週末公開の映画……2009.12.24

「よなよなペンギン」☆☆☆
「ヴィクトリア女王 世紀の愛」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今年はこれを書いている時点で113本。あと2本見る予定なので115本かな。
忙しさを理由に随分と今年は試写をサボりました。
それでもたくさんのいい作品に出会えたのは財産です。
もしこのHPを見て劇場に足を運んでくれた方がひとりでもいたら、
これを書き続けてきた甲斐があるというもの。
今年はこれが最後。来年もよろしくお願いします!
ちなみに「よなよなペンギン」は23日公開。50音順ではなく、先に持ってきました。
さ、今週は2本です!


「よなよなペンギン」は、アニメ映画。

ペンギンが大好きな女の子、ココ。
いつもペンギンの衣装を着ては夜な夜な町を走り回っていたのです。
それには訳がありました。亡くなったお父さんが言っていた
「ペンギンと空を飛んだことがあるんだよ」という言葉を信じていたから。
そんなココに不思議な招待状が届きます。
それはペンギンショップのオープニングセレモニー。
実は、それはココを呼び寄せるための誘い水。
人間とは別の世界にあるゴブリン村の少年、
チャーリーがココを“伝説の勇者”だと勘違いし、
村を支配しようとしている悪の帝王ブッカー・ブーから守ってもらおうとしたのです。
ココは果たしてゴブリン村を救うことができるのでしょうか…。

ブッカー・ブーの手下にザミーというのがいるんですが、こいつがなかなか憎めないキャラで(笑)。
元々は“4級見習い天使”。
そのプライドをブッカー・ブーにうまく使われちゃってるんだけど、
「いるよなぁこういうヤツ」って感じ(笑)。きっとあなたの周りにもね。
もしかしたらあなた自身がそう?。
大人が見ても十分楽しめるアニメです。☆3つ。
「よなよなペンギン」公式サイト


「ヴィクトリア女王 世紀の愛」は、19世紀のイギリスに君臨した偉大なる女王の物語。

1873年、ウィリアム王が倒れ、まだ少女だった王位継承者のヴィクトリアは、
権力争いに巻き込まれていきます。
夫となってその地位を利用しようと、ヨーロッパ中はもとより、
実の母親までもが彼女を利用しようとしていたのです。
そんな中、従兄弟のアルバートもベルギー王が送り込んだ甥。
その座を狙うひとりでした。
しかしヴィクトリアはそのアルバートの正直な心に恋をし、
アルバートもまた彼女の美しくも高い志に惹かれていくんですね。
即位直後のヴィクトリアに降りかかる様々な困難から救ってくれたのもアルバートでした。
そこでふたりは恋に落ち、女王からの求婚という異例のスタイルで結婚。
イギリス中を熱狂の渦に巻き込んだのです。
しかし人心は気紛れ。賞賛ばかりが続くはずはありません。
近い将来、思いもよらない事件がふたりを待っていることなど、知るよしもなかったのです…。

歴史的人物の伝記映画というよりも、壮大な恋愛物語として語られる作品だと思います。
女王もアルバートも、特殊な立ち位置にありながら、まっすぐな愛を貫いていく。
それは大変なこと。なぜなら、自分たちだけでなく、
愛し、守らなくてはならない“国”というものがありましたからね。
ましてやあの頃のイギリスは“大英帝国”。
「七つの海を支配する国」、「陽の沈まぬ国」として知られていた最強国家ですから、
その労苦は推して知るべしでしょう。
どちらかと言うと、女性が見て共感できるタイプの映画。
「古くから女性が世界を動かして来たんだから」と、
ますます女性が強くなるかもしれません(笑)。☆3つ。
「ヴィクトリア女王 世紀の愛」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.12.17

「ウルルの森の物語」☆☆
「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写もラストスパート!行ってますよ〜っ(笑)。 今週紹介する「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」も
最終試写で見ることができましたから。いやぁ、悔しいけど?面白かったです。
まだまだそんな出会いがあるかもしれませんからね。
最後まで期待に胸踊らせて行きたいと思います!
さ、今週は2本です!

「ウルルの森の物語」は、人間の親子とエゾオオカミの物語。

昴としずくはまだ幼い兄妹。
母と3人での東京暮らしだったのですが、その母が入院してしまいます。
そこで兄妹が向かった先は、父・大慈の住む北海道。
お父さんは北海道で動物たちのお医者さんをやっていたのです。
でも自分たちと一緒に住んでくれないお父さんをふたりは大嫌い。
特に兄の昴はなかなか打ち解けようとしませんでした。
そんなある日、森の中で傷付いた子犬のような動物を発見します。
実はそれ、絶滅したはずのエゾオオカミの子だったのです。
手当てを終えると、学会の人間が貴重なサンプルだからと連れ去ろうとするんですね。
“ウルフ”と聞き間違えて“ウルル”と名付け親しんだ友達を渡してなるものか、
ウルルだってお母さんに会いたいんだ。
そう思った昴としずくはウルルを逃し、
一緒にオオカミの国“ホロケシ”を目指したのです…。

子供と動物とくれば泣かせる映画の王道なんでしょうが、
なんかやっぱり“感動”の2文字が先にある作品作りに思えてしまって。
いやいやボクの心が汚れてしまってるんですョ、きっと(笑)。
ごめんよ、ウルル。☆2つ。
「ウルルの森の物語」公式サイト


「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」は、
06年10月からフジテレビ系で放映された連続ドラマの続編の映画化。

“のだめ”こと野田恵と“千秋先輩”こと千秋真一は、
共に音楽の世界での成功を夢見て、パリで一緒に生活を送っていました。
ある日のこと、指揮コンクールに優勝した千秋は、
ルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者に指名されます。
どんなオーケストラか視察に行ってビックリ!
歴史はあれど、資金不足が祟って団員が次々と退団。
演奏のレベルが下がるから客足が遠のくという悪循環。千秋は愕然とするんですね。
オーケストラのリーダーであるコンサートマスターもかなりの変わり者で、
新米の指揮者に協力的であるはずもなく。
案の定、初公演はボロボロに終わります。
のだめはといえば、音楽学校の進級試験を目前に控えてピアノの猛特訓中。
彼女の夢は千秋先輩と同じ舞台で共演すること。その夢に向かってまっしぐらなのだめ。
そんなふたりの前途やいかに…。

原作コミックは3200万部を超え、アニメにもなったので、
これまでの物語や人物相関図は知ってるという人も多いはず。
ごめんなさい。ボクまったく知識がありませんでした。
そんなボクでも面白いと思ったのですから、ここは素直に高評価で。
というか、初めて上野樹里をかわいいと思っちゃった…(笑)。
出演陣を見るとそれはもう豪華で、
きっとお腹いっぱいの無理矢理な役作りじゃないの?と邪推したのですが、さにあらず。
エンターテイメントとしてのデキはかなりのものだと思いますョ。満点の☆5つ!
「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.12.10

「人間失格」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写に行く際の楽しみのひとつがお昼ごはん。
行く会場によって、近くにいろいろとお気に入りのお店があるんです。
今日は京橋の焼き鳥屋さんで鳥かつ丼。
大盛りを頼んで、別皿のキャベツに味噌汁のおかわりで大満足!
こんなに満腹で眠くならないかなぁと心配しながら会場に着いたら作品が違う。ガ〜ン!
急いで六本木に移動。なんとか間に合って目的の試写が見られました。ホッ。
たまにやるんですよねぇ。
そんな時は心が折れそうになりますが(笑)、負けちゃダメだと移動するだけ偉いでしょ?
さ、今週は1本です!

「人間失格」は、太宰治の名作をアニメ化したもの。
日本テレビでOAの“青い文学シリーズ”を4回分まとめたディレクターズカット版です。

裕福な家庭に生まれた大庭葉蔵は、社会通念を欠いたまま大人になります。
反社会的運動を演じ、嘘の芝居で貧乏人から金を巻き上げる日々。
ところがその集会に特高が踏み込み、葉蔵は逃亡者となるのです。
飲み屋街に紛れ込み、入った一軒のバーでホステスの恒子に匿われます。
それがきっかけで男女の関係になるふたり。
互いに自分の人生を振り返った時、口をついたのはまったく同じセリフでした。
「一緒に死んでくれませんか…」。

日本テレビで10月から今年いっぱいOAの“青い文学シリーズ”は、全6作品をアニメ化。
その第1弾がこの「人間失格」でした。
ボクは小説って、名作と呼ばれるものも実はほとんど読んでなくて。
こういう形で知ることができるのはある意味うれしかったりもします。
冒頭、ナビゲーターとして実写で俳優の堺雅人が登場するのですが、
その彼がそのまま葉蔵の声を担当するから、正直残像がちょっと邪魔をする感じ。
そこが残念だったかな。
ちなみに今年は太宰治の生誕100周年だそう。活字嫌いもスッと入れる名作の世界。
この機会に触れてみてはいかがですか?☆3つ。
「人間失格」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.12.4

「カールじいさんの空飛ぶ家」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

いよいよ師走。試写もあと何本見られるやら。
今年は本当に忙しくて試写の数が少なかったなぁと。いろんなことに追い込みを掛ける時期。
できるだけたくさん見に行こうと思います。
さ、今週は1本です!

「カールじいさんの空飛ぶ家」は、ピクサー製作のディズニーアニメ。

無口でシャイなカールくんは、冒険が大好き。
いつものように冒険ごっこをしながらひとりで遊んでいると、
冒険家を夢見るエリーという女の子と出会います。
エリーはカールとは対照的に、明るく、活発な女の子。
「いつか伝説のパラダイス・フォールに行こう。約束だよ」。
大人になるとふたりは結婚。子供はできなかったけれど、幸せな日々を過ごして来ました。
ところが、年老いたふたりをついに分かつ日がやってきたのです。
パラダイス・フォールに行く約束を果たせないまま、カールはまたひとりぼっちになってしまいました。
家の周りは再開発で取り壊されるも、カールじいさんは頑として立ち退かず。
小さい頃、エリーと秘密基地にして遊んだ廃屋を、ふたりでせっせと直して住んだ思い出いっぱいの家。
それを手放すことなんてできやしない。
カールじいさんは大胆な計画に打って出ます。
そう、たくさんの風船で家を浮かび上がらせ、エリーとの約束の地、
パラダイス・フォールに向かったのでした…。

素敵な恋愛話かなと思ってたら、それをベースにした冒険アニメでした。
ラッセルという男の子や、昔消息を断った伝説の冒険家などが登場。
カールじいさんが幾多の難関を切り抜ける、奮戦記です。
もちろん、人とのつながり、エリーとの深い愛情など、
言いたいはずのテーマは十分に感じられます。
ただ正直、ちょっとベクトルは想像と違ってたかな。
ピクサー(PIXAR)のCG技術の進化にはただただ驚かされます。
3Dで公開される映画館もあるとか。“空飛ぶ家”ですから、そっちの方が面白いかも。☆3つ。
「カールじいさんの空飛ぶ家」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.11.23

「つむじ風食堂の夜」☆☆☆☆
「ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週公開の「つむじ風食堂の夜」の篠原哲雄監督とは中高同級生。
宣伝会社から届いた試写状で試写を見た日、帰宅したら監督から試写状が届いてました(笑)。
うれしいものです。
人と人との関わり合いを描くのが篠原映画の真骨頂(だと思ってます)。
ドンピシャの1本だと思います。気になった方は是非ご覧になってみて下さいねっ。
さ、今週は2本です!


「つむじ風食堂の夜」は、映像と音楽のコラボレーションムービーシリーズ
『CineMusica』第7弾。

舞台は北の町、月舟町。
十字路の角にある“つむじ風食堂”には、夜な夜な常連客が集まります。
博識な帽子屋のご主人、風変わりな古本屋の店主、イルクーツクに行きたいという果物屋の青年、
一度も主役を演じたことのない舞台女優、そして“雨降り先生”の「私」。
初めて扉を開いた時から、その食堂は不思議な空間でした。
そしてその不思議な空間に集う不思議な人たちと、深く関わっていきます。
それ即ち自分探しの旅の始まりでもあったのです…。

小さな町の1軒の食堂なんだけど、人と関わることで、自分の本質を知ることになる主人公の私。
ありそうでない食堂、なさそうでありそうな空間。
夢の中にいるような感じかな。
舞台はセットじゃないかと思うくらい。でもこの映画、北海道でのオールロケだそう。
いい場所を見つけました。
この手の映画って寓話的に終わりがちですが、しっかり実体が見えるっていうのか、
それが魅力でもあります。
音楽の方は、スネオヘアーが「エスプレ」といういい曲を提供しています。
ちなみに彼はエスプレッソの美味しいコーヒーショップのオーナー役で出演しています。
寒くなりました。間違いなくポカポカ温かい気持ちになれる1本です。☆4つ。
「つむじ風食堂の夜」公式サイト


「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」は、小池徹平主演のコメディー。

中卒、ニートの大根田真男、26歳。母の事故死を契機に初めての就職に挑みます。
いくつもの会社に断られ、ようやく拾ってくれたのが「黒井システム株式会社」。
出社初日、そこで見たのは目を覆うような惨状でした。
ただ横暴なだけのリーダー、ガンダムおたく、これぞ“お局”な女性社員、
精神的にスレスレな社員など、とてもまともな環境とは言えなかったのです。
そんな中で、藤田という男性だけが超の付くイイ人で。
なんでこんな腐った会社にこんなイイ人がいるのか、真男には不思議で仕方なかったのです。
“真男(まさお)”から“まおとこ”と呼ばれるようになった真男は、
引きこもっていた時に“友達”だったパソコンをなんとか駆使して仕事を頑張るのですが、
あまりに過酷な日々に、遂に倒れ込んでしまいます。
「…もう、限界だ」。真男はそう呟くのが精一杯でした…。

“ブラック会社”とは、インターネットのスラングで、利潤のみを追求し、
劣悪な労働環境にある会社をいうそうです。
その後、美人の派遣社員や、野心家の超エリートが入社してきたり。
さらに、ひと波乱もふた波乱もあるんです。
藤田さんのことまでホントはどんな人?になっちゃいます。さぁどんな人でしょう(笑)。
ただ、やっぱり設定が極端過ぎて、TOO MUCH感は否めませんでした。
今の時代を反映する映画だけに、エンターテイメントといえどももう少し
「あるある!」的なリアリティがあったらなぁと。そこが残念。☆3つ。
「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.11.12

「DISNEY´Sクリスマス・キャロル」☆☆☆☆
「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週はクリスマスものの作品が公開に。
街のイルミネーションも早やクリスマス仕様に変わり、まだ11月上旬だっていうのにね。
映画はまだしも、街の景色はいかがなもの?
そんな急いだって仕方ないのにってちょっと思ってしまいます。
さぁ今週は2本です!


「DISNEY´Sクリスマス・キャロル」は、ディズニーの3Dアニメ映画。

19世紀半ばのロンドンに、金がすべての嫌われ者、スクルージという男がいました。
クリスマスで賑わう街もスクルージには無関係。
寄付を断り、聖歌隊を睨み付けながら家路に着くスクルージ。
すると不思議なことが起こります。死んだ仕事仲間のマーレイが現われ、無慈悲な行ないのせいで、
死後、終わることのない地獄の苦しみを味わっていると言います。
そしてマーレイはスクルージに、
「クリスマス・イブの今夜、3人の亡霊が現われるだろう」と告げるんですね。
その言葉通り、次々とスクルージの前に現れる亡霊たち。
それは「過去」「現在」「未来」。
スクルージは、過去を悔い、今を嘆き、そして未来に待つものを見せられます。
果たしてスクルージは人生を見つめ直し、未来を変えることができるのでしょうか…。

霊などの曖昧な存在?を描くのにあのフワッとした感じは3Dだとものすごくリアリティが出る。
3D映画の可能性をものすごく感じた1本でした。
ストーリーも心温まるもので、これならクリスマスを先取りしてもいいかなと。
これからの季節にピッタリの作品。
外の遊園地が寒いなら、この映画はかなり質の高いアトラクション。
室内(劇場)で十分に楽しめますョ。☆4つ。
「DISNEY´Sクリスマス・キャロル」公式サイト


「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」は、
ウクライナに住むひとりの農夫の夢を追ったドキュメンタリー。

草原のど真ん中に暮らす62歳の農夫、ウラジーミル・ピリペンコ。
今は年金生活者ですが、現役時代は集団農場でクレーン車の運転手をしていました。
そんな彼には夢がありました。
自分の手で潜水艦を作って、遠く離れた黒海の海に潜りたい。
70年代の雑誌「水中スポーツマン」の記事を頼りに、
年金や自家栽培のキュウリと交換した部品で組み立てる夢の潜水艦。
もちろん、妻の賛同など得られるはずもなく(笑)。
果たしてピリペンコさんの夢は叶えられるのでしょうか…。

決してドラマティックな内容じゃなく(笑)、のどか〜なドキュメンタリー。
お国柄がわかるとのことだけど、そんな意味じゃのんびりなんですね。
でもボクらの忙しさが幸せかと言えば、決してそうじゃないから。
ましてや物質的に豊かな現代人にとっては、
ピリペンコさんがやっとの思いで手に入れたパーツのありがたみはわからないだろうなぁ。
なんてボクも十分毒されてますから(笑)。
そんなボクのジャッジだもの、ごめんね、ピリペンコさん。☆2つ。
「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.11.9

「スペル」☆☆
「ソウ6」☆☆
「SOUL RED 松田優作」☆☆☆☆
「ドゥーニャとデイジー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

久々に見返したい1本ってありませんか?
ボクの場合は、まず「デブラ・ウインガーを探して」。
ハリウッド女優たちが、仕事と家庭をいかに両立させてるかってドキュメンタリーなんだけど、
年を重ねることの魅力や、働くこと、生きることの素晴らしさを実にイキイキと語ってるんです。
もちろん本音でね。
ちょっと元気がない時に勇気をもらえる1本です。あなたもよかったら見てみて下さい。
さ、今週は4本です!


「スペル」は、サム・ライミ監督のサスペンス・ホラー。

銀行のローンデスク担当のクリスティンは、アシスタントマネージャーの座を、
同期のライバルと激しく争っていました。
そんな時にひとりの老婆がやって来ます。
「ローンの支払いを待って欲しい。家を差し押さえられたら住む場所が無くなってしまう」と。
可哀相に思ったクリスティンですが、上司は“NO”を突き付けろと命じます。
ここでポイントを落とす訳にはいかないクリスティンは、
同情しながらも老婆の願いを却下するんですね。
執拗に食い下がる老婆を突き飛ばしてしまうクリスティン。
その夜のこと。駐車場で待ち受けていたのはあの老婆。
つかみ合いの乱闘になるのですが、とても老女とは思えない力に屈してしまうクリスティン。
そして老婆が不思議な呪文を唱えたのでした…。

俳優としても有名な監督のサム・ライミは、「シンプルな道徳的寓話だ」とこの映画を語ります。
出世というたったひとつの欲望が、それまでコツコツ積み重ねてきたものをすべて壊してしまう。
人の信頼もそうかもしれませんね。
ただ、エンターテイメントとしては新しい驚きがあるわけではなく。
もしかしたら、日米のホラー観の違いかもしれませんが、チラシに書かれた宣伝文句が凄すぎて、
期待させ過ぎた分、厳しいジャッジで☆2つ。
「スペル」公式サイト


「ソウ6」は、人気サスペンス・スリラーのシリーズ第6弾。

今回も詳細は避けますが、
殺人ゲームの現場に死んだFBI捜査官のストラムの指紋が残されていたことから、
ストラムがジグソウの後継者だろうということで事件はほぼ終結。
しかしストラムの上司だったエリクソンはどうしても引っ掛かるところがあると。
実はまた新たな殺人ゲームが始まっていたのでした…。

今回はジグソウの遺品がひとつのキモになってきます。亡き妻ジルに残したものとは?
個人的な感想ですが、マンネリには“偉大なる”という言葉が大切なのです。
“偉大なるマンネリ”になったらこれはもう『水戸黄門』(笑)。
恐怖アトラクションの企画会議みたいな感じ(失礼!)がしちゃって、
人気のシリーズだけにこちらも敢えて辛口の☆2つ。
「ソウ6」公式サイト


「SOUL RED 松田優作」は、人気俳優だった故松田優作のドキュメンタリー。

40歳の若さでこの世を去り、伝説と化した俳優・松田優作。
生誕60年、没20年の今年、彼のドキュメンタリー映画が公開となります。
裏話を云々と言うものではなく、作品をもう一度振り返りながら
“人間・松田優作”、“俳優・松田優作”を検証していくような作品。
脚本家の筒井ともみさんが、こんなことを言ってます。
「松田優作が生きていようが死んでいようが関係ない。この世と言われる場所にいないだけで、
作品の中にこんなにも存在してるじゃないか」みたいなことを。
鳥肌ものでしたね。
なんだろ、生まれてこんなにも人に、世の中に影響を与える生き方なんて、
真似しろったって真似できるものじゃないなって。
そのDNAを受け継いだふたりの息子も今は俳優。そのインタビューがまたいいんです。
彼らが“親の七光り”だとしたら、上っ面が光ってるんじゃなくて、
内面から光る何かをもらって生まれてきたんだなと確信しました。
なんかプロの仕事を見せられたって感じ。頑張らなきゃ。☆4つ。
「SOUL RED 松田優作」公式サイト


「ドゥーニャとデイジー」は、オランダ映画。

ドゥーニャとデイジーは仲のいい親友同士。
でも、ドゥーニャは厳格なイスラム教徒の家庭に育ち、
オランダのアムステルダムに越してきたモロッコ人。
一方のデイジーは陽気で明るい生粋のオランダ娘。
性格も環境も違うのになぜか気の合うふたりだったのです。
そんな時、親の言いなりで好きでもない親戚と結婚させられそうになるドゥーニャ。
逆に自由奔放なデイジーは妊娠が発覚。実はデイジー自身もお父さんとは離れ離れ。
お母さんはデイジーを産んで後悔してないのか?
自分を愛してくれているなら、お父さんはなぜ出ていったのか?
その父は今、モロッコに住んでいるといいます。
お見合いのため、モロッコに一時帰郷するドゥーニャ一家を、
答えを見つけたいデイジーは追いかけて行くのでした…。

18歳(にしちゃ大人っぽいけど)の女の子ふたりのロードムービー。
たぶんボクにピンとこなかったのは、宗教観が違うからだと思います。
って、ごめんなさい、ボクは無思想、無宗教だけど(笑)。
自国ではきっと、伝統と現代文化の間で揺れ動く若者像として、
すごく興味深い作品なんじゃないかなって推測できます。
洋画でも、アメリカやイギリス、フランスものじゃないやつを見て、
たまにこういう映画に当たると何か新鮮な思いをすることがある、
そんな立ち位置にある1本かな。☆3つ。
「ドゥーニャとデイジー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.10.24

「サイドウェイズ」☆☆☆☆
「わたし出すわ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写会に行って、隣りにその映画会社のスタッフが座ると緊張しますね(笑)。だって居眠り厳禁…。
なんて座ってなくても居眠りは厳禁だけど。
それでも寝てしまった時には、エンドロールが終わって明かりがつくや、
そそくさと会場を後にします(笑)。
ごめんなさい。ミントを口に入れようが、アザができるほど太股をつねろうが、
睡魔に勝てない時もありまして…。決して作品がつまらないのではないのです。誤解なきよう。
今週の2本は寝ませんでした(笑)。早速紹介していきましょう!


「サイドウェイズ」は、40代の男のロードムービー。

大介と道雄は20年前のアメリカ留学仲間。
大介はアメリカに残ってレストランの雇われオーナーに。
一方の道雄は日本に戻って売れないシナリオライターに。
そんな別々の道を行くふたりでしたが、ある日、大介から道雄の元に連絡が入ります。
「オーナーの娘と結婚することになった。式に出てくれよ」。
LAの空港で久しぶりの再会を果たすふたり。
独身最後の数日をラスベガスで満喫したい大介に対し、ナパバレーのワイナリーを回る計画を立ててきた道雄。
どちらも譲らずに口論となるのですが、
道雄が片思いをしていた家庭教師時代の教え子の麻有子がベイエリアにいると知り、
結局は大介が折れてナパバレーへ。
青春の思い出が残る真っ赤なムスタングで一路西に向かったのでした。
無事に麻有子にも会え、昔話に花を咲かせる道雄は大人になった麻有子にドギマギ。
大介はというと、麻有子の友達のミナを口説いて意気投合。
婚約者の存在を隠して関係を持っちゃったから、これが後々ややこしくなるんです。
ふたりの40代男の旅は果たしてどんな結末を迎えるのでしょうか…。

もう見てて「わかる!」「わかる!」の連続(笑)。ホントにわかるんだよね。
ボクと同世代の男の女性に対する接し方のぎこちなさが、痛いほど。
麻有子はかたくなまでにアメリカに固執していて、
そこで成功することこそが自分の頑張りの証しぐらいに思ってる訳。
道雄が「違う」と諭しても、頑として首を縦には振らないんだけど、
そんな麻有子の仕事の危機を道雄の機転が救ってあげたんですよ。
そしてその夜、彼女の部屋で乾杯。で、ホントは帰りたくない道雄だけど、
「そろそろ帰ろうかな」と言っちゃう。わかる!
「そうね」というちょっぴり含みすらある麻有子の言葉に、
「止めてくれよ」と思いつつも靴を履いちゃう道雄。わかる!わかる!
そして「ありがとう」どハグされて、
どうしていいのかわからず、目を見開いちゃう道雄。わかる!わかる!わかる!
そんなシーンの連続です(笑)。
でもこんなテーマで映画ができるんだから、そういう人が多いってことなんだよね、きっと。
この世代を狙ってるアナタ!ってあんまりいないか(笑)。
HOW TO作品として見ておくといいですョ。ボクらの世代には間違いなく☆4つ。
「サイドウェイズ」公式サイト


「わたし出すわ」は、森田芳光監督、小雪主演作。

東京に行っていた摩耶が、突然故郷に戻って来ます。
そして高校時代の仲良しだった同級生に連絡を取り、
ひとりひとりと久々の再会を果たします。
例えば道上保。路面電車の運転手です。
彼の夢は世界中を周って、世界の路面電車に乗ってみること。
その夢を今も持っていることを知った摩耶は、保にこう言うのです。
「そのお金、あたしが出してあげる」。
孝にも、さくらにも、満にも、サキにも、摩耶は言うのです。
「そのお金、あたしが出してあげる」…。

ボクが欲しい…(笑)。
なんて冗談はさておき、そのお金の出所は劇中で後々わかるんですが、
突然手にする大金が引き起こす幸と不幸のドラマ。
謎の登場人物がいたりと、設定は興味深いんですが、
で、結局何が言いたかったのかがボクにはわからず。
深いものがあるのでしょうが、その深淵にまで残念ながら辿りつけませんでした。
だからと言ってあんまりあれこれと書いちゃわない方がいい作品のはず。
自分の感性の鈍さのなせるワザかもしれませんが、話題の映画だけに敢えて辛口に。☆2つ。
「わたし出すわ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.10.24

「アンヴィル〜夢を諦めきれない男たち〜」☆☆☆☆☆
「携帯彼氏」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

人肌恋しい季節です。素敵な恋愛映画が観たい…(笑)。
もしくは素敵に人生を考るような映画が観たくなるでしょ?
ありますョ!超お勧めの作品が!是非是非観てみて下さい。
さ、今週は2本です!


「アンヴィル〜夢を諦めきれない男たち〜」は、ドキュメンタリー映画。

アンヴィルは、カナダのトロント出身のヘビーメタルバンド。
1981年にデビューするや、多くのロックバンドに影響を与える存在にはなったのですが、
商業的にはまったくと言っていいほど成功せず。
後発のバンドたちが次々と売れていくのをただただ眺めているしかなかったのです。
オリジナルメンバーで残ったのは、ボーカルのリップスとドラムのロブだけ。
再起を懸けて出たヨーロッパツアーも散々なもの。
ギャラが夕食だけだったり、電車に乗り遅れて野宿になったり、わずか4人の客の前で演奏したり。
そんなアンヴィルですが、リップスもロブもバンドが大好き。
トロントに戻れば、彼らを理解する温かい家族の元、給食センターでバイトをしたり、
工事現場で働いたりしながら、もう30年もバンドを続けていたのでした。
レコーディングを終えて出来上がった自信作をメジャーのレコード会社に持ち込んでも、
返ってくるのはつれない返事ばかり。
音楽を愛するオジサンたちの夢は、ここでついえてしまうのでしょうか…。

うまくいかないから些細うまくいかないから些細なことで揉めるリップスとロブ。
何度も解散の危機を迎えるけれど、必ず元のサヤに収まってきたふたり。
「悪かったよ。でも俺はこの苛立ちをお前以外の誰にぶつければいいんだ。
兄弟以上の関係のお前しかいないんだよ…」。
レコーディング費用を持つリップスのお姉さんも、「大好きな弟の夢だから」と。
そんな時、リップスの携帯電話が鳴るんですね。久々の日本ツアーのオファーでした。
リップスは思い出します。
1984年、まだ若く、夢一杯だった自分たちを熱狂的に迎えてくれた日本のファンのことを。
もうボク、最後は号泣でした。ドキュメンタリーですからね。事実は小説より奇なり。
夢を諦めないこと、
自分の好きなものにピュアに一途に向かっていくことの大切さを教えてくれる感動の1本!
必見です!☆5つ!
「アンヴィル〜夢を諦めきれない男たち〜」公式サイト


「携帯彼氏」は、人気携帯小説の映画化。

里美と由香は女子校のクラスメート。
学校からの帰り道、もうひとりの友達、真由美からメールが入ります。
「彼氏に殺される」。
そう言い残して真由美は自殺してしまいます。
不審に思った里美と由香。手に入れた真由美の携帯には、
若い女の子に人気の“携帯彼氏”へのアクセス履歴がありました。
“携帯彼氏”とは、自分の好みのタイプの男の子を選び、
メールのやり取りをしながらラブゲージと呼ばれる恋愛度数を上げていこうという
恋愛シュミレーションゲームなんです。
しかし、最近このサイトに不穏な噂が流れていたのです。
それは「ラブゲージがゼロまたは100になったらプレイヤーが死ぬ」というものでした。
真由美の自殺の原因は本当に“携帯彼氏”なのか。
事実を掴みたい。
里美は自分の携帯に真由美の“携帯彼氏”を転送したのです…。

中高生には楽しめるサスペンスホラーかもしれませんね。
今の時代を象徴するような設定です。
何年か経ったら、ああこんな時代もあったなぁと、
昔のポケベルみたいに思い返すのかもしれませんね。☆2つ。
「携帯彼氏」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.10.16

『あなたは私の婿になる』☆☆☆
『ファイナルデッドサーキット3D』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ある映画を見に行った時のこと。終演後にカップルがこんな会話をしていました。
「面白かったね。すごく長く感じなかった?」。
「うん。2時間ちょっとでしょ?もっと長い気がしたね。すっげー面白かった」。
あらっ?普通は面白いと短く感じるものなんですけど…。
ま、感じ方も人それぞれだからいいんですけど(笑)。
さ、今週は2本です!


『あなたは私の婿になる』は、サンドラ・ブロック主演のラブコメディー。

NYの出版社で編集長を務めるマーガレット、40歳独身。
“鬼編集長”として恐れられ、彼女の出社時間になると部内の空気が一変するほど。
そんなマーガレットが会長に呼び出されます。
昇進や昇給の話かと思いきや、彼女が国外退去を命じられており、
このまま働くのは無理だとの告知だったのです。
実はマーガレットはカナダ人。ビザの申請を延ばしに延ばしていたのでした。
「このままじゃ、今まで積み重ねてきたキャリアが無駄になってしまう」。
ハッと閃いたマーガレットは、側にいた絶対にNOと言わないアシスタント、
28歳のアンドリューの腕を掴んでこう言ったのです。
「私たち、実は結婚するんです!」

ひと回り年上の女性との恋なんて別に当たり前なんだろうけど、
この場合は彼女のキャラがすごいから(笑)。
間違えてもそこには行かないよねって女性との“結婚宣言”。
でも断ったらアンドリューも仕事を失くすし、入管に同行しちゃったから、
これが国籍取得のための偽装結婚だとバレたら逮捕されちゃう訳です。
そこでアンドリューも腹を括って、
マーガレットをアラスカの実家に連れて行くのですが、そこでわかるお互いの素顔。
なんとなく展開がわかりますね(笑)。
またアンドリューのおばあちゃんがカワイイのですよ。
このおばあちゃんを悲しませるなよって感じ。
そのためにはハッピーエンドしか無いんですけど、果たして?☆3つ。
「あなたは私の婿になる」公式サイト


「ファイナルデッドサーキット3D」は、その名の通りの3D映画。

ニックは就職を控えた大学生。今日は2組のカップルでWデート。
人気のカーレースをサーキットで観戦していたのですが、
ある瞬間、ニックは予知夢を見たのです。
1台のクラッシュをきっかけにサーキットは炎に包まれ、観客席が崩壊。
多数の死者が出る大惨事になる夢。
ハッと我に返るニックでしたが、今まさに夢で見た序章が始まったのです。
「逃げるぞっ。みんな死んでしまうっ」。
周りの人は、そんなニックの言葉を信じるはずもありません。
無理矢理腕を掴んでサーキットの外に逃げたニックたち。
振り返れば、サーキットは火の海でした。
難を逃れたかに思えたニックたちでしたが、恐ろしいことが起こるのはそこから。
ニックのお陰で助かった人たちが、次々と命を落としていったのです。
あたかもあの日助かってはいけなかったかのように。
「次は俺たちの番だ…」。
果たしてニックたちに助かる術はあるのでしょうか…。

ストーリー云々より、やっぱり3Dかな。
その迫力を引き立たせるために、映像はかなり残虐です。
赤と青のレンズの眼鏡を掛けて見るのですが、
やっぱり正面から見据える方がいいみたい。
尖ったものが飛んで来た時は思わず避けちゃいました(笑)。
一度体験してみるといいかと思いますョ。☆3つ。
「ファイナルデッドサーキット3D」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.10.8

「eatrip」☆☆☆
「あがた森魚ややデラックス」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、前情報なしで試写に行ったら、ボクの中高同級生の篠原哲雄監督作品でした。
「つむじ風食堂の夜」という映画。
ファンタジーっぽいんだけど、その実ちゃんと実体があって、あったかくて。
久々に篠原くんらしい作品に仕上がったんじゃないかなって、ボクは個人的に大絶賛!
公開が近付いたらまたご紹介しますねっ。
今週は2本です!


「eatrip」は、食のドキュメンタリー。

フードディレクターの野村友里さんが監督を務めた作品。
様々なジャンルの、食にこだわりを持つ人たちが登場します。
歌手のUA、俳優の浅野忠信などの著名人だけでなく、
南の島で自給自足の生活を送る主婦やお寺の住職さんまでが登場。
その池上本門寺の住職が面白い!
生臭いんですよねぇ(笑)。なんて言葉が悪いな。人間臭いんですよ。
説法聞きに行きたくなっちゃいましたから。
ひとつ気になったのが料理をする手のアップ。
マニキュアか、指輪をしてたと思うんだけど…。確か指輪。
外した方が衛生的にはよかったんじゃないかなって思います。
食をアートっぽく描いている部分もあり、
力強いメッセージを感じ取れるかどうかは、きっと見た人次第かも。☆3つ。
「eatrip」公式サイト


「あがた森魚ややデラックス」は、
1972年に「赤色エレジー」でデビューしたあがた森魚のドキュメンタリー。

08年8月に60歳になったベテランシンガーソングライター。
還暦を祝って?全国60ケ所をキャンピングカーで回る
“惑星漂流60周年!”ツアーを追いかけます。
あの頃の歌手って、歌の上手さとかより、
なんか“思いの強さ”があれば夢は叶えられたんじゃないかなって気がするんですよね。
そんな等身大のリーダーシップに人々は惹かれたというか。
確かにあがた森魚はアツい人です。
アーティストらしい主張も、わがままもたっぷりな人です。
失礼を承知で言うと、時代とか、自分自身とかを、
あがたさん、実はすごくわかってるんじゃないかなって思うんですよね。
ツアーと言っても、ちっちゃな場所で数えるくらいの人の前で一生懸命に歌う。
それがどうこうじゃないんです。それだってすごく崇高な芸術活動です。
でもね、なんていうのかな、
ライブハウスで泣いていたあがたさんの涙の意味がすっごく気になったんです。
幸せで悔しくて、うれしくて辛くて…。そんな涙なんじゃないかなって。
ごめんなさい。人の人生を、知りもしないのに勝手に推測したりして。
あなたはどう感じるでしょう?気になります。観たら是非教えて下さいねっ。☆3つ。
「あがた森魚ややデラックス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.10.2

「キッチン 3人のレシピ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、3D映画なるものを初めて見てきました。
工具のドライバーが飛んでくるシーンなどはやっぱり「うわっ」と避けちゃいますね(笑)。
中身よりもその感覚を楽しんでました。また公開が近付いたらご紹介しましょう。
さ、今週は1本です!


「キッチン 3人のレシピ」は韓国映画。

小さい頃から独りぼっちだったモレ。
そんな彼女をずっと見守っていてくれたお兄ちゃんのようなサンイン。
ふたりが結婚して1年が立とうとしていました。
趣味の絵を活かして日傘のお店を営んでいるモレは、ある展示がどうしても見たくて、
閉館時間の美術館に忍び込むんですね。
係員がやってきます。
パッと隠れた壁とカーテンの隙間に、一緒に飛び込んできた若い男性がひとり。
彼の雰囲気と差し込む陽の光、ドキドキする空気感。
様々なものが手伝ってか、ふたりは関係を結んでしまいます。
まるで天使のように純真なモレは、そのことをサンインに話して謝ります。
憤るサンイン。
でも彼女のことを理解していればこそ許してあげなければと心の中で葛藤するんですね。
実はサンインにもモレに打ち明けなくてはならない話がありました。
それは会社を辞めて、フレンチレストランを開くこと。
料理の達人が来るから大丈夫と、サンインがモレに紹介したのはあの美術館の男性、
ドゥレだったのです…。

ボクが☆2つにしたの、わかりますよね?
試写を見た後、宣伝スタッフに「いかがでしたか?」と聞かれ、
「腹が立って見てられませんでした」とひと言(笑)。
ボクはこういうのダメなんです。
作品としてどうこうじゃなく、前提がダメ。こらっ、モレ。反省しなさいっ。
でも女性はこういう映画、好きらしいですよ。まったく…。☆2つ。
「キッチン 3人のレシピ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.9.25

「空気人形」☆☆☆☆☆
「のんちゃんのり弁」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

みなさんに楽しんで頂いたNACK5のポッドキャスティングプログラム
『シネマライフ』も9月いっぱいで終了することになりました。
このコラムはずっと続けていきます。
引き続き、映画選びの参考にしてもらえればと思います。今後ともよろしくお願いします!
さ、今週は2本です!


「空気人形」は、業田良家コミックの映画化。

古びたアパートに暮らす冴えない中年男、秀雄。彼女がいるはずもなく、
秀雄の心を満たすのは型の古い“空気人形”(ダッチワイフ)でした。
二人分の食事を作り、一緒に風呂に入り、ベッドで語りかけ、セックスをする。
ある日の朝、空気人形がひとつ瞬きをしたのです。
秀雄が外出すると、半透明の体を起こし、窓際へと歩き始め、
外の景色を眺めながら、「キ・レ・イ」と呟いたのです。
そう、人形が感情を持った瞬間でした。
秀雄が仕事に行って留守の間が、空気人形にとっての自由な時間。
町に出るといろんな人に出会います。
でも、みんな心にポッカリ穴が開いてるような人ばかり。
体の中が空気しかない自分と同じかもと思う空気人形。
そんな彼女の目に飛び込んできたのはレンタルビデオ店の「アルバイト募集」の文字でした。
カウンターの向こうにいた純一と目が合うと、経験したことのない感情が芽生える空気人形。
それが彼女にとっての初恋でした。
しかし夜になると秀雄に抱かれなくちゃいけない。
「何で心なんて持ってしまったんだろう…」。
空気人形は呟くのでした…。

20ページのコミックを是枝裕和監督が
素晴らしいヒューマンファンタジーに昇華させています。
人間の弱さ、欲望、傲慢、満たされない心。
半透明で、けがれを知らない空気人形の目を通すからこそ見えるものがある。
人間って悲しい生き物だなぁって思うけど、
何故だかあったかい気持ちににもなる。
なんでかなぁって考えたんだけど、
きっとその悲しい業の部分がいわゆる“人間臭さ”だからじゃないかなと。
空気人形役のペ・ドゥナの体当たりの演技にも注目です。
淋しがり屋さん、是非見てみて下さい。満点の☆5つ。
「空気人形」公式サイト


「のんちゃんのり弁」は、小西真奈美主演作。

永井小巻、31歳。
夫と子供の3人暮らしなんですが、この夫がダメ夫。
語るのは夢と理想ばかりで、親の金をあてにして働きもしない。
遂に愛想を尽かした小巻は夫に離婚届を突き付け、
娘ののんちゃんを連れて実家に戻るんですね。
しかし小巻は専業主婦。働こうにもこのご時世、キャリアも資格も持たない小巻が、
そう簡単に職を見つけられようはずもありません。
厳しい現実に失意と焦りの毎日を過ごす中、小巻の気持ちを支えていたのは、
宝物のようなひとり娘ののんちゃんに持たせる、愛情たっぷりのお弁当作りでした。
このお弁当が幼稚園で評判となり、先生たちにも差し入れをすると、
無料では申し訳ないとお金を集めて届けてくれるようになります。
「これだ!」と閃いた小巻は、お弁当屋さんを始めようと決意したのです…。

世間知らずの“アラサー女性”の奮闘記。
お弁当屋さんを始めるといっても、お金をもらうとなればプロですから、
当然ワンランク上の腕も必要となる。
そこで以前、サバの味噌煮が美味しかった小料理屋さんに弟子入りを申し入れます。
離婚届に判を押してくれないダメ夫、久々の再会を果たした初恋の相手へのほのかな恋心など、
小巻の心を揺らすものはたくさんあるんですが、それでものんちゃんのためにと頑張るんですね。
とにかく考えの甘い小巻。見てるとハラハラだけじゃなく、正直イライラもしてきます(笑)。
でもきっとそんな小巻に自分自身を映し見る人も多いんじゃないかなと。
生きていくって大変です!
小巻に送る「頑張れっ」の言葉を、自分にも送る。
そんな映画かもしれません。☆3つ。
「のんちゃんのり弁」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.9.20

「白夜」☆☆
「ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション」☆☆☆☆
「リミッツ・オブ・コントロール」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

秋の大型連休、どうします?
まさに芸術の秋。映画を観するにはピッタリの季節がやってきました。
積極的に劇場に足を運んで、感性を刺激してみて下さい!
さぁ今週は3本です!


「白夜」は、眞木大輔(EXILE)と吉瀬美智子の二人芝居。

フランス・リヨン。
恋人を追い掛けて日本からやってきたOLの相沢朋子。
一方的に伝えた待ち合わせ場所の橋の上で、待てども待てども相手は現れず。
どうやら訳ありの恋のよう。
そこに通り掛かったのがバックパッカーとして旅をしていた木島立夫。
「日本人?あんた日本人だよな?」。
ずけずけと話す立夫を訝しげに見る朋子。
「なんだよ、待ち合わせかい?こんな寒いところに立ってないで、お茶でもしない?」。
「失礼な人ね。あっちへ行ってよ」。
二人の出会いはそんな感じでした。
フランスで会った日本人同士。男と女、不思議な関係の始まりです…。

舞台を観ている感じです。
ただいろんな展開のきっかけとなる部分に無理があるなと感じたのと、
お芝居が少々大仰なのが…。
登場するのが二人だけですからね。掛かる負担が大き過ぎるかも。
よほどの実力派じゃないと持たせるのは正直キツいかと思います。☆2つ。
「白夜」公式サイト


「ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション」は、
伝説のアニメーション作家、ライアン・ラーキンのオムニバス作品集。

1965年から1972年の間に4本の短編作品を残し、2007年にこの世を去ったライアン・ラーキン。
25歳の若さでアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされるのですが、
以降はそのプレッシャーに悩まされて、路上生活に身を落とすんですね。
それから10年以上経ったある日、
国際アニメーション映画祭のディレクターがライアンを審査員として呼ぶのですが、
他の審査員は得体の知れない人間の加入に不満顔。
しかし彼らの作品を互いに見る上映会で、ある短編の素晴らしさに言葉を失ったそう。
それこそがライアン・ラーキンの代表作「ウォーキング」だったのです。
審査員のひとりだったクリス・ランドレスは
ライアンのインタビューをベースにしたCGアニメ「ライアン」を作り、
ライアン自身も35年振りの復帰作「スペア・チェンジ 小銭を」の
制作に取り掛かるのですが完成前に他界。
しかし仲間たちの手により、幻の新作が完成したのです。
この映画ではそれらを含む7本の短編が上映されます。
天才の感性ってこういうものかと。独特の世界観をどうぞ堪能してみて下さい。☆4つ。
「ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション」公式サイト


「リミッツ・オブ・コントロール」は、“鬼才”と呼ばれるジム・ジャームッシュ監督作品。

「自分こそ偉大だと思う男を墓場に送れ」。
それがコードネーム“孤独な男”に与えられた任務。
舞台はスペイン。
銃も携帯も持たず、必ずエスプレッソを2つ注文する男は、
任務を遂行することだけを念頭に街をさすらうのでした…。

わからない…(笑)。正直全然わかりませんでした。
おそらくこういうことなんじゃないかなというのはあるんですが、
それを書いてしまって当たってたとしたら、ネタばらしになっちゃうから(笑)。
あ、日本の工藤夕貴も出てます。
ボクの感性には限界ありかな(笑)。☆2つ。
「リミッツ・オブ・コントロール」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.9.11

「TAJOMARU」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

開映間近の試写室に派手な女の子が3人、ボクの隣りに陣取りました。
映画が始まっても携帯メールを辞めないので、「明かりが気になるので消して」と注意。
最後のエンドロールで「キャー」と叫ぶや、スクリーンを指差し、「××さんだぁ」。
スタッフのお偉いさんが、飲み屋のおねーちゃんとかに
「いいョ。試写で見ておいでよ」と言ったのが見え見え…。
それを揶揄するつもりもないけど、マナーぐらいは教えたら?ねぇ。まったく…。
さ、今週は1本です!


「TAJOMARU」は、小栗旬主演作。

室町時代末期。
将軍を支える管領職にある名門・畠山家のふたりの息子、長男・信綱と次男・直光。
その幼なじみで大納言の娘・阿古姫、そして兄弟同様に育てられてきた畠山家の家臣・桜丸。
この4人の絆は本当に堅いものでした。
しかし大人になるにつれ、純粋な子供の頃の関係だけではいられないことを知る4人。
それを決定づけたのは、将軍・足利義政のひと言でした。
「阿古姫を妻にとり、亡くなった大納言の財産を受け継いだ者に管領職を与える」。
実は阿古姫は次男・直光の許婚。家督を継ぐのは長男・信綱と決まっていたのです。
このままではすべてを弟に奪われてしまうと焦った信綱は、
力ずくで阿古姫をモノにしてしまったのです。
兄の蛮行にまさかと思いながらも、
「俺は地位も名誉もいらん。阿古姫さえいればいい」と、阿古姫を連れて家を出た直光。
ふたりが山中で道に迷っていると、現われたのは奇っ怪な風貌の怪しい男。
この男こそ、都で噂の盗賊・多襄丸だったのです。
軽くいなされ、木に縛られとしまう直光。
「イイ女だなぁ」と、阿古姫に迫る多襄丸。
すると阿古姫の口から信じられない言葉が。
「あたしにこんな辱めを受けさせたあの男、直光を殺して下さい。このままじゃあなたと結ばれない」。
愕然とする直光。「なんて女だ」と一瞬怯んだ多襄丸の隙を見て、その場から逃げ去った阿古姫。
「お前も哀れよのお」と紐をほどいた多襄丸に襲いかかる直光。
刃が刺さり、虫の息の多襄丸は直光に言います。
「俺もそうだった。多襄丸を殺した者がその跡を継ぐ定めなんだよ…」。
その言葉の通り、すべてを失ったと傷心の直光は、TAJOMARUと化したのです…。

と、ここまで話してもまだ序章も序章。
将軍・義政の狙い、桜丸の策略、阿古姫の本意、
TAJOMARUとなった直光の心の揺れ、そして変わらぬ思い。
戦乱の世。真直ぐなだけでは生きてはいけない時代に、それそれの思惑を抱いて生きる若者たち。
数奇な運命に翻弄される彼らの生き様には、混沌とした現代社会に通じる部分があるかと思います。
そこで取る直光・TAJOMARUの行動は一筋の光明かもしれません。☆3つ。
「TAJOMARU」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.9.5

「幸せはシャンソニア劇場から」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

お盆と出張もあって、8月は見た試写の本数が極端に少なかったです。
9月はその分も精力的に試写に足を運びたいと思います。
今週は1本です!


「幸せはシャンソニア劇場から」はフランス映画。

第2次世界大戦前のフランス。
NYの株価暴落による不況の波が押し寄せてきた頃、
労働者の憩いの場所として愛されていたシャンソニア劇場も、
借金のために差し押さえられてしまいます。
支配人は自殺。劇場は閉鎖。芸人も、裏方も、みんな職を無くしてしまったのでした。
中でも劇場運営に人生を懸けてきた裏方のピゴワルは妻にも逃げられ、
愛する息子とも離れ離れの生活を余儀なくされてしまいます。
「何とか劇場を再開しよう」。
強行手段に出たピゴワルと仲間たちは劇場を占拠。
不動産屋と交渉の結果、1ケ月の猶予をもらったのです。
果たしてピゴワルたちは大好きなシャンソニア劇場を
再びお客さんでいっぱいにすることができるのでしょうか…。

フランス映画が苦手なボクがいいと思うんですから、これはいい映画(笑)。
登場人物も多彩で、ピゴワルのことが大好きな息子のジョジョ。
家から一歩も出ない、通称“ラジオ男”。
オーディションでやってきた美人で歌の上手いドゥース。
そのドゥースと恋に落ちるミルーと、それが面白くない不動産屋のギャラピア。
フランスの個人主義のベクトルがみんな“優しさ”という方向を向くと、
こんなにもあったかくなるんだって感じかな。
幸せとか、大きく言っちゃうと平和とか。そのためのヒントを垣間見た気がします。
人恋しくなるこれからのシーズンにお勧めです。☆5つ。
「幸せはシャンソニア劇場から」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.8.27

「女の子ものがたり」☆☆☆☆☆
「九月に降る風」☆☆☆
「クリーン」☆☆☆
「ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密」☆☆☆☆
「パティ・スミス/ドリーム・オブ・ライフ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ひとつ謝らないといけません。先週ご紹介した「マーターズ」は、今週末の公開でした。
失礼しました。気になる方は前回の当欄をご覧下さい。
今週はその「マーターズ」を除く5本です!


「女の子ものがたり」は、人気漫画家・西原理恵子の自叙伝的作品の映画化。
スランプ気味の漫画家・高原奈都美、36歳、独身。
散らかしっ放しの広い家にひとり暮らす奈都美は、まるで現実から逃げるかのように毎日をボーッと過ごし、
昼間から缶ビールを空けてはゴロンと昼寝の日々。
そこに出版社が送り込んだのは、奈都美の昔の作品が大好きだったという新人編集者の財前でした。
いくらハッパをかけてもサラリと交わす奈都美。
財前の嫌味を子守歌代わりにウトウトし始めた奈都美が見た夢。それは12歳の頃の自分でした。
お母さんと新しいお父さんと引っ越した町。
車の窓から見えた掘っ立て小屋が気になり、行ってみると、そこには同じ年くらいのふたりの女の子がいました。
きいちゃんとみきちゃんです。
初めはよそ者扱いだったふたりもあっという間に意気投合。それからはずーっと仲良し3人組。
中学に入っても、高校生になっても。でもいつかはみんなバラバラになる。
そのことだけはわかっていたのです。
そしてきいちゃんもみきちゃんも結婚。
だけど旦那から暴力を振るわれるなどして、決して幸せそうには見えませんでした。
「なんでうちらは幸せになれへんのかなぁ」。
奈都美のそんな一言にきいちゃんは笑いながら、
「うちは不幸だなんて思うてへんよ」と言うや、奈都美の頬をパシリッ。
「あんたは昔からうちらと違うと思うてたやろ。この町から出て行き!」。
遂にこの日が、3人がバラバラになる日がやって来たのです…。

編集者・財前の「先生、友達いないでしょ」の言葉に、「いるんだよ、あたしにも」と呟く奈都美。
新しいお父さんが、「お前はなんか人とは違う。人と違った人生が送れるかもしれんぞ」と、
口癖のように言っていたあの頃に。
小屋の壁に絵を描き、きいちゃんやみきちゃんに、「なっちゃんは絵が上手やなぁ」と言われていたあの頃に。
奈都美は戻りたくて故郷を訪れるのですが。
もうそこからは涙がボロボロ出てしまいました。
きっとあなたも心の奥にしまい込んでいた大切な何かを思い出せるはず。
去り行く夏にお勧めの1本です。満点付けちゃいます!☆5つ。
「女の子ものがたり」公式サイト


「九月に降る風」は台湾映画。
96年、高校生だったタンは青春ど真ん中。
ポケベルで夜中に集まっては悪さをする仲良し7人組のひとりで、
恐いもの知らずの毎日を送っていたのです。
そんなやんちゃなメンバーですから、トラブルにも会う。
対立グループとのいざこざや、思いがけないアクシデント、恋愛、横恋慕、友人の不幸など。
翌年の卒業式の朝、タンは高校生だった毎日を振り返るのでした…。

この話、「80%はボクの高校生時代」とトム・リン監督。
大好きだったプロ野球の選手が八百長疑惑で追放されるなど、
台湾事情に精通しているとその事件が彼ら若者にどれほどの影響を与えたのか、
よりわかりやすいと思いますが、それが無くても普遍的なのが青春時代。
みんなこういう経験を経て大人になっていくんだなと、俯瞰で見て欲しい映画ですね。☆3つ。
「九月に降る風」公式サイト


「クリーン」は、カンヌで高い評価を得た作品。
ロックスターのリーと、歌手を目指す妻のエミリー。
愛息のジェイを夫の両親に預け、ふたりは音楽活動にいそしんでいました。
とは言っても落ち目のリーとまだ無名のエミリー。何かというとすぐ口論になる日々。
そんな中、リーが薬物の過剰摂取で死亡します。
彼を死に至らしめたのは妻だとの批判に悩むエミリー。
子供に会いに行っても、少し距離を保ってくれないかと言われてしまう始末。
すべてを白紙に戻して新しい生活を始め、愛する息子との暮らしを取り戻したい。
エミリーは堅い決意を胸にパリへと旅立ったのです…。

目的を持つと人は強くなれる。そんなことを描いた映画でしょうか。
捨てるべきプライドと、持っていなくちゃ自分が壊れちゃう自尊心の境界線。そこで人は揺れるんですよね。
頑張ることで神様が微笑むとは限らないけど、そう信じて頑張っていくこと、かな。
ちなみに主演のマギー・チャンは、第57回カンヌ国際映画祭で主演女優賞に輝いています。☆3つ。
「クリーン」公式サイト


「ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密」はその名の通り、
ディズニーの作ったドキュメンタリー映画。
タンザニア北部にあるナトロン湖。
雨期になると、無数のまだ薄茶色のフラミンゴがやって来て、ここに育つ藻類を食べていきます。
すると羽が真っ赤に染まって行くんですね。
普段はソーダ塩の強い毒で生き物など住める環境ではないのに、ここでは求愛行動が行われ、
それぞれにパートナーを見つけは繁殖に入るのです。
雨期が終わり、太陽が照り付けると、湖面には塩の層ができます。
そこでフラミンゴたちは卵を温めます。
卵からかえったヒナたちは、今度は天敵から逃げるように生活の場所を替えていきます。
仲間がどんどん犠牲になっていく中、生き延びたフラミンゴたちが、
その命を次の世代に繋げていくのです。
そんな繰り返しの中で、環境破壊による地球の変化、
フラミンゴたちの危険、引いては人間の危機をも訴えます。
“不死鳥”とも言われる炎の鳥。
その撮影の根気強さと、素晴らしい技術に感動を覚えること間違いなしです。☆4つ。
「ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密」公式サイト


「パティ・スミス/ドリーム・オブ・ライフ」は、
ロックシンガーパティ・スミスを追い掛けたドキュメンタリー。

1946年シカゴ生まれ。詩人としてデビューし、その怒りを歌にして叫び続けた女性ロックシンガー。
95年に音楽誌の取材で彼女を写したカメラマンのスティーヴン・セブリングが、
彼女の人生を11年にも及ぶ密着取材で映し続けたドキュメンタリー映画がこれ。
その迫力に驚き、意外やユーモラスな素顔にニヤリとするはず。
ファン必見の1本です。☆3つ。
「パティ・スミス/ドリーム・オブ・ライフ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.8.21

「30デイズ・ナイト」☆☆☆
「里山」☆☆☆
「宇宙(そら)へ」☆☆☆
「ノーボーイズ・ノークライ」☆☆☆
「ぼくとママの黄色い自転車」☆☆☆
「マーターズ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今回はいろんなジャンルの映画が揃いました。
ただ、抜けて面白いって感じの作品は残念ながら無かったかなぁ。
中ではドキュメンタリーものの2本が、☆4つに近い☆3つといったところでしょうか。
ではご紹介していきましょう。今週は6本です!


「30デイズ・ナイト」は、ヴァンパイアもののホラーサスペンス。

アラスカ州バロウ。極寒のこの町には、まったく太陽が昇らない極夜の日が30日続くのです。
隣り町まで数百キロ。そんな陸の孤島に異変が起こるんですね。
なんとヴァンパイアが大量発生。
大陽の光が苦手な彼らにとって、この町は格好の住みかだったのです。
襲われて次々ヴァンパイアと化していく町の人々。
果たしてこの恐怖から逃れる術はあるのでしょうか…。

その逃れる術とはただひとつ。この町に太陽が昇る30日後まで生き延びること。
発想の勝利?
奇をてらわないからこその安心感、安定感はあります。
いい人は常に犠牲になる。これもまた定説なり?☆3つ。
「30デイズ・ナイト」公式サイト


「里山」は、ネイチャードキュメント。
08年7月にNHKスペシャルで放送されたものに、一部新たなシーンを追加、編集したものです。
滋賀県にある琵琶湖のほとり。
そこには樹齢500年の大木があり、四季様々な表情を見せる森があります。
人は自然を破壊するのではなく、支配するのでもなく、
あくまで“共生”することで自然の恵みを頂く。
そんな立ち位置で生きてはいけないのかと問題提起をしているかのよう。
春夏秋冬。
季節感の無くなりつつある日本にも、こんなに自然を感じる場所があったかと思うと、
ちょっぴり感動しますョ。☆3つ。
「里山」公式サイト


「宇宙(そら)へ」は、イギリスBBC制作のドキュメンタリー映画。
東西冷戦時代、宇宙開発で先手を取ったのはソ連でした。
1961年4月12日、ソ連は人類初の有人宇宙飛行に成功。
ユーリ・ガガーリンの「地球は青かった」は有名な言葉ですよね。
遅れをとったアメリカは、第35代大統領ジョン・Fケネディの
「60年代のうちに月に人間を送る」という宣言にのっとり、数々の犠牲の上に、
遂に1969年7月20日、アポロ11号の月着陸船イーグルが月面着陸に成功します。
「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」というのも、
歴史に残る言葉となりました。
その後、何人もの宇宙飛行士が月に立ち降ります。
しかし、肝心のふるさと地球ではベトナム戦争が泥沼化。アポロ計画は終焉を迎えます。
次第に宇宙開発は平和利用にその目的を移し、ロケットからスペースシャトルへと変わっていくのです。
1986年1月28日、打ち上げ直後に爆発したチャレンジャー号。
2003年2月1日、帰還直前に空中分解したコロンビア号。
再び幾度の犠牲を伴いつつ、人類は今も未知の宇宙を目指すのです。
別の映画でスクリーンいっぱいに地球が映し出されるシーンがあったのですが、
フィルムの傷?と思うような“黒い点”がいくつもあったんですね。
よく見ると、それは人工衛星なんです。
衛星TVが見れるのも、天気予報の精度が高まるのも、
過去の犠牲の上に成り立っているといっても過言ではないでしょう。
その一方で、宇宙から見れば塵よりも小さな存在の人間です。
そんな謙虚な気持ちを忘れずに開発を進めていかないと、
何か間違いを起こすぞと危惧するのはボクだけでしょうか。☆3つ。
「宇宙(そら)へ」公式サイト


「ノーボーイズ・ノークライ」は、日韓共作映画。

韓国に住むヒョングの仕事は、日本で成功したボギョンおじさんに舟で荷物を運ぶこと。
荷物の中にはおじさんが大好きなキムチの壺がありました。その中には大量の麻薬が。
しかしヒョングはそのことを知らなかったのです。
日本側の使いっぱしりは亨。ふたりは湾の入り江で接触し、荷物を運ぶのです。
ある日のこと、頼まれた荷物はどう見ても人間の形をしていました。
中身は保険会社の重役を父に持つ少女チスでした。
「誘拐か…」。
ヒョングと亨はボギョンおじさんを裏切り、チスを逃がそうとするのでした…。

ヒョングも亨も、背負ってるもののある人生。
それが対照的なものだったとしても、国境を越え、何かシンパシィを感じたのでしょう。
闇が深いと、小さな光でも大きな幸せに感じるんだなって。
幸せ慣れしちゃうのもよくないけど、不幸に慣れちゃうのもね…。☆3つ。
「ノーボーイズ・ノークライ」公式サイト


「ぼくとママの黄色い自転車」は、小さな男の子がお母さんを探すロードムービー。

横浜に住む小学校3年生の大志はお父さんとふたり暮らし。
大好きなお母さんはパリでデザイナーの勉強をしていて、週に1度手紙を送ってくれます。
それが大志の一番の楽しみでした。
ところがある時、同封されていた写真におかしなところを見つけてしまいます。
部屋中を探して見ると、父宛の手紙が。消印はパリではなく、香川県の小豆島。
ママは小豆島にいるのかも?
大志は大好きなママに買ってもらった黄色い自転車に愛犬のアンを乗せて、
お母さん探しの旅に出るのでした…。

実はお母さんは若年性認知症で施設にいるんです。
お父さんが嘘をついたのは、決して騙すつもりじゃなく、大志を傷付けたくなかったから。
こんな“嘘”なら必要?いや不必要?
ちょっと考えさせられると思います。
B級感も漂う映画ですが、子供と犬と老人と。
泣かせの3アイテムが揃っちゃ涙もこぼれようというものです。
ちょっぴり悔しい…(笑)。☆3つ。
「ぼくとママの黄色い自転車」公式サイト


「マーターズ」は、サスペンス・ホラー。

ある日の朝、行方不明だった少女リュシーが、衰弱し切った体で彷徨っているところを保護されます。
拷問の痕こそあれど、性的虐待はなし。
一体誰が、何のために?
施設に保護されたリュシーは、同年代のアンナの存在もあり、次第にトラウマを癒していくのですが、
それでもリュシーからは復讐の念が消えることはありませんでした。
ある日のこと、ごくごく普通の家庭のチャイムを鳴らし、出て来た家族を猟銃で皆殺しにするリュシー。
「復讐は終わった」。
連絡をもらったアンナが駆け付けると、目の前には悲惨な光景が広がっていました。
その時です。リュシーを監禁した人間たちがやってきて、今度はアンナを囚われの身にしたのです。
一体何のために?
リュシーが受けたのと同じ苦しみを経て、答えは徐々に明らかになっていくのでした…。

ラストはどうなるの?落としどころはどこ?とずっと思いながら見てました。
「あぁそこかぁ…」と(笑)。いや、なかなか思いつかないかも。
“ホラーとカルトの合体”。これがこの映画のキーワードかも?☆3つ。
「マーターズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.8.14

「ナイトミュージアム2」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日、「空気人形」という映画の試写を見ました。ダッチワイフが心を持つ映画。
こんなにピュアに愛してくれるなら人形でもいいかなと思ってしまったボクって何?(笑)。
公開が近付いたらまたご紹介しましょうねっ。
さ、今週は1本です!


「3時10分、決断の時」は西部劇。

「ナイトミュージアム2」は、人気大ヒット映画のシリーズ第2弾。
NY自然史博物館にあった魔法の石盤。
その不思議な力で展示物たちが命を得て、大暴れしたのが2年半前。
そのドタバタを収めたのが警備員のラリーでした。
今やラリーは実業家として大成功!息子との絆も取り戻して平穏な生活を送っていたのです。
そんなある日のこと、ラリーに1本の電話が掛かって来ます。
電話の主はミニチュア・カウボーイのジェデダイアでした。
聞けば、自然史博物館もハイテクの波に押されて、展示はすべてCGになると。
結果、不要な展示物はワシントンDCにあるスミソニアン博物館の倉庫に移され、
あの石盤だけは自然史博物館に残されるはずだったのが、
間違えて一緒に運ばれてしまったからさぁ大変!
世界最大の博物館だから、あらゆるものが命を吹き込まれ、大騒ぎになっているというのです。
それは一大事とワシントンDCに飛んだラリーが見たもの、
それは3000年の眠りから醒めた古代エジプト王カームンラーとその部下たちが、
ナポレオン、アル・カポネらと共に、世界征服を企む姿だったのです。
果たしてラリーは再びこの危機を救えるのでしょうか…。

蘇ったのは他にも、巨大なリンカーンの石像、壁に掛かった世界の名画、
アインシュタインの人形、巨大イカなどなど。
そりゃもう大騒ぎのスミソニアン博物館なんですが、実際にカメラはこの博物館で回されてるんだそう。
館内撮影が許された映画はこれが初めてだとか。
博物館の展示物が動き出したら面白いという、奇想天外な発想が生んだ前作の「ナイトミュージアム」。
世界中で5億7千万ドルを超える興行収入を記録したそうなんですが、
それがさらにスケールアップしてのシリーズ2作目ですからね。
期待に違わぬ夢物語に仕上がってます。
前作のキャラクターたちが残ってるっていうのもいいのかも。
もちろん前作を見てなくても十分楽しめるのでご安心を。
夏休みに親子で行くにはピッタリの1本だと思いますョ。
ちなみに公開は13日木曜日です。☆3つ。
「ナイトミュージアム2」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.8.5

「3時10分、決断の時」☆☆☆
「縞模様のパジャマの少年」☆☆☆☆
「未来の食卓」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近泣いてないなぁということに気付きました。
男だから、そう安々と涙を流す必要もないのですが、
あまり魂を揺さぶられる映画や出来事に出会えていないのも確か。
ただ今回☆4つの作品は、かなり心に引っ掻き傷を残していくはずです。
さ、今週はそれを含む3本です!


「3時10分、決断の時」は西部劇。

アメリカ独立戦争に参戦して片足を失ったダンは、家族と静かに牧場を経営していたのですが、
町の有力者の策略にハマり、借金のかたに牧場を手放すハメになりそうな状況に。
ふたりの息子、特に長男は父親を見下すような素振りを見せるようになっていたのです。
ダンが有力者と交渉するために町へ行くと、悪名高きベン・ウェイド率いる強盗団に遭遇します。
ベンはその後、保安官に捕まり、裁きを受けさせるため、
明後日の3時10分発ユマ行きの汽車に乗せようとするのですが、
これだけの大物ですから仲間たちが連れ戻しに来ることは必至。
駅までの護送は命懸けの仕事になります。
誰がこの危険な仕事をやるのか。
みんなが渋る中、「俺がやろう」と手を挙げたのはダンだったのです…。

もちろん報酬は高額で、これで何とか生活を立て直したいというのもあったのですが、
ダンはそれ以上の目的を胸に秘めていました。
駅までの道のりは予想以上にハードなものに。
しかし、行動を共にしながら、徐々に打ち解けていくふたりの男。
互いの心の内を知った時、熱い男同志の間に友情が芽生えるんですね。
口に出しては言えない思いを汲んでくれというのは、ボクはある種のエゴだと思うんですョ。
だって人間は超能力者じゃないんだから。
でも生き様が近いと相手の心持ちがわかったりもする。
ベンとダンはまさにそんな関係でした。
なかなか見応えのある作品でしたョ。
この映画のラストをハッピーエンドと取るかどうかは見る人によって違うと思います。
あなたはどう感じるでしょうか?☆3つ。
「3時10分、決断の時」公式サイト


「縞模様のパジャマの少年」は、戦争が生んだ悲劇を描いた作品。

第二次世界大戦まっ只中のベルリン。
ブルーノはナチスの将校を父に持つ、元気な男の子。
学校から家に帰ると、その日は父の昇進を祝うパーティがありました。
そんな父を誇らしく思うブルーノでしたが、今回の昇進は少々事情が違います。
仕事の関係で、ベルリンの町を離れなくてはならなかったのです。
「引っ越し先はどんなところだろう?友達はできるかなぁ?」。
そんなブルーノの不安は的中します。
新しい家は片田舎で、友達どころか周りには誰も住んでいない場所。
暇を持て余したブルーノが、自分の部屋の窓から外を眺めると、
たくさんの人が働く農場のような建物が見えたのです。
そのことを母に話すと、「そこには絶対に近付いちゃダメ」と言われます。
ある日のこと、好奇心旺盛なブルーノはみんなの目を盗んで冒険に出ます。
裏口から森を抜けると、あの“農場”がありました。
そしてフェンスの向こうに、なんと同じ歳ぐらいの男の子がいるではありませんか。
彼の名はシュムエル。ブルーノと同じ8歳だと言います。
やっと友達を見つけたとはしゃぐブルーノでしたが、でも何かが変。
なぜ、昼間から縞模様のパジャマを着ているのか?
胸に付いている番号は何かゲームでもやってるのだろうか?
しかし幼いブルーノにはそんなこと関係ありません。
ただシュムエルと友達になりたかったのです。
それが悲劇の始まりになろうとは知るよしもありませんでした…。

もう気付いた人も多いかと思いますが、そう、農場はユダヤ人の強制収容所。
ブルーノの父はその責任者として赴任したのです。
この映画のラストには胸が詰まります。
「ダメ。ダメだって」と思ってるうちにアッと言う間に悲劇は進みます。
因果応報。ある意味、皮肉たっぷりのラストシーン。
どんな理由があろうと戦争は絶対にいけない。きっとあなたもそう思うはずです。☆4つ。
「縞模様のパジャマの少年」公式サイト


「未来の食卓」は、食を考えるドキュメンタリー映画。

フランス南部、ガール県バルジャック村。
この村では村長の提案で、
子供の学校給食と高齢者の宅配給食はオーガニックにすると決めました。
それと共に学校では自分たちで農作物を作ることも教えていきます。
ユネスコの会議で、「あなたの周りにガンや糖尿病にかかった人はいますか?」の問い掛けに、
ほとんど人が手を挙げます。
ヨーロッパでは、生活習慣病の70%が食生活や環境に原因があるとされているんですね。
食料自給率が100%の農業大国フランスにおいて、
「将来国を支えるべき子供たちの食を考えるのは大人の責任」
という考え方が増えて来ていると言います。
この映画がドキュメンタリーとしては異例の広がりを見せたのも、
それに貢献しているよう。
逆に言えば、食料自給率の低い日本は、食を選べない子供のような存在でもあります。
価格が安ければ農薬たっぷりの食材でいいのか。溜まったツケはなかなか返せない。
それに気付いた時はもう手遅れなのかもしれません。
とはいえ、今からでも始めなきゃ。
子を持つ親御さんに見てもらいたい1本です。☆3つ。
「未来の食卓」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.7.30

「コネクテッド」☆☆☆☆
「バスティン・ダウン・ザ・ドア」☆☆☆
「ポー川のひかり」☆☆☆
「ボルト」☆☆☆
「山形スクリーム」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ある試写でのこと。
会場に宣伝会社のスタッフが到着する前に、人気の作品らしく列が出来てました。
その列に並んでいると、年配の男性がスルスルっと前に行き、
試写室のドアを開け、荷物で席を確保して列の後ろに。
それってルール違反でしょ。
いつも言いますが、そういう人に映画を語って欲しくないと思いませんか?
気付いて反省して欲しいと切に思います。
さ、気を取り直して、今週は5本です!


「コネクテッド」は、04年のハリウッド映画「セルラー」の香港リメイク版。

シングルマザーのグレイスが、ひとり娘のティンティンを学校に送り届け、
仕事場に向かおうとしたその時、1台の怪しげな車に追突され、そのまま拉致されてしまいます。
理由もわからぬまま、倉庫のようなところに監禁されるグレイス。
男たちの目を盗んで、壊された有線電話を必死の思いで繋ぐと、
出たのはアボンという気弱そうな男性でした。
アボンは仕事の要領が悪く、大事な息子ギットとの約束をいつもすっぽかす始末。
でも今日はそういう訳には行きません。
何故なら、ギットは海外留学に向かうため、しばらく会えなくなってしまうから。
しかし最初はいたずらだろうと思ったグレイスの電話も、あまりに切羽詰まった声で、
これは事件だと悟ったアボン。
「絶対に切らないで。もう二度と繋がらないかもしれないから」。
グレイスの頼み通り、何とか携帯を繋ぐアボン。
そうしているうちに、男たちの魔の手は幼いティンティンにまで伸びようとしていました。
同じ子を持つ親として放ってはおけない。アボンは何とかふたりを助けようとするのですが…。

犯人たちは何者で、何故グレイスは狙われたのか?
謎は少しずつ明らかになっていきます。
どんでん返しにつぐどんでん返し。最後まで息の抜けない展開。ストーリーはよく出来てました。
この辺はリメイクの強みかもしれませんね。楽しめる1本だと思います。☆4つ。
「コネクテッド」公式サイト


「バスティン・ダウン・ザ・ドア」は、70年代のハワイを舞台にしたサーフィンのドキュメンタリー。

1970年代前半のハワイ、オアフ島。
そこは世界で最もスリリングな波の立つ場所として世界中のサーファーに知られるスポットでした。
評判が立てば人も集まる。人が集まればトラブルも起きる。
特に世界各国から若者が集まる訳ですから、異文化間の衝突が起きるだろうことは火を見るより明らか。
そんな中、南アフリカとオーストラリアから6人の若者がやってきます。
彼らの目的はサーフィン界に革命を起こすこと。
しかしその過激なアプローチは、地元のサーファー、いわゆる“ロコ”との対立を生みます。
その後、ビジネスとしても巨大産業になっていくサーフィン。
当時組織されていた地元の自警団「ブラックショーツ」と他国の6人の若者とのやり取りや、
サーフィン創世期のまだドロドロした部分を、みんながしっかりと語っています。
自分はサーファーだと名乗る人は話のネタにも見ておかなくてはならないかもしれませんョ。☆3つ。
「バスティン・ダウン・ザ・ドア」公式サイト


「ポー川のひかり」はイタリア映画。

イタリアのボローニャ大学の図書室で、大量の古文書が太い釘で打ち抜かれるという事件がおきます。
容疑者は、哲学科の若き主任教授でした。
警察が大学で捜査を続ける頃、教授は乗っていた車を道端に捨て置き、
キーや財布など所持品のほとんどをポー川に投げ捨てたのでした。
そして川岸のオンボロ小屋を見つけ、そこに住もうと決める教授。
教授の目的は?不可解な行動の真意とは…。

実はこの映画、かなり宗教色の濃い作品。
それもそのはずで、70歳を過ぎてメガホンを取り続ける巨匠エルマンノ・オルミ監督(78歳)が
映画人生最後のテーマにと選んだのが“キリスト”でした。
新約聖書を通して、本当の人生の豊かさとは何かを問い掛けた作品。
途中出て来る話も、聖書を知ってると「あ、あれか」となるようです。
ボクは無思想、無宗教なので正直よくわかりませんでしたが、
それでも謎解きのような楽しさはあったかな。☆3つ。
「ポー川のひかり」公式サイト


「ボルト」は、ディズニーのCGアニメ。

幼い少女ペニーが犬を飼いたいと向かった先は動物保護施設。
一匹の白い子犬がペニーに飛び付きます。
ペニーは「この子がいいっ」と大はしゃぎ。白い子犬はボルトと名付けられたのでした。
5年後、ボルトはスーパードッグに成長。ペニーを助ける重要な任務に就いていたのです。
そう、ペニーはドクター・キャリコ率いる悪の軍団と戦う正義のヒロインだったのです!
というのはドラマの中のお話。
でもセットの中だけで育ったボルトにとってはすべてが現実。
「ワンッ!」とひと吠えすれば周りのすべてが吹き飛ぶ
スーパーボイスの持ち主だと信じ込んでいたのです。
それでもペニーはボルトのことが大好き。
週末だけでも自分の家に連れて帰りたいとせがむのですが、それは叶わぬ夢だったのです。
ある日の収録で、ドクター・キャリコからペニーを助けようとしたボルトは、
勢い余って段ボールの中に落ちてしまいます。
そしてそのまま梱包され、送られた先はNY。
初めて見る世界に戸惑うボルトでしたが、
ドクター・キャリコが猫が大好きだったことから猫は悪の手先だと思い込んでいたボルトは、
野良猫のミトンズを締め上げて、ハリウッドまでの道案内を命じます。
でもミトンズにとって、ボルトはただの“妄想犬”。
途中立ち寄ったオートキャンプ場で、TVが大好きなハムスターのライノと出会うのですが、
ライノはスーパーヒーローの登場に大興奮!
こうして3匹の珍道中が始まります。
果たしてボルトは無事ペニーの元に帰ることができるのでしょうか…。

ちょっと“裸の王様”的なところのあるボルトですが、とにかく根底に流れているのは、
ペニーはボルトを、ボルトはペニーを心から愛してるということ。
特にボルトのペニーを思う気持ちには心打たれますから。
そんな二人(一人と一匹?)だから、どんなにすれ違おうと
最後はちゃんと収まるところに収まるんだって信じたいじゃないですか。えっ、甘い?
かもね(笑)。
ちなみに昔「カーズ」という車のCGアニメがありましたが、
そのチームがオンボロトラックを主人公に描いた7分の短編「メーターの東京レース」も同時上映。
こちらは東京が舞台です。見たような景色が楽しめますョ。☆3つ。
「ボルト」公式サイト


「山形スクリーム」は、竹中直人監督作品。

都立紅高校の歴史研究会に所属する美香代と友達3人は、引率の勝海子先生と合宿に来ていました。
場所は山形県の御釈ヶ村。村に残る落武者伝説を、無理矢理恋物語にこじつけて
“縁結び伝説”で村起こしをしようと考える村人たちの思惑に、
結婚願望の超強い勝先生はまんまと乗せられた形の合宿地選びになったのです。
しかし、落武者の鎮魂碑をもっと豪華にし、村のシンボルにしようと壊したところ、
眠っていたはずの落武者たちの霊魂が蘇ったからさぁ大変!
村は、美香代たちの運命やいかに…。

ホラー?ラブコメディ?
ま、ごった煮的映画なんですが、ハッキリ言って笑いどころが全然わかりませんでした。
竹中直人ファンなら面白いのかなぁ。
逆に気になりません?どうぞご自身の目で確かめてみて下さい。☆2つ。
「山形スクリーム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.7.23

「セントアンナの奇跡」☆☆☆☆
「バーダー・マインホフ 理想の果てに」☆☆☆
「真夏の夜の夢」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週紹介する映画の中で、「セントアンナの奇跡」は2時間43分。
「バーダー・マインホフ」は2時間30分。どちらも超大作です。
長さイコール重厚感ではありませんが、
たまにはずっしりと重いものを受け止めに行くのもいいかと思います。
ちなみにどちらも試写では長さを感じることなく見られましたョ。
さ、今週は3本です!


「セントアンナの奇跡」は、スパイク・リー監督作品。

1983年、NY。
郵便局に切手を買いに来た男を郵便局員が突然射殺するという事件が起こります。
局員には前科も借金も精神的疾患もない。
定年まであと3ケ月という時期に、何故彼はこんな事件を起こしたのか。
捜査を進めると、局員の部屋から彫刻の頭部を発見します。
専門家に見てもらったところ、これは歴史的にも貴重な作品で、
1944年にナチス・ドイツによって爆破されたイタリア、フィレンツェの橋の一部だと。
闇市場に出れば500万ドルは下らないこんな美術品が、
何故つつましい生活を送る郵便局員の部屋に置かれていたのか?
そして、彼はなぜ突然弾きがねを引いたのか?
すべての謎を解くカギは1944年のイタリアにあったのです。
第二次世界大戦の真っ直中、郵便局員は黒人歩兵部隊の兵士でした。
黒人の命など虫ケラ同然と考える白人上官ばかりの時代。
いつ命を落としてもおかしくない厳しい状況に身をおいていたのです。
彼の仲間に、心優しいトレインという男がいました。
トレインの腰には「お守りになるから」と拾った彫刻の頭部がぶら下がっていました。
ある日のこと、トレインはドイツ軍の爆撃で破壊された小屋の中に、
ひとりのイタリア人少年を発見します。
何としても少年の命を救いたい。
足手まといになるから置いていけという仲間の声を聞き入れずに、
トレインは少年を連れていくんですね。
少年に不思議な力を感じていたトレイン。
トスカーナの小さな村に無理矢理匿ってもらう彼らでしたが、
ドイツ軍の魔の手は、この静かな村にまで近付いていたのです…。

と、これだけ書いてもまだまだ(笑)。なんたって2時間43分ですから。
その村でいろんなことが起こります。
仲間が次々命を落とす中、郵便局員が助かったのも奇跡、ある意味あのNYの事件も奇跡、
そして最後に局員を待つ出来事もまた奇跡。
とにかく冒頭のシーンをよーく頭の中に置いて置くこと。
開映時間に間に合わなければ次回まで待って。途中入場はこの作品、厳禁です。
スパイク・リー監督ですから、ニヤリとさせるシーンもちりばめつつ楽しませてくれます。
試写でボクの隣りに座っていた男性は、最後肩を震わせながら泣いてましたから。
あなたも奇跡を体感して見て下さい。☆4つ。
「セントアンナの奇跡」公式サイト


「バーダー・マインホフ 理想の果てに」は、70年代ドイツ赤軍の闘争史。

1967年、西ベルリン。
アメリカと密接な関係にあったイラン国王夫妻の訪問に対する反対デモの最中、警察が学生を射殺。
女性ジャーナリストのウルリケ・マインホフは新たなファシズムの到来に畏怖を感じ、
反権力の学生運動に関心を抱いていきます。
世界中で学生運動が加速していく中、
彼女が注目したのは自称ジャーナリストのアンドレアス・バーダー。
68年、ベトナム戦争反対を掲げ、デパートに放火をした罪で捕まっていたバーダーを、
取材と偽り脱走させるんですね。
それからふたりは同志を集め、正式にドイツ赤軍RAFを立ち上げたのでした…。

その後、彼らの信じる“正義”のためにと、数々のテロ事件を起こしていくのですが、
ふと立ち止まってみると、何かが違う。
というか、組織が大きくなればなるほど様々な人間が加わり、様々な思想が交差する。
同じ方向を向いた“志”のはずなのに、微妙なズレの重なり合いが、
当初の思いからベクトルを少しずつずらしていってしまう。
そしてそれは修正できないほどに大きなうねりとなって一人歩きを始めてしまうのです。
今の日本の政治を見てもそうですが、政治家になろうと立候補する人って、
最初は高潔な理想を抱いていると思うんですよ。
でも当選すると、今まで体験したことの無い魑魅魍魎の世界や、
ドロドロの利権の渦に足を踏み入れることになる。
あちこちからいろんな手が伸びて来て、気付いたら“永田町色”に染まってしまってたという感じ?
ひとりじゃ無力。じゃみんなでやればできるのかといえば、そうとも限らない。
だからといって諦めちゃダメ。
社会って、世の中って、人間って、生きていくって、難しいですね(笑)。
ドイツではナチスと並びタブーとされる題材だそうです。ズシリと重いです。☆3つ。
「バーダー・マインホフ 理想の果てに」公式サイト


「真夏の夜の夢」は、「ナビィの恋」などで知られる中江裕司監督作品。

日本の南にある世嘉冨島。
大きな木の上で、精霊たちが話をしています。
人間は忘れることで生きていける悲しい動物だと、
その人間に忘れられる自分たちは悲しいを通り越した滑稽な存在だと。
東京に出て行ったものの、恋に破れて島に帰ってきたゆり子。
彼女は幼い頃、普通の人間には見ることのできない精霊の姿を見たのです。
マジルーという名前の精霊はゆり子に言いました。
「オレさまと話ができる人間と出会ったのは200年振りだ。
 大人になっても忘れないでおくれ。ずっとここで待ってるからな」。
しかしゆり子は島を離れてからマジルーのことを忘れてしまっていました。
若いより子が帰ってきたと色めき出す島の青年団。
同様にマジルーもより子の帰郷を喜びます。
島の繁栄を願い、より子を見守るのがマジルーの使命。
さぁドラマの始まりです…。

南の島を舞台にしたファンタジー作品。
テイストとしては好き嫌いがはっきり分かれるかなといった感じですかね。
下北沢で掛かる舞台演劇を見ているような感覚とでも言うのでしょうか。
ちょっぴり素人臭さが逆に味になるような(笑)。
そんな中江ワールドが好きは人にはたまらないはず。
前記の2作品との相対的評価になってしまって申し訳ない。☆2つ。
「真夏の夜の夢」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.7.15

「湖のほとりで」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、ノンフィクションものの映画がすごく増えてます。
先日たまたまですが、試写が3本続けてドキュメンタリーでした。
「事実は小説より奇なり」。確かに面白いんですよね。
でも映画らしい映画も見たいと思ってしまいます。無いものねだりでしょうか(笑)。
さ、今週は1本です。


「湖のほとりで」はイタリア映画。

北イタリアの小さな村で、マルタという女の子が行方不明になります。
すぐに「無事保護」の知らせが届き、事情を聞くと、
村のはずれに住む知的障害を持つマリオに誘われて湖に行っていたと。
「湖には蛇が住んでいてね、それを見ると永久に眠ってしまうの。伝説じゃないわ。
だって今日蛇が出てきて本当に魔法をかけたんだもの」。
その言葉を不審に思った刑事のサンツィオが湖に行くと、
そこには眠るように横たわるアンナの死体があったのです。
争った形跡もないことから、顔見知りの犯行と読むサンツィオ。
しかし、この静かで、のどかな村に、なぜ事件が起こったのか。
捜査を進めていくうちに、村人たちの心の奥底に潜む、
誰にも言えなかった秘密が次々と明らかになっていくのでした…。

この映画、犯人当ての推理サスペンスというよりも、
それぞれに事情を抱える家族の在り方を描いた人間ドラマだといいます。
確かに登場人物たちの設定にも“何かひとつ”が付いているんですね。
例えば先のマリオの知的障害、そのお父さんも身体が不自由で、
殺されたアンナも実は病に冒されていたと。
アンナにはシルヴィアという姉がいるけれど、ふたりは本当の姉妹ではなく、父はアンナだけを溺愛。
そのアンナがベビーシッターを任されていたアンジェロが不慮の事故で死亡。
両親はそれが原因で離婚。
サンツィオの妻も若年性認知症に悩まされていて、娘のフランチェスカにはその姿を見せられないでいる。
身近な人にさえ話せない悩みを、みんなが抱えていたのです。
どんなドラマがあって、どんな謎解きがされるのか?
ポスターには湖のほとりから湖面を眺めるふたりの男性が写されてますが、
まさに湖底に沈むほどの深い愛と強い信念とは?
気になる人は劇場に足を運んで下さい。☆3つ。
「湖のほとりで」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.7.6

「ウィッチマウンテン―地図から消された山―」☆☆
「MW(ムウ)」☆☆☆
「私は猫ストーカー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

基本的にボクらの行く試写会は飲食禁止。
鞄の中のペットボトルぐらいは仕方ないのかなぁと思いながらも、
ボトルにスクリーンの光が反射するとつい気になってしまいます。
忙しいスケジュールの合間を縫って行く試写なので、正直途中で眠くなることも。
そんな時、なんか飲み物があればなぁと思うこともしばしば。
でも“飲んでる人がいるから自分も…”と、なし崩しにルールを破るのは嫌だから、
太ももをつねったりして何とか睡魔と闘っているんです(笑)。
ホントは面白ければ睡魔なんて襲ってこないはずなんですけどね…(^_^;)。
さ、今週は3本です!


「ウィッチマウンテン―地図から消された山―」は、ディズニーのSFサスペンス。

ある日、タクシードライバーのジャックが乗せた男の子と女の子。
ふたりの名前はセスとセラ。
長距離をタクシーで移動するには幼な過ぎるふたりに
ジャックはいろいろと質問をぶつけるんですが、どうも様子がおかしい。
すると武装した車数台がこのタクシーを追いかけてくるではありませんか。
それを特殊な能力でやり過ごすセスとセラ。
聞けば彼らは大切なミッションを課せられていて、それを遂行しに来たと。
そのミッションとは、ある場所にある“記憶装置”を手に入れ、
それを国家最高機密として合衆国が地図から消した山“ウィッチマウンテン”に
持って行くことだったのです。
“ウィッチマウンテン”、そこは宇宙の秘密が潜む場所だと言うのです…。

一言で言うなら、「映画館でディズニーアトラクション!」(笑)。
アメリカに数多くあるUFOの目撃談や、宇宙人の捕獲情報など、
そのあたりをチラシのPR素材に使ってるから、
さぞかしディズニーが掘り下げて謎解きに成功したんだろうなと
期待して行ってしまったのがいけなかったかも(笑)。
ま、そんな訳です(笑)。割り切って行けば楽しいかも?☆2つ。
「ウィッチマウンテン―地図から消された山―」公式サイト


「MW(ムウ)」は、手塚治虫原作コミックの映画化。

16年前に、島の住民がひとり残さず虐殺されるという事件が起こりました。
その島は沖之真船島。
政府によって闇に葬り去られたこの事件でしたが、
実は奇跡的にふたりの男の子が生き延びていたのです。
今は神父になった賀来と、エリート銀行マンになった結城。
生活こそ違えど、ふたりは深い絆で結ばれていました。
結城にはもうひとつの顔がありました。それは冷酷なスナイパー。
事件の後遺症に悩まされ、余命いくばくも無いと自らの運命をしる結城は、
事件に関わった人間を次々殺害。
“モンスター”と化して、復讐を進めていたのです。
しかしこの事件の根本は何なのか。なぜ島民は皆殺しにされなければならなかったのか。
それを知るためのキーワード。それが「MW」だったのです…。

「ブラック・ジャック」に象徴されるように、
手塚漫画には人間の中に対極としてある“正義と悪”が描かれます。
「MW」では、神父とスナイパー。“許し”なのか“復讐”なのか。
それを漫画なら読み手に、映画なら観客に投げ掛けてジャッジを委ねる。
その時々の社会の在り様も鑑みての判断ですから、深い考察が必要となって来るのです。
と、そこまで肩に力を入れて見なくても大丈夫。
玉木宏、山田孝之といった人気俳優を起用したことで、
エンターテイメントとしても十分見られる1本ですから。
逆にお堅いキャスティングにしたらどんな映画になったんだろうとも考えてしまいました。
☆3つ。
「MW(ムウ)」公式サイト


「私は猫ストーカー」は、ほんわかムービー。

イラストレーターの卵で、古本屋さんでバイトをしているハル。
ハルは猫が大好き。
バイトが終わるとお寺の境内に集まる猫を眺め、町を歩けばカメラでパシャリ。
そんなのんびりとしたハルの日常に変化が起ります。
バイト先のご主人の元に、昔の恋人に送った詩集が巡り巡って戻って来る。
それを知った奥さんがイライラし始め、飼い猫のチビトムに当たり出す。
チビトムはたまらず家出。取り乱した奥さんも家出してしまうんですね。
同じ頃、ハルの元彼の健吾からハルの部屋にリンゴが届きます。
同封の手紙には結婚の報告が。心穏やかではないハル。
さらにハルはお客さんの鈴木さんにつきまとわれ。
ハルの大好きな穏やかな時間は戻って来るのでしょうか…。

起承転結、大きな物語性やオチがあるというタイプではなく、
多少の波乱はあれども、全体的にはほんわかとした空気が流れている映画です。

猫には誰も知らない時間があって、追いかけても追いかけてもわからない。
それは人間の恋人同士にもきっとあるはず。
いずれは猫も人もいなくなる。どんなに愛していても、触れ合える時間ってホンのわずかなんだ。
そんな考えが根底には流れているようです。
自分にとっての“猫”は何なのか。
忙しさに追われる日々を送っているあなた、考えてみるといいかもしれませんョ。☆3つ。
「私は猫ストーカー)」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.6.24

「群青」☆☆☆
「それでも恋するバルセロナ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ムシムシした梅雨の時期。映画館はいいですョ。雨宿り、夕涼み…。
そこで感動をもらえればなおのことでしょう。
気になる作品を見つけたら積極的に足踏み入れてみて下さいねっ。
さ、今週は2本です!


「群青」は、長澤まさみ主演作。

沖縄の離島、南風原島。
今から20年前、世界的女性ピアニストが療養のためにこの島にやって来て、
ひとりの漁師と出会い、恋に落ちました。
漁師は命を懸けて取って来たサンゴをプレゼント。
ふたりは結婚し、可愛い女の子を授かるのですが、
病魔に侵されていたピアニストはこの世を去ってしまいます。
20年後、美しく成長した娘、涼子。
しかし彼女は今、精神のバランスを崩し、過去の思い出にしか生きられずにいます。
その思い出とは、2人いる幼なじみの男の子のひとり、一也のことでした。
涼子に恋心を打ち明けたものの、涼子の父に「まだ早い」と結婚を反対され、
ならばと涼子の父の真似をしてサンゴを取りに海に向かい、帰らぬ人となってしまったのです。
島を離れ、1年振りに帰って来たもうひとりの幼なじみの大介は、
何とか涼子の力になれないかと重大な決意をするのです…。

実は大介もずっと涼子のことが好きだったんですね。
でも身を引かなくてはならない“三角関係”。複雑な思いで島に戻って来たのです。
涼子の父も含め、登場人物みんなが抱える心の痛み。
それを人の優しさが、自然のおおらかさがどのように癒していくのかというのがテーマのような。
だから内面を覗き込む映画かもしれません。明快な答えが無い分、食い足りなさはあるかなぁ。
でもそれもまた作風というか、映画のあり方ですからね。☆3つ。
「群青」公式サイト


「それでも恋するバルセロナ」は、ウディ・アレン監督、脚本作品。

ヴィッキーとクリスティーナは学生時代からの大親友。それでもふたりの恋愛観は正反対。
ヴィッキーは誠実で安定した恋愛を求め、クリスティーナは情熱的で危険な恋を求める。
そんなふたりがアメリカからスペインのバルセロナにバカンスでやって来ていたのです。
画廊のパーティで出会ったのが野性的な匂いのする画家のアントニオ。
噂によると、彼は妻と別れたばかり。それも刺した刺されたのドロ沼離婚だったとか。
あきれ顔のヴィッキーに対し、クリスティーナは興味しんしん。
そんな3人が深夜のレストランで偶然にも再会するんですね。
アントニオはふたりをリゾート地に誘います。断るヴィッキー、乗り気のクリスティーナ。
結局クリスティーナに押され、ヴィッキーもお目付け役として同行することになったのです。
夜になってアントニオの部屋を訪れたクリスティーナ。
いざその時になってクリスティーナの具合が悪くなってしまいます。
そのまま寝込んでしまうクリスティーナ。
翌日仕方なく、アントニオと行動を共にするヴィッキーでしたが、
次第にアントニオに魅かれていってしまいます。
お酒とスパニッシュギターの効果もあってか、アントニオと関係を持ってしまうヴィッキー。
実はヴィッキーには真面目な婚約者のダグがいたのです。
そこに体調の戻ったクリスティーナがアントニオに再びの猛アタック。
さらにそこへ別れたはずの元妻が現れて、不思議な“四角関係”が出来上がります。
異国の地での、この恋の行方やいかに…。

ウディ・アレンの脚本ですから、人間関係や舞台設定はうまいですよね。
グチャグチャとしそうなものをわかりやすく見せる。
たぶん女性が好きなタイプの映画だと思います。
男性には2通りの見方があって、プレイボーイのアントニオ目線か、
ヴィッキーの婚約者のダグ目線か。
ボクはどちらかというとダグ目線。最愛の人に知らない土地で浮気されてるなんて、ねぇ(笑)。
でもこの映画を見ることで、バーチャルで開放的な恋愛気分を堪能し、
溜まったものが解消されるならそれもありかなと。
男性も“アントニオ願望”はあるでしょうから(笑)。
美味しいドレッシングじゃないけど、混ざらないはずのものを混ぜてるうちにいい味になるような映画。
ストーリーとしてはすごくよく出来てます。☆4つ。
「それでも恋するバルセロナ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.6.18

「いけちゃんとぼく」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

1月に『ザ・ムーン』という映画を高い評価でご紹介しました。
アポロ計画で月に向かった宇宙飛行士たちを描いたドキュメンタリー作品。
今度は同じBBC制作の「宇宙(そら)へ」という映画が8月に公開予定だそうです。
また、アスミックエースの試写室の壁に、
「HOME」というタイトルで地球が大写しになったポスターが貼られてました。
地球が奇跡の星であることに気付いたかのように、
ここに来て続々と“主役・地球”の映画が公開となります。
環境問題に警鐘を鳴らす意味でも、すごくいいことだと思いませんか?
さ、今週は1本です!


「いけちゃんとぼく」は、漫画家・西原理恵子作の絵本の映画化。
9歳の男の子、ヨシオ。ヨシオにはヨシオにしか見えない不思議な友達がいました。
いけちゃんです。
いけちゃんはいつもヨシオの近くにいてヨシオのことを見守ってくれていました。
お父さんが死んだ時も、ガキ大将のヤスとたけしにいじめられた時も、
夜怖くて眠れない時も、いつもそばにいてくれました。
でもそんないけちゃんがヨシオに言うのです。
「いつまでもいけちゃんはそばにいられないから。
ともだちを見つけて、早く、ゆっくり大人になってね」。
様々な経験を積んで成長していくヨシオに、遂に別れを告げる時が来たと悟るいけちゃん。
「私が本当は誰なのかを話したい」。 いけちゃんが語る本当の正体とは…。

原作が『絶対泣ける本第一位』との肩書きを聞いて、期待し過ぎちゃったかなぁ(笑)。
いけちゃんは色の付いた“ひとだま”みたい。スライムのようなぷよぷよした生き物。
CGでの登場ですが、それにはまったく違和感がなく。
ただ、西原さんって残酷な描写も売りじゃないですか。
この映画に関してはそんな“プチ暴力”や“プチ虐待”がちょっと許せなかったかな。
子供向けというよりは大人の読む絵本だろうけど、
そのあたりがどうにも引っ掛かっちゃって。
でもそんな西原ワールドがたまらないんだという人は劇場でチェックしてみて下さいね。
☆2つ。
「いけちゃんとぼく」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.6.13

「精神」☆☆☆☆
「ターミネーター4」☆☆☆
「真夏のオリオン」☆☆☆
「マン・オン・ワイヤー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週紹介する「精神」の想田和弘監督の長編ドキュメンタリー第一弾
「選挙」が7月4日からライズXで復活ロードショーになります。
ちなみに監督自身はドキュメンタリーとは言わず、“観察映画”と言ってますが。
昔、当欄でも紹介したけれど、本当に面白い作品です。
日本の政治、特に選挙は本末転倒というか、
向いてるベクトルがあさっての方向じゃない?というのがわかると思います。
ボクは絶対に選挙になんか出馬しないって、あれ見て思いましたから(笑)。
総選挙も近そうだし、有権者のみなさん、見ておいた方がいいですョ。
さ、今週は4本です!


「精神」は、その想田和弘監督の“観察映画”第二弾。
岡山県にある外来の精神科クリニック「こらーる岡山」。
この映画はそこに通う心に病を持つ患者さんと、医者、スタッフ、ボランティア、
患者さんのための作業所などを“観察”した作品。
印象的だったのは医師である山本先生の患者さんへの接し方。
診察の際に、とにかく「で、あなたはどう思うんだい」と尋ねるんですね。
こうしたらいいというアドバイスは根気強く患者さんの言葉を聞き終えた後で、
最後の最後に先生の口をつきます。
さらに同業の看護士さんたちへの講義で先生は言います。
「何も質問せずに、四角の上にバランスよく丸を3つ書いて下さい」と。
そして、「周りの人と比べてみて下さい」と続けます。
すると、四角の上辺に丸を3つ、塔のように重ねてる人もいれば、
四角の中に丸を3つ入れて書いている人もいる。その絵は実に様々。
山本先生曰く、「これがワンウェイコミュニケーションなんです」。
確かに。
思いを伝えたつもりでも伝わっていないことってたくさんあるんですよね。
何だか思い知らされました。
何よりショックなのはエンドロール。一瞬「えっ」と絶句するはずです。
本当は☆なんて付けられないのだけれど…。☆4つ。
「精神」公式サイト


「ターミネーター4」は、人気シリーズの第4弾。
世界最大の軍事企業、サイバーダイン社が開発した
人工知能搭載のスーパーコンピュータ“スカイネット”。
そのスカイネットが自我に目覚め、人類を敵とみなして核戦争を仕掛けます。
時は2018年。世界は核のために荒れ果てていたのです。
生き残った人々は抵抗軍を組織。
スカイネットが送り込むターミネーターと戦いながらなんとか生き延びていました。
抵抗軍のリーダー、ジョン・コーナーはスカイネットの機能を停止させる秘密のシグナルを入手。
これで戦えば戦争は終結するのですが、その期限はわずかに4日。
なぜなら、スカイネットは4日後に抵抗軍の重要人物をすべて抹殺する計画を立てていたから。
そのリストの2番目にジョンが、トップにはカイル・リースの名前があったのです。
カイル・リース。のちにタイムスリップしてジョンの母と恋に落ち、ジョンの父になる男。
カイルが死んだらジョンは生まれてこなくなる。
スカイネットとの戦いは自分自身の存在を懸けた戦いだったのです…。

で、実はここにまたひとりの男が絡んできます。マーカス・ライト。
若きカイルと行動を共にするのですが、このマーカスの正体とは?
さすがに人気のシリーズだけあってよくできてました。
試写室ではなく、劇場で試写を見た仲良しのラジオのディレクターは、
「音にビックリ!いやぁすごい迫力!」と大興奮(笑)。
あなたも劇場で是非どうぞ。☆3つ。
「ターミネーター4」公式サイト


「真夏のオリオン」は、篠原哲雄監督による潜水艦映画。
倉本いずみの元にアメリカから一通の手紙が届きます。
「あの夏、私の祖父が何を失い、何を手にしたのか。それを知りたくて手紙を書いています」。
差出人の祖父はアメリカ海軍の駆逐艦の艦長として、第二次世界大戦で日本と戦っていたそう。
同封されていたのは、古びた手書きの楽譜で、
そこには“真夏のオリオン”という曲名と共にいずみの祖母、志津子のサインがあったのです。
いずみの祖父、倉本孝行も潜水艦の艦長。
当時の祖父を知る唯一の存命者、鈴木勝海を訪ねるいずみに、
鈴木は当時を振り返り、静かに話し始めるのでした。
艦長の倉本と、作戦でこの艦に乗り込んで来た有沢は海軍兵学校からの親友。
有沢の妹、志津子は愛する倉本のために“真夏のオリオン”という曲を書いて、
御守りとして手渡したのでした。
冬の星座のオリオン座がこの季節に見えるのは、夜明け前のほんのわずかな時間だけ。
夏のオリオン座は吉兆とされており、志津子はそんな思いをこの楽譜にしたためたのでした。
劣勢の日本軍。緊迫の度合いを増す沖縄南東海域。
日米両海軍の2隻の戦いが、静かに幕を開けたのです…。

監督はボクも出ている「月とキャベツ」や、「山桜」でおなじみの篠原哲雄。
監修は「亡国のイージス」、「ローレライ」で知られる福井晴敏。
福井氏は言います。4年前の「ローレライ」は、未来に希望を託し、
自ら進んで捨て石になっていった人たちの姿を描くことで、
バブル崩壊後の日本人に生きる意義を見出してもらいたかったと。
そして今回は、国どころか世界中が、また人類全体が危機に瀕していると。
そんな時代に困難を生き抜く勇気や心の在り方を考えてもらいたいと。
潜水艦の戦いは静かです。音も無く忍び寄ってくる様は、まるでウイルスや景気悪化の波のよう。
09年を生きるボクらにとって、果たして何が“真夏のオリオン”なのか。
この映画を見て考えてみて下さい。☆3つ。
「真夏のオリオン」公式サイト


「マン・オン・ワイヤー」は、綱渡りに人生を懸けた大道芸人の物語。
1974年8月7日、早朝。
NYのワールド・トレーディング・センターのツインタワーを綱渡りで渡ろうとする男がいました。
彼の名はフィリップ・プティ。フランス人の大道芸人です。
地上110階の建物の屋上から屋上へ綱渡り。それも命綱なしですから尋常ではありません。
この映画は、そんな彼の人生を追ったドキュメンタリーなんです。
今年のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。よく当時の映像を撮ってましたねぇ。
「チャレンジ精神を忘れない」、「夢を持つのは大切なこと」。
そりゃわかるけど、なぜ綱渡りなの?それもそんなに高いところで。
凡人のボクにはあまりよくわからなかったけど(笑)、でも正直興味ありません?
見てみて下さい。☆3つ。
「マン・オン・ワイヤー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.6.5

「アルマズ・プロジェクト」☆☆☆
「ザ・スピリット」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写会場の空調調整が難しい季節。
この前も開映時間になり、スタッフの説明があったあと、
部屋を出ようとしたスタッフにひとりの男性が「ちょっと暑いから冷房下げて」と。
暑がりのボクでさえそうは感じなかったくらいなのに。
案の定、しばらくしたら寒い、寒い。
ボクは耐えられるけど、女性にはかなりキツかったと思いますョ。
数人に聞いてみるとか、スタッフの機転はこんなところにも必要なんだなと思いました。
さ、今週は2本です!


「アルマズ・プロジェクト」は、ロシアの宇宙ステーション事故の物語。
ソビエト連邦時代に開発された軍事目的の宇宙ステーション“アルマズ”。
1998年11月、そのアルマズ号が突如レーダーから消え、
その4日後に地球の大気圏に突入して爆発しました。
ロシアは事故原因を含む、すべての噂を否定。残骸の回収に努めます。
しかし、懸命の捜索にも関わらず、ロシアはブラックボックスの回収に失敗。
それもそのはず。実はウクライナの過激派グループが
ロシア政府より先にこのブラックボックスを手に入れていたのです。
そして今、いよいよその映像が白日の元に晒されることになったのです…。

もらった資料だけを見てるとドキュメンタリーのような?
“ブラックボックスの映像を編集”とあるのですが、ホントかなぁ(笑)。
配給会社の担当氏に電話で聞いたところ、答えは…。ナイショです(笑)。☆3つ。
「アルマズ・プロジェクト」公式サイト


「ザ・スピリット」は、フランク・ミラー監督最新作。
黒いハットに、黒いアイ・マスク、赤いマフラーをなびかせて颯爽と街を行く男、スピリット。
彼の暮らすサン・シティで、何か事件が起これば必ずスピリットが駆け付けてくる。
スピリットは不死身の男。撃たれようが、刺されようが、
痛みは感じながらも、彼は絶対に死なないんですね。
スピリットの正体は殉職した刑事のデニー。でもなぜ蘇ったのかは彼自身にもわかりませんでした。
ある夜のこと、街のならず者のオクトパスが闇の取り引きを行なうと情報が入ります。
現場に駆け付けたスピリット。いつものように死闘を繰り広げるスピリットとオクトパス。
この日はオクトパスに軍配が上がり、スピリットが気を失っている間に、
近くではふたりの女性がふたつの箱を奪い合っていました。
結局奪った箱はひとつずつ。ひとつはオクトパスの部下のシルケンの元に。
もうひとつは有名な宝石泥棒のサンド・サレフの元に。
実はこのサンド・サレフ、スピリットの初恋の相手だったんですね。
「二度とこの街には戻らない」とサン・シティを出たサンドだったのに、
いったいなぜ舞い戻って来たのか?箱の中身は何なのか?
きな臭い匂いが、サン・シティを覆い始めていたのでした…。

フランク・ミラーといえば、「シン・シティ」や「300」で独自の世界観を見せた監督。
赤と黒の独特の色彩で、スクリーンを個性的に彩ります。
フランク・ミラーの作品は“グラフィック・ノベル”と呼ばれているんですが、
もうのっけから非日常というか、資格効果で映画の世界にアッと言う間に引き込まれてしまうんですね。
劇場の暗さとスクリーンのトーンがリンクします。
まるでサン・シティの住人になった気分でどっぷり浸かって見ると面白いと思いますョ。☆3つ。
「ザ・スピリット」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.5.29

「お買いもの中毒な私!」☆☆☆
「スター・トレック」☆☆☆
「ROOKIES-卒業-」☆☆☆
「路上のソリスト」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

あるドキュメンタリー映画のワンシーン。
講義をする先生が受講生たちに言います。
「何も質問せずに、今から私の言うものを書いて下さい。
四角の上にバランス良く、丸を3つ書いて下さい」。
そして「周りの人と見比べて下さい」と。
するとみんな違う絵を書くんですね。
四角の上辺に塔のように丸を3つ重ねて書く人。上辺に丸を横に並べて書く人。
四角の中に丸を3つ入れる人。いろんな人がいます。
「これがワンウェイ・コミュニケーションなんです」。
伝え手の思いがそのまま伝わるとは限らない。
しゃべり手のボクにとって、改めて思い知らされた大切なことでした。
映画ってこうして勉強もさせてくれるんですョ。
さ、今週は4本です!


「お買いもの中毒な私!」は、ディズニーのロマンチック・コメディー。
レベッカ・ブルームウッド、25歳。一流ファッション誌の記者を夢見るNY在住の女性。
ところが彼女が勤めるのは地味な園芸雑誌の編集部。
夢とはかけ離れた現実にストレスは溜まる一方。
そのストレス解消法がお買い物だったのです。
ストレス解消法とは言っても彼女の場合はちょっぴり度が過ぎていて、
何枚も作ったカードがすべて限度額オーバーに。
これじゃダメだと心機一転。ファッション誌の記者を目指して転職を計るのですが、
拾ってくれたのはまったく畑違いの経済誌。
ところが、「消費者の気持ちがよくわかってる」とコラムが大人気に。
果たしてレベッカは、人生を変えることができるのでしょうか…。

すごく極端なキャラ設定で、大事な約束もショッピングで飛ばしちゃう。
嘘までついて言い訳しているレベッカに、正直どうしても感情移入ができませんでした。
少し前からこういうのが多いですよね。許容範囲のレッドゾーンっていうのがあって、
それを超えちゃうとどうぞご勝手にってなっちゃうのはボクだけでしょうか?
たくさんのブランドが協力し、プロデューサーも「パイレーツ・オブ・カリビアン」の
ジェリー・ブラッカイマー。なんか惜しいです。☆3つ。
「お買いもの中毒な私!」公式サイト


「スター・トレック」は、SFサスペンス・アクション。
宇宙船USSケルヴィンが、突然現われた大型艦に襲われます。
キャプテンのジェームズ・T・カークはクルーたちを救うため、
宇宙船と共に宇宙に散っていったのです。
助かった人々の中にはカークの妻も、脱出の小型艇の中で生まれた息子もいました。
22年後、父の名を受け継ぎ、成長したカークは、自分の進むべき道に悩んでいました。
荒れた生活で人との衝突を繰り返す中、
父の最期を知っているという惑星連邦艦隊のパイクと出会います。
「父を超える男になってみろ」。
その言葉に、カークは将来を懸けてみようと決意したのです…。

時空を飛び交うSFものですが、そう難解でもなく楽しんで見ることができました。
これまでのシリーズとは一線を画した“新たな”作品とのこと。
前シリーズの登場人物たちが、かなり個性的でキャラ立ちしてましたからね。
“トレッキー”と呼ばれる「スター・トレック」ファンがどう評価するかがカギでしょう。
こちらのカークの最初のイメージは、悪ぶってても意外と優等生?
SFというより宇宙が舞台の熱血青春モノっぽくもありました(笑)。
気になるという人は是非見比べてみて下さいねっ。☆3つ。
「スター・トレック」公式サイト


「ROOKIES-卒業-」は、TBSの人気TVドラマの映画化。
二子玉川学園高校、通称“ニコガク”の野球部は、夏の甲子園予選の最中に不祥事を起こし活動停止中。
部員の生活も荒れまくり、野球への情熱も冷めかけていた時、熱血教師の川藤がやってきます。
次第に心動かされ始める部員たち。しかし、川藤が過去に起こした暴力事件が新聞に取り沙汰され、
川藤は学校を去ることになってしまったのです。
と、ここまでがTVでのお話。映画は野球部の面々が3年生になったところから始ります。
川藤もニコガクに復職し、新入部員も2名入部。
そこまでは良かったのですが、この新入部員が一筋縄ではいかない。
ひとりは中学野球界期待の赤星。
もうひとりは勘違いから唯一の補欠である平塚をヒーローとあがめる濱中。
メジャーを目指すという赤星は試合には出るけど練習はしないと言い、濱中は平塚の真の姿に怒り心頭。
新生ニコガク野球部は苦難の船出となりました。
そんなある日のこと、赤星が不良に絡まれているところにキャプテンの御子柴が通り掛かるんですね。
赤星を助けた御子柴でしたが、足を骨折。その代償は大きなものとなってしまいます。
予選に間に合わない。
みんなの前じゃ気丈に振る舞いながらも、
ひとりの病室では涙をこらえ切れないキャプテンの姿に赤星の心も変わっていきました。
「御子柴を絶対甲子園に連れていこう!」。
こうしてチーム一丸となったニコガク野球部はいよいよ夏の予選大会を迎えたのでした…。

ボクはTVシリーズを見ていないのですが、それでも十分に楽しめました。
ただ、キャラクターひとりひとりにファンがいるだろうから、
そのバランスを考えてか感動のシーンのオンパレード。ちょっとお腹いっぱいになっちゃったかな。
それでもサブタイトルが“卒業”ですから、最後は感涙のシーンが待ってます。
あそこは台本に台詞が無く、全員アドリブだったそう。
TVでファンになった人は号泣必至。ハンカチを忘れずに!☆3つ。
「ROOKIES-卒業-」公式サイト


「路上のソリスト」は、LAタイムズのスティーヴ・ロペスが書いた人気コラムの映画化。
実話に基づくストーリーです。
LAタイムズ記者のロペスは、公園でとてつもなく美しいヴァイオリンの音色を耳にします。
その音を頼りに近付いていくと、
みすぼらしい身なりの黒人男性が2弦しかないヴァイオリンを弾いていたのです。
名前を尋ねると、ナサニエル・エアーズと名乗ります。
ベートーベンを愛し、ジュリアード音楽院にいたというのです。
名門音楽大学の卒業生が、どうして路上生活者になったのか?
記者としての好奇心をくすぐられたロペスがいろいろと質問をするのですが、なかなか的を射ません。
独自に調べたところ、確かにジュリアード音楽院に在籍していたのですが、
卒業ではなく退学していたんですね。
その理由は統合失調症。
「弦2本で世界を奏でるヴァイオリン弾き。あと2本弦が欲しいと彼は答えた」。
ロペスのコラムに読者のひとりからチェロが届きます。それをナサニエルに届けるロペス。
「高価なものだから、支援センターで寝泊まりしたらいい」。
路上生活からの脱却を勧めるロペスでしたが、ナサニエルは頑として首を縦には振らなかったのです…。

幸せの定義について考えさせられる1本。
幸せって不幸と同じで、他人と比べるものじゃないんですよね。
自分がどう感じるか。そこなんですよね。
だからと言って、自分勝手に振る舞っていいっていうことじゃないんですよ。
動物と違って、人間には理性というものがある。
規制があるから自由があり、自由があるから幸せがある。
何より打ち込むものを持っているってすごくいいなと感じました。
仕事一本で頑張って来たお父さんが、
定年後に趣味もなく、人生に行き詰まることもしばしばだと聞きます。
ナサニエルには音楽がある。ある意味、幸せだと思いましたが、あなたはどう感じるでしょう?
不幸だなぁと溜め息を付く毎日だとしたら、
ナサニエルの生き方が、何かヒントをくれるかもしれません。☆3つ。
「路上のソリスト」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.5.20

「重力ピエロ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

息を切らして試写の会場に。
「えっ、違う?あっ、本当だ…」。
違う作品で、見たい試写は別の会場でした。はぁ…。
以前もありましたが、本当にガッカリ。
それでもこの日はくじけずに、正規の会場に急いだのでした。
「間に合ったぁ〜」。
諦めないって大切ですね(笑)。
さ、今週は1本です!

「重力ピエロ」は、伊坂幸太郎の同名小説の映画化。
泉水と春は2つ違いの兄弟。泉水は大学院で遺伝子の研究を、
春は街の落書きを消すアルバイトをしていました。
学者肌で物静かな泉水と、高校時代からクールな正義感を持つ春。
性格こそ違えど、ふたりは仲の良い兄弟でした。
彼らの住む仙台では連続放火事件が起こっており、自分が消した落書きの近くで事件は起こる。
春は泉水に現場の落書きの写真を見せ、そこに写っている文字が放火犯からのメッセージだと、
その謎を解き明かそうとするんですね。
そしてわかったのはグラフィティアートが遺伝子配列になっているということ。
放火と遺伝子に一体何の関係が?
ふたりは手分けして張り込みを始めます。
実は泉水と春の家族には忌わしい過去がありました。
24年前に起きた連続暴行事件。その被害にあったのが母・梨江子だったのです。
その結果、望まない妊娠をしてしまった母に、父・正志は言います。
「お腹の子は俺の子だ。俺の次男で、泉水の弟。俺たちは最強の家族だ」。
そんな母もこの世を去りました。そしてその犯人が刑期を終え、この街に戻って来ていたのです。
さらに父は病院でガンが判明。
泉水と春の静かだった生活は一変の様相を見せ始めたのでした…。

原作者の伊坂さんの、「あらすじだけ抜き出せば、とてもシンプルで何てことのない話」
という言葉にあるように、ストーリーだけ聞けば確かにそうかもしれません。
ところが不思議なトーンというか、独特の空気感が映画全体を覆っているんですね。
「描きたかったのは低温のロックンロール」と伊坂さんが語るように、
映画化は難しいだろうと言われたこの小説の温度までをも見事にスクリーンに描き出しているのです。
テーマは“家族”。
家族ってなんだろう?絆ってどういうこと?見終わって感じることはたくさんあると思います。
「それでもボクらは家族なんだ」。
登場人物の心の奥の奥を想像しながら見ると楽しめる作品だと思います。☆3つ。
「重力ピエロ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.5.14

「17アゲイン」☆☆☆☆
「天使と悪魔」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ある試写会で。
先輩がダメな後輩に説教をするシーンで、後ろのおじさんが「そうだっ」と声を出すんです。
別の場面でも声が何度も聞こえてくる(笑)。
笑い声と同じと考えれば「静かにして下さい」とは言えないですからねぇ。
ハズレの席に座っちゃったなと諦めるしかありません。
ま、ボクも腹の中では「そうだ、そうだ」と思ってたんですけどね(笑)。
さ、今週は2本です!

「17アゲイン」は、青春コメディー。
今から20年前の1989年。マイク・オドネルは17歳。
高校のバスケ部のスター選手として学校中の人気を集めていました。
その日は大学のスカウトがやってくる日。
コートに立った自信満々のマイクを、涙目で見つめる女の子がひとり。恋人のスカーレットです。
「どうしたの?」と聞いても、
「大事な試合の前だから」と答えません。問いただすと、なんと妊娠したと言うではありませんか。
動揺を隠せないマイク。試合開始を告げるホイッスルが鳴りますが、
マイクはボールを投げ捨てスカーレットの元へ。
「結婚しよう!」。
ふたりはこうして結ばれたのでした。
あれから20年。37歳のマイクは中年太りのただのオジサンになっていました。
それどころか、あの日、スポーツエリートへの道を捨てたことを後悔してばかり。
そんなネガティブなヤツに神様が微笑むはずもなく。
スカーレットとは離婚調停中。会社でも後輩に抜かれる万年ヒラ社員。
昔の栄光を思い出そうと立ち寄った母校で、マイクは不思議な老人と出会います。
「あの頃に戻りたいかね?」。
「そりゃこんな人生やり直せるならやり直したいさ」と答えると、あら不思議。
マイクの体は17歳のマイクに戻っていたのでした…。

17歳に戻ったのは体だけ。頭は37歳のオジサンゆえ、
高校に編入するのですが、説教臭い時代遅れの変な存在になる。
ところがその正義感が妙に新鮮に映って、徐々にマイクは人気者になって行くんですね。
実はマイクの娘マギーや、息子のアレックスもその高校に通っていて、マイクはアレックスと仲良くなり、
アレックスの家、つまりは昔の自分の家に頻繁に遊びに行くようになります。
妻のデートを止められないもどかしさや、改めて感じる子供たちへの愛情。
2度目の17歳を生きていると、またあの時と同じような選択を迫られるのです。
果たしてマイクの取る行動は?というお話。
最初は愚痴だらけであまりにダメ男ぶりに、ほっときゃいいじゃんって思ってたのが、
物語が進むに連れ、なんか応援しちゃうんですよねぇ。
夫の昔に瓜二つだから、スカーレットもビックリ。でも「息子の友達」と自分に言い聞かせるスカーレット。
でもそこは壊れ掛けてはいてもやっぱり夫婦。気付くのですよ。
その気付くきっかけにちょっと感動!
これまでに二人が築いて来た、二人にしかわからない歴史って言うのかな。
大切なのはそこでしょと信じていながら結婚生活が壊れたボクにとっては、ツボ過ぎるくらいツボ(笑)。
思わず満点を付けそうになりました。
17歳のマイクには「ハイスクール・ミュージカル」のザック・エフロン。
なるほどのイケメンです。☆4つ。
「17アゲイン」公式サイト


「天使と悪魔」は、トム・ハンクス主演の話題作。
ローマ教皇が亡くなり、ヴァチカンでは新しい教皇選びの選挙
“コンクラーベ”が行われることになりました。
新教皇の有力候補は4名。
彼らはプレフェリーティと呼ばれるのですが、その4名が次々誘拐され、脅迫状が届きます。
1時間毎にプレフェリーティを殺し、最後はヴァチカンに仕掛けた爆弾を爆発させるというのです。
犯人は18世紀には解散したとされる思想家集団イルミナティ。
世界をコントロールできるほどの実力者たちが集まっていると
密かに噂されているイルミナティには、その昔、あのガリレオも名を連ねていたとか。
つまり、神を否定する存在が“科学”であり、
それを研究する科学者たちは神を冒涜する不届き者として弾圧を受けていたのです。
数百年の時を経て、今イルミナティがヴァチカンに復讐に出たのです。
この危機に助けを求められたのが宗教学の権威であるラングドン教授。
果たして教授はプレフェリーティたちを、そしてヴァチカン市民を救うことができるのでしょうか…。

大ヒット作「ダ・ヴィンチ・コード」の続編。
前回はダ・ヴィンチの謎を解き明かし、
キリストの秘密を暴いてヴァチカンを敵に回したラングドン教授が、
今度はガリレオの謎を解いてヴァチカンを救うという図式です。
前作を見てなくても十分楽しめますが、
ある程度のヴァチカンの知識みたいなものを頭に入れていった方がいいと思います。
コンクラーベの間はカメルレンゴと呼ばれる侍従がヴァチカン市国の長になること。
イルミナティは神の代わりに土、空気、火、水の自然界の4大元素を崇拝してること。
仕掛けられた爆弾が、世界最大の科学研究所“セルン”で、
宇宙誕生のきっかけとなるビッグバンを再現しようとしてできた
“反物質”から作られた爆弾であること、などなど。
原作を読む、またはパンフレットを買うことをお勧めします。
神と人間、宗教と科学。その互いのギリギリの領域でのせめぎ合いが、このシリーズの魅力。
つまり、タブーの一歩手前、もしくはちょっと入っちゃった感みたいなのが面白い。
何度も見ないとわからないほど難解な仕掛けじゃないのもうまいなぁと思います。
そこを食い足りないとする向きもあるのかもしれないけど。
もちろん何度も見るとより細密で深遠な魅力に触れられるんでしょうね。
よくできてました。☆4つ。
「天使と悪魔」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.5.8

「バンコック・デンジャラス」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

話題の映画「天使と悪魔」の試写に行ってきました。
盗撮を防ぐため、受付で携帯電話を預けさせられたのですが、
今はそこまでしなくちゃならないくらいにルール違反が横行してるということ。
試写状がそういう輩の元に届くこと自体が不思議でならないのですが。ホントに困ったものです。
さぁ今週は1本です!

「バンコック・デンジャラス」は、ニコラス・ケイジ主演作。
ジョーは100%の成功率を誇る暗殺者。世界中を飛び回ってきたジョーでしたが、
これが最後の仕事と心に決め、4件の暗殺をこなすためにバンコックを訪れていました。
手始めにジョーがするのは、地元の使い走りを見つけること。
金で動き、仕事が終わればなんの感情もなく証拠と共に消せる人間をチョイス。
この街でもスリを生業とするチンピラのコンを誘います。
淡々と一人、また一人と消して行くジョー。
しかし不覚にも怪我をしてしまい、
駆け込んだ薬局で働く口の不自由な女性に恋心を抱いてしまうんですね。
デキの悪いコンにも何故か初めて弟子のような思いを持ってしまうジョー。
そう、何かが変わり始めていたのです。
そして最後の暗殺。ところがこれがポリシーに反する政治的暗殺でした。
でもこの引き金を引けばすべての呪縛から解放される。
そんなわずかな迷いがジョーの精密な仕事を狂わせたのでした…。

監督は香港のオキサイドとダニーのパン兄弟。99年の「レイン」の監督です。
今作は10年経ってのセルフリメイク。
いろいろと設定は変わっていますが、一貫しているのは“無口な暗殺者”。
全米初登場No1に輝いたそうですが、見る前に、
ニコラス・ケイジの演技や表情が完全に想像できちゃうのがどうでしょう。
独特の暗さは、暗殺者という裏社会に生きる男を描くトーンとして必然なんだろうけど、
救いの無さに気持ちが重くなってしまいました。
この原稿を書いている今日が“雨”だからかも(笑)。
あえて辛口の評価で☆2つ。
「バンコック・デンジャラス」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.4.30

「ビバリーヒルズ・チワワ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GWですね。劇場に映画を観に行く人もきっと多いはず。
何を観ようか迷ってるというあなた、
このコラムを少しさかのぼって、参考になさってはいかがですか?
単館ものなどにもいい作品はありますョ。
さ、今週は1本です!

「ビバリーヒルズ・チワワ」はディズニー映画。
ビバリーヒルズの大豪邸に住む、チワワのクロエ。飼い主は大手化粧品会社の女社長ヴィヴ。
ヴィヴにとってクロエは娘のような存在。
ヴァレンチノ風のドレスを着せ、首にはハリーウインストンのダイヤの首輪、
香水はシャネルの5番、移動はヴィトンのバッグの中。
そう、クロエは超セレブ犬だったのです。
ある日のこと、ヴィヴが突然の出張でしばらく家を空けることになりました。
クロエの世話を頼まれたのはヴィヴの姪のレイチェル。
ところがクロエには不安がいっぱい!
なぜならレイチェルはすごくルーズなセレブギャルだったから。
案の定、レイチェルはヴィヴに内緒で友達とメキシコへ。
もちろんクロエも連れてはいったのですが、クロエの世話などそっちのけ。
怒ったクロエはホテルを飛び出して行ったのです。
しかしそこは見知らぬ町。世間知らずのクロエには危険がいっぱい。
やはりと言うか、「こりゃ見っけもんだ」と、 クロエは犬窃盗団にさらわれてしまったのでした…。

そこからクロエには恐怖の体験が待っていて、闘犬のリングに入れられたり、
なんとか窃盗団から逃れてもベンチの下で野宿をしなくてはならなかったり、
あまりの空腹に落ちているものを口にしようとしたり。
でも周りの犬たちが優しく手を差し延べてくれるのです。
同様に窃盗団に監禁されていたシェパードのデルガド、ヴィヴ家の庭師の愛犬パピ、
チワワの聖地アステカで出会った“チワワ連合”のリーダーのモンテなど、
今までセレブ犬以外は鼻にも掛けなかったクロエの考え方が変わります。
ダイヤの首輪をしてたから悪党たちの目に止まり、
それを騙し取られてしまえば肩書きのない、無力な小さな犬。
これって人間も同様ですよね。裸の自分でいったい何ができるのか。
今の時代だからこそ考えさせられるかもしれません。
実は眠っていたチワワの底力に気付かされるクロエ。と同時に仲間のありがたさを知り、
今まで蔑んで見ていた野良犬たちのたくましさに尊敬の念を抱くようになる。
世間知らずのセレブ犬がひとつ成長した瞬間です。
可愛いだけじゃなく、しっかり見るといろんなことが見えてくる1本。
実際の犬の演技とCGの見事な融合。ディズニーの技術も堪能してみて下さい。☆3つ。
「ビバリーヒルズ・チワワ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.4.24

「グラン・トリノ」☆☆☆☆
「バーン・アフター・リーディング」☆☆☆
「キッチン〜3人のレシピ〜」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

本当は先週取り上げなくてはならなかった「キッチン〜3人のレシピ〜」を今週紹介します。
4月18日公開作品です。失礼しました。
なお、「バーン・アフター・リーディング」は24日金曜日公開です。
という訳で、今週は変則3本です!

「グラン・トリノ」は、クリント・イーストウッド監督主演作。
ベトナム戦争出征経験のある偏屈な老人ウォルト。
あまりの頑固さに息子夫婦や孫たちからはそっぽを向かれ、妻に先立たれた今、
楽しみはといえば、年老いた愛犬をそばにビールを飲むこと。
そしてもうひとつ、自身の勲章とも言える愛車のヴィンテージカー、
グラン・トリノを眺めることぐらいでした。
逆に腹立たしいことはたくさんあって、中でもウォルトの偏見でもある
大嫌いなアジア系移民の一家が隣りに住んでいるのが嫌で嫌で仕方ない。
その隣家の息子タオが、ギャングのいとこにそそのかされて、
ウォルトのグラン・トリノを盗みに入るのですが、ウォルトに見つかってしまいます。
タオやギャングたちに銃口を向けるウォルト。
「覚えとけっ」。
捨てゼリフとタオを残してギャングたちは立ち去ります。
お詫びの印にと、タオはウォルトの家の手伝いをすることになるんですね。
初めは迷惑だったウォルトですが、姉のスーの存在も手伝って、次第に隣家と心を通わしていきます。
タオには父親がなく、一方ウォルトの息子たちは近寄ろうともしない。
ウォルトの中に、タオを一人前の男にしなくてはという父親のような責任感が芽生えてきたのです。
しかし時を同じくして、あのギャングたちが復讐のタイミングを伺っていたのでした…。

これ言ってしまうと“死に様”の映画。
同時にアメリカの抱える数々の病巣、例えば移民の問題、
モラルの欠如、バイオレンスや銃禍などがあぶり出されています。
後日ギャングたちがマシンガンを持ってタオの家を襲撃。
姉のスーも暴行を加えられ、心身共に傷付けられてしまいます。
ウォルトは思います。「アイツらが存在する限り、タオやスーは安心できないんだ」と。
そして命を賭して大切な仲間を守ろうとするんですね。
ボクなんかは今の世の中がホントにおかしくて、
ウォルトの偏屈な正義感の方が正しいって思っちゃうけど。
最初は「なんだこの爺さん」と思うかもしれませんが、実に茶目っ気たっぷりで、
まっすぐなキャラクターのウォルトにきっと惹かれていくはず。
それが証拠にラストはあちこちからすすり泣く声が聞こえてきましたから。
今の日本もかなり近い状況かもしれませんよ。☆4つ。
「グラン・トリノ」公式サイト


「バーン・アフター・リーディング」は、コーエン兄弟監督のコメディー映画。
ワシントンDCにあるスポーツジム。
エリートばかりが集まるこのジムのロッカーに1枚のCD―ROMが落ちていました。
PCで中身を調べると国家機密のよう。
“筋肉バカ”のチャドは大金がゆすれると大騒ぎ。
全身整形を夢見ていた同僚のリンダはその提案に即乗っかります。
実はそのディスクはアルコール依存でCIAをクビになったオズボーンの暴露ネタ。
と言っても内容はまったく大したことなく。
そうとは知らないチャドとリンダはロシア大使館にまでディスクを持ち込むんですね。
そんなおバカな行動がとんでもない悲劇を引き起こそうとはまだ知るよしも無かったのです…。

さらにそこにいろんな人間関係が絡んでくる。
オズボーンの妻は、オズボーンの知り合いであるハリーという連邦保安官と不倫。
ハリーはリンダと出会い系サイトで知り合い、肉体関係に。
もうみんな欲望のままにハチャメチャなんです。
この映画、キャストが豪華で、チャドにブラッド・ピッド、オズボーンにジョン・マルコビッチ、
ハリーにジョージ・クルーニーなどなど。
ひとつ明かすと、ブラピの扱いってこれでいいの?ファンは怒らない?
っていうぐらいのチャドの結末が待ってます。
面白いと思うかどうかは見る人によって分かれるはず。それがコーエン兄弟の作品です。
ハマるかどうか、あなたも試しに見てみてはいかがです?☆3つ。
「バーン・アフター・リーディング」公式サイト


「キッチン〜3人のレシピ〜」は韓国映画。
モレとサンインは結婚1年目の若い夫婦。
孤独だったモレとは兄妹のように、小さい時からずっとそばにいてくれたサンイン。
彼と結婚するのはモレにとってごくごく自然なことと信じていました。ドゥレと出会うまでは。
時間外の美術館に入ってしまったモレ。係員に見つかりそうになり物陰に隠れるのですが、
その時同じように飛び込んで来たのがドゥレでした。
言葉では説明できないような感覚に襲われたモレは、その場でドゥレと関係を持ってしまうのです。
純粋過ぎるモレはそのことをサンインに話してしまいます。
彼女の性格をよく知るサンインは腹を立てながらも、「もうそのことは忘れろ」と、
聞かなかったことにしようと努めるんですね。
ところが新しく食の事業を始めようとしていたサンインの相棒が、なんとドゥレだったのです。
こうして危うい三人の共同生活が始まったのです…。

三角関係の始まり、始まり〜(笑)。
衝動とはいえ浮気をしたモレ、妻の浮気を怒ることのできないサンイン、
知人の奥さんを誘惑しようとするドゥレ。
どいつもこいつもって感じです。まったく(苦笑)。
なんて書くとダメなんでしょうねぇ。
きっと女性はモレに自己投影をし、
恋愛物語のど真ん中でイケメンふたりの間で揺れるのが気持ちいいはず。
プリプリ怒ってたら、「まあまあ、映画ですから」となだめられてしまいました(笑)。
オシャレに描かれてます。でもボクはダメ。☆2つ。
なおこの映画は4月18日に既に公開となっています。
「キッチン〜3人のレシピ〜」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.4.22

「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」☆☆☆
「おっぱいバレー」☆☆
「スラムドッグ・ミリオネア」☆☆☆☆☆
「ミルク」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写状も最近は複製防止加工が施されていたりするんですね。
金券ショップで売られたりしてるからその防御策なのでしょう。
ルールを守らない一部の人間がすごく社会を嫌なものにしちゃってるよなと、
こういうところからも感じたりします。
そんな人間が感動作を見たらどう感じるんだろう?涙を流すのでしょうか?
その涙に良心は何も感じないのでしょうか?何だかすごく不思議…。
さぁ気を取り直して、今週は4本です!

「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」は韓国映画。
一流企業に勤めていたジニョクが突然退社を決意。洋菓子店を開くと家族に宣言します。
「甘いものが大嫌いなはずなのになぜ?」と不思議がる家族に彼はこう答えます。
「女性客がたくさん来そうだから」。
古い骨董品屋を改装して始めた“アンティーク”。スタッフはジニョクを含め4人。
パリの一流洋菓子店を渡り歩き、腕は抜群のソヌ。
元ボクサーで天才と言われながらも網膜剥離でボクシングを断念、
次に好きなスイーツの道にとやってきたギボム。
そしてジニョクの家で働いていた家政婦の息子スヨン。
個性的な男性ばかりでアンティークはスタートします。
ソヌの作るケーキはホントに美味しくて、評判が評判を呼んで店は大繁盛!
そんな時、静かな住宅街であるこの街で、子供ばかりを狙った連続誘拐事件が起こるんですね。
過去の忌まわしい記憶が甦るジニョク。
実は10歳の時、彼は2ケ月に渡って誘拐、監禁されていた過去があるのです。
そのことを今でも夢に見ては苦しんでいたのでした。
今回ジニョクが突然、洋菓子店を始めると言い出したのには、
その悲しく消し去りたい過去が大きく関わっていたのです…。

実はこの映画の原作は、日本の漫画家よしながふみの『西洋骨董洋菓子店』。
日本でもドラマ化され、アニメにもなった作品が海を渡り、お隣韓国で映画化されました。
色鮮やかなスイーツが次々現れ、そこにイケメンスタッフたちと来れば、
女性のハートはわしづかみ!なんですが、裏に潜む“陰”の部分がある。
そのコントラストが見事でした。
アンティークで働く面々も実に個性的。
もうひとりの主役と言ってもいいパティシエのソヌは実は同性愛者。
昔高校生の時にジニョクに告白してケチョンケチョンに罵られた悲しい過去の持ち主。
スウィートでミステリアス。原作を知らない人でも楽しめる1本です。☆3つ。
「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」公式サイト


「おっぱいバレー」は、綾瀬はるか主演の青春コメディー。
時は1979年、北九州のある中学校に新任の女性教師がやってきます。彼女の名は寺嶋美香子。
クラブの顧問をやってみないかと言われ、任されたのが男子バレーボール部。
ところがそのバレー部とは名ばかりで、部員はバレーなどまったくやらず、エッチな妄想ばかり。
周りから“馬鹿部”と呼ばる問題の部だったのです。
教育の理想に燃える美香子は彼らに言います。
「ヤル気は無いの?頑張りなさい。もし試合に勝ったら何でも言うことを聞いてあげるから」。
それを聞いた生徒たちは目を輝かせながらこう言ったのです。
「じゃあボクたちが試合に勝ったら、先生のおっぱいを見せて下さい!」…。

綾瀬はるかのおっぱいがチラッとでも見えるのかなぁと、
眠い目を充血させながら試写に行ったのにっ(笑)。
バカバカしい約束なんだから反故にすればいいと思うけど、
彼女には前任の学校でのトラウマがあったんですね。
軽い気持ちで生徒と交わした約束を守れず、裏切り者のレッテルを貼られた過去が。
実話に基づくストーリーとはいえ、ちょっとリアリティに欠けてたかも。
それを補うサービスカットが無かったのも不満。おっぱいの恨みは怖いのだ(笑)。
ってオマエが“馬鹿部”だって言われそう(笑)。
ボクには79年のヒット曲満載だったのが救いでした。☆2つ。
「おっぱいバレー」公式サイト


「スラムドッグ・ミリオネア」は、アカデミー賞最多8部門を獲得した話題の映画。
インドで人気のクイズ番組“クイズ・ミリオネア”。
そこに驚くべきチャレンジャーが現れました。スラム出身の18歳、ジャマール・マリク。
学校に行ったこともない彼が難問を次々とクリア。
あと1問で2000万ルピー(日本円で約4000万円)という
とてつもない大金を手にしようというところまで来ていたのです。
ここで1日目の収録が終了。
どんな博識のインテリ層がチャレンジしてもここまで来られなかったのに、
スラム出身のジャマールが次々正解を出すのはおかしいと、司会のクマールがこっそり警察に通報。
スタジオを出た途端、ジャマールは警察に連行されてしまいます。
執拗な責めにも「答えを知っていただけだ」と答えるジャマール。
するとそれまでに出された1問1問について、
その答えを知ることになる彼のこれまでの過酷な人生を語り始めるのでした…。

ボク、実は日本のクイズ・ミリオネアに3回出てるんですよね。
大橋巨泉さんのテレフォン、萩原流行さんと宮川俊二さんのスタジオ応援。
あれ、絶対にズルができないようになってるんですョ。
ジャマールは生きることに必死でした。目の前で母親を殺され、兄のサリームと
やはり孤児になった見ず知らずの女の子ラティカと手を取り合って懸命に生き抜いて来た18年間。
悪い大人と出会って兄はお金に貪欲になり、このクイズ・ミリオネアに出たのも、
離れ離れになったラティカに自分の姿を見てもらうためだと話します。
その過酷な人生のひとつひとつに、クイズのヒントがあっただけなんだと。
最初は敵意をムキ出しにしていた警部も徐々に考えが変わり、ジャマールをスタジオへと送り出します。
果たして最後の問題をジャマールは答えることができるのでしょうか?というお話。
インドの病巣みたいなものが知れて、面白かったです。ものすごくよくできてました。
アカデミー賞の最優秀作品賞を含む最多8部門を授賞というのも納得です。
人生は大なり小なりドラマなんだなぁとしみじみ。
辛い環境でも、めげずに折れずに頑張っていれば、
いつか幸せの神様は微笑んでくれると思える1本でもあります。☆5つ。
「スラムドッグ・ミリオネア」公式サイト


「ミルク」は、同性愛を公言した実在の代議士、ハーヴィー・ミルクの生涯を描いた映画。
1972年のアメリカ、NY。
金融業界で働いていたハーヴィー・ミルクは若い恋人と出会ったのをきっかけに、
“自由の地”サンフランシスコに移り住みます。
始めは職にも就かずブラブラしていたミルクでしたが、このままではいけないと小さなカメラ店を開店。
するとそこがゲイ仲間のコミュニティーセンター的な役割を果たすようになります。
“自由の地”でも保守的な住民からの差別はひどく、このままでは自分たちはもちろん、
様々な弱者が虐げられる社会になってしまうと、ミルクは公職への道を目指し始めるんですね。
1度ならず、2度3度と落選を続けるミルク。
それが原因となり、恋人とも離別。それでもミルクの意志が曲がることは無かったのです。
4度目の挑戦で見事に当選。同性愛者であることを公言した初めての公職となりました。
その後も弱者の代表として闘うミルクだったのですが、ある日、彼を悲劇が襲うのです…。

こちらもアカデミー賞を2部門受賞。主演のショーン・ペンは最優秀主演男優賞に輝きました。
もちろんアメリカ人にとっては実在のヒーローのひとりなのでしょうが、
そのあたりが正直ボクにはあまり響きませんでした。
国の違いかな。文化の違いというのもあるかと思いますが。
少し人と違った部分を持つ個性的な役を演じさせるとショーン・ペンは上手いですよね。☆3つ。
「ミルク」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.4.9

「雪の下の炎」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日都内の単館系の映画館に行ってきました。
いつもは社内試写ばかりだから、映画館で映画を見るのは久し振り。
すると試写会と同じように係の人が来て、作品の簡単な前振りをしてくれるのにビックリ。
なかなかいいサービスですよね。
今日紹介するのも単館もの。かなり社会派の作品です。
それでは早速いきましょう。今週は1本です!

雪の下の炎」は、チベットの僧侶、パルデン・ギャツォの自由への闘いを描いたドキュメンタリー。
チベット西部の小さな村に生まれたパルデン・ギャツォ。
時代はまだ平和で、人々が皆幸せに暮らしていた時。
幼い頃、彼は僧侶になるために僧院に入ります。
ところが1950年、中国がチベットに侵攻してきます。
名目は“チベット解放”。しかし、その実体は単なる“侵略”だったと言います。
当然の如く反対闘争が始まるのですが、平和的抗議活動だったにも関わらずパルデンは逮捕され、
それから刑務所で23年、他の施設で10年。
なんと28歳から61歳までを獄中で過ごすことになります。
それも安息の日々であろうはずもなく、過酷な労働と拷問の毎日。
命を落として行く仲間を見て、「非業の死を遂げた仲間のために、死ぬまで闘う」と誓うのでした。
この映画では、そんなパルデン・ギャツォのこれまでと、
トリノ、北京のオリンピックの際にどのような思いで、どんな活動をしてきたかを描いています。
ハンガーストライキを行なうパルデン。その時、同志が賛同してハンストに参加をする。
その同志が、「なんか胸焼けがするんですよね」と言うとパルデンが、
「オマエなんか食べたな?」と冗談を言ってニヤリ。
そんな普通の表情を見ること自体、心がギュッと締め付けられるようで。
でも信仰があるから頑張れたと言います。また「人々の破滅を願うことは己の破滅を招く」とも。
静かに、しかし力強く闘うパルデン・ギャツォの姿に心打たれずにはいられません。☆3つ。
「雪の下の炎」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.4.2

「エンプレス」☆☆
「ストレンジャーズ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

4月になりました。新しい年度を迎えて、新しい環境で、
きっと新たな感性のアンテナが伸び始めていると思います。
たくさん映画を見て、そのアンテナを刺激して欲しいですねっ。
さ、今週は2本です!

「エンプレス」は、中国の歴史時代劇。

時は戦国時代。長い間敵対関係にあった燕と趙。
その燕の国王が討たれ、後任の選択で家臣が揺れます。
結局、王位は娘の飛児が継ぎ、後見人として人望もある雪虎が将軍に任命されるのですが、
王の座を狙っていた野心家の胡覇には面白くありません。
刺客を放ち、飛児の暗殺を企てます。
毒矢の刺さった飛児を、今は隠遁生活を送る段蘭泉という男が救うんですね。
互いに互いの素性を知らないふたり。いつしか共に魅かれ合っていくのですが…。

硬派な戦国武将ものが多い中、女性の存在こそあれ、
これもそんな作品かなと思って見てたんですが、さにあらず。
恋愛における比重がかなり重いんです。
それはそれでいいんですが、「王たる者が、国の存亡の危機をほったらかして
山奥で好きだの嫌いだのってやってる場合かいっ」って突っ込んじゃいました(笑)。
BGMも恋愛シーンになるとそれっぽくなるから、緊迫感から一転、ガクッとなっちゃうんですよね(笑)。
正直どっちつかずのイメージになっちゃったかな。☆2つ。
「エンプレス」公式サイト


「ストレンジャーズ」は、リブ・タイラー主演のホラーサスペンス。

知人のウェディングパーティに出席していたクリスティンは、
男友達のジェームズに外へ出ようと誘われます。
実はジェームズ、今日クリスティンにプロポーズをしようと
郊外の別荘に薔薇を敷きつめ、シャンパンを準備。
もちろん指輪も用意していたのです。
そして思い切ってプロポーズ。しかし彼女の答えは“NO”でした。
頭を抱えるジェームズ。涙にくれるクリスティン。
その時でした。激しくドアを叩く音が響いたのです。深夜4時。こんな時間に一体誰?
ドアを開けると髪の長い女性が立っていました。
「タマラはいませんか?」…。

05年にアメリカで起こった未だ未解決の猟奇殺人事件を元に描いた映画だそう。
ストーリーは推して知るべし。いい意味でも裏切りません。
深夜のTVでやってそうな、いわゆる“B級(お金の掛かっていない)ホラー”。
好きな人にはたまらないはず。
ボクはその意外性の無さがちょっぴり残念だったかな。☆2つ。
「ストレンジャーズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.3.26

「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」は、ハートフルコメディー。
ジョンとジェニーは結婚したての新婚夫婦。共にジャーナリストとして活躍しており、
子供は欲しいと願ってはいたものの、仕事が忙しいこともあって、
実際に親になる心構えはできていませんでした。
ジョンの職場の先輩が、ジョンにこうアドバイスします。
「子育ての予行演習として子犬を飼えばいい」。
そして迎えたジェニーの誕生日。ジョンが選んだプレゼントは一匹のかわいらしい子犬、
ラブラドール・レトリーバーのマーリーでした。
ところが、いざ飼い始めると大変!
ソファーは食いちぎるし、カーテンは引きちぎり、雷が怖くて一晩中吠え続ける。
誰かれ構わず人には飛び掛かり、ベロベロ舐めて顔中よだれだらけにし、
大切なネックレスを飲み込みはの大騒ぎ。
犬の訓練学校に入れても鬼教官でさえ、これは無理とサジを投げる始末。
ジョンとジェニーの生活はマーリーに振り回されっ放し。夫婦ゲンカのきっかけにもなります。
そんなある日、遂にジェニーが妊娠します。
喜ぶふたりでしたが、悲しい出来事が起こります。ジェニーが流産してしまったのです。
憔悴し切っているふたりをよそに、
マーリーは相も変わらずおバカ振りを発揮して、家中を掻き回していたのでした…。

その後、ジョンとジェニーには待望の赤ちゃんが生まれ、二男一女の5人家族に。
そこには当たり前のようにおバカなマーリーがいたのですが、
気付けば子犬だったマーリーも年老いていく訳です。そう、別れの時がやってきます。
思い返せば、マーリーはジョンたち家族にいっぱいの宝物を残してくれたんだなと。
ジョンとジェニーは幼い子供たちと一緒に振り返ります。
特に犬って人が大好きで、無償の愛ってこういうことなんだよって教えてくれる存在でもあります。
人間より寿命が短いからこそ輝く時間。優しい気持ちにさせてくれる1本です。
監督は「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル。☆3つ。
「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.3.19

「イエスマン “YES”は人生のパスワード」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

またまたやってしまいました。
朝10時の試写を見に行ったら今日じゃなく明日…。
すっごい頑張って起きたのにっ。もうめちゃめちゃ悲しかったです(T_T)。
もうこうなったら信じるのは「早起きは三文の得」!
宝くじを10枚買ってしまいました(笑)。当たるかなぁ(^^;)。
さ、今週は1本です!


「イエスマン “YES”は人生のパスワード」は、ジム・キャリー主演作。
妻と離婚してからというもの、とにかくネガティブで後ろ向きな毎日を送っているカール。
用件を聞く前から彼の答えは決まっていて、とにかく口をつくのは“NO”。
友達からの飲み会の誘いも、隣人との付き合いも、街で配られるチラシもすべて“NO”。
カールの仕事は銀行の貸し付け担当なんですが、
窓口に来た客がどんなに可能性のある事業計画を持って融資を頼みに来ても“NO”。
NO!NO!NO!の人生なんですね。
そんな男にハッピーなことが起ころうはずもなく、銀行での昇進の話は立ち消え、
恋人とイチャつく元妻とバッタリ、挙句の果てには親友との仲も壊れそう。
そんな時、昔の友人ニックと出会います。
満面の笑みを浮かべながら、楽しそうに彼が誘うのはある自己啓発セミナーへの参加でした。
なんとなく足を運んだ会場に現われたのはカリスマと言われる主宰者のテレンス。
彼の呼び掛けに“YES”で答える参加者たち。
そう、このセミナーが掲げる標語は“YES” だったのです。
テレンスが初参加のカールのところにやって来て言うんですね。
「この会場を出た瞬間から、どんなことがあっても“YES”と言いなさい。
もし誓いを破れば災いが起こるだろう」と…。

実際“NO”と口にした瞬間悪いことが起こるから、カールは“YES”と言うようになる。
そして「ええ〜っ」というようなことにまで“YES”と言っちゃうんですね。
友達がおごってと言えば“YES”、休日出勤も“YES”、融資の申し立ても“YES”。
隣りのお婆さんのあんなお誘いにも“Y、YES”(笑)。
でも“YES”が必ずしも幸せを導かない出来事だって当然ある訳ですよ。
ポジティブに生きることを知ったカールはその時果たしてどちらの言葉を口にするのでしょうかというお話。
人生確かにポジティブに生きた方が楽しいけど、
等身大の自分が自分に嘘をついてまでNOをYESと言うのは納得できないなぁ。
なんてまともな解説をしてるようじゃこの作品は楽しめません(笑)。
極端なストーリー設定だけど、
それをジム・キャリーが得意の百面相で表情豊かに演じているから楽しく見られます。
何となく後ろ向きになってるかもというあなたにはカンフル剤になるかもしれませんね。☆3つ。
「イエスマン “YES”は人生のパスワード」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.3.12

「映画は映画だ」☆☆☆☆
「マダガスカル2」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「おくりびと」が大ヒット上映中ですが、この作品に代表されるように、隠れた名作って多いんです。
でも“隠れた”と言っても自分から隠れた訳じゃない。
みんなが見つけてくれないからいつの間にか隠されちゃっただけ。
そんな作品にスポットライトを当てるのもボクらの使命。
たくさん試写を見て、しっかり評価をして、あなたに伝えなくちゃいけませんね。
どうぞ参考になさって下さいねっ。
さ、今週は2本です!


「映画は映画だ」は、韓国映画。
昔は俳優になりたかったヤクザのガンペ。
手下を引き連れ、街の高級クラブに飲みに行くと、別の部屋に人気俳優のスタがいると知ります。
「サインをもらってこい」と手下をやるのですが、
気位の高いスタは、「サインが欲しいのなら本人が来い」とつっぱねます。
スタの前に現われたガンペ。一悶着あるのは当然。ですが本物の迫力は別格!
「何かあったら連絡しろ」と言い残し、携帯の番号を手渡し立ち去って行くガンペ。
実はスタは新作映画の撮影の真っ最中。
乱闘シーンで相手役のあまりに見え見えの演技にNG連発となり、
腹を立てて相手役を殴り、大怪我を負わせてしまいます。
いくら代役を立てても同じことの繰り返し。
マスコミの批判は元より、誰もスタと共演したがらないから大変!
このままじゃ映画の撮影は中止になってしまう。
そんな時、スタは思い出すのです。
「あいつがいるじゃないか!」。
そう、リアリティなら誰にも負けないガンペのことでした…。

俳優になりたかったヤクザとヤクザを演じる俳優。まさかの運命がふたりを結び付けます。
撮影開始まではもちろん、撮影中も様々なトラブルやアクシデントがある。
なんとかラストまで辿り着いたふたりが、リアリティを持って殴り合う最後のシーン。
男と男を賭けて交わす拳。芽生える友情。しかし…。
ラストに向かう数十分はとにかく圧巻です!
どのようにも取れるタイトルの「映画は映画だ」の意味が、ある種の衝撃と共に、最後にわかります。
ガンペにはソ・ジソブ、スタにはカン・ジファン、韓国のイケメン俳優の競演。
かなり面白かったですョ。☆4つ。
「映画は映画だ」公式サイト


「マダガスカル2」は、ヒットアニメの第二弾。
まだ赤ちゃんライオンだったアレックスが、
群れのリーダーのお父さんから強いライオンになるための訓練を受けていると、
現われたのはボスの座を狙うマクンガ。
「いいか、ちゃんと見ておけよ」。
お父さんとマクンガのが闘いが始まります。そんな争いをよそに、
好奇心旺盛なアレックスはその場を離れ、保護区の外に出てしまいます。
密猟者に捕らえられたアレックス。
お父さんが気付いた時にはもう猛スピードの車の中。親子は離れ離れになってしまったのです。
連れて行かれたのはNYのセントラル動物園。
数年の歳月が過ぎ、今じゃすっかり人気者のアレックスでしたが、
ある日、シマウマのマーティ、カバのグロリア、キリンのメルマンと脱走を謀り、
動物園を飛び出すも失敗。
アフリカに送り帰されるはずが、マダガスカル島に漂着したというのが前回のお話。
今回はなんとか動物園に帰ろうと試みるんですが、またしても失敗。
ただし今回辿り着いたのは、アレックスの故郷、懐かしのアフリカだったのです。
アレックスは両親との再会を果たし、マーティは夢だったシマウマの群れの中で走ることを叶え。
みんなそれぞれにNYにいた時に夢見ていたことを実現させるのですが、何かが違う。
そんな時、ニューヨーカーには厳しい、野生の現実が4人(匹?)を襲ったのでした…。

よくできてましたョ。前作を見てなくても話はわかるし、
人間に例えてごらんという寓話的お話がぎっしり。
家族愛、アイデンティティ、環境問題などなどを、ユーモアたっぷりに描いています。
こういうのは大人も子供も楽しみながら学べる映画だからいいですよね。
お子さんと見たなら、たくさんお話ししてみるのがいいと思います。
これも映画のひとつの使命かな。☆4つ。
「マダガスカル2」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.3.5

「ゼラチンシルバーLOVE」☆☆
「ダウト〜あるカトリック学校で〜」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


年の瀬が近付くと試写も「お正月映画第1弾」と早々に翌年を意識させられるのですが、
今はもう「GW作品」ですからね。
空を舞うみぞれ雪に肩をすぼめながら大型連休を思う。
ボクらの仕事は1年が特に早いのはこんな理由でしょうか?
さ、今週は2本です!

「ゼラチンシルバーLOVE」は、写真家・繰上和美の初監督作品。
コンクリート打ちっ放しのマンションの窓にカメラを据えて、
運河を隔てた向かいの家に住む女を映し続ける男。
女はその細くしなやかな指でゆで玉子の殻を向き、艶やかな唇へと運ぶ。
その映像を大型テレビに映し出す男。
依頼人に頼まれ、盗撮を続けていた男は、
女の謎めいた魅力に次第に魅せられていくのでした…。
矢沢永吉、北野武、井上陽水、キース・リチャーズなど、
数多くのアーティストフォトグラフを手掛けてきた繰上和美。
「一枚の写真もきちんと撮れないのに映画はやれない」と、
映画への思いを20年以上封印してきたと言います。
作品はまさしく写真家の撮ったそれ。
構図はもちろん、寒と暖の色彩の使い分けなど、 こだわりの映像に、
おそらく彼のファンや写真愛好者ならニヤリとするのでしょう。
瞬間を切り取る“写真”というものが
見る人にその前後の因果関係を想像させるように、この映画も多くは語らないのです。
ひとつのこだわりの方法論ですが、
それだけで90分は個人的にはキツかったかなというのが
正直な感想ではあります。☆2つ。
「ゼラチンシルバーLOVE」公式サイト

「ダウト〜あるカトリック学校で〜」は、メリル・ストリープ主演作。
時は1964年。NYのブロンクスにある
カトリック学校のセント・ニコラススクールが舞台。
教会の大聖堂で説教を行なうフリン神父を冷たい視線で見つめるのは、
鉄のように厳格と言われるシスター・アロイシスでした。
伝統的なカトリックの道徳観と信仰心を持つシスター・アロイシスに対し、
フリン神父は革新的で現代風の開かれた教会を作るべきと主張。
ふたりの考え方の相違は明らかだったのです。
シスター・アロイシスは、
若くて純真なシスター・ジェイムズが心配で仕方ありません。
純粋すぎるがゆえに疑うということを知らず、
「疑いの心を持つということは神から遠ざかる行為」と信じていたからです。
例えば、クラスの問題児がよく鼻血を出して学校を早退するのですが、
シスター・アロイシスは「学校をサボるために
わざと鼻血を出しているのでは?」と言います。
「疑うことは確かに神から一歩遠ざかる行為かもしれない。
けれどそれは最終的に神のために為すものなのです」と。
そんなある日のこと、問題は起こります。
学校で唯一の黒人生徒のドナルドがフリン神父に呼ばれ、
その後教室に戻った時、酒の臭いをさせて明らかに動揺していたのです。
シスター・ジェイムズがシスター・アロイシスに報告をすると、
フリン神父を呼び出し、激しく問い詰めます。
フリン神父は、ドナルドが祭礼用のワインをコッソリ飲んでいたと。
このままだとドナルドはようやく手に入れた
司祭のアシスタントの座を明け渡さなくてはならない。
ドナルドがそれだけは許して欲しいと言うので、その対策を話し合っていただけだ。
不適切な行為は一切していないと。
それどころか、逆に黒人であるがゆえに孤独な彼を守っているのは唯一私だけだと主張。
果たして真実はどちらなのでしょうか…。
そんな話に実に様々な伏線が加わっきて、一体どっちが正しいのか、
時が過ぎ、ストーリーが進むに連れて、見る側も右か左か揺れ動くんです。
面白かったですョ。
またメリル・ストリープが“あの顔”ですから(失礼!)、
“鉄の女”の似合うこと(笑)。
フリン神父役のフィリップ・シーモア・ホフマンも裏のありそうな笑顔がいい。
「衝撃の結末を見逃すなっ」。
まさにそんなキャッチコピーがピッタリの1本です。☆4つ。
「ダウト〜あるカトリック学校で〜」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.2.25

「カフーを待ちわびて」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「おくりびと」がアカデミー外国語映画賞に、
「つみきのいえ」がアカデミー短編アニメ賞に輝きました!快挙ですっ。
最近邦画の興行成績がいいと聞きます。
今回の授賞によってますますモチベーションが上がり、
いい作品が登場する契機になるといいですね。
さ、今週は1本です!

「カフーを待ちわびて」は、沖縄の小さな島を舞台にしたラブストーリー。
青い海と青い空に囲まれた小さな南の島に暮らす明青(あきお)。
明青はカフーという犬と、小さな雑貨屋さんを営んでいました。
悲しい過去を持つせいか、引っ込み思案の明青には恋人もなく。
ユタであるおばあも常に心配していました。
そんな明青の元に、突然一通の手紙が舞い込みます。
差出人は幸(さち)という女性でした。
「絵馬に書いてあったことが本当なら、私をお嫁さんにもらって下さい」。
唐突とも思える文章。
はてと思い返すと、昔、縁結びの神社で遊び心で書いた絵馬があったのです。
「嫁に来ないか。しあわせにします」。
そして島の名前と、自分の名前を記したのでした。
まさかと思いつつも、そわそわする明青。
ある日のこと、カフーと散歩に出たら、垢抜けた都会の女性が浜辺にひとり。
カフーは彼女に駆け寄っていきます。
そしてその女性が明青に聞きます。
「あのぉ、友寄明青さんの家をご存じでしょうか」。
「ぼ、僕ですけど」…。
明青の過去と幸の過去。島の再開発を半ば強引に進めようとするリゾート会社など、
さまざまな要因が渦巻く中、ふたりの恋心は揺れていきます。
あまりにも偶然が重なり過ぎてないかい?と、
設定に異論を唱える向きもあるかとは思いますが、
実際の男女の出会いだって、実はかなりの偶然が働いてるもので。
確かに“そんなわきゃないだろ”的なところもありましたが、
ボクはあまり違和感を感じなかったかなぁ。
というか、何故か許せちゃうのは、
自分もそんな出会いに憧れてるからかもしれませんね(笑)。☆3つ。
「カフーを待ちわびて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.2.20

「ハルフウェイ」☆☆☆☆
「ロックンローラ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写が始まって入って来た年配の男性ふたり。なんとボクの隣りに座ってきました。
頭の影はスクリーンに写るは、ヒソヒソ話はするは、
挙げ句の果てに携帯を開いてメールを見始めたので、
横を向いて、思いっ切り舌打ちをしてやりました。
いい年してマナーもわからないのかと、腹が立つ一方で悲しくなりますね。
いつも言いますが、そんな人たちに映画を語って欲しくないですよね。まったく。
さ、今週は2本です!

「ハルフウェイ」は、岩井俊二、小林武史プロデュース、北川悦吏子初監督作品。
北海道の高校に通うヒロは、卒業間近の女子校生。
憧れの同級生シュウのバスケ姿に見とれていると、軽い貧血で倒れてしまいます。
保健室で休むヒロは、付き添ってくれた親友のメメにシュウへの思いを話します。
「なんかね、彼の半径25m以内に近付くとひゅーってなる。こんなんじゃ壊れちゃうよ」。
そこに軽いケガをしたシュウが立っていたことをヒロは知らずにいたのです。
放課後、いつもの帰り道で、今日こそシュウに告白しようと彼を待つヒロ。
そこに現われたシュウ。するとシュウから先に口火を切りました。
「ボクと付き合って下さい」。
そしてふたりは交際を始めます。
順調にいっているように見えたヒロとシュウの仲でしたが、
実はシュウにはヒロに言えない秘密があったのです。
それは東京の早稲田大学に進学を希望しているということ。
地元の大学に進むつもりだったヒロは、それを知って激怒します。
「何で言わなかったの?東京に行っちゃうのにあたしにコクって、
どういうつもり?あたしはどうすればいいんですか?」。
シュウは悩みます。逆にシュウに言ってしまったヒロも悩みます。
卒業まであとわずか。ふたりは果たしてどんな結論を出すのでしょうか…。
制作陣の顔ぶれを見てもわかるように、なんとなく音楽に近いタッチの映画になっています。
ふたりのやり取りがすごく自然なのは、実はすべてのセリフがアドリブだからなのだそう。
照れ臭いけど、初恋って、純粋でこんなだったじゃんと、
青春の1ページを思い出させてくれる効果がそこにはあります。
ピュアだからこそ、ヒロはシュウに東京に行くなと言い、
言ってしまったからこそ悩む。シュウも同様に悩む訳です。
北海道というロケーションがすごく良くって、広い大地、
大きな空がふたりを包んでくれます。
かわいかったですョ。北乃きいちゃん(笑)。
この映画のタイトルが何故「ハルフウェイ」になったのかも劇中でわかります(笑)。
こちらもどうぞお楽しみに!☆4つ。
「ハルフウェイ」公式サイト

「ロックンローラ」は、ガイ・リッチー監督作品。
舞台は再開発の進むロンドン。
ドラッグのようなケチな商売をやるよりも不動産の方が儲かると、
街のギャングたちは矛先を変え、土地や建物の利権を争っていたのです。
その市場に参入するにはこの人を通さなければ何も始まらないという、
昔かたぎの大物ギャングがいました。彼の名はレニー。
汚職役人たちに甘い汁を吸わせるなど手回しは万全。
彼の手に掛かれば、どんなトラブルも電話1本で解決してしまうと言われる実力者でした。
しかし街並みが昔の伝統的ブリティッシュスタイルから変化し始めているように、
暗黒街のルールや方法論も変化し始めていたのです。
腹心のアーチーは「このままじゃ時代の流れに飲み込まれてしまいますぜ」と忠告するのですが、
レニーは耳を貸しません。
そこにロシアの大富豪ユーリが現れ、
ウォーターフロントの商業施設を自分のものにしたいとレニーに持ち掛け、
やっかいな障害を取り除いて欲しいと依頼します。
このユーリというのも実は裏の顔を持つ男。
互いに互いを利用しようと、レニーとユーリの心理戦が始まります。
そこに加わる、妖艶な女会計士、ビッグサクセスを求める街のチンピラたち、
ドラッグ中毒のパンクロッカーなど。
時代は果たして誰に微笑むのでしょうか…。
簡単には話せないほどストーリーは入り組んでいるのだけれど、
それが不思議なくらい理路整然と繋がってくる。面白い!
ユーリがこの仕事が終わるまでと、信頼の証しとしてレニーに預けたのが「幸福の絵」。
ユーリが命の次に大事にしているという絵がそれなんですが、
書斎に飾っておいたところ、忽然と消えてしまう。
それを盗んだパンクロッカーが実はレニーの義理の息子。
この絵を中心にストーリーは回っていき、グチャグチャに絡まった紐が徐々に解けていって、
最後はすべてが1本に繋がるという感じ。
それを元マドンナの夫のガイ・リッチーがユーモアも交えながらスタイリッシュに描いていくんですね。
ガイ・リッチーはロンドンの出身。
変わりゆく故国の様と旧東側諸国の有無を言わさぬ大量資本投下の現実を、
裏社会の物語として描きたかったそう。
うまくできた映画ですョ。続編も匂わすラストだったから、しっかり今見ておかないと。☆4つ。
「ロックンローラ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.2.16

※こちらのコラムは、先週末公開の分となります。
 更新が遅くなりまして、申し訳ありませでした。(web管理人)

「彼女の名はサビーヌ」☆☆☆
「三国志」☆☆☆☆
「ディファイアンス」☆☆☆☆
「ユッスー・ンドゥール/魂の帰郷」☆☆☆☆
「ラ・ボエーム」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近ちょっと忙しくて、試写の本数が正直減ってます。
「これは面白そう…」と気になる作品を見ることができないと、かなりショックなんですよねぇ。
ま、時間は平等に24時間ですから。
うまくやりくりして、頑張ってたくさん見ておきたいと思います。
さ、今週は5本です!

「彼女の名はサビーヌ」は、自閉症の女性のドキュメンタリー。
フランスを代表する女優のひとり、サンドリーヌ・ボネールの初監督作品です。
彼女の実の妹であるサビーヌは、芸術的才能が豊かで、
明るく笑顔の素敵な美しい女性でした。
でもサビーヌは自閉症を患っていたのです。
11人兄弟という賑やかな環境で暮らしていた頃は穏やかだったサビーヌの症状も、
徐々にみんなが独り立ちを始めると孤独感が増し、
兄の死をきっかけに一気に症状が悪化してしまうんですね。
そして入った精神病院。
そこでの5年間の不適切な処置が、サビーヌをまったくの別人に変えてしまったのです。
カメラはその25年間を追います。
残酷なほど別人のようになってしまったサビーヌの姿を映し出した裏には、
きちんと自閉症を認知して欲しいという思いと、
妹サビーヌへの愛情があると、誰もがすぐに気付くはず。
編集作業などの時、監督の目にはきっと涙が浮かんでいたんじゃないかなと思わせる作品です。
☆3つなんて、☆の付けようなど、本当はないのですが…。
「彼女の名はサビーヌ」公式サイト

「三国志」は、昨年から流行の中国歴史物語。
ここではアンディ・ラウ扮する“趙雲”にスポットを当てて物語は進みます。
戦乱の中国。貧しい地方に生まれた趙雲は祖国統一を夢見て、
蜀の君主・劉備に仕えることに。
同じ故郷出身の平安を兄と慕い、戦さの日々を過ごします。
そんな中、次々と手柄を立てる趙雲はぐんぐん重用され、
蜀の五虎大将軍のひとりにまで登り詰めるのです。
有名な“赤壁の戦い”以降も20年無敗を続け、蜀を守り続けてきたのですが、
まさかの裏切りに合い、窮地に立たされてしまうのです…。
同じ「三国志」をテーマにした映画「レッド・クリフ」は、
それぞれの武将をキャラ立てし、ある意味俯瞰で描いているのに対し、
こちらはピンポイントで趙雲を取り上げるという手法。
先に「レッド・クリフ」を観たのですが、
「三国志」をきちんと読んだことのないボクにとっては、
こちらの方が逆にわかりやすかったかなという印象。
もちろんそれぞれに面白さがあるんですよ。
「レッド・クリフ」は一大娯楽作品でもあるのですから。
そのあたりを見比べてみると面白いと思います。興味のある人は是非!☆4つ。
「三国志」公式サイト

「ディファイアンス」は、実話を基にしたストーリー。
1941年、ナチス政権下のドイツは、同盟国であるはずのソ連にまで侵攻。
いわゆる“ユダヤ狩り”を進めます。
両親を殺害され、突然平穏な生活を壊されたビエルスキ3兄弟は、
小さな頃から遊び場にしていたリピクザンスカの森に逃げ込みます。
そこに次々と同胞のユダヤ人が合流し、ひとつの共同体ができあがるんですね。
長兄のトゥヴィアは何としても皆を守ろうといい、
次男のズシュはそれじゃ共倒れになると主張。
しかしトゥヴィアは言うのです。
「生きようとして命を失うなら、それは人間らしい死に方だ」と…。
2時間16分の大作。シンドラーや杉原千畝など、
ホロコーストからたくさんの命を救ったお話はありますが、
ここにもまたひとつそんな物語があったんだよと教えてくれる作品です。
「トゥヴィア兄弟も決して“聖人”ではない」とエドワード・ズウィック監督。
対立し、揉めながら、欠点もさらけ出しつつ、
結果多くの人々の命を守った兄弟の人間臭い部分に興味を抱いたとも語ります。
きっと世界各地にこんな感動秘話がまだあるんだろうなと思わせます。
生きようとする力、諦めない気持ちの大切さを知る一方で、
同時に人間のエゴも嫌というほど見せつけられる作品。
「人間って…」と思わずにはいられません。☆4つ。
「ディファイアンス」公式サイト

「ユッスー・ンドゥール/魂の帰郷」は、アフリカ出身のミュージシャン、
ユッスー・ンドゥールの“音楽ロードムービー”。
世界中でポピュラーな存在となったブラック・ミュージック。
そのルーツをきちんと辿ってみようと、
“ジャズ”をひとつのテーマに世界各地を周り、黒人音楽の根源を探ります。
ユッスー・ンドゥールは、日本だとホンダだったかな?CMで流れていた
「オブラディ・オブラダ」で耳なじみがあるはず。
彼らが最終的に辿り着いたのは、アフリカ西端のゴレ島。
ここは奴隷貿易により、たくさんの黒人の犠牲者が出た場所。
1500〜2000万人の黒人奴隷がアメリカへ送られた、その石の門が“帰らずの扉”。
二度と会えないとわかって見送る家族や友人たちの、
魂の叫びが黒人奴隷と共に海を渡る。
黒人音楽にはそんなルーツがあったのです。
今はお尻をプリプリ振ってる(ようなのが多い)ブラックミュージックですが、
ヒップホップ好きの人も、是非見てもらいたい1本。
こちらもまた考えさせられます。☆4つ。
「ユッスー・ンドゥール/魂の帰郷」公式サイト

「ラ・ボエーム」は、プッチーニ生誕150周年を記念して公開された歌劇。
19世紀初頭のパリ。気ままに生きるボヘミアンたちが暮らす屋根裏部屋が舞台。
ひとつ下の階に住む女性、ミミがローソクの日をもらいに来ると、
詩人のロドルフォが応対。即座にふたりは恋に落ちます。
しかしロドルフォはかなりのヤキモチ焼き。
愛し合っていながら、ありもしないことで言い掛かりを付け、
その嫉妬心の強さゆえにふたりは破局を迎えてしまうんですね。
しかし、そんなロドルフォの行動には、
ミミを思う真実の心が隠されていたのです…。
原作は1843年の「ボヘミアン生活の情景」という小説。
それをプッチーニが1896年にオペラ化したのが「ラ・ボエーム」です。
最初、舞台ではなく映画ですから、
ミュージカルタッチなのかと思ってたら、 さにあらず。
最初から最後まで全編オペラで、歌い通します。正直ちょっとビックリ(笑)。
そんなこと言うと、「何言ってるの。当たり前じゃないの」と、
通の人に叱られそうですが(笑)。
普段オペラに触れないボクにとってこのタイプの映画は少々お腹一杯だったのですが、
試写の帰り際、妙齢の女性がこうおっしゃいました。
「これ、大きなスクリーンで拝見したら素晴らしい作品だと気付くはずざあます」。
“ざあます”はウソですが(笑)、でもなるほどなと。
公開は“国内最大級のスクリーン”がキャッチコピーの
新宿のテアトルタイムズスクエアですから。
たまには高尚なオペラもいかがです?☆3つ。
「ラ・ボエーム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.2.6

「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」☆☆☆☆
「ヘブンズ・ドア」☆☆☆
「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

この前試写で見た『スラムドッグミリオネア』は面白かったですョ。
題材になっている「クイズ・ミリオネア」は日本でもおなじみ。実はボク、3回出てるんです。
大橋巨泉さんのライフラインのテレフォン、
萩原流行さんのスタジオ応援、そして宮川俊二さんのスタジオ応援。
機械はイギリス製で、まったくインチキができないようにできてるんです。
なのに何故、インドのスラムから出て来た少年はあんなに大金を掴むことができたのか!
続きはまた公開週に(笑)。
さ、今週は3本です!

「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」は、
アメリカのディズニーチャンネルで大人気のドラマの映画化。
イースト高校に通う青春真っ直中の若者たち。彼らにも卒業の季節がやってきました。
「このまま時が止まればいいのに」。それはみんなの共通の思い。
バスケット部のスター選手であるトロイもそう。大学でバスケを続けるためには、
恋人のガブリエラとは1053マイルも離れた遠距離恋愛になってしまうし、それと同時に、
自分はこのままバスケットだけでいいのだろうかという疑問も顔をのぞかせ始めていたのです。
そんな時、卒業演目としてやるミュージカルが、
ジュリアード音楽院の奨学生審査の対象にもなっていると。
その候補に、自ら応募した3人、女優志望で超自己中オンナのシャーペイ、
その双子の弟で振り付けが得意なライアン、音楽担当のケルシーともうひとり、
先生がトロイを推薦していたのです。
この時トロイはまだ自分の可能性に気付いていなかったのでした。
卒業記念のプロムの相手探しも一大イベント。
トロイは当然ガブリエラを誘い、ガブリエラも快諾するのですが、
進路への迷いや置かれる環境の違いへの不安から、二人は仲違いをしてしまいます。
ホントなら一番大切にしなくてはならないこの時期を、
ガブリエラはトロイと離れて暮らす訓練だと、大学の体験入学の方へと行ってしまうのです。
実はミュージカルで一番張り切っていたのはガブリエラだったのに。
さぁ果たして二人の恋の行方は?
そしてみんな自分たちの進むべき道を見つけられるのでしょうか…。
わかり易くて良かったです。みんな経験している青春の希望と不安。
TVドラマを知らなくても全然大丈夫です。
それぞれの登場人物にそれぞれファンがいるんだろうなと感じるほどキャラが立っていながら、
ちっともごちゃついていないのがさすが。
見ている側が生徒たちを応援してるんだけど、
気が付いたらこっちが応援されてたと感じるような映画です。
ミュージカル映画のライバル「マンマ・ミーア!」のオープニング興行成績を抜いたとか。
ボクもこっちに軍配かな。☆4つ。
「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」公式サイト

「ヘブンズ・ドア」は、長瀬智也、福田麻由子主演作。
青山勝人(まさと)、28歳。ミュージシャンの夢を諦め、
バイトも長続きしないこの男に、突然の異変が襲います。
割れるような頭の痛み。
病院に行くと、耳を疑うような医師の診断が。
「脳腫瘍。今すぐに命を失ってもおかしくない状況です」。
余命あと3日。
ベッドに横たわる勝人の前に、ひとりの女の子が現れます。14歳の少女、春海。
彼女も先天性の病気で7歳から入院。彼女もまた余命1ケ月。
外のことを何も知らない春海にとって、勝手気ままに生きてきた勝人の話は興味深く、
深夜に忍び込んだ厨房でテキーラを一気飲み!
「おい、今天国で一番熱い話題って知ってるか?海だよ。海。
 みんな海の話で持ち切りなんだぜ」。
「あたし、行ったことない」。
「じゃあ行くか、海!」。
こうしてふたりは病院を抜け出します。
そして玄関に停まっていた超高級スポーツカーを盗み、一路海を目指したのです…。
タイトルからすると、お腹いっぱいの悲恋モノかなと思ったんだけど、さにあらず。
基になる作品があって、それは97年の同名のドイツ映画。
そちらは共に余命いくばくもない二人の男が主人公。
今回はその設定が28歳の男と14歳の少女に変わったということなんです。
この年齢設定ですから、勝人は春海に妹的感情を抱き、一方の春海はというと、
勝人に兄以上の気持ちを抱いていたかもしれませんね。
正直、勝人の慇懃無礼な振る舞いに感情移入ができない部分はありますが、
春海との出会いによって人間性を取り戻したとしたら、
それはまさに“天国への扉”だったのかもしれません。
原作を見たという方は見比べてみて下さいね!☆3つ。
「ヘブンズ・ドア」公式サイト

「ベンジャミン・バトン/ 数奇な人生」は、
ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの主演作。
生まれた時がしわしわのおじいちゃんで、
歳月が流れて行くに従って若返って行くという
不思議な運命のもとに生まれたベンジャミン・バトン。
何故、彼はそのような定めのもとに生きなければならなかったのか。
その人生にどんな意味があるのかを質す映画です。
あんまり書きませんね。つまんなくなっちゃうといけないので。
ボクはすぐさま元モー娘。の加護亜依ちゃんを思い出しました。
小学校高学年で芸能界のトップに立ち、その頃から大人のような扱いを受け、
年を重ねるたびに世の中とのズレを本人は確認していた訳ですよね。
なんかちょっと重なる部分があるんじゃなかろうかと。
もしボクがプロデューサーだったら、コマーシャルは加護ちゃんで決定だな(笑)。
どんな内容で、ラストはどうなるのか。どうぞご自身の目で確かめて来て下さい。☆3つ。
「ベンジャミン・バトン/ 数奇な人生」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.1.28

「マンマ・ミーア!」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

朝10時の試写に積極的に行くようにしてるんですが、この回は布団から出る自分自身との熾烈な戦い(笑)。
シャワーを浴びるところまで行っちゃえば大丈夫なんですが、そこまでに天使と悪魔が囁き合うのです。
「ほら、行かないともうスケジュールが合わなくなるかもよ」と天使。
「起きたってどうせ映画の途中で寝ちゃうんだろ」と悪魔。
勝率は7割5分ぐらいかな(笑)。頑張らないとね。
さ、今週は1本です!

「マンマ・ミーア!」は、
アバの大ヒット曲を多数フィーチャーした超人気ミュージカルの映画化。
ギリシャのリゾート、エーゲ海に浮かぶカロカイリ島。
ドナはそこで小さなホテルを経営しているシングルマザー。
20歳の娘ソフィの、明日はうれしい結婚式。ドナはパーティの準備に大忙しでした。
ところがソフィにはどうしても気になることがあります。それは自分の父親のこと。
「わたしのお父さんはどんな人なんだろう。パパと一緒にバージンロードを歩きたいのに」。
そんなソフィが偶然、ドナの日記を発見します。
悪いと知りつつ、自分が生まれる前後のページをめくると、父親候補は3人!
建築家のサム、銀行マンのハリー、冒険家のビル。
この中の誰かがパパなんだと確信したソフィは、
ドナに内緒で結婚式の招待状を、ドナ名義で送るんですね。
もちろん誰もソフィが自分の娘かもしれないとは思っていないので、
懐かしい昔の彼女に会いに3人とも島にやって来たのです。
ドナも元彼がいっぺんに3人も現れたのにはビックリ!
果たしてソフィーの本当の父親は判明するのでしょうか…。
理屈抜きで楽しむには十分な作品です。おなじみの曲が目白押しですからね。
ただ、はじめにアバの曲ありきなので、なんとなく台詞と歌の“のりしろ”の部分は気になるかなぁ。
ミュージカルの監督、脚本、製作の女性3人がそのまま携わっているので、
舞台の熱を下げることなくスクリーン上に映し出しているんですけどね。
ちなみにアメリカでは、歌詞が字幕で出て来ればみんなで歌えるのにとのお客さんの声に応えて
“Sing-a-Longバージョン”なるものが上映され、
巨大カラオケボックス化した劇場に多くのリピーターが殺到してるとか。
パーティムービーとして楽しんで下さい。1月30日金曜日公開です。☆3つ。
「マンマ・ミーア!」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.1.22

「足寄より」☆☆☆
「ジョッキーを夢見る子供たち」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週の2本は作品云々よりも、ファンや愛好家以外にいかに広がるかがカギだと思います。
どっちもご縁があるので本当はたくさん☆を付けたいんだけど、そこはニュートラルに。
それでは今週の2本です!

「足寄より」は、松山千春の半生を描いた映画。
昭和50年、全国フォーク音楽祭の北海道大会が札幌で行われました。
そこに現れたひとりの若者が、20歳の松山千春。
田舎もの丸出しの彼の姿に会場は失笑。
ところが臆するどころか、会場を一喝。そして歌ったのが「旅立ち」でした。
観客を魅了し、審査員も実力は認めたものの、
時代はおしゃれなニューミュージックが主流の頃。
彼の態度も含め、賞を与えようという審査員はほとんどいなかったのです。
ただひとりを除いては…。
そう、そのひとりの男性こそ、STVラジオのディレクター、竹田健二。
運命の出会いでした。
松山千春にとって、時に厳しく、時に優しい兄貴のような存在。
お父さんが小さな町の新聞社を営んでいる環境も手伝ってか、
自分というものをしっかり持っていた松山千春。
でもそれが逆に強過ぎる自己主張にもなっていたのですが、
きちんと叱ってくれるのも竹田さんだけでした。
その竹田さんが倒れます。
恩返しもできないままに迎えた恩人の死。
「そのうち…」じゃダメなんだと、人生に待ったはないんだぞと、
最後の最後まで、体を張って教えてくれたのかもしれません。
物語は感動の作品なんですが、
例えば何度もカットインする足寄の風景が同じ写真だったりするあたり、
映画の完成度としてはちょっと減点が必要かも。
それを補うのが、松山千春のお父さん役を演じた泉谷しげる。
この人の寡黙な演技が作品をピリッと引き締めています。
そこにポイントをプラスしてかな、☆3つ。
「足寄より」公式サイト

「ジョッキーを夢見る子供たち」は、
フランスの騎手志望の子供たちを追いかけたドキュメンタリー映画。
フランスの国立騎手厩務員養成寄宿学校。
今年の新入生はあどけなさの残る14歳の少年少女が約30名。
この中で、成績のいい生徒にはジョッキーへの道が開かれるのですが、それはほんの一握り。
初めて馬に跨がった子は馬に遊ばれて、猛スピードで持っていかれてしまいます。
逆に何をしようがまったく動いてくれない時もある。
「もう嫌だっ」。
馬の上でベソをかいていた生徒たちも、日に日に上達していくのでした…。
新入生の中から、スティーヴ、フロリアン、フラヴィアン、
3人の男子生徒にスポットを当てて話は進みます。
朝は早いし、馬は怖いし、仕事は厳しいし。
女の子とも遊びたいし、ヘアスタイルも気になるし(笑)。
見習い騎手戦に出走する子もいれば、遅れを取る子もいます。
でもそんな落ちこぼれの代表のようなスティーヴが言うんですね。
「好きだから辞めないよ」。
この言葉に、夢に向かって頑張る人のすべてが集約されているような気がしません?
カメラを回したのは映画「皇帝ペンギン」の撮影カメラマン。
ペンギンと同じぐらい辛抱強さが必要な撮影だったと思います。
ただ競馬に携わってるボクでもちょっとわかりづらいところがあるので、
パンフレットを買ってフランスの騎手課程の仕組みを頭に入れてから観た方がいいかも。
その辺をニュートラルにジャッジして、
ホントはもっと☆をあげたいけど、こちらも☆3つ。
「ジョッキーを夢見る子供たち」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.1.15

「劇場版 カンナさん大成功です!」☆☆☆
「ザ・ムーン」☆☆☆☆☆
「プライド」☆☆☆
「ヘルライド」☆☆☆
「ラーメンガール」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

15日木曜日に、来週末公開のフランス映画「ジョッキーを夢見る子供たち」の試写会で、
トークショーの司会をやってきます。
お相手は武豊騎手と、フランスで調教師資格を取った小林智さん。
映画は来週のここで、トークショーの感想はブログで書く予定。どうぞお楽しみに!
さ、今週は5本です!

「劇場版 カンナさん大成功です!」は、韓国で一足先に映画化された、
日本の人気コミックの映画化です。
超美人の神無月カンナ。彼女には秘密がありました。
その秘密とは?ブスで愚図だった自分にサヨナラし、
憧れの浩介に接近しようと全身整形を施したのです。
計画は見事に成功し、浩介の務めるアパレル会社の受付嬢として就職します。
ある日、社内のデザインコンテストがあり、カンナが応募すると見事入賞!
ところがそれを超えるデザインを描いていたのは昔のブス仲間のカバコだったのです。
もうひとり“本物の”美人と3人で新ブランドの立ち上げを任されるカンナ。
しかし、カンナと敵対する勢力が、カンナは整形だと嗅ぎ付けたのでした…。
カンナに山田優、カバコに南海キャンディーズの静ちゃん。
韓国映画は、人気カリスマシンガーと口パク担当歌手の物語。
口パクの彼女が全身整形をしてデビューするという話でしたが、
こちらはアパレル業界が舞台となっています。
山田優ちゃん、大熱演です!
コメディー女優のように表情筋のすべてを使って(笑)演技をしてます。
これがTOO MUCHと感じるかどうか、かな。
最初ボクは受け付けなかったんだけど、頑張ってるんだなぁと思ったら許せちゃいました(笑)。
女の子の友情物語でもあります。男性より女性向きかも。☆3つ。
「劇場版 カンナさん大成功です!」公式サイト

「ザ・ムーン」は、アポロ計画で月に行った宇宙飛行士たちのドキュメンタリー映画。
1960年代から70年代初頭にかけて進められた、アメリカのアポロ計画。
東西冷戦の最中、有人宇宙飛行の分野で
当時のソビエト連邦に遅れを取っていたアメリカは、ケネディ大統領の、
「わが国は60年代が終わるまでに人類を月へ送り、地球に無事帰還させる」
という議会演説をきっかけに、この一大プロジェクトに突入します。
人生観をガラリ変えてしまうという宇宙への旅。
いくつか宇宙飛行士たちの言葉をご紹介しましょう。
「遠く離れた月で親指を立てると、親指の裏に地球が隠れる。
すべてが隠れる。愛する人たちも、仕事も、地球自体の問題もすべてが隠れる。
我々は何と小さな存在だろう。だが何と幸せだろう。
この肉体を持って生まれてきて、この美しい地球で人生を謳歌することができて」。
「地球は生き生きとして雄大で、その存在は偶然の産物にしては美し過ぎる」。
「圧倒されるような経験だった。そして気付いた。
己の肉体の分子も、宇宙船の分子も、クルー仲間の肉体の分子も、
その原型ははるか大昔に宇宙で作られたものだと。
すべてはつながっていて一体なのだと。他と私ではなく、万物はひとつなのだと」。
いかがです?
月は果てしなく広がる砂漠と闇。完全なる無の世界だと言います。
宇宙もしかりで、そこに太陽に照らされた青い美しい地球が浮かんでいる。
その姿はまさに奇跡なんでしょうね。
宇宙計画の最大の平和利用は、対立する国や宗教のリーダーをみんなロケットに乗せて、
宇宙から地球を見せてやることじゃないかなって、ボクはいっつも思ってます。
こんな話もあります。
「地球に戻った時、ショッピングセンターに行った。
アイスを食べながらエスカレーターを降りる人を見て、地球に生まれて良かったと思った。
人間は何故不平を言うのか?エデンの園にいるのに」。
数々の犠牲の上に成り立った偉業でもあります。
なにやら月の地下資源を狙ってるなんて話もありますが、
人類があまりに間違えた方向に行かないことを望むばかりです。
本当にいい映画です。是非見てみて下さい!満点の☆5つ!
「ザ・ムーン」公式サイト

「プライド」は、一条ゆかりの人気漫画の映画化。
お金持ちのお嬢様である史緒のところに、
ハウスクリーニングのアルバイトでやってきた萌。
ふたりは共に音楽大学でオペラを学んでいるのですが、
学校のレベルも、家庭や経済環境も大違い。
そんな史緒の部屋で有名オペラ歌手の来日公演のチケットを見つけた萌は大興奮。
「もしよかったら差し上げるわ」という史緒の言葉に、
萌は頭を下げて一緒にオペラ観賞となりました。
会場でも一流の音楽家と談笑する史緒の姿を見て、
メラメラと嫉妬の念が込み上げてくる萌。
「どうしてアタシはこんな運命なの?」。
萌はそれから史緒をライバル視するようになります。
音楽留学を懸けたレコード会社のコンテスト。
そこで見せた萌の貪欲さと歌の実力は、
のちに史緒を震え上がらせるほどのものだったのです…。
亡き母に一流オペラ歌手を持つ史緒と、飲んだくれの母に恨みすら抱く萌。
しかし互いに互いの実力は認めていて、何かと火花を散らして行きます。
史緒にはステファニーが、萌には元Folder5の満島ひかりが扮します。
昼ドラにも似た理不尽なドロドロ感でしたが(笑)、
それが逆に最後まで飽きさせずにスクリーンに釘付けにさせるはず。
昼メロ好きにはお勧めかも。☆3つ。
「プライド」公式サイト

「ヘルライド」は、クエンティン・タランティーノ制作総指揮のバイカームービー。
対立する2つのグループ、ヴィクターズとSIX SIX SIX。
ヴィクターズの幹部が殺されたことに端を発した今回の抗争は、
内部の裏切りなどもあり、血で血を洗う激しい戦いになっていきます。
その中で見えてくる様々な真実。それによってまた、男たちの絆は強くなっていくのです…。
60〜70年代に掛けてたくさん作られた低予算映画。いわゆる“B級ムービー”。
その中でも人気を博したのがバイカームービーでした。
革ジャンを羽織り、ハーレーに跨がり、
酒と女とドラッグとロックンロールをこよなく愛する男たち。
そんなハチャメチャなパワーが今のこの時代に必要だろうと、タランティーノは考えたそう。
ベタな作品ですが、行き切っちゃってる感と、狙った古臭さ、B級感は逆に魅力かも。
本国では2週間で打ち切られたとか(笑)。
そう言われると逆に見てみたくなりません?☆3つ。
「ヘルライド」公式サイト

「ラーメンガール」は、ラーメンが題材のハリウッド映画。
アビーは、恋人のイーサンを追いかけて日本にやってきます。
喜んでくれると思いきや、「重い」と言われて、
イーサンはアビーの前から姿を消してしまいます。
傷心の彼女の前にあったのが一軒のラーメン屋さん。
日本語もわからない彼女が泣きながら飛び込んだその店は、
もう閉店していたにも関わらず、アビーにあったかいラーメンを出してくれたんですね。
不思議と心温まる食べ物、ラーメン。
アビーは決意します。この料理を作ることが私の天職だと…。
アビーはこの店に見習いで弟子入りするのですが、初めは雑用ばかりで、
ラーメン作りをまったく教えてくれません。日米のしきたりの違いです。
時に挫けつつも、めげずに頑張るアビー。
そんな頑固なラーメン屋の親父に西田敏行が扮します。
ボクは昔このセットの前を歩いて通ってました。
ガードマンに聞くと、「ハリウッドのラーメン映画」だと。
その時は“??”でしたが、これを見てわかりました。
アビーは最後まで日本語を学ばず、コミュニケーションがうまく取れません。
あれだけ頑固親父なら、「まず日本語を勉強しやがれっ」と言うはずなのに(笑)。
その辺が日本人には違和感を感じるかも。外国の人にはどうでしょう?
脚本を手掛けたベッカ・ポトルの日本滞在経験からできた作品だとか。
日本のよき文化や厚い人情が世界に伝わるといいですね。☆3つ。
「ラーメンガール」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2009.1.9

「サーチャーズ2.0」☆☆
「チェ 28歳の革命」☆☆☆☆
「泣きたいときのクスリ」☆☆
「ミーアキャット」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週、今年初試写に行ってきました。
隣りに座った映画評論家さんが、もうひとつ隣りの人とヒソヒソ話。
耳をそば立てると、
「去年は480本。あとちょっとで500だったんだけどね。
 でもいい文章を書こうと思ったら、MAX300だね」。
そりゃそうですよねぇ。ボクが去年は160本。その3倍って考えたら正直ゲップが出そう(笑)。
でも常に言うように“駄作を知って、名作を知る”です。
今年も時間の許す限り試写に足を運びたいと思います。今年もよろしくお願いします!
さ、今週は4本です!

「サーチャーズ2.0」は、カルトムービーの鬼才と呼ばれる
アレックス・コックスのコメディー映画。
日雇い労働者のメル。
道端で手配師の車を待っていたのですが、前回分の賃金が支払われていないとクレームを付け、
結局今日の仕事にはありつけず。
トボトボと歩き始めると、近くのアパートから聞き覚えのある西部劇のメロディーが。
実はメル、子役としてその映画に出演していたのです。
ドアをノックして出て来た男も、なんとその映画に出ていたフレッドだったのです。
思い出話に花を咲かせるふたり。
すると、脚本家のフリッツに虐待を受けたことを思い出すんですね。
その瞬間、TVにフリッツのサイン会のCMが。
「行くぞっ」。
ふたりは復讐の旅に出るのでした…。
メルの娘も巻込んでのロードムービーなんですが、ごめんなさい、
何が面白いんだかサッパリわかりませんでした。
かなりアメリカの今を皮肉ってるそうですが…。
お国柄の違い?それともカルト系のセンス無し?一度も笑うことなく上映はお終い。
お笑いに解説はタブーだけど、誰か笑うところを教えて下さい。☆2つ。
「サーチャーズ2.0」公式サイト

「チェ 28歳の革命」は、アルゼンチン生まれの革命家、チェ・ゲバラを描いた作品。
1955年、ラテン・アメリカの貧しい人を救いたいと南米大陸を旅していた
アルゼンチン出身の医師、エルネスト・ゲバラは、
独裁政権に苦しむ祖国キューバを救わんとするフィデル・カストロとメキシコで出会います。
たった82人の兵でキューバに乗り込み、2万人の政府軍と闘うという
とんでもない作戦に乗ったゲバラは、“チェ”という愛称で軍医として参加。
キューバを目指します。
カストロから与えられた任務。それは“大都市サンタクララの陥落”でした…。
最近この人の名前をよく耳にしますよね。
あのブッシュ大統領に靴を投げ付けたイラク人ジャーナリストが崇拝してたのも
確かこのチェ・ゲバラでした。
裏切り者には容赦は無いが、規律を守り、若い兵士に読み書きを教え、
女性、子供には優しく、農民に礼を尽くす。
根底にあったのは人々が平等に暮らせる社会を築くことだったといいます。
この映画はそんなチェ・ゲバラのキューバ革命での活躍を描いています。
ただし、社会主義礼賛ではなく、
人としてのチェの“志”にみんなが尊敬の念を抱いてきたんだという部分を大きくクローズアップ。
庶民感覚を忘れ、こんなご時世に我が身かわいいと選挙の話をする日本の政治家には
義務としてこの映画を見せたいくらいですよね。まったく。
ちなみにこれは2部作の第1部。
次回作でこの人の、真の革命家としての姿がより一層わかるようです。
話題の人物を学ぶには持ってこいの1本です。☆4つ。
「チェ 28歳の革命」公式サイト

「泣きたいときのクスリ」は、FMの人気ラジオドラマの映画化。
田舎の単線列車の駅“泣き薬師駅”。この列車と駅を使う人たちの物語。
列車の中で何故か号泣している中年男性。
それを怪訝そうに見る女子高生たち。
同乗のOLとサラリーマンは、よく人前で泣けるものだと遠巻きに見ているだけ。
でもみんなホントは泣きたいのに。泣けば楽になるのに。
妹を亡くした悲しみから立ち直れないお兄ちゃん。
廃駅になる泣き薬師駅の駅員さん。
みんな一生懸命、日々を生きているのです…。
JFN系(地方ネット)の各局でOAされた全36話のショートストーリーが評判で、
それを映画化しようということになったそう。
ハートウォーミングな話にしたいのはわかるけど、ちょっと作り過ぎの感が否めませんでした。
リアリティの薄い話がいくつも並行して進むから、ちょっと現実離れし過ぎちゃったかな。
タイトルからも「泣かせてくれるんだろうな」って期待して行っちゃうからね。
これって意外と損なんですョ。
ラジオから生まれた作品だけどここは厳しく。☆2つ。
「泣きたいときのクスリ」公式サイト

「ミーアキャット」は、BBC製作のドキュメンタリー。
『ミーアキャット』、食肉目マングース科。
体長約30センチで、アフリカのカラハリ砂漠など、砂漠の低木林に生息。
必ず群れで生活をしていて、
敵対する群れとの縄張り争いや身内の抗争が盛んであることから、
見た目のわかいらしさとは対照的に“動物界のギャング”と呼ばれたりもします。
そんなミーアキャットのひとつの家族にスポットを当ててみました。
コロは生後3週間のミーアキャット。真っ暗な巣穴から、今日初めて外に出ます。
そこにいるのはたくさんの家族たち。
天敵から身を守るため、みんなが協力して生活しているのです。
ところがコロは好奇心旺盛で、群れから離れてひとりで遠くに行ってしまいます。
子守役のお兄ちゃんは大変!でもコロが遠くで鳴いているのを聞くと、
すべてを放り出しても迎えに来てくれるお兄ちゃん。
虫の取り方も、大好きなサソリの食べ方も、みんなお兄ちゃんが教えてくれました。
しかし、コロが夢中になって餌を頬張っている時、
お兄ちゃんは突然襲って来た鷲にさらわれてしまったのです。
もう頼れるお兄ちゃんはいないんだ。
コロにとっては厳しい現実でした…。
ミーアキャットと聞いて思い出すのは、スッと立って、みんなで同じ方向を向いている姿。
あれ、お腹のとこだけ毛がなくて、あそこにいっぱい太陽の光を浴びて、体を温めるんだそう。
“動物界のソーラーパネル”と言われてるんだとか。
またお兄ちゃんがコロに教えていたように、
成長と共に段階的に難易度を上げて行く教育法を取るのは、
哺乳類だと他に人間しかいないんだって。
へぇ〜という話がいっぱい。
みんな頑張って生きてるんだって、勇気づけられるはずです!☆3つ。
「ミーアキャット」公式サイト