コピーだけあって、
芸術的というか、抽象的ではないんでしょうけど、ちょっと難解。
日本人にはお国柄がわからないので、それが一体何の象徴なのかがわからなかったりもして。
すみません。勉強してから見直します…。☆2つ。
「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」公式サイト



「Miss ZOMBIE」は、SABU監督、脚本のゾンビ映画。

裕福に暮らす寺本家に送られて来た大きな荷物。
開けてみると、中には檻に入れられた沙羅という名のゾンビが入っていました。
取り扱い説明書と拳銃が付いてはいるものの、
肉さえ与えなければ人間は襲わない種族とのこと。
使用人の男たちは身体を弄び、近所の子供たちは石を投げ、
大人は身体に容赦なくナイフを突き刺す。
痛みを感じない沙羅は、ただ静かに自分の住まいへと帰るのでした。
ある日のこと、寺本家のひとり息子の健一が、過って川で溺死してしまいます。
母親は泣きじゃくり、「ゾンビでもいい。健一を生き返らせてっ」と沙羅に頼みます。
その言葉を聞いた沙羅は、健一の首元に優しくも鋭い牙を立てるのでした…。

お腹に帝王切開の跡を持つ沙羅には母性があり、健一をゾンビにしたことで、
健一は実の母以上に沙羅を慕ってくる。
母に沸き起こる嫉妬の気持ち。そしてまた事件が起きると。
結末は言いませんが、なかなかよくできてました。もしかしたら涙する観客もいると思いますョ。
そんな意味では異色のゾンビ映画です。
またブームなんですかね。今年はゾンビもの、多かったです。
真夏のホラーゆえ、この手のヒューマンもの(ゾンビにヒューマンもないけど・笑)は
晩夏〜秋の公開で正解です。☆3つ。
「Miss ZOMBIE」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.9.4
「アップサイドダウン 重力の恋人」☆☆☆
「サイド・エフェクト」☆☆☆☆
「共喰い」☆☆☆☆☆

8月末で、今年見た映画の数は97本。1ヶ月平均12本見てる計算になります。
ほとんどが試写会ですから、ありがたいことです。
なるべく多くの作品に触れて、評価の基軸をさらにしっかり持てるよう頑張りたいと思ってます。
引き続き、ご愛読下さいますように!
さ、今週は3本です!



「アップサイドダウン 重力の恋人」は、SFラブ・ファンタジー。

宇宙のあるところに、真逆に引力が働く“二重引力”の双子惑星がありました。
下の世界には貧困層が、上の世界には富裕層が住み、行き来は堅く禁じられていたのでした。
ところが下の世界に住むアダムが立ち入り禁止の山の頂上に上がった時に、
上の世界の少女エデンと出会い、恋に堕ちてしまうんですね。
長いロープを使って、逢瀬を重ねるふたりでしたが、
境界警備隊に見つかってしまい、エデンは落下。
ピクリとも動かない彼女の容体さえわからないまま、
ふたりの仲は引き裂かれ、アダムは厳しく罰せられるのでした。
ところが10年後、ひょんなことから、エデンが元気でいることを知るアダム。
命賭けでエデンに会いに行くのですが、エデンは事故の影響で、
あの頃の記憶を失っていたのでした…。

2つの世界を繋ぐ建物がひとつだけあって、そこはトランスワールドという巨大企業が管理してると。
エデンは偶然にもそこで働いていて、アダムはその企業に就職します。
もちろん、下の世界の人間として。
会社のフロアには、互いに上から人がぶら下がってる感じで働いていて、
もちろん行き来はダメなんだけど、
アダムはその禁を破って記憶を失ったエデンに会いにいくと。
でも、反対の世界でできた物質は、反対の世界で長く接してると燃えちゃうんですね。
食事の約束をしても、長い時間いると靴に火がついちゃうみたいな(笑)。
そんな苦労を乗り越えて進むラブ・ストーリーです。
リアリティーよりファンタジー。そこを面白いと感じられるかどうかだと思います。☆3つ。
「アップサイドダウン 重力の恋人」公式サイト



「サイド・エフェクト」は、スティーヴン・ソダーバーグ監督
“最後の劇場映画”と言われている心理サスペンス。

エミリーは、エリート金融マンのマーティンと結婚。美男美女でお金持ち。
誰もがうらやむカップルの誕生と、皆が祝福した結婚式の日に、
マーティンはインサイダー取引で逮捕。4年の実刑を受けることになります。
財産も没収され、幸せの絶頂から突き落とされたエミリーでしたが、
夫の出所を待ち、出所後に新たな生活を築き始めます。
ところが、エミリーの心は病んでおり、車で駐車場の壁に自ら激突。
その時、担当した精神科医がバンクスでした。
バンクスはエミリーが過去にかかっていたという女医のシーバート教授に事情を聞きに出向き、
本人の希望もあり、相談の結果、新薬のアプリクサを与えることにします。
見る見る回復したエミリーでしたが、ある日、悲劇は起こります。
エミリーが夫を包丁で刺し殺したのです。
ところがエミリーには記憶がない。変わり果てた夫の姿を見てうろたえるばかりのエミリー。
裁判所も新薬アプリクサの副作用だと結論づけるのですが…。

サイド・エフェクト=副作用。
なかなか面白かったですョ。これは結末が読めない。
紹介したストーリーも、これでいてまだ序章ですから。
詳細は書かない方が絶対に面白いので、劇場で観てみて下さい。2回観てもいいかも。
エミリーに「ドラゴン・タトゥーの女」のルーニー・マーラ、
バンクスにジュード・ロウ、シーバート教授にキャサリン・ゼタ・ジョーンズなど、豪華俳優陣です。
ソダーバーグ監督も引退宣言ではないけれど、劇場映画はラストとの発言があったとか。
もったいないなぁと思わせる、さすがの秀逸作品です。☆4つ。
「サイド・エフェクト」公式サイト



「共喰い」は、芥川賞作家、田中慎弥の小説の映画化。

昭和63年の夏、山口県下関市の川辺と呼ばれる地域。
17歳の遠馬はそこに暮らしていました。
父は愛人の琴子を家に入れ、戦争で左手首から下を無くした母は、
義手を着け、ひとりで魚屋を経営していました。
父はセックスの時に女を殴る性癖があり、知らずに結婚した母は、夫から離れようと別居。
「あの男の血を引く人間はおまえだけでいい」。
母は妊娠した2人目を躊躇なく中絶したといいます。
夜になると、琴子を殴る音と声が、嫌でも遠馬の耳に届くのでした。
そんな遠馬にも千種という彼女がいて、神社で幼いセックスをする仲。
千種は遠馬の父の性癖を聞いていて、
その遺伝子を持つことに頭を悩ませる遠馬を優しく諭します。
しかし、祭りの日に、事件は起こったのでした…。

これもあんまり詳しくは書きません。
登場人物はさほど多くなくても、それぞれが濃く、なんとも重い空気に包まれます。
宣伝文句に“原作ものを超越した”とありますが、色使いや、全体のトーンなど、
確かに映像にしたからこその上積みがあるのかなと。
さらに、ラストは原作と違うそうです。原作を読んだ方も改めてどうぞ。
性、暴力、天皇崩御…。タブーとされる要素でまとめ上げた、昭和末期という時代。
少年の葛藤、生きるとは、そして遺すとは。よくできた深い作品だと思います。
原作を読んでいないボクが軽々しく言ってはいけないのでしょうが、
ラストはこれでよかったと思うのですが。満点の☆5つ。
「共喰い」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.8.30
「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」☆☆☆
「ジェリー・フィッシュ」☆☆☆
「美輪明宏ドキュメンタリー〜黒蜥蜴を探して〜」☆☆☆

試写の開演直前に来た男性が臭い。申し訳ないけど、ものすごく汗臭い。
ひとつ空席を挟んで、ボクの左側に座ったんです。隣りじゃなくてセーフ。
でも、右隣りに座られた女性は席を立って、見づらい前方へと移っていきました。
大勢いるところに来るんだから、ある程度清潔にしてくるのもマナーですよねぇ。
さ、今週は3本です!


「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は、
2011年、フジテレビの深夜に放送されていた人気アニメの映画化。

じんたん、めんま、あなる、ゆきあつ、つるこ、ぽっぽ。
仲良し小学6年生グループは、“超平和バスターズ”と名乗り、
自分たちで作った秘密基地でよく遊んでいました。
ところが、事故でめんまが死んでしまいます。
それから5年後、その悲劇をきっかけに離れ離れになってしまった彼らに
願いを叶えてもらいたいと、めんまが幽霊になって現れたのです。
しかし、その姿はじんたんにしか見えず、
めんまも自分の願いが何だったかを忘れてしまっていたんですね。
半信半疑ながら、久々に集まる“超平和バスターズ”の5人。
じんたんの必死な姿に、止まっていた時間が動き始めたのでした…。

ボクはTVのアニメを見てなかったので、
とりあえずあらすじは事前に読んでおきました。
「大人が泣けるアニメ」として有名だったようですね。
ただ、映画は“泣かせよう、泣かせよう”が強過ぎた気がしました。
全編泣かせようみたいで。
オリジナルもこんな感じだったのかなぁ?
安城鳴子で“あなる”。どうしてもこのニックネームだけは…。
なんて、ファンには怒られそう(笑)。☆1つサービスしときます。☆3つ。
「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」公式サイト



「ジェリー・フィッシュ」は、
『女による女のためのR‐18文学賞』作品の映画化シリーズ第2弾。

宮下夕紀は女子高生。クラスの中では浮いた存在でしたが、学校で水族館に行った時のこと、
クラゲの水槽の前で同級生の篠原叶子に声を掛けられ、気づけばキスをされていたのです。
それからというもの、夕紀は叶子が気になって仕方がない。
しかし、叶子は夕紀の気持ちを知りながら、同級生の男子と付き合って、体を重ねます。
そのうち、叶子の悪い噂 が夕紀の耳に届いてきて、夕紀の心は激しく揺れるのでした…。

思春期の少女たちを、ただ揺らめいて泳ぐクラゲに例え、
刺さると痛い毒を、彼女たちの日常の残酷さに見るという、そんなコンセプトのよう。
若い女の子の同性愛。ボクらにリアリティは感じられないけど、さすが“R‐18”。
ドキドキしながら見てました(笑)。
こういう作品に理屈はいらないのかもしれないけど、深みを求めるのは違うかも。
新体操の元選手と、ミスマガジン審査員特別賞受賞アイドルの体当たりの演技に☆3つ。
「ジェリー・フィッシュ」公式サイト



「美輪明宏ドキュメンタリー〜黒蜥蜴を探して〜」は、
2010年にフランス人監督が撮ったドキュメンタリー。

今、再び脚光を浴びる美輪明宏。
性別を超えた存在で、歌に芝居に、そしてスピリチュアルにと活躍する彼?彼女?の、
幼い頃からの生い立ちを追ったドキュメンタリー。
多くの著名人のコメントも、美輪明宏の素顔を明らかにしていきます。
「デヴィッド・ボウイやボーイ・ジョージが出てきても、
日本人は誰も驚かなかったのは、ずっと前から私がいたから」
なんて言えるのは美輪さんぐらいですよね(笑)。
2010年のドキュメンタリーですから、昨年の紅白歌合戦には触れてません。
またブームに大きく火が着くと、この映画のスタッフが予見していたとすれば、
彼らもまたそんな能力の持ち主?
美輪さんを携帯の待ち受けにすると幸せになるなんて言われた時もありました(笑)。
興味のある方は是非!☆3つ。
「美輪明宏ドキュメンタリー〜黒蜥蜴を探して〜」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.8.22
「上京ものがたり」☆☆☆☆
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」☆☆☆☆

これだけ暑いと、本当に動くのがイヤになって、
試写会のスケジュールにも「ま、いっか…」となってしまいます。
ゆえにボクの手帳には最終試写を意味する“ラスト”の文字がいっぱい。
そうなると自分との戦いです(笑)。
“出逢いは自ら積極的に”ですもんね。頑張ります!
さ、今週は2本です!



「上京ものがたり」は、漫画家・西原理恵子の半生記。

絵が大好きな菜都美は、美大に通うために上京したものの、
家賃を払うのが精一杯。画材も買えずにいました。
そんな菜都美を見た大学の友達が紹介してくれたのは、キャバクラのバイト。
ところがセクハラに耐えながら働いて、顔面神経痛になる始末。
そんな中で、良介と知り合い、優しい彼と一緒に暮らし始めますが、
良介はプータロー。働きもせず、ゴロゴロするばかり。
美大でも成績は最下位で、上京を悔やんだ菜都美でしたが、
シングルマザーのキャバクラの先輩、吹雪と娘の沙希に、
「最下位には最下位の戦い方があるでしょ。私たちはあなたの絵が好き」
と励まされ、菜都美は一念発起。
自分の絵を売り込もうと、出版社を回り始めるのでした…。

主人公の菜都美は西原理恵子さん自身。
彼女の自伝は不思議と胸を打つんですね。「女の子ものがたり」もよかったし。
たぶん人生には運命の分岐点みたいなものがあって、
彼女はギリギリのところで“正解”を選んで来たのでしょう。
そのギリギリ感にドラマが生まれているような気がします。
主演は北野きい。彼女って、こんなに声ハスキーだったっけ?
それでもちょっとした仕草が可愛いんだなぁ(笑)。
必要とされることのありがたさ、頑張ることの大切さを教えてくれる作品です。
☆4つ。
「上京ものがたり」公式サイト



「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、映画化としては4年振りとなるシリーズ第2弾。

2259年、USSエンタープライズは、未開の惑星を探査中にトラブルに巻き込まれ、
艦長のカークは、原住民と隊員を救うために、あえて重大な規則違反を犯すんですね。
地球に戻ったカークを待ち構えていたのは“解任”という重たい罰則でした。
その頃、ロンドンの宇宙艦隊データ基地が何者かに爆破され、
対応策を講じるために、上層部がサンフランシスコの本部に招集されたところを、
また何者かが襲撃。
犯人は宇宙艦隊士官のハリソンだったのです。
この襲撃で、カークが父と慕うパイク提督が死亡。
敵を討つため、カークはハリソンを追ったのですが、
そこにはハリソンが仕掛けたワナが張り巡らされていたのでした。
ハリソンの狙いは一体何なのか?壮絶な戦いが始まったのです…。

「スター・ウォーズ」と並び称される、人気のスペースSFもの。
こちらのオリジナルはTVドラマで、手作り感というか、B級感というか、
ちょっぴりアカ抜けない感じが魅力だったのですが(笑)、映画は3D。
ハリウッドの超大作に生まれ変わりました。
そんな中に人間臭さを残したのが、カークのキャラクター。
やんちゃなイタズラ坊主のようで、それでいて正義感の強いカークに、
イラッとしながらもホッとする(笑)。そんな感じに仕上がってます。
ハリソンの復讐劇は少々わかりづらかったけど、それ以外は3Dらしい3D。
必然性のある3Dなら歓迎です。☆4つ。
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.8.15
「エンド・オブ・ウォッチ」☆☆☆
「スクールガール・コンプレックス〜放送部篇〜」☆☆☆

8月も半分を過ぎました。半分過ぎると早いんですよねぇ。
まだ今年の夏の思い出作りが出来ていないという人は、
映画館に足を運んでみてはいかがですか?
音楽と同じで、何年か経ったら、
その映画が2013年の夏を鮮明に思い出させてくれるかもしれませんョ。
さ、今週は2本です!



「エンド・オブ・ウォッチ」は、全米初登場No.1の、リアルなポリス・アクション。

LAの犯罪多発地域、サウス・セントラル。
ロス市警に勤務する白人警官のテイラーとメキシコ系警官のザヴァラは、
黒人とヒスパニックの抗争が絶えないニュートン地区を担当する名コンビ。
テイラーは自らの行動をデジカメに収める、今風の若者。
ところが、怖いもの知らずのふたりが踏み込んだ麻薬事件の陰には巨大組織があり、
組織のトップの怒りを買ってしまいます。
命を狙われるテイラーとザヴァラ。
ふたりは無事正義を貫くことができるのでしょうか…。

“エンド・オブ・ウォッチ”とは、
彼らが提出する業務日誌の最後に記す“勤務時間終了”の意。
その裏にあるもうひとつの意味、それは“殉職”でした。
イケイケのふたりにも守るべき大切なものがある。
それでも、おそらく死とギリギリの、ヒリヒリするような感覚から抜けられないかったのでしょう。
生き延びることができる人は、その距離感がうまく取れる人なのかなと。
かなりのバイオレンス映画。これが“リアル”なら、
アメリカには住みたくないですね(笑)。☆3つ。
「エンド・オブ・ウォッチ」公式サイト



「スクールガール・コンプレックス〜放送部篇〜」は、写真集の映画化という異色の作品。

希望ヶ丘女子高の放送部。
部長のマナミは、3年生として最後の学園祭で披露する演目に悩む日々。
そんな時、顧問の先生から、
バスケ部でもめたチユキを放送部に編入させてくれないかと頼まれるんですね。
チユキは謎めいた、大人っぽい少女。
さらに留年しているため、1つ年が上なんです。
最初は腫れ物に触るように接するマナミでしたが、
徐々にチユキの不思議な魅力に惹かれていきます。
そしてそれは友情ではなく、恋だということに、マナミは気づくのです…。

写真集が原作とは、どういうことかというと、
写真家の青山裕企さんが出版した“スクールガール・コンプレックス”という、
女の子同士の禁断の世界を描いた写真集を題材に、
ストーリーを付けて映画化したということなんですね。 だから映像も、女子校の大胆さと繊細さが同居した、
特に男子校に通っていたボクなんかにとっては、まさに“秘密の花園”(笑)。
パンチラは無いんですが、ギリギリな感じがマニアにはうれしいのかも?
ただ、やっぱり映画にするとなると、ドラマチックな展開が必要じゃないですか。
それが少々唐突な感じは否めないかなぁ。「いいの?そのカミングアウト」みたいな。
写真集を見て、想像を膨らませてからの方がいいかも。
映画館に“ご自由にご覧下さい”と、写真集を置いておくのはどうですか?
宣伝会社のみなさん、ご一考を(笑)。☆3つ。
「スクールガール・コンプレックス〜放送部篇〜」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.8.7
「最愛の大地」☆☆☆
「少年H」☆☆☆
「ニーナ〜ローマの夏休み」☆☆☆
「南の島の大統領‐沈みゆくモルディブ‐」☆☆☆
「ムービー43」☆

微妙な言い回しですが(笑)、少し前までちょっと仲良くしていた女の子がいて。
その子が約束を守れない子で。ちょっぴり心が病んでるのかもしれないので、
あんまり理詰めで責めてもと思い、最後にとある映画のチケットをあげようと、
前売り券を買ってカバンに忍ばせてあります。
主人公とその子が被るんですが、その主人公は自ら動くんですよ。
見たら気づかないかなぁと思ってるんですけどね。
なんて、人の心配をする前に自分の心配をしろって、ねぇ(笑)。



「最愛の大地」は、アンジェリーナ・ジョリーの長編初監督作品。

1992年のボスニア・ヘルツェゴビナ。
画家のアイラには付き合い始めたばかりの恋人、警官のダニエルがいました。
その日の夜もライブ・バーでデート。
すると突然爆発が起き、多くの人が命を失ったのです。
程なくして、ムスリム系の男性がセルビア人兵士に連行されて行きます。
身の危険を感じたアイラでしたが、既に出国は不可能になっており、
働けそうな女性たちは兵士の宿舎で働かされることになったのです。
アイラも例外ではありませんでした。
女性たちは兵士の性の対象となり、アイラもレイブされそうになったのですが、
すんでところで助けてくれたのは、なんとあのダニエルでした。
父を将軍に持つダニエルは、セルビア系ボスニア軍の将校になっていたのです…。

と、さわりの部分だけ(笑)。
最愛の恋人が敵の将校になっていた。その言動は愛していた彼とは徐々に違ってくる。
愛が憎しみに変わるのも時間の問題。
アイラには姉と、姉の生まれたばかりの赤ちゃんがいて、
自分のことだけじゃなく家族のことも考えなくてはならない。
戦争ゆえ、悲劇はアイラたちにも起こるのです。
その後のアイラの行動や、衝撃のラストはどうぞご自身の目で確かめて下さい。
アンジェリーナ・ジョリーは、ジャーナリストはもちろんですが、
それよりもこの紛争の中にいた当事者たちに話を聞き、
キャスティングにもこだわり、よりリアルを追及したといいます。
ボクらには正直わからないこともいっぱいあります。
でもひとつだけわかるのは、戦争は人を狂わせるということ。
絶対に避けなければならないということでしょうね。☆3つ。
「最愛の大地」公式サイト



「少年H」は、妹尾河童の自伝的長編小説の映画化。

戦争前夜の神戸。主に駐留外国人を顧客に、洋服の仕立て屋を営む妹尾洋服店は、
盛夫と妻の敏子、肇と好子の2人の子供からなる4人家族。
敬虔なクリスチャンだった妹尾家。
ところが、思想統制がなされ、自由な発言が難しくなった時代にクリスチャンは生きづらく。
それでも盛夫は「時流に流されることなく、しっかりと現実を見つめなさい」と教てきたのです。
その後、日本は戦争へ突入。妹尾家の生活も激動の渦に飲み込まれていくのでした…。

肇は自分の頭文字の“H”を刺繍したセーターが大好きで、
いつも着ていたことから“H”と呼ばれるようになります。
慕っていた蕎麦屋のお兄ちゃんが、
スパイ容疑で警察に連行されて行ったりと肇の周りもきな臭くなる。
おかしなことを「何でや?」と聞くと、父や母はきちんと答えてくれる。
声高に“反戦”を唱わなかったのは、
「生きてこの国を立て直すのは、あんたらやで」という父の思いがあったからでしょう。
水谷豊と伊藤蘭夫妻が劇中でも夫婦を演じていると話題の1本ですが、
『3丁目の夕日』的ノスタルジーを求めて行くと、ちょっと違うかも。
求め過ぎずに劇場に足を運んでみて下さい(笑)。☆3つ。
「少年H」公式サイト



「ニーナ〜ローマの夏休み」は、イタリア映画。

音楽教師のニーナは、20代の女性。
外国に留学したいという夢を持ち、その留学試験のために8月のローマに残ったものの、
この時期、ローマの住人はみんなバカンスに出てしまい、
街にはほとんど人がいなくなるんですね。
親友から頼まれた犬の世話、書を教える老教授、風変わりな子供管理人、
そして偶然の出会いから気になり始めた男性チェリストのファブリツィオ。
ニーナの不思議な夏休みが始まったのです…。

イタリアのこの手の映画らしく、抽象的でほわっとした感じ。
フランス映画ですが『アメリ』みたいなタッチが好きな人にはいいかな。
たくさんの建築物が、この映画のために作られたセットのように映っていて、
立派な建物はあるのに人影がない。
これがこの映画には欠かせないエッセンスになっているよう。
できればお茶でも飲みながら見たい1本かも。☆3つ。
「ニーナ〜ローマの夏休み」公式サイト



「南の島の大統領‐沈みゆくモルディブ‐」は、
2008年から2012年までモルディブの大統領だった、
モハメド・ナシード氏のドキュメンタリー。

1200もの珊瑚の島からなるモルディブ。
人が暮らせるのはその中の約200の島。
ところが海面が1m上がると、そのほとんどが水没してしまうのです。
独裁政権と闘い、投獄と拷問に耐え、モルディブの民主化を成功させたモハメド・ナシードは、
41歳の若さで大統領に就任するのですが、反対勢力より何より深刻だったのが、
この海面上昇の問題だったのです。
この映画は、ナシード元大統領が就任1年目で国際社会に訴え、
何とかこの美しい島々を救おうとする奮闘記です。
今は再びのクーデターで大統領は辞任してるんですね。
人間のゴタゴタ以前に、やるべきことはたくさんあるんじゃないかと誰もが思うはず。
その後が気になる人も多いでしょう。こうして危機意識は伝播していくんです。
大切なことです。☆3つ。
「南の島の大統領‐沈みゆくモルディブ‐」公式サイト



「ムービー43」は、豪華出演者によるドタバタおバカ映画。

オムニバスになってるので、そのひとつひとつは紹介しませんが、
とにかく出演者は本当に豪華です。
ハル・ベリー、リチャード・ギア、ヒュー・ジャックマン、
ナオミ・ワッツ、ケイト・ウィンスレット…。
でも、本当につまらないんですよ。
お下劣でも、おバカでも、笑えればいいけど、最初の下ネタのヤツは少し笑えたかな。
それ以外はまったく面白くなかったです。
あくまで個人的な感想ですが、
ボクの“お笑いメーター”はピクリとも動きませんでした。
酷評をきっと目や耳にするかと思いますが、本当にヒドいです。
試写を拝見したので無印にはできませんから、まさにお印で。☆1つ。
「ムービー43」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.8.2
「謎解きはディナーのあとで」☆☆☆
「マジック・マイク」☆☆☆

試写が終わってすぐに、「はぁ…」と溜め息をつくのはやめてって感じ(苦笑)。
自分の中でいろいろと思い返している時に、その溜め息で一気に負の感想が吹き出しちゃいます。
大切なんですよ、エンドロールの時間。ねぇ。
さ、今週は2本です!


「謎解きはディナーのあとで」は、人気ドラマの映画化。

女性刑事として警察に勤める宝生麗子。実は宝生財閥の御令嬢。
久々の休暇を“プリンセスレイコ”と名付けられた超豪華客船で過ごそうと、
執事の影山を連れて船に乗り込むのですが、密室とも言えるその船の中で、
殺人事件が起きるんですね。
そこにたまたま居合わせたのが、麗子の上司、使えない警部の風祭でした。
いつものようにどうしようもない自論を展開する風祭に周りは辟易。
そんな時、FAXで犯行声明が入ります。
「犯人はやはりこの船の中にいる!」。
乗員、乗客、5000人すべてが容疑者に。
果たして、真犯人を見つけることはできるのでしょうか…。

2011年度“本屋大賞”を受賞した東川篤哉の人気小説が原作。
同年暮れにフジテレビでドラマ化され、翌年にまたスペシャル版が放送された人気ドラマ。
主演は北川景子と櫻井翔。
レギュラー陣も、ゲスト出演者も、とにかくキャラクターが濃くて、
正直途中でお腹いっぱいになっちゃいました(笑)。
ボクがドラマを見ていなかったということもあるんでしょうけど。
最近の謎解きものって、起承転結の起と結が初めにありき(起は当たり前ですが)で、
承と転が結構ないがしろ。そんなに簡単にそこに気づかないだろうってことも、
結があるからそっちからさかのぼって作っちゃうみたいな。
それじゃ心は揺さぶられないんだよなぁ。
このドラマが好きだった人には、懐かしのキャラが帰って来るから、
たまらないんじゃないですかね。☆3つ。
「謎解きはディナーのあとで」公式サイト



「マジック・マイク」は、実話を元にしたハリウッドのサクセス・ストーリー。

オリジナルの家具職人になりたいという夢を持つマイクは、
その夢を追いかけながらアルバイトの日々。
そのバイトのひとつに、男性ストリップのダンサーというのがありました。
筋骨隆々のマイクは女性に大人気だったんですね。
ある日のこと、別の仕事で知り合った、アダムというイケメンを
マイクが働いているクラブに連れていきます。
マイクのもうひとつの顔を知って驚くアダムでしたが、
レギュラーメンバーがアクシデントで出られなくなり、
即興でアダムがステージに登ることに。
すると、その初々しさに観客は大喜び。
舞台度胸を認められて、アダムもマイクと同じクラブで踊るようになります。
マイクはアダムを弟のように可愛がるのですが、アダムの行動が日増しに派手になり、
遂には危ないヤマに手を出し、トラブルに巻き込まれてしまったのです…。

アダムには真面目なお姉さんがいて、
マイクはまるで別世界に生きるような彼女のことが気になってしょうがない。
自分の夢を語っても、「その夢のためにあなたは一体何を頑張っているの?」
と一蹴されてしまう。そこがまたたまらないようで(笑)。
このマイクのモデルが、マイクを演じたチャニング・テイタム自身で、
10代の時に数ヶ月、男性ストリッパーをやっていたそう。
予告編などを見て、この映画の魅力をストーリーに求めると、
波乱万丈と言えば確かにそうだけど、それほど大きな感動はないかも。
そうじゃなくて、やっぱり見どころはダンスシーンなんでしょうね。
女性は「キャーッ」なんて言いながら、目を手で覆うけど、指の隙間から見てるみたいな(笑)。
ボクはそっちの趣味はないので(笑)、すみません。☆3つ。
「マジック・マイク」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.7.25
「ニューヨーク、恋人たちの2日間」☆☆
「ノーコメントbyゲンスブール」☆☆☆
「ペーパーボーイ 真夏の引力」☆☆☆

映画館では上映前に、鑑賞マナーについての啓蒙VTRが流れます。
昔からあれこれ手を変え品を変え、周りに迷惑が掛からないようにと伝えてきました。
その努力が実ってか、マナーがすごく良くなったと思います。
これを試写会でも見せたらいいのに。試写室の方がよっぽどマナーは悪いですから。
さ、今週は3本です!



「ニューヨーク、恋人たちの2日間」は、ラブ・コメディ。

フランス生まれのマリオンは、NYのアパートに暮らす女性フォトグラファー。
元彼との間に産まれた一人息子に加え、新しい恋人である黒人のミンガスと、
彼の幼い娘との4人暮らし。
公私共に順調なマリオンでしたが、彼女がNYで開く個展を見に、
フランスから家族がやってくるので、2日間アパートに泊めて欲しいと。
これが騒動のきっかけでした。
両親と妹だけならまだしも、妹が恋人も連れて来た。
その恋人がなんとマリオンの元彼だからややこしい。
パリからの客はまさに“トラブル・メーカー”。
マリオンが築いてきたNYの生活は、大丈夫なのでしょうか…。

「パリ、恋人たちの2日間」の続編とされる、ドタバタ・コメディです。
結構ブラック・ジョークもあります。
その品のなさがイヤだという人には受け入れられないかも。
「ハングオーバー」や「ブライズメイズ」が好きな人にはお勧めかな。
ボクはこういうのを見ると、こうなる前に対処法があったでしょと冷静に考えちゃうので、
映画の世界に入れなくなっちゃうんです。おバカなドタバタは苦手かも。
ごめんなさい。☆2つ。
「ニューヨーク、恋人たちの2日間」公式サイト



「ノーコメント by ゲンスブール」は、フランスの人気アーティストの生涯を追ったドキュメンタリー。

1928年、パリに生まれた、セルジュ・ゲンスブール。
ロシア系ユダヤ人の彼は、美術学校に通い、建築を学び、
建築家か画家を目指したのですが、そこから音楽の道へと進みます。
その後、歌、作詞作曲、映画監督、小説家、カメラマンと、
幅広いジャンルで才能を発揮したマルチなアーティスト。
ボクらがイメージとして持つ、フランスのフランス人らしい芸術家というのでしょうか。
理屈っぽく、退廃的で、女好きで、無精ひげに、タバコの煙。
その象徴的な存在でもある気がします。
正直、ボクはゲンスブールを知らなかったんですが、先週紹介した「最後のマイ・ウェイ」の主人公、
クロード・フランソワの恋のお相手、
フランス・ギャルの代表曲のひとつ『夢見るシャンソン人形』の作家としても名高いんですね。
独占欲の強いクロードがヤキモチを焼いたのがゲンスブール。映画と映画で繋がったなぁと(笑)。
1991年にこの世を去ったゲンスブールを扱った作品は数々あれど、
監督は「ゲンスブールに関する映画がまたひとつ」と言われないようにしたと。
ゲンスブールを知らないと独特の物言いに正直退屈さも感じますが、
彼を知っている人なら、楽しめるんじゃないかなと思える作品です。☆3つ。
「ノーコメント by ゲンスブール」公式サイト



「ペーパーボーイ 真夏の引力」は、ザック・エフロン、ニコール・キッドマン主演作。

1969年のフロリダ。
大学を中退し、父の経営する地元の小さな新聞社を手伝うも、
目的もなく、退屈な毎日を過ごしていたジャック。
そんな時、大手新聞社のマイアミ・タイムズに勤める兄が、
4年前に地元で起きた殺人事件を再調査したいと、黒人の同僚を連れて帰郷。
ジャックも兄の取材を手伝うことになります。
その取材対象である死刑囚のヒラリーには、婚約者のシャーロットがいました。
ところがこのシャーロットが変わり者で、獄中の犯罪者に手紙を出しては、
その反応を楽しむという。
ヒラリーの文章に感動したシャーロットは、その短い手紙だけで死刑囚との結婚を決めたのです。
むせかえるような女の色香。
初めてシャーロットを見た瞬間、ジャックはこの大人の女性に恋してしまうんですね。
しかし、この事件に関わったことで、すべての人間が、とんでもないことに巻き込まれていくのです…。
アメリカのベストセラー小説の映画化です。
他にも、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックといった実力派俳優が出演しています。
すべての登場人物に背負ってるものがある。
すごく濃厚なキャラクターたちによる、濃厚なストーリー展開。
そういう意味では面白いんですが、逆に言うと濃すぎるかな(笑)。
どこに主眼を置いても、そのキャラクターに入れ込むことはできないかもしれません。
“あまりにもスキャンダラスな真夏のミステリー”というキャッチフレーズはピッタリ。
冷房が効いていても汗が出そうな1本です。
ニコール・キッドマンの品の無い美しさにも汗が出ました(笑)。☆3つ。
「ペーパーボーイ 真夏の引力」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.7.18
「風立ちぬ」☆☆☆
「最後のマイ・ウェイ」☆☆☆
「シャニダールの花」☆☆☆

先日、一度試写で見た映画を、もう一度劇場で見てきました。
新たな気づきがあったというよりも、セリフも含め、
細かい部分により触れることができたといった感じでしょうか。
すなわち、より理解が深まったというか。
☆5つを付けた作品は再度見るべきだなぁと、改めて思った次第です。
さ、今週は3本です!



「風立ちぬ」は、スタジオジブリ最新作。

堀越二郎は、幼い頃から、無類の飛行機好き。
そんな彼が汽車で移動中に、ひょんなことで出会ったのが菜穂子でした。
次の瞬間、体験したこともないような揺れが人々を飲み込みます。関東大震災です。
怪我を負った菜穂子たちを助け、家まで送り届ける二郎。
そして歳月は流れ、ずっと二郎のことを思っていた菜穂子は二郎との再会を果たすのですが、
実は菜穂子は胸の病を患っていたのです。それでも菜穂子を妻にもらう二郎。
二郎は菜穂子を愛し、夢だった飛行機の開発に心血を注ぎます。
でもこの時代に飛行機を作るということは、戦争のための戦闘機を作るということでもあったのです…。

実在の人物、日本が世界に誇るゼロ戦の設計者、堀越二郎の物語です。
純粋に空に憧れた彼の開発が、若者の、そして多くの人の命を奪うための乗り物であったという悲劇。
でも宮崎駿監督は、反戦を叫ぶのでも、ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもなく、
「自分の夢にまっすぐ進んだ人物を描きたかった」と語ります。
きっとこの感覚が、戦前に生まれ、戦中に育った、昭和16年生まれの宮崎駿監督のリアリティなのでしょう。
これまでの作品にある、ジブリ映画のファンタジーの側ばかりを求めて行くと肩すかしを食らうかも。
この映画は監督と同世代の人のために作ったと言っても過言でないのでは?
それが鈴木敏夫プロデューサーの言う、「宮崎駿の遺言」という言葉に表れているのではないでしょうか。
すごくパーソナルな作品でありながら、あの頃にも似た、閉塞感漂う今の日本の若者に見てもらって、
何かを感じてもらいたい。そんな1本じゃないかと思うのですが。
主題歌として使われている、ユーミンの「ひこうき雲」の歌詞が、
こんな内容だったんだって、きっと驚く人が多いはずです。☆3つ。
「風立ちぬ」公式サイト



「最後のマイ・ウェイ」は、実在の人物を描いたフランス映画。

1939年2月、エジプトのイスマイリアに生まれたクロード・フランソワ。
フランス人の父は、スエズ運河の通航管理を担う実業家。
裕福な家庭に生まれたクロードは、英才教育を受け、将来は父の会社を継ぐはずでした。
ところが、スエズ運河がエジプトの国有化となり、父は失業。
モナコへ移住するも生活は苦しく、大人になったクロードは銀行に就職します。
しかし、どうしても仕事に夢を持てないクロードは、楽団のオーディションを受け、
ドラマー、そしてボーカリストへと昇進。
人気者になりますが、父は「大道芸人を息子に持った覚えはない」と父子の関係を断絶。
息子に会うことを拒んだまま、息を引き取ったのでした。
ダンサーの妻と結婚したクロードは、ふたりでパリに進出。
何とかレコードデビューは果たすものの、さっぱり売れず、妻とは離婚。
ところが、2枚目のシングルが大ヒット。
そこでコンビを組むことになった、敏腕マネージャーのポールの存在が大きかったのです…。

ストーリーの入口だけ書いておきました。
映画も2時間29分。最近では珍しく長い作品。
それだけクロード・フランソワの人生が波瀾万丈だったということでしょう。
キャッチ・コピーにもあるのですが、
“傲慢で、女好き。嫉妬深く、神経質。けれど私たちはあなたを愛した”。
ルックスを揶揄され整形をし、星の数ほどの恋をし、結婚、離婚を繰り返す。
母親のギャンブル癖に頭を悩ませながらも、出版社を立ち上げ、モデル事務所を作り、
とにかく立ち止まることを知らない人生でしたが、39歳の若さでこの世を去ってしまいます。
フランク・シナトラが歌った「マイ・ウェイ」は実はカヴァーで、
オリジナルはこのクロード・フランソワの「コム・ダビチュード」。
実体験が産んだ失恋ソングなんですね。
フランスでは有名でも、意外や知られていないのは、彼が世界に打って出る直前に亡くなったから。
そんな彼の破天荒な伝記映画です。2時間29分は決して長くは感じませんョ。☆3つ。
「最後のマイ・ウェイ」公式サイト



「シャニダールの花」は、スタイリッシュで、SFチックなラブ・ミステリー。

特定の女性の胸に咲く花、“シャニダールの花”。
その中には新薬開発のための有効成分があるとされ、
製薬会社はその花を宿すための女性と高額お金で契約を結び、施設に集めていたのです。
特定の女性の条件とは、何か心に欠陥を持っていること。
研究員の大瀧は、新たに入所したアシスタントの響子と、
この奇跡の花の研究を進めます。
ところが、花を摘まれた女性たちが次々命を落としている事実を、
上層部は公表していなかったんですね。
この花は危険な花なのか。シャニダールの花に隠された秘密とは一体…。

“スタイリッシュで、SFチックなラブ・ミステリー”と書きましたが、
ホントそんな感じの、独特の空気感の中で話は進みます。
大瀧と響子は恋に堕ちるのですが、ふたりの運命もこの花が変えていってしまいます。
学ぶでもなく、感動するでもなく(笑)。
久々にこのタイプの映画に触れたので、うまい表現が見つからなくてすみません。
上映中は、異世界の異空間を楽しむ。そんな感じでしょうか。☆3つ。
「シャニダールの花」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.7.11
「偽りの人生」☆☆☆
「バーニー みんなが愛した殺人者」☆☆☆

先日、某有名映画プロデューサーと酒を酌み交わしながら映画談義。
意気投合しつつ、「その感性があるなら1本作ろうよ。面白い話があったら教えて」と言われ、
舞い上がっちゃいました(笑)。
夢がひとつ増えました。実現させるよう頑張らないとねっ。
さ、今週は2本です!



「偽りの人生」は、アルゼンチンが舞台の映画。
ブエノスアイレスに住む、医師のアグスティン。
美人の妻を持ち、何不自由ない暮らしをしていたのですが、何か満たされない。
自分の望まない養子話をきっかけに、妻との仲は決裂。
そんな時、故郷に別れて暮らす双子の兄で、
アウトローな生活をしているペドロが、突如アグスティンを訪ねてきます。
ところが、どうにも様子がおかしい。聞けば末期のガンだと。
アグスティンの手で自分を殺してくれないかと言うのです。
最初は拒んでいたアグスティンでしたが、苦しそうな姿を見て、遂に兄を手に掛けてしまうんですね。
すると彼の頭にある考えがよぎります。
このまま兄になりすまして、ペドロとして生きていけないかと…。
真面目なアグスティンが、アウトローのペドロになりすます。とにかく別の人生を生きたかったんでしょうね。
瓜二つの双子ならそれも可能かもという舞台設定。
危うさの中に、生きていることを実感するアグスティンですが、若いペドロの恋人や、
犯罪チームのリーダーなどは徐々に「おかしい」と気付いていく。
全体を覆う暗めのトーンが、アルゼンチンの今なのでしょうか。
前情報として、アルゼンチン情勢を少し入れていくと、より理解が深まるのかもしれません。☆3つ
「偽りの人生」公式サイト



「バーニー みんなが愛した殺人者」は、実話に基づいたストーリー。

テキサス州の田舎町カーセージ。
この町の葬儀社で葬儀ディレクターとして働くバーニーは、その繊細な仕事ぶり、
市民活動への積極的な取り組みなどから、町一番の人気者。
そんなバーニーが、石油で巨万の富を築いたドゥエイン氏の葬儀で、
未亡人となったマージョリーと出会います。
マージョリーは逆に町一番の嫌われ者。実の子供たちも煙たがって近寄らない。
そんな彼女の孤独を慰めようと、バーニーは日々奔走するんですね。
次第に心を開いたマージョリーは彼の優しさを独占しようと、
自分のマネージャーとして雇用契約を結びます。
マージョリーの要求は次第にエスカレート。
他人と接することも禁じられ、精神的に追い詰められたバーニーは、
猟銃でマージョリーを撃ち殺してしまいます。
遺体を冷凍庫に隠し、いつもの通りの生活を続けるバーニーでしたが、
遂に事件が発覚、逮捕されてしまうんですね。
ところが、町のすべての人がバーニーは無罪だと、検察側に詰め寄ってきたのです…。

1996年に実際に起こった事件。
バーニーはマージョリーの若い恋人のような存在で、マージョリーの資産も管理していたことから、
金目当てで近付いたんじゃないかという見方もある。
でも、そのお金の多くを寄付など町のために使っていたのと、
マージョリーが本当に嫌われ者だったこともあり、みんながバーニーの味方。
とにかくカーセージの町では公正な裁判ができないと。
なぜなら陪審員はみんなバーニーが好きだから。
で、検察はある手段に打って出るのですが、それは見てのお楽しみ(笑)。
主演はジャック・ブラック。
もう彼が“ジャック・ブラック”というひとつのジャンルだと言っていいくらいの俳優ですよね。
事件が起こって、被害者、加害者という言われ方をすると、その言葉だけで善悪のイメージが付いちゃう。
だけど本当に被害者が“善”で、加害者は“悪”なのか。そこに一石を投じてもいるのかなと。
どんなに善行を積んだからと言って、人を殺していい訳は絶対にないんですよ。
この映画はどちら側にも付いていないのが面白い。
バーニーが本当に善人なのかどうかはわかりません。
答えはバーニーと神のみぞ知る、でしょうか。☆3つ。
「バーニー みんなが愛した殺人者」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.7.4
「樹海のふたり」☆☆☆
「25年目の弦楽四重奏」☆☆☆☆☆

今週は久々に満点の作品があります。
深いです…。
たぶん、事前に少し情報は入れておいた方がいいかと思います。
このコラムがお役に立てばいいのですが。
さ、今週は2本です!



「樹海のふたり」は、お笑いコンビ、インパルスのふたりが主演の作品。

フリーのTVディレクター、竹内と阿部。
やりたい仕事ができずに、周りから落ちこぼれのレッテルを貼られていたふたりが意気投合。
立てた企画は“樹海の自殺志願者へのインタビュー”でした。
樹海の入口付近で待ち構えていると、自殺願望のある人間が多いことに気づきます。
話を聞きに近づき、罵られながらも、時には自殺を思いとどまらせることも。
番組の視聴率は抜群で、局はドル箱企画として“樹海モノ”を撮りに行かせるのですが、
数字のためのロケではないと、自分たちの取材に使命を感じ始めていたのです。
視聴率がすべてのTV業界にあって、局の思惑とのズレが生じ始めた今、
ふたりは樹海とどう向き合っていくのでしょうか…。

竹内にも、阿部にも、それぞれに抱えている問題があった。
樹海に入ろうとする人々はもちろん、意外な人物までもが、心の奥底には闇を抱えていた。
それでも前を向いて生きていこうという作品です。
インパルス主演ということで、お笑いの要素を期待していくと肩すかしを食らいますのでご注意を。
シリアスな1本です。☆3つ。
「樹海のふたり」公式サイト



「25年目の弦楽四重奏」は、ベートーベンの弦楽四重奏曲第14番に
インスパイアされたというヒューマン・ストーリー。

結成25年目を迎えた弦楽四重奏団“フーガ”。
世界的にも有名なカルテット、メンバーは第1ヴァイオリンのダニエル、
第2ヴァイオリンのロバート、その妻でヴィオラのジュリエット、
そして3人の師でもあるチェロのピーター。
ところが、初老のピーターが、25周年記念公演の直前に難病であることを告げられ、
引退を申し出るんですね。
動揺するメンバーたち。
自分の代わりにと後任者を提案するピーターでしたが、
演奏同様、完璧だった彼らの関係に亀裂が入り始めます。
なんとか25周年記念の公演だけはと必死にリハビリを頑張るピーターでしたが、
思うように手が動かない。
ピーターと、ピーターの亡き妻を親代わりに思ってきたジュリエットは、
ピーターのいない“フーガ”なら演奏はしないと言う。
その夫ロバートが、曲によっては第1ヴァイオリンを弾きたいと言い出し、
妻ジュリエットの愛にも疑念を抱き、
衝動的にジョギング仲間のダンサーと一夜を過ごしてしまう。
ヴァイオリンに人生のすべてを捧げてきたダニエルは、あろうことか、
ロバートとジュリエットの一人娘、女子大生のアレクサンドラと恋に落ちてしまう。
たしなめる母ジュリエットに、「私より音楽が大切なくせに」となじるアレクサンドラ。
手を上げてしまうジュリエット。
これまで抑えてきたそれぞれの感情が、突如として噴き出してしまいます。
そんな中、ピーターはジュリエットに言うのです。
「わたしのために、大切な楽団を守って欲しい」と…。

ベートーベンの弦楽四重奏曲第14番というのは、7つの楽章から成り立つ作品で、
1826年、ベートーベンの死の1年前に作られたもの。
普通は4楽章で構成されているのに、7つもの楽章であること、さらにこれを“アタッカ”、
つまり途切れることなく演奏すべきだとベートーベンは言い遺しているのだそう。なぜ?
これだけ長く演奏をすると、どうしても楽器のチューニングが狂ってくる。
途中では止められない。じゃ、どうする?
それぞれのメンバーが、狂った音程に合わせるようにして弾かなくてはならない。
言い換えれば、歪んでいく音程の中に、互いが互いを思いながら、調和を探していくしかないのです。
深い…。 もうひとつの選択肢は“止める”ことですよね。でも人生は止められない。
長く生きていると、友情も、恋愛も、仕事も、夫婦関係も、
やっぱりちょっとずつズレていくんです。
そこにどう調和を見出すか。あるいは止めるのか。
誰もが必ずぶつかる普遍的なテーマを、弦楽四重奏に置き換えた秀作です。
是非ご覧になって下さい!☆5つ!
「25年目の弦楽四重奏」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.6.27
「アンコール!!」☆☆☆
「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE」☆☆
「コンプライアンス 服従の心理」☆☆
「桜姫」☆☆
「真夏の方程式」☆☆
「欲望のバージニア」☆☆☆

もう7月になります。早いですねっ。
この夏は一体どんなドラマが待っているのでしょう?
恋愛やサスペンスの予行演習は映画でどうぞ。あ、あんまりサスペンスはいらないか…(笑)。
さ、今週は6本です!



「アンコール!!」は、イギリス映画。

アーサーとマリオンは老夫婦。
頑固で交際下手な アーサーに対し、明るく社交的なマリオン。
性格は正反対のふたりでしたが、共にかけがえのない存在だったのです。
ガンを患い、車椅子のマリオンの唯一楽しみが、
近所のコミュニティーセンターの仲間との合唱でした。
アーサーは、マリオンが無理を押してまで参加する合唱サークルが大嫌い。
練習後の輪の中にも絶対に加わらなかったのです。
そんなある日、マリオンが練習中に倒れます。それ見たことかと言わんばかりのアーサー。
それでもコンテストに向けて頑張るマリオン。
そして予選当日、マリオンは初めてソロを歌います。愛するアーサーのために。
そして間もなく、マリオンは静かに息を引き取ったのでした…。

マリオンたちのグループは、その名も「年金s」。
マリオンが亡くなった後、息子ともずっとギクシャクしていたアーサーは、
ひとりで合唱団を覗きに行くんですね。
個性的なメンバーはアーサーを優しく迎え入れます。
社会を拒絶していた72歳の頑固老人が、果たして人生を変えることができるのかというお話。
一番の感動はマリオンのソロかなぁ。ピークが真ん中に来ちゃう。
それを超えるエピソードが、後半になかったのが残念かも。
それでもボクの好きなイギリス映画です。ポッと心は温かくなりますョ。☆3つ。
「アンコール!!」公式サイト



「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE」は、
テレビ東京の人気バラエティの1コーナーの映画化。

ロケバスを降りる劇団ひとり。彼はまったく何も設定が知らされておらず、
すべてアドリブで、今からセクシー女優たちに求められる
“キス”を我慢していかなければなりません。
徐々にわかってくるのは、彼は“砂漠の死神”と呼ばれる殺し屋で、
今は製薬会社の社長令嬢のつかさと身を潜めながら暮らしていること。
それを悪の組織“赤い闇”が追っていると。
で、つかさが人質として連れ去られてしまい、
砂漠の死神は赤い闇の本部へと乗り込んで行くのでした…。

正直112分は長かったですね(笑)。あれはTVの1コーナーだから面白いのかも?
それはそれは多彩な顔ぶれがゲストで登場します。
その賑やかさで何とか見られるかなといった感じ。
オチも早々に想像がついちゃったしなぁ(笑)。
番組にはコアなマニアのファンがいるみたいだから、
そういう人たちにはたまらない1本なのかもしれませんね。☆2つ。
「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE」公式サイト



「コンプライアンス 服従の心理」は、実話に基づくストーリー。

米ケンタッキー州にある、大手のファストフード店。
今日は店が忙しくなる金曜日。なのに朝からトラブル続きで、
女性店長のサンドラはイライラしっぱなしでした。
そこに警察官を名乗る男から1本の電話が入ります。
店で働く18歳の女性従業員が、会計の隙に客の財布を盗んだというのです。
該当するのはベッキーだけ。
電話を繋いだまま、男はサンドラにあれこれと指示を出します。
「ベッキーを裸にして隅々まで調べるんだ」。
最初は拒んでいたサンドラでしたが、男の巧みな話術に嫌がるベッキーの衣服をすべて取り去ります。
それでも執拗に調査を指示する電話の男。
仕事があるからと他の従業員や、自分の婚約者にベッキーを見張らせ、
その都度、電話の男は指示をエスカレートさせて行ったのです…。

大変申し訳ない言い方ですが、バカの話。揃いも揃ってみんなバカ。
気づくだろって思うことがたくさんあるのに。心理もクソもないでしょ。
企業は6億円の賠償を払ったとか。そりゃ自業自得です。
よくわかりませんが、アメリカ人のプライドというか、そういうものがさせてしまうのでしょうか。
下らない話です。でも事実に基づいてるそうです。
確かにあったという驚愕の事実に、逆に☆2つ。
「コンプライアンス 服従の心理」公式サイト



「桜姫」は、ちょっぴりセクシーなスペクタクル時代劇。

名門の家に生まれた桜姫は、盗人・権助に襲われてしまいます。
初めて知った女の喜び。その快楽と共に、
男の腕に彫られていた釣り鐘の入れ墨を忘れられずにいたのです。
大切な家宝を盗まれ、没落の憂き目に合った家を飛び出した桜姫は、
権助に会いたい一心で、場末の遊郭「ぢごくや」で女郎として働き始めます。
源氏名は“風鈴お姫”。
その名は一躍有名となり、噂を聞きつけた権助が「ぢごくや」にやって来ます。
そして桜姫との再会を果たすのですが…。

日南響子扮する桜姫の濡れ場だけが売り?みたいなイメージ。
演技はまさに体当たりで頑張ってましたョ。
彼女もひと皮剥けるようにとチャレンジしたのでしょうが、作品的にもったいなかったかなぁ。
あとは好みの問題。このB級感がお好きな方は。☆2つ。
「桜姫」公式サイト



「真夏の方程式」は、フジテレビの人気ドラマ「ガリレオ」の映画第2弾。

天才的頭脳を持つ、物理学者の湯川。
自然豊かなとある湾の、海底鉱物資源開発計画の説明会にパネラーとして招かれます。
宿泊先は“緑岩荘”。
そこは家族経営の旅館で、湾の開発に強硬に反対する成美の家でもありました。
宿泊していたのは、成美の親戚の小学生、恭平。そして塚原という男性客がひとり。
翌朝、その塚原が堤防下で変死体となって発見されるんですね。
この家族には何か秘密がある。湯川の頭脳が真相に迫るのでした…。

TVドラマも前作映画も見ていないので、クールな福山雅治になるほどと(笑)。
でも正直、あまりピンときませんでした。期待が大き過ぎたかな。
今回の東野圭吾の原作にピンとこなかったのかもしれませんが、
何より嫌だったのは、純粋な子供を作り物の世界とはいえ、巻き込むなってこと。
「この夏最高かつ最大の感動超大作」って、一体どこに感動しろって言うんだろう。
ボクにはわかりませんでした。話題作だからこそ、辛口で。☆2つ。
「真夏の方程式」公式サイト



「欲望のバージニア」は、アメリカ禁酒法時代の実話に基づくストーリー。

1931年、バージニア州フランクリン。
禁酒法時代に、密造酒ビジネスで大成功を収めていたボンデュラント3兄弟がいました。
特に長男のハワードと、次男のフォレストは“不死身伝説”の持ち主。
ライバルのギャングだろうが、賄賂を要求する役人だろうが、怖いものなし。
一方、三男のジャックには兄たちのような度胸はない。
それでも夢は大きく、親友のクリケットと隠れて酒を作り、
商売を始めるんですね。商才があったジャックはメキメキ頭角を現します。
ところが、ボンデュラント兄弟を面白く思わない連中が、牙を研いでいたのです…。

都会から流れてきたマギー、教会の牧師の娘バーサなど、女性の存在も花を添えて、物語は進みます。
“出る杭は打たれる”。
でも打たれたら打ち返すのがボンデュラント兄弟。
自分の身は自分で守らなくてはならない、そんな荒くれ者の時代ですからね。
心身共に屈強じゃないと生きていけない。“草食系”なんて、即アウト(笑)。
男臭い1本です。☆3つ。
「欲望のバージニア」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.6.21
「さよなら渓谷」☆☆☆
「100回泣くこと」☆☆

暑くなって来ました。
試写会から試写会への移動は時間との勝負。
例えば13時から2時間の試写を見て、次が15時30分からの試写が多いので、
30分で電車を乗り継ぐなどして移動。
汗だくになって入る試写室が涼しいと天国。かなり冷房を弱めていると地獄(笑)。
映画館は心地いい場所。梅雨時にはオススメです。
さ、今週は2本です!



「さよなら渓谷」は、人気長編小説の映画化。

俊介とかなこは、渓谷に立つ市営団地に住む夫婦。
普段は静かな場所なのに、隣りに住む少年が遺体で見つかり、
犯人が母親ではないかとの疑惑に報道陣が殺到。
さらにその母親が、俊介と不倫関係にあったと証言。
俊介とかなこにも報道陣が群がるようになったのです。
週刊誌の記者である渡辺は、俊介の過去を洗い始めます。
わかったのは、大学の野球部に在籍中に、
他の部員たちと集団レイブ事件を起こしていたということ。
その被害者である水谷夏美は失踪中だということでした。
さらに調べを進めると、驚愕の事実に突き当たります。
かなこは、実は水谷夏美だったのです…。

原作は「悪人」などでもおなじみの芥川賞作家、吉田修一作品。
主演は真木よう子と大西信満。
何かを振り払うかのように、むさぼるように愛し合う俊介とかなこ。
どこかぎこちなさを感じる夫婦関係に、驚愕の秘密が隠されていました。
それがわかってからの話が、というか、ラストが深い。
如何ともし難い心境の微妙な変化を読み取る作品です。
すべてを知って、もう一度最初から。
2度観ることをお勧めしたい映画でもあります。☆3つ。
「さよなら渓谷」公式サイト



「100回泣くこと」は、ロングセラー恋愛小説の映画化。

バイク事故で逆行性健忘症を患い、事故前の1年間だけ、
ポッカリ記憶を失ってしまった藤井。
その間に付き合っていた佳美の存在は、藤井の記憶には無いのです。
そんなふたりが友人の結婚式で4年ぶりに再会。
藤井は初めて会ったはずの佳美に惹かれ、佳美は過去を隠しながら付き合い始めるのです。
そしていきなりのプロポーズ。
佳美はすぐにOKをするも、1年の予行演習を提案します。
“1年”の意味、それは佳美のガンが完治したことを証明するまでの期間だったのです…。

原作は中村航。主演は桐谷美玲と関ジャニ∞の大倉忠義。
申し訳ありませんが、もうこの手のお話は…。
ひと昔前に一世を風靡した、どちらかが亡くなっちゃう悲恋ものです。
佳美の表情も声も、どうもワントーンでメリハリがないというか。
今回は藤井の一部記憶喪失という斬新?な設定が加わりましたが、
それでも個人的にはもうお腹いっぱいです。☆2つ。
「100回泣くこと」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.6.14
「インポッシブル」☆☆☆
「スプリング・ブレイカーズ」☆☆☆

試写に行く時の楽しみのひとつがランチ。
それぞれの試写会場の近くにお気に入りを作ってあります。
「明日は京橋だから、お昼は鳥だな」みたいな(笑)。
まずはお腹を満たして、それから心を満たす。
“心身共に”。どちらも大切なんですョ。
さ、今週は2本です!



「インポッシブル」は、実話に基づいたストーリー。

2004年のクリスマス。日本で働くイギリス人のヘンリーは、
妻と3人の子供とタイのプーケットに、バカンスに来ていました。
海が見える眺めのいい部屋で、楽しい休暇を過ごすはずだったのですが、
大災害が島を襲います。
突然の巨大津波。凄まじい濁流が、すべてを押し流してしまったのです。
妻のマリアは大ケガを負いながらも、長男のルーカスと再会。
一方、ヘンリーはトマス、サイモンと行動を共にしていたのです。
大混乱の避難所。言葉が通じない。互いの安否もわからない。
マリアのケガは悪化するばかり。
果たして家族は再会できるのでしょうか…。

東日本大震災以降、日本でもリアリティを持って響く1本だと思います。
こんな極限状態だからこそ、人間としての本質が出るんだろうなと思い知らされます。
マリアも、ちょっと迷ったけどルーカスも偉い。よく頑張りました。
直接のありがとうを聞けなくても、遠くからでも幸せそうな笑顔を見られれば十分かな。
神様はきっと見てますから。
一瞬にして人々の日常を奪い去る天災。起こらないで欲しいと、切に祈ります。☆3つ。
「インポッシブル」公式サイト



「スプリング・ブレイカーズ」は、“極彩色の痛快エンターテイメント”。

フェイス、キャンディ、ブリット、コティは女子大生。
毎日が退屈で退屈で仕方ない。
長期休暇の“スプリング・ブレイク”に、
みんなでフロリダへ旅行をしようと計画を立てるのですが、お金がない。
すると、強盗なんてゲームと同じと、深夜のダイナーを襲い、大金を手にしたのです。
そして向かったフロリダでは、ビーチにイケメン、ドラッグにアルコール、そしてセックス。
あまりの騒ぎに警察が出動し、彼女たちも収監されてしまいます。
釈放されるには罰金が必要。でも親には知られたくない。
すると、彼女たちに目をつけていた、
エイリアンと名乗る地元のBボーイが罰金を肩代わりしたのです。
見るからに怪しいエイリアンという男、その正体はドラッグディーラー。
彼女たちのスプリング・ブレイクは、あまりに危険なものになったのでした…。

蜷川実花ばりの?極彩色。4人はカワイイ。けど、頭の中も極彩色だろって感じ。
フェイスとコティは途中で降りるんだけど、
キャンディとブリットは行き切っちゃいます。
エイリアンよりふたりの方がきっと度胸が座ってるな(笑)。 退屈の対極はこれかいっていうくらい、
彼女たちの行動は振り切っちゃってるんですよね。
映画とはいえ、恐ろしい。
フィクションですよ。
でもこの小型版ぐらいのことは、アメリカのみならず、
きっと日本でも起きてるんでしょうね。☆3つ。
「スプリング・ブレイカーズ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.6.7
「エンド・オブ・ホワイトハウス」☆☆☆☆
「奇跡のリンゴ」☆☆☆
「G.I.ジョー バック2リベンジ」☆☆☆☆
「世界が食べられなくなる日」☆☆☆
「箱入り息子の恋」☆☆☆☆

今週はバラエティーに富んだ作品がズラリ。
それぞれに面白かったです。
☆5つ打てないのは、どこかひとつ「ん?」と感じるところがあるから。
惜しい…(笑)。
それを話しちゃうと、見る前に粗探しになっちゃうので、
あなた自身で感じてみて下さい。
スルーしたら、それはそれでOKだと思いますョ。
さ、今週は5本です!



「エンド・オブ・ホワイトハウス」は、“スペクタクル・エンタテイメント”。

合衆国大統領が居住し、執務を執り行う、ホワイトハウス。
独立記念日の翌日、韓国の首相が、ここホワイトハウスを訪れます。
すると、真っ黒な巨大輸送機が上空に現れ、警告を無視し、
ワシントン市内を襲撃。
ホワイトハウスに近づいたところで輸送機は墜落しますが、次の瞬間、観光バスが爆発。
パニック状態の中、武装集団がホワイトハウスに入っていったのです。
大統領と韓国の要人たちは安全なシェルターへと逃げ込みます。
ところが、何とこの中にテロリストが潜んでいたのです…。

最近、多いんですよ、テロリストの設定が北朝鮮であること。時代の流れですね。
“鉄壁の要塞”と言われるホワイトハウスが、
こういう形でなら堕ちるのかと現実味を感じさせるのは、
緻密な取材、研究があったからでしょう。
でも、最後はやっぱり“マン・パワー”なんですよね。
どんなに科学が発達しようと、そう。裏を返せば、大きな事故もまた“ヒューマン・エラー”。
1ヶ所、「ん?」と思うところがありますが、そこは様々な解釈ができるはず。
ストーリーらしきもほとんど書きませんでしたが、
大統領が捕らわれの身になるまでの激しい戦闘が開演から約40分。
そこからどう持たせるのか心配でしたが、いやいや、全くの杞憂に終わりました。
実に面白かったですョ。☆4つ。
「エンド・オブ・ホワイトハウス」公式サイト



「奇跡のリンゴ」は、実話に基づくストーリー。

青森県のとあるリンゴ農家。
妻の美栄子は農薬の影響で体調を崩すことがしばしば。
その姿を見るに見かねた夫の秋則は、無農薬によるリンゴ栽培を決意するんですね。
ところが、リンゴはあまりにデリケートで。
秋則の挑戦を嘲笑うかのように、一向に実ろうとしないのです。
強い気持ちでいた秋則が、それでも挫けそうになった時、
ひとつの偶然が、彼を救ったのでした…。

06年にNHKの『プロフェッショナル』でも取り上げられた、木村秋則さんの奮闘記。
本人の努力はもちろん、奥さんの忍耐と、
娘の旦那だからと信じてくれた奥さんのお父さんの支援と。
見ていて心熱くなるのはそこでしたね。
ただ、若干辛い時期が長過ぎて、見てる側の心が折れちゃう可能性はあるかなぁ(笑)。
でも思うんですよ、こうして誠心誠意生きていると、神様は見ててくれるんだ。
ちゃんと素敵な伴侶と出会えるんだなって。
出会えないボクは、まだ頑張りが足りないってことでしょうか(笑)。☆3つ。
「奇跡のリンゴ」公式サイト



「G.I.ジョー バック2リベンジ」は、興行収入3億ドルを叩き出した人気作の第2弾。

世界の危機を命懸けで救ってきた、世界最強機密部隊、G.I.ジョー。
ところが、アメリカ大統領は彼らを殲滅せよと命令。
何とか生き残った3人の戦士は、「何かがおかしい」と、
初代ジョーである伝説の司令官の元を訪ねます。
そこには因縁のテロリストたちの陰謀があったのです…。

ブルース・ウィリス、ドウェイン・ジョンソン、イ・ビョンホン…。
それはそれは豪華な顔ぶれで。
ヒマラヤの崖で、ワイヤーを使って戦うシーンなどは、3Dで迫力倍増!
久々に3Dの必然性がある映画を見た気がします(笑)。
実はキャラクターものなのに、それをあまり感じさせないあたりも秀逸。
“あり得ない”ことが“あり得る”になっちゃうんですよね。
一気に引き込まれちゃう111分。これはDVDじゃないでしょ(笑)。
劇場で見ることをお勧めします。☆4つ。
「G.I.ジョー バック2リベンジ」公式サイト



「世界が食べられなくなる日」は、食の安全性に一石を投じたドキュメンタリー。

少し前に「モンサントの不自然な食べ物」という映画があって、その続編的な映画です。
そこでは“ラウンドアップ”という農薬があるけど、モンサント社が売る種子だけが、
そのラウンドアップに耐えうると。
他は雑草を含め、みんな死滅しちゃうんですね。
そんな強烈な種を遺伝子組み換えで作ったら、その食物の安全性はどうなのかというお話。
モルモットの実験は、悲惨ですよ。
あと、その農薬を使うと、畑としては死滅しちゃうか、その種子を買い続けなくちゃならない。
でも高くて買えなくなった農家は、
もう農業ができなくなってしまうわけです。それもいかがなものかと。
TPPを前に、賛成、反対は別にして、
知っておいた方がいい知識であることは間違いありません。
食の安全は、本当に大きな問題。次の世代にツケが回ってきます。
先人は一体何を考えてたんだと言われないよう、
目先のことだけじゃなく、きちんと考える必要があると思います。☆3つ。
「世界が食べられなくなる日」公式サイト



「箱入り息子の恋」は、星野源、夏帆主演の恋愛コメディ。

市役所に勤める天雫健太郎は、実につまらない男。
趣味はといえば、TVゲームとペットのカエルだけ。恋愛なんてしたことがない。
見かねた両親が取った行動、それは親同士による代理お見合いでした。
そこで1組の家族とお見合いが実現します。
お相手は今井家の一人娘、奈穂子。
それはそれは美しいお嬢さん。なのに結婚に踏み切れない理由、
それは奈穂子の目にありました。彼女は目が不自由だったのです。
奈穂子の父は厳格で、ちょっとやそっとじゃ娘の結婚を認めない。
その態度に天雫家が怒る。
ところが、健太郎が土下座をしてまで言うのです。
「娘さんとお付き合いさせて下さい」…。

いやいや、泣けちゃいました。それも奈穂子が吉野家の牛丼を食べるシーンで(笑)。
奈穂子の母が、奈穂子と健太郎の応援団。
実は健太郎の不器用な優しさに気づいていたんですね。
ほら、やっぱり神様は見てるでしょ(笑)。
健太郎は必要とされる喜びを知った。
こんな美人に必要とされるんだもの、ボクでも頑張っちゃう。
逆に彼女の側に立ってもそう、必要なのはこの優しさなんですよねぇ。
健太郎の行動にやや難ありですが、そこは初恋をした中学生が暴走してると思ってあげて下さいな(笑)。
牛丼屋さんのシーンだけで☆4つ。
「箱入り息子の恋」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.5.31
「監禁探偵」☆☆
「殺人の告白」☆☆☆☆
「パパの木」☆☆☆
「リアル〜完全なる首長竜の日〜」☆☆

あるドキュメンタリーを観た翌日、また別のドキュメンタリーを観たのですが、
どちらにも共通して登場する人物がいて。
「あ、繋がった…」と。
両方の内容が、それでより深くわかったという(笑)。
こんなこともあるんだなぁと、ニヤリとしてしまいました。
さ、今週は4本です!



「監禁探偵」は、三浦貴大、夏菜主演の謎解きミステリー。

向かいのマンションで起きた殺人事件。
それに遭遇してしまった亮太は、現場にやってきた被害者の友人、
アカネに犯人だと疑われてしまいます。
ならばとアカネを自宅に監禁する亮太。
ベッドに縛り付け、自ら真犯人を見つけようと言うのです。
すると、アカネがある提案をします。
「この事件、わたしが解決してあげる」。
名前も知らないふたりの男女が協力して、それもアカネは監禁された状態で、
謎の多い事件に挑むのでした…。

映画というより、舞台を観ている感じ。設定にもちょっぴり無理があるし(笑)。
ふたりの推理が鋭いのですが、
正直「それって初めに正解ありきで出てくる答えじゃない?」っていうのが多過ぎたかな。
夏菜ちゃんのセクシーな姿を拝めたのはありがたかったです(笑)。
そこに感謝の☆2つ。
「監禁探偵」公式サイト



「殺人の告白」は、韓国の、こちらも推理サスペンス。

1990年に起きた女性連続殺人事件から15年。
悔しい思いで時効を伝えるニュースを見ていたのは、担当刑事のヒョングでした。
それから2年、何と犯人を名乗る男が事件の詳細を本にして出版。
犯人した知り得ないことを、確かに書き連ねていたのです。
彼の名はドゥソク。甘いルックスと話題性から、まるでアイドルのような人気者に。
ヒョングはあまりの加熱ぶりに腹を立て、公開討論会を申し込みます。受けて立つドゥソク。
ところが「ヤツは偽物。俺が犯人だ」という男が名乗りを挙げます。男の名はJ。
果たして真犯人は誰なのか?それぞれの思惑は一体?
その真相が徐々に明らかになっていくのです…。

実は被害者のひとりがヒョングの恋人。さらに逮捕の直前、ヒョングは犯人を捕り逃しているんですね。
この映画は、あんまり話しちゃうとマイナス・プロモーション(笑)。よくできていたと思いますョ。
ストーリーの秀逸さを、是非楽しんで下さい。☆4つ。
「殺人の告白」公式サイト



「パパの木」は、フランスとオーストラリアの合作映画。

オーストラリアの大自然に暮らす、夫婦と4人の子供たち。
幸せな毎日を送ってました。
ところが、父が車を運転中に心臓発作を発症。
車は庭の大きなイチジクの木にぶつかり止まったものの、父は帰らぬ人になってしまいました。
悲しみに暮れる家族たち。
特に妻のドーンと一人娘のシモーンは大きなショックを受けていたのです。
父の車が止まったイチジクの木。そこにパパがいると信じたシモーンは、
木の葉のざわめきにパパの声を聞き、いろんな話をするようになりました。
元気のないママにも、「イチジクの木にパパがいるよ」と教えてあげるのでした…。

まるで本当にパパの意思が宿ったかのような動きをするイチジクの木。
ちょっぴりスピリチュアルなテイストも感じる作品です。
元気を取り戻したドーンが、人生で初めての就職をする。
そこで新たな出会いもある。母ではなく、女としての自我の目覚め。
シモーンにはよくわからないけど、そんな母が嫌で嫌で仕方ない。
イチジクの木もまたしかり。
しかし、少しずつ、でも確実に時は流れ、家族はある決断をしなければならなくなります。
シモーンたちにとって“パパの木”は、
いつまでも記憶に根を張る、幸せな家族の象徴なのでしょう。☆3つ。
「パパの木」公式サイト



「リアル〜完全なる首長竜の日〜」は、佐藤健、綾瀬はるか主演作。

小学校の時に飛古根島に引っ越した浩市は、地元の少女、淳美と出会います。
ふたりは大学時代に再会、恋に落ちます。
ところが、漫画家として活躍していた淳美が自殺を図り、
昏睡状態に陥ってしまうんですね。
最先端医療の“センシング”を使い、浩市は淳美の意識の中へ潜入。
自殺の原因と、回復への糸口を探ろうとします。
しかし、何度チャレンジしても「(小学校の時に描いた)首長竜の絵を探してきて」というばかり。
首長竜の絵には、またふたりの過去には、一体何が隠されていたのでしょうか…。

近未来SFサスペンス的な作品。映像も、脳内意識と現実世界を区別するかのように、
メタリックなトーンで描かれます。
いかんせん抽象的な表現が多くて。
観客が感じ入るべき部分にみんな規制線が貼られてるような、そんな感じがしちゃうんですよね。
タイトルとサブ・タイトルからしても、元来そんな作品なのかもしれませんが。
テーマが何なのかも、ボクには最後まで見えませんでした。☆2つ。
「リアル〜完全なる首長竜の日〜」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.5.22
「セレステ∞ジェシー」☆☆☆

インターネットで、廉価で過去の映画が見られる。
レンタルDVDのあり方も変わってくるんでしょうね。
逆にその気軽さが、映画の扉を開き、
新作をいち早く劇場で見たいという気持ちに繋がってくれたらいいんでしょうけど。
さ、今週は1本です!




「セレステ∞ジェシー」は、わずか4館からスタートしたという大ヒット恋愛映画。

セレステとジェシーは息もピッタリの夫婦。
端から見たら、超がつくほどの仲良しなのに、ふたりは離婚を前提に別居中。
その理由とは。
コンサルティング会社を経営し、多忙な毎日を送る妻のセレステに対し、
売れないイラストレーターの夫、ジェシー。
互いに30歳を超え、子どもができたらかわいそうだからと、
セレステが離婚を言い出したのです。
ジェシーは未練たっぷりなのに、セレステは頑なに拒否。
それでもふたりはホントに仲良しでした。
「いつまでも大切な親友でいたいから」。
セレステのお決まりのセリフです。
ところが、ある日、ジェシーから衝撃の告白をされます。
「他の女性との間に、子どもができた」。
意外にも動揺するセレステ。あんなに離婚をしたがっていたのに。
失って初めてジェシーの大切さに気づいたのですが…。

ま、人間は無いものねだりですから。
あればウザいけど、無くなったらポッカリと穴が開く。
恋愛も例外じゃないということでしょう。
ここにも、アメリカ特有の“自由”や“人権”が見え隠れ。
それを尊重しし過ぎるから、自分ががんじがらめになっちゃう。
そんなに人からの見え方を気にして生きてたら、疲れちゃうのに。
ドラマチックなストーリー展開というより、身近な友達の恋の話に付き合ってる感じ。
それが自国では、女性を中心にウケたのかもしれませんね。☆3つ。
「セレステ∞ジェシー」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.5.16
「ビル・カニンガム&ニューヨーク」☆☆☆☆

結構たくさん試写に行ってますが、公開は6月以降のものが多く、
今月はこの作品を含め、あと2本かも。
GWが終わって、昔で言うところの五月病?の出やすい時期。
見るなら元気になれるような映画がいいかもしれませんね。
今週紹介するのは、そんな作品かもしれませんョ!
では今週の1本です!




「ビル・カニンガム&ニューヨーク」は、
ニューヨーク・タイムズ紙の名物フォトグラファーを追いかけたドキュメンタリー。

ビル・カニンガムは、1929年生まれの84歳。
ニューヨークタイムズ紙の名物コラム『ON THE STREET』を手掛けるフォトグラファーです。
「最高のファッション・ショーは常にストリートにある」と語っているように、
雨の日も風の日も“相棒”の自転車に乗り、
ニューヨークの街角でストリート・スナップを撮り続けてきたのです。
ビルに撮られることがニューヨーカーのステータスと言われるほどの人物ながら、
その私生活や仕事ぶりはヴェールに包まれていたんですね。
そんなビルのすべてが明らかになるドキュメンタリーです。
可愛いおじいちゃんといった感じ(笑)。でも彼の言葉にはやはり含蓄があるんですね。
勉強になりますョ。
自由の意味を履き違えてませんか?というアメリカにおいて、
彼こそが本当の“自由”じゃないかということに気づかされるはずです。☆4つ。
「ビル・カニンガム&ニューヨーク」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.5.8
「県庁おもてなし課」☆☆☆
「私が靴を愛するワケ」☆☆☆☆☆

GWも終わり、日常生活に戻りました。
次の大型連休は…夏休み?
心の休暇は映画で取りましょ(笑)。
さ、今週は2本です!




「県庁おもてなし課」は、「阪急電車」などでおなじみ、
有川浩の小説の映画化です。

面白くない県の上位に常にランクされる高知県。
県庁は観光を促進するために、“おもてなし課”なる課を作ります。
課員は、若き“高知バカ”の掛水史貴を含む5名。
高知県出身の著名人に観光特使を依頼するも、その不手際に叱られる始末。
ところがそのひとり、人気作家の吉門喬介が的確なアドバイスをするのです。
まずは民間的感覚の不足を指摘。
そして、昔“パンダ構想”なるものをぶち上げて、
県庁を追われた人物がいるから調べてみるようにと。
さらに、外部から若い女性スタッフをひとり入れ、
彼女の声を重視することなどなど。
そこには高知県に足りない何かが確かにあったのです。
そんな時、掛水は総務課のアルバイトに来ていた明神多紀と知り合います。
仕事が出来るのに、もうすぐ契約が切れたら県庁を去ると言うではありませんか。
掛水は彼女をスカウトし、難題山積のおもてなし課は、本格的にスタートしたのです…。

何をやろうにもいちいち越えなきゃならないハードルがある。
そのハードルが結構高かったりする。
それでも挫けず頑張る彼らの物語。
高知県にこの課は実在し、
特使を頼まれた有川浩さんがそれにヒントを得て書いた小説だそう。
いろんな人間関係が入り組んでいて、その根底にはすべて“愛”があります。
恋愛、郷土愛、親子愛…。
この映画を見てると、恋愛がしたくなりますョ。
認めてくれる人が近くにいると、やっぱり頑張れるって再確認しますから。
でも、ひとつだけイヤだったこと。
それはその恋愛感情をハナからあからさまにしてたこと。それは公私混同。
そんなプロジェクトは上手くいくはずがない。
映画だと“いっちゃう”んじゃ、そりゃリアリティ不足の絵空事になっちゃう。
不満はそこかな。半分やっかみですけど(笑)。
主演の錦戸亮くんを見ていて、顔のシワがいいなぁと。
彼はまだ若いけど、年齢重ねるのも悪くないなぁと、ふと思いました。☆3つ。
「県庁おもてなし課」公式サイト



「私が靴を愛するワケ」は、フランスのドキュメンタリー映画。

なぜ女性が靴に夢中になるのかを、
たくさんの女性やデザイナー(男性も含む)にインタビューして、
解析していく作品。
セレブ、ファッション誌の編集長、女優、歌手、ダンサーなど、
本当にたくさんの女性がインタビューに答えています。
男性は思いません?なんであんなに靴を持ってるのに、また買うの?
それも同じようなやつを、まだ前に買ったやつは履いてもいないのにって。
その謎が明らかになります(笑)。

最初のうちは靴の構造は建築学にも似てと、
真面目な話が中心になって進むのですが、後半はほとんど下ネタ!これが面白い!
パンプスの先が浅くて、指の付け根が出てる女性、いますよね?
あれは胸の谷間を連想させるんですって。ホントなんですって。
だから職場には相応しくないと禁止している企業が多いとか。
あの部分を見てバストを想像するって…(笑)。
言い方は失礼ですが、“女を捨てていない”女性はかかとの高い靴を履くそう。
特にピンヒールはセックスシンボルでもあるとか。
ね、面白いでしょ。こんな話を真面目にやってます。
勉強というか、酒の席の小ネタになること間違いなし!
男性にこそ見て欲しい、オススメの1本です!☆5つ。
「私が靴を愛するワケ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.4.25
「ジャッキー・コーガン」☆☆☆
「17歳のエンディングノート」☆☆☆
「図書館戦争」☆☆☆

GWが近づいてきました。
今年は前後半にわかれるという方、多いみたいですね。
遠出とご近所。そんな分け方もいいかも(笑)。
ご近所なら、もちろん映画館をお勧めします。
特に、中心からちょっとだけズレたところの映画館が穴場。
人気の映画がなんでこんなに空いてるの?なんてこともしばしば。
ゆったり過ごすにはもってこいですョ。
さ、今週は3本です!




「ジャッキー・コーガン」は、ブラッド・ピット主演作。

裏稼業の連中が集まる賭博場に入った強盗事件。
黒幕を探るべく送り込まれた殺し屋が、ジャッキー・コーガンでした。
実はチンピラのようなマヌケなふたりによる仕業だったのですが、
襲われた方もいわくつき。
様々な人間関係が複雑に入り乱れ、
ジャッキーは疑わしきをすべて殺そうと決意するのです…。

短いストーリー紹介ですみません(笑)。
登場人物とそのキャラの多様性が邪魔して、うまく説明できませんでした。
この手の作品には付きものの、おバカキャラもいて、
サスペンスものを緊張感だけで描いていないのが、新しくはないけど特徴かなと。
ブラピ・ファンのための1本。
このキャラで続編を作るとしたら、またさらに脚本を練らないと、
といった感じでしょうか。☆3つ。
「ジャッキー・コーガン」公式サイト


「17歳のエンディングノート」は、ダコタ・ファニング主演作。

白血病の少女テッサ。
彼女は自分が長く生きられないことを知っていました。
17歳になった今、やり残したことがないようにと、
親友のゾーイと「To Do リスト」を作るのです。
セックス、ドラッグ、中身は刹那なものばかり。
ところが、隣りの家に越してきたアダムに恋をしてしまうのです。
限られた時間の中で、
テッサは幸せな人生の幕引きができるのでしょうか…。

テッサには家族がいて、特に父親が娘のことを思うがあまり、
テッサを縛ろうとする。でも彼女は残された時を思いっ切り生きたいと。
ただ、その“思いっ切り”のベクトルの向きを、
大人が大人の価値観で直そう(変えよう?)とするんだけど、
命に限りがあろうとなかろうと、これは同じで、
自分で気づかなきゃわからない。
そのきっかけに、ごくごく普通の男の子のアダムがなる訳です。
人生って長さじゃないと思うんだなぁ。
時間という名の“チャンス”は長い方が与えてもらってるけど、
無駄にしてる人、多いでしょ?
生きることに頑張らなきゃって思える作品ですョ。☆3つ。
「17歳のエンディングノート」公式サイト


「図書館戦争」は、コミック、アニメにもなった、有川浩の人気小説の映画化。

近い未来の日本。メディア統制のための法律「メディア良化法」が施行され、
好きな本を読むのも簡単ではなくなります。
規制のためなら武力の行使もいとわない。
そんな時代に、本を読む自由を守るため、
図書館を自衛する“図書隊”が作られるのです。
笠原郁は、高校生の時に、自分と自分の好きな本を守ってくれた図書隊員に憧れ、
図書隊に入隊します。様々な現実に直面し、叩きのめされる日々。
そんなある日のこと、日本を代表する大きな図書館が閉鎖されることになり、
蔵書のすべてが別の場所へ移送されることになります。
メディア良化委員会にとっては抹消したい書物がたくさんあり、
図書隊としては何としてもこれを守りたい。
そんな中、ついに戦いの火蓋が切って落とされたのです…。

岡田准一と榮倉奈々の主演作。
奈々ちゃんのまるで素のような演技は結構好きなんですよ。
ただ、どうしても設定に無理があるかなと。
「ええ〜っ」と思った瞬間に引いちゃうというか、現実に戻っちゃう。
それを言っちゃ始まらないんですけどね(笑)。
娯楽として割り切って見る(当たり前か…)1本だと思いますョ。☆3つ。
「図書館戦争」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.4.18
「カルテット!〜人生のオペラハウス」☆☆☆☆☆
「ハッシュパピー バスタブ島の少女」☆☆☆
「ヒステリア」☆☆☆
「リンカーン」☆☆☆

朝日新聞の週末版に『BE』という特別紙が挟まれています。
少し前まで掲載されていた「うたの旅人」に代わり、
先週から「映画の旅人」が始まりました。名作邦画のあれこれを探る旅。
前シリーズもよかったけれど、これもまた面白いですョ。
宅配の読者以外でも、デジタル版で読めるよう。
機会があれば是非読んでみて下さい!
さ、今週は4本です!




「カルテット!〜人生のオペラハウス」は、ダスティン・ホフマン監督のイギリス映画。

引退した音楽家が老後を暮らす“ビーチャムハウス”。
その運営は、毎年行うコンサートの売上金で賄っていました。
ところが今年は人気のソリストが出演を辞退。
このままでは売上も期待できず、ホームの存続も危ぶまれていたのです。
イギリスオペラ界の4大スターと言われた、レジー、シシー、ウィルフの3人は今も仲良し。
レジーは学生たちに音楽の良さを教えることを生き甲斐に、
のんびり余生を送っていたのですが、そこに新たな入居者がやって来ます。
それはレジーが昔“9時間”だけ夫婦だった、大物女性ソプラノ歌手のジーン でした。
野心家でエゴイストだったジーンが何でビーチャムハウスに。
静かだったジーンの心はかき乱されるのでした…。

イギリス映画らしいイギリス映画。すごくよかったです。
ジーンの入居で4大スターが勢揃い。
ならばコンサートも大盛況でホームの存続も問題なしのはずだけど、
ジーンがそう簡単に出演依頼を受けるはずがない。
それもそのはず。以前のように声が出ないことを、大スターのプライドが許さないから。
シシーも認知症が始まってるみたいだし、他の入居者たちもそれぞれに問題を抱えている。
でもね、素敵なエンディングが待ってるのですョ。
いいですよね。それぐらいは明かしても(笑)。
年を重ねるのも悪くないなって、思わせてくれる1本ですョ。
また、実在の音楽家たちが、自身の役で登場するのも素敵。
どうぞエンドロールまでしっかり見てから席を立って下さいねっ。
満点!☆5つ!
「カルテット!〜人生のオペラハウス」公式サイト


「ハッシュパピー バスタブ島の少女」は、数々の映画祭で高い評価を受けた話題作。

貧しい人たちが暮らす、河川敷のコミュニティー、通称“バスタブ”。
父ウィンクと、6歳の娘ハッシュパピーはそこに住んでいました。
世間から隔離されたかのようなこの空間は、
ハッシュパピーにとっては宇宙全体のようなもの。
動物や植物、すべての生命が宿っていたから。
ところが、大きな嵐によって、バスタブは壊滅状態になってしまうんですね。
呆然と立ち尽くすハッシュパピー。
さらに父ウィンクの病気が発覚します。
それでもバスタブを守らなきゃと、ハッシュパピーは前を向くのでした…。

低予算で、無名の新人監督が、オーディションで発掘した、
小学校に通う普通の6歳の少女と作った映画。それが世界中で賞賛される。
“生きることへのひたむきさ”。
この映画が高く評価される要因は、ここにあるんじゃないかなと思います。
ハッシュパピーのお母さんは、彼女が幼い頃にバスタブを出ていっちゃってて。
そんなお母さんに会いたいという少女らしい気持ちがあるのも、
彼女が“普通の”女の子なんだという、
決してスーパーガールじゃないんだということを表しているのかなと。
現実と寓話の中間にいるような、不思議な感覚の映画でしたョ。☆3つ。
「ハッシュパピー バスタブ島の少女」公式サイト


「ヒステリア」は、女性向け“大人のオモチャ”の誕生秘話。

1800年代のイギリス。
先進的医療を提唱してはぶつかり、
あちこちの職場をクビになってきた若き医師のグランビル。
やっとの思いで職にありついたのは、
女性医療の第一人者、ダリンブル医師のクリニックでした。
当時、女性特有の病気とされていた“ヒステリー”。
それを緩和するマッサージ治療を担当することになったのです。
でも、これはいわゆる“性”のお手伝い。
なかなかのイケメンであるグランビルの元に女性が列をなし、クリニックは大繁盛。
するとダリンブル医師は、自分の次女を妻にと勧めてきたのです。
ところが大事な腕が腱鞘炎になり、
まともに腕を動かせなくなったグランビルはクビになってしまうんですね。
縁談も破局になり、向かったのはかつて居候していた金持ちの親友宅。
発明好きの友だちが使っていたある装置を見て、グランビルは「これだ!」とひらめくのでした…。

バイブレータの発明秘話ですから、どんなにエロい映画かと、
ちょっぴり(ホントはかなり?)期待して行ったけど(笑)、
その実、中身は女性の自立の話なんですね。
ダリンブル医師にはもうひとり、長女のシャーロットという娘がいて、これが跳ねっ返りの男勝り。
でも強い信念の女性だったのです。
バイブは脇役で、主役はシャーロットの革新的思想と言ってもいいくらい。
あまり変な期待を抱いて行かない方がいいですョ(笑)。☆3つ。
「ヒステリア」公式サイト


「リンカーン」は、スティーブン・スピルバーグが手掛けた伝記映画。

1865年のアメリカ。
南北戦争も4年目に突入し、国を二分する戦いは、多くの若者の命を奪っていたのです。
そもそもこの戦争は、自分が唱えた「奴隷解放」の賛否が引きがねとなっている。
大統領再選を果たした直後のエイブラハム・リンカーンは悩んでいました。
自分の理想のために犠牲になっていく若い命たち。
遂には自分の息子ロバートが、正義感から北軍に入隊。
母の反対を押し切っての行動に、リンカーンの心はますます揺れるのでした…。

こちらもある意味の“誕生秘話”。南北戦争があって、今のアメリカ合衆国はあるのですから。
ボクら日本人はリンカーンを、
“人民の、人民による、人民のための政治”という有名な言葉で知っていますが、
アメリカ人にとっては“伝説の大統領”。
そんな偉大なる人物を、人間として、つまり一家庭人としてもとらえているのが
この映画の他とは違うところなんですね。「すべての人に自由を」。
そう言って闘い、勝ち取ったアメリカ人の“自由”が、
今は少し曲解して主張されてる気がしてなりません。
リンカーンは空の上で、どう思っているのでしょう?☆3つ。
「リンカーン」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.4.11
「コズモポリス」☆☆

なんだか世の中がきな臭くて。
戦争になれば取り返しのつかない悲劇となるのは明らかなのに。
戦闘は映画の中だけでいいでしょ。
その悲劇のドラマを、好戦的な国の指導者に見せてやりたいものです。
冷徹な人間だと、それでもニヤリとするのかもしれませんが。
さ、今週は1本です!




「コズモポリス」は、カナダの鬼才・デイヴィッド・クローネンバーグ監督作品。

投資会社を経営し、28歳にして巨万の富を得た男、エリック・パッカー。
白のリムジンはハイテク仕様。
車の中にいれば、すべてを操れる、言わば“動くオフィス”。
綺麗な妻も、財も、欲しいものはすべて手に入れたのに、
虚無感に襲われるエリック。
そんな中、読み違えた中国人民元の動き。
一瞬にして数百億ドルを損失し、全財産を失ってしまったのです。
ひとたび歯車が狂ったあとは、
坂を転がり落ちるかのような出来事が彼を待っていたのでした…。

もらったプレスには“サスペンス・スリラー”という表記さえあって。
確かに、独特の近未来SF的な匂いは、全編を通してありました。
原作はアメリカで2003年に発売された同名小説。
リーマン・ショックを予見したと話題になったとか。
鬼才と呼ばれる人の作品は、なかなか難しくて。
だから鬼才なんでしょうけど(笑)。
ボクにはちょっと難解過ぎたかも。
面白い人にはたまらなく面白いんでしょうね。
ごめんなさい。☆2つ。
「コズモポリス」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.4.4
「海と大陸」☆☆☆
「桜、ふたたびの加奈子」☆☆☆

先日、試写会場で隣に座った女性が、それはそれは時計をチラッ、チラッと見る。
これって気が散るんですよねぇ。
余程たいくつだったのか、ボクは見入ってたから、もう頼むよって感じ。
その度に現実に引き戻されちゃう。
これもマナーですよ。覚えておいて下さいねっ。
さ、今週は2本です!




「海と大陸」は、イタリア映画。

地中海に浮かぶリノーサ島。
漁師の家に生まれたフィリッポは20歳の青年。
2年前に父を亡くし、今は母親とふたりで暮らし。
衰退していく漁業を諦め、観光業に転じた叔父。
それでも漁に出る70歳の祖父。
母親はここを出て、別の土地で新たな人生を始めたい。
三者三様の考え方の中、フィリッポは迷い、悩むのでした。
ある日のこと、祖父と漁に出ると、アフリカ難民を乗せたボートと遭遇します。
そのボートから飛び下り、フィリッポの船に向かって一心不乱に泳ぎ来る難民たち。
不法難民を助けるのは重罪。しかし、海で溺れる者を助けるのは漁師の掟。
祖父は海の男として、難民たちを助けるのですが、この尊厳ある行為が波紋を呼びます。
警察がフィリッポたちに目をつけたのです…。

イタリアの人に比べると、日本人のボクらには正直どこまでピンと来るか、という1本。
ただ、迷える青年期、正義や信念と現実の境目、変わっていく環境や社会など、
共通する部分で感じるものはあるはずです。
イタリアというと、風光明媚なリゾート地のイメージで、
舞台となるリノーサ島もそう。
その光と影もひとつのエッセンスになっているんだと思います。☆3つ。
「海と大陸」公式サイト



「桜、ふたたびの加奈子」は、広末涼子、稲垣吾郎主演作。

容子と信樹には加奈子という幼いひとり娘がいました。
加奈子の小学校入学式当日。両親がちょっと目を離した隙に、
加奈子は小学校の門の前で車にはねられ、亡くなってしまうんですね。
哀しみに暮れ、後追い自殺を図るも、一命を取りとめる容子。
それからというもの、いないはずの加奈子に話し掛ける容子に、
信樹は苛立ちすら感じるようになります。
ある日のこと、可愛がっていた犬のジローが家を飛び出してしまいます。
追いかける容子。
すると若い妊婦の正美が、お腹を抱えて倒れているではありませんか。
聞けば高校生で、頼れるのは小学校時代の担任の砂織だと。
その砂織は加奈子の担任になるはずの先生で、
容子は直感で「加奈子が生まれ変わってくる」と感じるんですね。
正美は無事出産。赤ちゃんの右の手には加奈子と同じ場所にホクロがある。
「やっぱり…」と確信する容子は、
望まない出産をした正美に「赤ちゃんを養子にくれないか」と申し出るのです…。

とある雑誌でのこの映画の評価は、けちょんけちょんでした(笑)。
無理もないでしょう。これはわからない人にはわからないお話ですから。
単なる家族愛の映画ではなく、スピリチュアル的要素が大きいんですね。
断っておきますが、ボクは宗教はやってません。
ただ、こういうことってあるんじゃないかなって思ってるから、わからなくないんです。
たぶん、特別なところに着地します。ホラーとかスリラーでもないけど、
ちょっと違う映画だと、最初から理解して見た方がいい作品だと思います。☆3つ。
「桜、ふたたびの加奈子」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.3.19
「シュガー・ラッシュ」☆☆☆
「だいじょうぶ3組」☆☆☆
「ボクたちの交換日記」☆☆☆

春。新たな環境に身を置く人が増える季節。
今の自分は大丈夫なのだろうかと、ふとした不安が首をもたげたりもします。
そんな時に映画が背中を押してくれることもしばしば。
迷ったら、共通点のありそうな作品を探して、映画館に足を運んでみてはいかがですか?
さ、今週は3本です!




「シュガー・ラッシュ」は、ディズニーのアニメ映画。

閉店後のゲームセンター。
そこはゲームのキャラクターたちが、素の自分に戻る時間でもあります。
80年代に生まれ、今なお人気のゲーム“フィックス・イット・フェリックス”。
壊し屋のラルフが破壊した建物を、フェリックスが直していくというゲーム。
この中でラルフは30年間も悪役を演じてきたのです。
本当は気のいいヤツなのに、役柄の粗暴さに、ゲームの中のみんなからも嫌われているラルフ。
そんなラルフが、「悪役はもう嫌だ。ヒーローになりたい」と別のゲームに侵入。
フェリックスが持っているようなヒーローの証し“ゴールドメダル”を探しにいくんですね。
“ヒーローズ・デューティ”というシューティング・ゲームで、
なんとかメダルを手にしたラルフでしたが、凶暴なサイ・バグという敵に襲われて、
今度はレース・ゲーム“シュガー・ラッシュ”に紛れ込んでしまいます。
そこで出会ったのが、ちょっぴり生意気なヴァネロペという女の子。
彼女との出会いが、ラルフを変えることになるのです…。

発想が面白かったですね。
例えば、キャラクターたちはコードを通ってあちこちへ行けるとか、
悪役が悩みを打ち明けるセミナーみたいなものがあったり。
映画のタイトルが「シュガー・ラッシュ」ですから、そこでの出来事がメインのストーリー。
レースに出たくても出られないヴァネロペと、似た境遇を見つけるラルフ。
でも、実はラルフが“ヒーローズ・デューティ”
からとんでもないものを一緒に持ってきちゃったんですね。
これがゲームセンターのすべてのゲームの存亡にも関わってくると。
ま、説明すると長くなるので、ここまで(笑)。
ファンタジーの世界に無条件で浸ってみて下さい。楽しかったですョ。☆3つ。
「シュガー・ラッシュ」公式サイト



「だいじょうぶ3組」は、乙武洋匡の自伝的小説の映画化。

松浦西小学校、5年3組。
春の新学期が始まって、新しい担任の先生がやってきます。
その姿を見て、28人の生徒は驚きます。
なぜなら、その先生には両手と両足がなく、
電動車椅子に乗ってやって来たから。
先生の名前は赤尾慎之介。
補助教員として、教育委員会に勤める慎之介の親友、白石優作がサポートに付きます。
果たして、慎之介に小学校の担任は勤まるのか?
二人三脚での奮闘の日々が始まったのです…。

実際に乙武さんが、07年4月から10年3月まで、
杉並区の小学校で教諭として働いていた経験から出来た小説だそう。
乙武さんを見た子供たちの素直な反応なども、そのままに描かれているのでしょう。
補助教員の白石役に、TOKIOの国分太一が扮していて、彼の演技が、
役者としては素人の乙武洋匡を、役そのままに“補助”する形になってるなという気がしました。
やっぱり発声とかは素人のそれ。リップノイズが気になっちゃうぐらいだから、
おそらく乙武さん、小さな声だったんだろうなと。
そうすると演技のメリハリも…ね。
でも、子供たちもオーディションで選ばれて、演技が初めてだった子がほとんどだとか。
その頑張りに敬意を表して。☆3つ。
「だいじょうぶ3組」公式サイト



「ボクたちの交換日記」は、鈴木おさむ原作、内村光良監督作品。

高校の同級生の田中と甲本の二人組、結成12年目のお笑いコンビ“房総スイマーズ”。
未だまったく芽が出ず、仕事と言えば、場末の営業かTVの前説。
これじゃダメだと甲本が思いついたのが“交換日記”でした。
直接は言いづらい本音を書いて、前向きに頑張ろうというもの。
初めは乗り気じゃなかった田中でしたが、意外や効果てきめん。
少しずつ変化が現れてきたのです。
実は、甲本にはトラウマがありました。
昔、出演した『笑軍天下一決定戦』というお笑いコンテストで、
一瞬頭の中が真っ白になってしまい、それが原因で房総スイマーズは敗退。
甲本はその失敗をずっと引きずっていたのです。
あれから時は流れて。再び『笑軍天下一決定戦』への出場が決まります。
これがラストチャンスと決めたふたりの、真剣勝負が始まるのです…。

田中と甲本は蟻とキリギリスみたいな感じ。
コツコツ真面目にバイトをし、節約しながら生活する田中に対し、
キャバクラ勤めの献身的な彼女に食べさせてもらっている甲本。
ライバルたちが次々レギュラーを勝ち取っていくのに、自分たちには何もない。
田中は放送作家にならないかと誘われているけど、甲本には才能も何もない。
それどころか、ここ一番で失敗したトラウマが足を引っ張る。
それでも田中は甲本とお笑いをやりたかったんですね。
ドラマはそこで終わりません。続く後日談に感動はあります。
「夢を諦めていい理由が、人生にはひとつだけある」。
この映画のキーワード。いい言葉です。☆3つ。
「ボクたちの交換日記」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.3.14
「ある海辺の詩人―小さなヴェニスで―」☆☆☆
「偽りなき者」☆☆☆
「シャドー・ダンサー」☆☆☆
「プラチナデータ」☆☆☆

この時期、花粉症の方は大変!試写会場でのくしゃみは、さすがに責められません(笑)。
皆さん、どうぞお大事にっ。
今週はいろんな国の映画をご紹介。
お国柄というか、少しその国の知識を入れてから見に行くと、また感じ方が違うかも。
今週は4本です!



「ある海辺の詩人―小さなヴェニスで―」は、イタリア映画。

美しい漁師町、キオッジャ。
そこに、地元の漁師たちが夜な夜な集う小さな酒場がありました。
その酒場に勤める中国人女性のシュン・リー。
彼女はブローカーに多額の借金をしてイタリアへ。
息子をこの国に呼ぶことだけを胸に、懸命に働いていたのです。
酒場の常連客のひとりに、“詩人”と呼ばれているベービという漁師がいました。
初老の彼もまた、遠い昔に故郷のユーゴスラビアを離れ、
キオッジャにやってきていたのです。
似た境遇のふたりは、身の上話をするなどしながら、
次第にかけがえのない存在になっていきます。
ところがそれを良く思わない人々もたくさんいて。小さな町に広がる根も葉もない噂。
シュン・リーは町を出て行く決心を余儀なくされたのです…。

イタリア映画ですが、主人公のひとりとして中国人女性が出てくるあたりが、
意外と言えば意外でした。
イタリアの移民事情はよくわかりませんが、映画の設定になるぐらいですから、
多国籍化はあるということなのでしょうね。
初老の男性と訳あり女性の、出逢いと別れの物語。
ベービとシュン・リーのどっちの立ち位置で見るかによっても違うし、
ハッピーエンドかどうかも見る人のジャッジだと思います。
でも、ベービの気持ちはボクにはよーくわかるんですね。
シュン・リーはベービにとって、孤独を埋めてくれる本当に大切な存在だったんですって。
宝物のような。ちょっと切なかったです。☆3つ。
「ある海辺の詩人―小さなヴェニスで―」公式サイト



「偽りなき者」は、デンマーク映画。

ルーカス、42歳。
つい最近離婚をし、勤めていた小学校も閉鎖。
今は幼稚園教師として働いていました。
愛する息子とも会えない寂しさを埋めてくれたのは友人たち。
中でも親友のテオは家族ぐるみで付き合ってくれたのです。
テオの娘、クララはルーカスが働く幼稚園の生徒。
おしゃまなクララは、実はルーカスにほのかな恋心を抱いました。
キスを迫るクララに、「ダメだよ」と優しく叱るルーカス。
幼心にショックを受けたクララは、腹いせとして園長先生に、
ルーカスにイタズラをされたかのような嘘をつくんですね。
まさかと思いつつも、子供の言葉に嘘はないと信じる園長は、
外部の人間にクララの事情聴取を依頼。
誘導尋問になんとなく頷いてしまうクララ。 ルーカスは“クロ”だと結論づけられてしまいます。
無実を証明する材料が何もないルーカスは、
その瞬間に“複数の園児にイタズラをした変質者”に
仕立て上げられてしまったのです…。

怖いですねぇ。
町を出ればいいと思うかもしれませんが、出たら非を認めることになっちゃう。
小さな町ですから、毎日が生き地獄。
どんなに真面目に生きてても、
こんなふうになっちゃうことも確かにあるんだなって思いました。
『李下に冠を正さず。瓜田に靴を入れず』。
疑わしきを避けることの例えですが、ルーカスの場合、それすらしてない訳で。
さぁ、そんな“偽りなき者”の結末やいかに。
衝撃のラストが待っています!☆3つ。
「偽りなき者」公式サイト



「シャドー・ダンサー」は、アイルランドとイギリスの合作映画。

1970年代のアイルランド、ベルファスト。
おつかいを頼まれた幼いコレットは、弟にその役目を押しつけます。
ところが運悪く、弟はIRA(アイルランド共和国軍)と
イギリス警察との抗争に巻き込まれ、銃弾を受け、死亡してしまうんですね。
あれから20年。大人になったコレットは、弟の復讐を誓い、
兄弟と共にIRAのメンバーとなります。
テロを仕掛けるコレットでしたが、潜伏していた警察に逮捕されてしまいます。
実はコレットはシングルマザー。警察は揺さぶりをかけてきたのです。
「このまま25年の刑で入獄し、息子とずっと会えずにいるのと、
こちらへIRAの内部情報を流すのと、どっちを選択する?」。
愛する息子を守るため、
コレットはスパイになるより他に道はなかったのです…。

長く続くアイルランド紛争。これも負の連鎖が生んだ悲劇です。
我々は何かを学ばなきゃいけないと思うのですが、
断ち切るって難しいんでしょうね。
自国の皆さんには、ものすごくリアリティを持つテーマであることは
想像に難くありません。
日本人にはおそらく“母性愛”の1本として、
衝撃と共に響いてくることでしょう。
これまた意外な結末が待っています。
やっぱりどこかで連鎖は断たないといけないのです。☆3つ。
「シャドー・ダンサー」公式サイト



「プラチナデータ」は、二宮和也、豊川悦司主演の東野圭吾作品。

そう遠くない未来の日本。
警視庁の科学捜査機関『特殊解析研究所』の天才科学者・神楽は、
DNA捜査で冤罪0のシステムを構築。
少しの証拠で犯人を割り出せる“プラチナデータ”なるものを駆使して
事件を解決していたのです。
ところが、そのシステムに関係する者が次々殺されていきます。
証拠として採取されたDNAから割り出された犯人は、なんと神楽自身。
身にまったく覚えのない事件の犯人になってしまった神楽は、
敏腕刑事の浅間に追われることに。
ところが浅間の直感が、神楽が犯人であることへの違和感を感じ取るんですね。
果たして、神楽は真犯人なのか。浅間の執念の捜査が続きます…。

いろんな登場人物が出てきて、複雑に絡み合います。
神楽自身も幼児体験から二重人格の持ち主に。
近未来の設定ながら、神楽のデジタルと浅間のアナログの対比が面白かったです。
実は完璧ではない『プラチナデータ』。
見つけられない容疑者は“NF”(ノット・ファウンド)となる。
最新鋭の科学と知能を注入してるのになぜ?
おかしいじゃんと思うところにカギはある(笑)。
この事件の根幹にある“動機”が、意外や薄っぺらで。
正直「そんなもののために…?」と思うところがありました。この映画はそこかな。
とはいえ、主演のふたりの役者さんのファンは十分楽しめる作品だと思いますョ。
☆3つ。
「プラチナデータ」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.2.27
「フライト」☆☆☆☆

第85回アカデミー賞が発表になりました。
作品賞には「アルゴ」が輝き、最多4部門は「ライフ・オブ・パイ」が獲得。
他にも意外と観ていない作品が賞を受賞していたので、
これは追っかけ観にいかなくてはと思っている次第です(笑)。
さ、今週は1本です!



「フライト」は、デンゼル・ワシントン主演、ロバート・ゼメキス監督作品。

オーランド発アトランタ行き旅客機のパイロット、ウィトカー機長。
実はかなりの睡眠不足。
それでもひどい乱気流を乗り越えるなど、卓越した技術の持ち主。
機体が安定するや、ウィトカーは副操縦士に任せて眠ってしまいます。
ところが、突然の急降下。
目覚めたウィトカーは何とか速度を落とそうとするものの、
機体はまったく言うことを聞きません。
するとウィトカーは背面飛行という、驚異的な操縦法で水平を保ち、
機体を元に戻して、高原に不時着。
乗客、乗員102人中、96人が生存する奇跡の着陸となったのです。
病院に運ばれたウィトカーは一躍時の人となり、ヒーロー扱いに。
ところが、調査委員会が事故原因を解明するに連れ、ウィトカーへの疑惑が浮上していきます。
それは、ウィトカーの血液から検出されたアルコールでした。
ウィトカーは機体の故障が原因だと訴えるのですが、
マスコミは手の平を返すが如く、ウィトカーを糾弾し始めます。
事故に至るまでに一体何があったのか。注目の公聴会が始まったのです…。

面白かったですョ。
ウィトカーは本当に腕の立つパイロットで、10人のパイロットにヴァーチャルで事故を再現、
シュミレーション飛行をさせても、誰一人生存者を残せなかった。
でも6人が尊い命を失っている訳です。
その中には子供をかばって亡くなった、CAの恋人もいて。
助かった人に目を向けるか、亡くなった人を思うか。まずはこれがひとつ。
そして、ウィトカーという人物自体がもうひとつ。
表裏一体の難しさ。
腕は一流でも、勤務に臨む姿勢しかり、家庭が崩壊した原因も劇中で明らかになります。
さぁ、彼はヒーローか、それとも犯罪者か。
それこそ映画のキャッチコピーにあるところです(笑)。
どちらも真実と言えるからこそ難しい。あなたは何を思うでしょうか?☆4つ。
「フライト」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.2.22
「遺体 明日への十日間」☆☆☆☆☆
「横道世之介」☆☆☆

様々な国の映画を見ているとお国柄がよく出ていて、逆に感じ入らないと、
「ああ、やっぱり自分は日本人なんだなぁ」と思います。
ただ感性が鈍いだけなのかもしれないけど(笑)。
そんな気づき自体に意味があるのかも。今週はそんな作品ですよ。
さ、今週は2本です!



「遺体 明日への十日間」は、東日本大震災直後の岩手県釜石市のある町を描いた作品。

2011年3月11日、観測史上最大の大地震による津波で、海側の町は壊滅状態に。
廃校となった中学校の体育館が遺体安置所となり、次々と亡くなった人が運ばれてきます。
難を逃れた医師や、歯科医師が身元確認作業にあたるものの、
想像以上に搬入される数に心が折れそうになり、係員の扱いもぞんざいになっていたのです。
そんな時、仕事を定年退職し、地区の民生委員として働いていた相葉常夫が体育館を訪れます。
目の前に広がっていたのは言葉にできない風景。しかし、それが現実だったのです。
実は、以前相葉が勤めていたのは葬儀関連の会社。
そこで安置所の世話役として、ボランティアを買って出たのでした。
「ご遺体は物じゃない、人なんだ。生きている時と同じように接して下さい」。
母親が棺のそばを離れようとしない小さな女の子の遺体や、いつまでも親族を待つ遺体。
亡くなった人々に、そして生き残った遺族に、相葉は優しく語りかけるのでした…。

壮絶な映画です。泣く暇が無かったです。
というか、おそらく監督は
「とんでもない現実に、現地は感傷に浸っているヒマなんてなかったんだ」
ということを描きたかったんじゃないかと思うんですね。
あと数秒続いていたら、ポロッと涙がこぼれそうなシーンが、バサッと切り替わる。
たぶん見ている人は、その度に一瞬、「えっ」と思うはず。
その数コマを切ったところに、この映画の凄みがあると思うんです。
日本人ならしっかり見ておかなければならない1本だと思います。
☆の付けようがホントはないのだけれど、関係者の志に敬意を評して☆5つ。
「遺体 明日への十日間」公式サイト



「横道世之介」は、毎日新聞夕刊に連載されていた小説の映画化。

1987年の春、法政大学に入学し、長崎から上京してきた横道世之介。
友達ができ、大人の女性に憧れ、バイトをし、そして本当の恋に落ちます。
自由奔放なお嬢様である彼女は、世之介を置いてフランスへ留学。
それを手を振り見送る世之介だったのです。
16年後、ふとした瞬間に、仲良しだったみんなが世之介を思い出します。
そして笑顔になるのです。ある人は涙を浮かべながら、それでも微笑むのでした…。

ちょっと抽象的なあらすじの紹介ですが、「普通を描いた」というこの作品、
世之介というひとりの男子の大学生活を追っています。
このぐらいの説明がきっといいはずです。
周りのみんなが大人になった時、世之介はいない。
でもそれがいかにも世之介らしくて、ジワッと涙が滲んでくる。
そんな感動なんですョ。
ごくごく当たり前の人生でも、決してスポットライトが当たらない人生でも、
こんなに素晴らしいんだなと。
人の心に生きる。
そんな人生が送れたら、生まれてきた意味があるはずと、
淡々と描きながらも確信させてくれる映画だと思います。☆3つ。
「横道世之介」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.2.15
「ゼロ・ダーク・サーティ」☆☆☆
「レッド・ライト」☆☆☆

間もなく、2013年のアカデミー賞が発表になります。
今年はどの作品が栄光に輝くのか、今から楽しみですね。
実は最有力候補とされるいくつかの作品の試写にまだ行ってないんです。
授賞しちゃうと大変な混雑になるので(笑)、なるべく早めに行かないと。
さ、今週は2本です!



「ゼロ・ダーク・サーティ」は、実話に基づく物語。

9.11以来、テロの脅威にさらされるアメリカは、何としてもビンラディンを捕らえたいと、
CIAが巨額の予算をつぎ込むも、手がかりすら掴めずにいました。
そんな中、若き女性分析官が、パキスタンにあるCIAの秘密施設に送り込まれます。
彼女の名はマヤ。
初めは使命感で動いていただろうマヤも、時間の経過と共に、様々な現実に直面します。
最も大きかったのが、親友を自爆テロで亡くしたこと。
絶望感から立ち上がった彼女は何としてもビンラディンを捕らえようと、
執念の調査を続けます。
アブ・アフメドというビンラディンの連絡員がいることを掴んだマヤ。
情報が錯綜する中、マヤは遂にアブ・アフメドを特定、
男が出入りする豪邸を突き止めたのです…。

アメリカでも物議を醸し出した1本。そのリアリティが、
逆に様々な政治的問題も生んだようで、確か国会でも議論の対象になったとか。
ボクはプレス資料を見ないで試写に臨むのですが、
題材が題材なだけに、これはあらかじめ知識を入れておいた方がいい映画だと思います。
冒頭で9.11の映像こそ流れないものの、
真っ暗なスクリーンの上に被害者の最期の声が被ります。
思わず耳をふさぎたくなる絶望の声。
ご存知のように、ビンラディンは殺害されて捕獲される訳です。
じゃ、それで話は終わるのかと言えばそうじゃない。
暴力の連鎖は止まらない。
そんな無力感すら感じる作品です。
それだけリアルに現実を描いているということだと思います。
ドキュメンタリーではありませんが、
歴史に残る事件の一部始終を映画で確かめるといった感じでしょうか。☆3つ。
「ゼロ・ダーク・サーティ」公式サイト


「レッド・ライト」は、超能力ミステリー。

大学で物理学を教えるマーガレット博士は、助手のトム博士と共に、
超能力と言われるもののトリックを次々見破っていました。
詐欺まがいの悪質なものは摘発する。
こうして、今日も超常現象に悩む人を救っていたのでした。
ところが、60年代末に一世を風靡したサイキッカーのサイモン・シルバーが再び世に現れます。
「トリックを暴いてやりましょう」と息巻くトムに対し、
マーガレットは「彼は危険過ぎる」と対決を避けようとするんですね。
実は昔一度、ふたりは対峙していて、マーガレットは心の弱点を突かれ、
叩きのめされていたのです。
それでもサイモン・シルバーに執念を燃やすトムは、独自に彼を追います。
そんな時、持病が原因でマーガレットが急死してしまうんですね。
同時にトムの周りにも不可思議な現象が次々と起こるようになったのです…。

なかなか面白かったですョ。
あえて多くは語りません(笑)。だって、何を言おうとネタバレに繋がりそうだから。
この結末はボクもわかりませんでした。
「なるほど、そう来たか」と、劇場でニヤリとして下さい(笑)。☆3つ。
「レッド・ライト」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.2.7
「「悪人に平穏なし」☆☆☆
「脳男」☆☆☆☆

いろいろな国の映画を見ると、やはりお国柄というのがあって、
その環境にあるからこそのリアリティというのが、映画においては大切なんだなと感じます。
我々の住む日本の今は?
映画を通して見えてくるものがあるかもしれません。
さ、今週は2本です!



「悪人に平穏なし」は、スペイン映画。

敏腕捜査官だったものの、ある事件がきっかけで左遷され、
今は閑職にある中年刑事のサントス。
酒に溺れる生活の中、泥酔して立ち寄ったバーでトラブルとなり、
店員ら3人を射殺してしまうんですね。
証拠を隠滅しようとする途中で、なんと麻薬取引のネットワークを発見。
それはテロリストたちに資金を調達する大きな組織と繋がるものだったのです。
バーの事件にサントスが絡んでるのではと疑い始めた警察はサントスを追い、
サントスはテロリストを追う。
サントスを突き動かしていたのは、彼の心にわずかに残っていた"正義感"だったのです…。

スペインも爆破テロ事件が多く、警察の腐敗も広がっているそう。
そんな中で描かれた作品です。
自国では数々の賞を受賞した話題作だとか。
だいたい、こういう"生きるのに不器用な"主人公には、共通の何かがありますよね。
その"何か"はネタバレになっちゃうので言いませんが(笑)、
中年、汚職、孤独、そして酒。
これらのキーワードから思い描くイメージを、見事に裏切らない主人公像です。
☆3つ。
「悪人に平穏なし」公式サイト



「脳男」は、人気ミステリー小説の映画化。

連続して起こっていた無差別爆破事件。今度はバスが爆破され、
子供を含む、多くの犠牲者が出てしまいました。
このヤマを追う刑事の茶屋は、遂に犯人のアジトを発見。
踏み込もうとしたその瞬間、アジトは爆破され、数名は逃走。
しかし、そこにひとりの男が傷を負い、残っていたのです。
彼は自らを『鈴木一郎』と名乗ります。
身元不明のこの男を精神鑑定にかけることになるのですが、
バス爆破事件の際、間一髪で助かった精神科医の真梨子が担当となります。
「生まれつき感情がないのでは?」。
明らかに普通とは違う鈴木一郎の過去を探る真梨子。
そんな時、この事件の真犯人が若い女であることが判明します。
名前は緑川紀子。自ら警察の前に現れ、捜査をあざ笑うかのように爆弾を操る。
鈴木一郎が犯人でないとなると、彼は一体何者なのか。
何故犯人のアジトにいたのか。謎は深まるばかりでした…。

真梨子役の松雪泰子がインタビューで、この映画を"バイオレンス・ミステリー"と紹介してましたが、
その残虐性は針が振り切ってると感じたほど。
もし、ここまでやらないと見る側が満足しなくなったんだとすると、
ちょっとゾッとします。
犯罪の異常性、残虐性など、現実社会のそれもエスカレートしてますからね。
"脳男"とは、一郎を探るうちに見つけた、彼の後見人の精神科医が付けたニックネーム。
ものすごい知能と、ものすごい身体能力を持つ"ダークヒーロー"の誕生。
シリーズ化しそうな予感すらさせています。☆4つ。
「脳男」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.1.31
「アウトロー」☆☆
「二郎は鮨の夢を見る」☆☆☆
「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」☆☆☆☆

話題作の試写に足を運んだにも関わらず、空席が目立つ。すると期待ほど面白くない。
逆もまた真なりで、単館ものでも満席の作品は予想以上に面白い。
世に出る前の口コミということになりますか。
人の反応って正直…(笑)。
さ、今週は3本です!



「アウトロー」は、トム・クルーズ主演最新作。

川沿いを歩いていた男女5人が、
対岸からの弾丸で命を失うという無差別殺人事件が発生。
現場に残された証拠の数々から、警察は元米軍のスナイパー、
ジェームズ・バーを逮捕します。
黙秘を続けるバーが、筆談で書いた言葉。
それは、「ジャック・リーチャーを呼べ」。
元陸軍の秘密調査官だったジャック・リーチャー。
2年前に除隊してからは、身分を消し、人間関係も断ち、
"流れ者"として生きてきました。
捜査機関がどう接触を持とうか頭を悩ましていたところへ、
突然現れたジャック・リーチャー。
なぜバーは彼を呼んだのが。事件の全容を解明するために、
ジャック・リーチャーは独自のやり方で調査を始めるのでした…。

"トム・クルーズの新シリーズ"。
トム・クルーズの適任キャラクターを作りたかったんでしょうね。
正直、初めにそれありきじゃないかという気がしました。
それでもファンにはうれしいんでしょう。
細かい部分には突っ込みどころが満載(笑)。キャラがこなれてくるのを待ちましょう。☆2つ。
「アウトロー」公式サイト



「二郎は鮨の夢を見る」は、寿司の名店『すきやばし次郎』の店主、
小野二郎さんのドキュメンタリー。

小野二郎さん、1925年生まれの87歳。
1965年、銀座・数寄屋橋にあるオフィスビルの地下に出した寿司店が『すきやばし次郎』。
2007年に"ミシュラン東京"で三つ星の評価を得て以来、6年連続で三つ星を獲得。
世界で最も高齢の三つ星料理人としてギネスブックにも認定されているとか。
そんな二郎さんには息子がふたり。
長男は今も父の店で働き、次男は六本木で支店を任されています。
カウンター10席だけで、トイレは他店と共同。
メニューもなくお任せのみのこのお店が、なぜこんなにも高い評価を受けるのか。
その秘訣を探る映画にもなっています。
でも答えは至ってシンプルだと思うんですね。
おそらく"日々原点回帰"。つまり、その人の仕事の本質に立ち返って、
昨日よりも今日、今日よりも明日はさらに上に行くようにと努めること。
それがこの映画のタイトルにも表れているような気がします。
職人ならではの、頑固なまでのこだわりは志の裏返し。簡単そうで難しい。
でも、ボクらが成長するためのヒントがそこにあるはずだと確信しました。
ちなみに監督はアメリカ人の26歳(当時)の若者なんですョ。☆3つ。
「二郎は鮨の夢を見る」公式サイト



「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」は、
新たなAKB48のドキュメンタリー映画。

AKB48にとって、2012年は節目の年になりました。
最も大きな出来事、それは"センター"前田敦子の卒業でした。
センターというポジションとは?
後ろで歌い踊るメンバーとは違い、前には誰もいない。
スポットライトで客席も見えない"孤独な立ち位置"。
このことに象徴されるように、あっちゃんが務めてきたセンターというポジションは、
それはそれは重圧と闘う大変なポジションだったのです。
それでもみんなが「センターに立ちたい」と口を揃えます。
それほど魅力ある場所でもあるんですね。
一方で今回は、恋愛禁止の禁を破ったり、
メンバー内格差などを理由に辞めていった女の子たちにも話を聞き、
光と影の"影"の部分にもスポットライトを当てています。
このドキュメンタリーを見ると、いっつも頑張らなくちゃという気にさせられます。
ご同輩、是非見てみて下さい。若い女子たちに教えてもらうことがいっぱいです。☆4つ。
「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.1.25
「人生、ブラボー」☆☆☆
「ストロベリーナイト」☆☆☆
「みなさん、さようなら」☆☆☆

☆を付ける時にいろいろと悩むんですよね(笑)。
だって、映画の評価は個人の価値観だし、好みの違いだから。
☆3つは無難(笑)。
☆2つは決してお勧めはしないけど、こういうのが好きな人もいるかも。
ご自身で観て確かめてって感じ。
☆4つ以上は「面白いっ」「よくできてるなぁ」というやつ。
特に☆5つはボクのツボだと思って下さい。
繰り返しますが、あくまで個人の感想です。誤解なきよう。
さ、今週は3本です!



「人生、ブラボー」は、カナダのコメディ作品。

ダヴィッドは42歳の独身男性。
父親の経営する精肉店で働いてはいるものの、遅刻に借金と、
それはそれは怠惰な生活を送っていました。
ある日のこと、彼の元に突然弁護士がやってきて、耳を疑うような話をするのです。
その内容とは、
今から23年前、ダヴィッドは"スターバック"という仮名で、
693回の精子提供を行い、多額の報酬を得ていました。
クリニックがその精子を"優良"として、多くの患者に提供。
結果、533人の子供が生まれたと。
そのうちの142人が遺伝子上の父親の身元を開示せよと訴訟を起こすというのです。
突然533人もの父親になってしまったダヴィッド。
弁護士が置いていった子供たちのプロフィールをふと見ると、
自分が大好きなサッカー選手の名前があるではありませんか!
ダヴィッドは他の子供たちにも興味を持ち、素性を隠して、接触を試みるのでした…。

なんてあらすじだけ読んでると、ダヴィッドってとんでもないヤツだと思うでしょ?
確かにその通り(笑)。でもどこか憎めないのです。
実はダヴィッドには恋人がいて妊娠したことを明かします。
つまり534人目の子供がお腹の中にいることになります。
だけどダヴィッドのだらしなさから結婚を拒み、
ひとりで育てるからと三行半を突きつけられてしまうんですね。
ダヴィッドが憎めない理由。それはダヴィッドの親の愛だと思います。
しっかり注がれた愛情が彼の中にある。
それが明らかに描かれてるのが救いなんですョ。
それが見えなければクソみたいな話ですもんね(笑)。
道理としては納得できない部分は山ほどあります。
でも最後まで諦めないであげて下さい(笑)。☆3つ。
「人生、ブラボー」公式サイト



「ストロベリーナイト」は、フジテレビの人気ドラマの映画化。

警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子。
彼女の元に、上司から「男の死体が見つかった」と連絡が入ります。
被害者が暴力団関係者であること、多数の刺し傷、左目を縦に切り裂くやり方。
その手口がここ5日のうちに起きた殺人事件に共通していることから、
連続殺人事件として特別捜査本部を設置、捜査にあたることになります。
会議終了後、玲子は偶然、タレコミの電話を取るんですね。
「犯人は柳井健斗」。
ところが上司は、「柳井健斗の名前が出てきても一切触れるな」とキツく命じます。
警察の上層部までもが同じ命令を出す。
果たして"柳井健斗"とはどんな人物なのか?触れてはいけない理由とは?
そしてこの事件は一体?
玲子の正義が真実に迫ろうとするのですが…。

この作品に関しては、ストーリーが複雑に入り組んでいるからこその面白さがあるので、
ここではさわりだけ紹介しておきます。
緊迫した感じは全編を通してしっかりとあって、
2時間少々がちっとも長くは感じないのですが、
いろんな要素を詰め込もうとし過ぎた感は否めないかも。
そのために警察は本当にそう動くかなぁみたいな(笑)。
"そのため"や"そう動く"の謎解きは、
あなたが劇場で確かめてきて下さい。☆3つ。
「ストロベリーナイト」公式サイト



「みなさん、さようなら」は、"団地ヒューマンムービー"と
いうキャッチフレーズが付けられた作品。

昭和30年代、団地は高度成長の象徴。敷地内だけで、何でも揃う夢の空間でもありました。
ところが時が経つに連れ、団地の数も、団地に住む人の数も減っていったのです。
悟が通っていた小学校の生徒はみんな団地暮らし。昭和56年当時、子供は107人いました。
小学生卒業時に、悟はこう誓うのです。
「ボクは団地の中だけで生きていく!」。
団地の敷地から一歩も出ない悟は、中学にも通わず自宅学習。
就職は敷地内のケーキ屋「タイジロンヌ」と決め、団地内をパトロール。
団地のヒーローになろうと決めた悟を、母は優しく認めるのでした。
107人いた子供たちもどんどん減っていき、
悟が20歳で59人、28歳になった時にはわずか2人になっていたのです。
それでも何とか団地の中だけで暮らしていた悟に、最大の試練が訪れます。
最愛の母が倒れ、病院に運ばれてしまいます。
母に会うためには敷地を飛び出さなくてはなりません。果たして、悟の取る行動とは…。

特異な設定の物語です。設定が小さな枠だけに、少々間延びするところはあるかも。
それでもエピソードはふんだんで、悟は団地の中で就職もすれば、恋もする。
確かにこの小さな世界の中だけで生きていけると思った時期もあったろうけど、
環境は時代と共に変わっていってしまいます。
同級生は変わっていく。悟は立ち止まり変わらない。いや、変わるスピードが遅い。
でも、本当はどっちが幸せなんだろうって考えてもしまいます。
悟が団地を出ないと決めた訳を知ることよりも、
この映画の本質は"幸せ探し"にあるのかもしれません。☆3つ。
「みなさん、さようなら」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.1.17
「アルマジロ」☆☆☆☆
「東ベルリンから来た女」☆☆☆

今年も出だしは順調に試写を拝見しています(笑)。
続々と話題作のご案内も頂戴して。楽しみです!
さ、今週は2本です!


「アルマジロ」は、アフガン戦争の兵士に同行して撮影した、リアルな戦争映像。

2009年、アフガニスタン南部の前線基地『アルマジロ』。
そこに国際治安支援部隊のメンバーとして、デンマークから若い兵士たちが赴任します。
この映画は、メス、ダニエル、ラスムス、キムの4人の兵士に密着。
その姿を追ったドキュメンタリー。
パトロールとはいえ、タリバンの拠点と目と鼻の先の土地での任務。
すぐさま交戦状態となり、『アルマジロ』の兵士にも負傷者が出て、
近くの基地の兵士は命を落としたと。
誰が一般市民で、誰がタリバンなのか。
それすらわからない状況は、まさに死と隣り合わせ。
メスたちの表情も赴任当初とは明らかに変わってきます。
遂に7ケ月という任期を終え、無事デンマークに帰国した彼ら。
迎える家族たちの安堵の表情。
しかし平和な母国に帰った彼らは、心にぽっかり穴が開いたような状態だったのです。
おそらく、この映画の宣伝で使われるだろう写真が、ひとりの兵士のカッと目を見開いた顔のアップ。
目を見開いたというより、瞳孔が開き切ってしまったという感じで、
死がすぐそこにあるという極限状況を体験してしまった人間は
何かの針が振り切ってしまったんでしょうね。
「また戦地に戻りたい」。
多くの帰国した兵士が、再びあの危険の中に自ら飛び込みに行く。
「何故?」と疑問に思うけど、おそらく"平和"の中では、
もう振り切ってしまった針が満足できなくなってしまっているのでしょう。
人間はこうも変わるのか。繰り返しますが、ノンフィクションです。
戦争の恐ろしさを、是非確かめてきて下さい。☆4つ。
「アルマジロ」公式サイト


「東ベルリンから来た女」は、東西分裂時のドイツが舞台の映画。

1980年の東ドイツ。田舎町の小さな病院に、女医であるバルバラが赴任します。
以前は大きな病院に勤めていた優秀な彼女がここに来た理由。
それは西ドイツへの移住を申請し、政府に断られたことによる左遷だったのです。
結果、彼女は亡命をしないようにと、秘密警察の諜報部員の監視下に置かれることになります。
病院のすべての人間が自分を監視している。
バルバラは誰も信じず、自ら孤立することを選んだのです。
その一方で、なんとか西ドイツに亡命したいという思いから逃亡計画を立て、それを着実に進めていました。
そんなある日のこと、ひとりの少女が入院してきます。彼女は矯正収容施設からの逃亡中に負傷。
バルバラにしか心を開かない少女。しかも彼女は妊娠していたのです。
収容施設で起こっていることは容易に想像ができました。
「帰りたくない。助けて」と叫ぶ少女の思いに応えるために、バルバラはある決意をするのです…。
東西分裂時代のドイツ。この9年後にベルリンの壁は崩壊します。
赴任先の男性医師の優しさも、バルバラにとっては"監視のひとつ"と受け入れないのですが、
そんな彼にも裏の事情がありました。
患者を通して、医療の根源を介して、少しずつ変わっていくバルバラ。
実はチラシの宣伝文句が言い得て妙。「東と西。嘘と真実。自由と使命。その狭間で揺れる、愛」。
自国の人には刺さったでしょうね。ボクら日本人が見ても十分楽しめますョ。☆3つ。
「東ベルリンから来た女」公式サイト
 
 


 
 
 週末公開の映画……2013.1.10
「鈴木先生」☆☆☆
「LOOPER」☆☆☆

2013年、あなたはどんな新年を迎えられましたか?
昨年見た試写は79本。例年の半分ぐらい。
多忙で時間が作れなかったというのが正直なところ。
今年はたくさん見られるといいのですが。
映画も人と同じ、出会いです。今年もたくさんのいい出会いがありますように。
そしてあなたの出会いのお手伝いができますように。
さ、今週は2本です!


「鈴木先生」は、テレビ東京の人気ドラマの映画化。

緋桜山中学の国語教師で、2年A組の担任を勤める鈴木先生。
真の教育とは何かと、独自の理論である『鈴木メソッド』を使い、
実験的に生徒に接していました。
一方で、クラスのマドンナ的女子の小川のことが気になって仕方ありません。
いけない妄想にハッとする始末。
学園祭、生徒会の選挙。
様々なイベントごとの季節になり、
鈴木先生は自分の信じたやり方で生徒にアドバイスを送ります。
よく言えば“熱血”、悪く言えば“ウザい”(笑)。
そんな中、社会からドロップアウトした元生徒が校内に侵入。
あの小川を人質に取って立てこもってしまいます。
果たして、鈴木先生は小川を救うことができるのでしょうか…。

鈴木先生、なんかちょっとボクに似てるところがあって(笑)。
決して聖人君子じゃないけれど“道”は教えたい。“志”は高くあれと伝えたい。
でもエッチなことも考えちゃったりして。
とある卒業生が職員室に入ってきて、帰り際、
鈴木先生に暴言にも近いある言葉を残していきます。
学校の先生も経験してるボクにはグサッと来るような言葉。
「で、どうなの?どうなっちゃうの?」と、
まるで自分の先生時代の是非を問うかのような気持ちで映画を見続けちゃいました。
ボクはドラマを見てないので、鈴木先生の人となりやキャラクターがわからなかったから、
それもまたドキドキに輪を掛けたのかもしれません。
誠心誠意。
100人いたら100人に伝わるとは限らないけど、出発点が善意であるのは大切なことだと思いました。
教え子たちよ、今、何思う?
☆3つ。
「鈴木先生」公式サイト


「LOOPER」は、タイムトラベルが題材のSF映画。

2074年。人を殺すことが不可能になった時代。
それでも犯罪組織にとって、邪魔者は消したい存在。その方法がひとつだけありました。
法で禁じられているタイムマシンを使い、まだ人殺しの横行していた2044年に送り込みます。
すると、待ち受けていたルーパーと呼ばれる処刑人が未来から現れたターゲットを射殺するのです。
報酬はターゲットの体にくくりつけられた金塊。
そしてルーパーの破ってはならない掟が、ターゲットに絶対に逃げられないこと。
逃げられたら、今度はルーパーが標的として追われるのです。
ジョーは腕利きのルーパー。
いつものように仕事をしようとターゲットを待ち構えていたところ、
現れたのは普段ならしているはずの顔を覆う袋をしていない中年男性。
驚いたことに、その男の顔が自分にそっくりではありませんか。
そう、彼は30年後の自分だったのです。
愕然としている間にターゲットは逃亡してしまいます。
今の自分が生きるために、30年後の自分を始末しなくてはいけない。
自分で自分を追う、追跡劇が始まったのです…。

ヤング・ジョーとオールド・ジョー。当然、老練なオールド・ジョーの方が一枚も二枚も上。
しかし、なぜオールド・ジョーがわざわざ30年前のこの時代にやってきたのか。
そこにこの作品の核心があります。
一人二役ではないので、30年後の自分と言われてもあまり似てなくて、
ピンと来ない部分もありますが(笑)、
ま、そもそもタイムトラベルものは多くの矛盾をはらんでますからね。
肩の力を抜いて、SF娯楽作品として見ると楽しめると思いますョ。☆3つ。
「LOOPER」公式サイト