週末公開の映画……2007.12.21

「暗殺・リトビネンコ事件」☆☆☆
「風の外側」☆☆
「線路と娼婦とサッカーボール」☆☆☆
「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」☆☆☆☆
「ルイスと未来泥棒」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「もういくつ寝るとお正月…」。
クリスマスが終わるまではそんな“和”の歌は聞こえてこないか(笑)。
でも新年はすぐそこです。
今週新しい作品紹介しておいてまた前の作品を薦めるなんてどうかと思うけど、
やっぱ「スマイル」はいいです!
カップルは恋人と行ってごらんなさいって。
あなたの横にいる人が“奇跡”に思えるはず。
きっと、ギュッとしたくなりますョ(笑)。
さ、今週は5本です!

「暗殺・リトビネンコ事件」は、
まだ記憶に新しい暗殺事件の裏側に迫るドキュメンタリー。
06年11月23日、ロンドンに亡命中だった元ロシア連邦保安庁中佐の
アレクサンドル・リトビネンコ氏が暗殺されました。
死因は放射性物質であるポロニウム210を飲まされたことによるもの。
リトビネンコ元中佐は以前からプーチン大統領を始め、
政権の腐敗を告発。
逮捕と釈放を繰り返し、イギリスに亡命していました。
この映画を作ったアンドレイ・ネクラーソフ監督は
5年に渡るインタビューを敢行。
その直後に起きた事件とあって、自らの身の危険を顧みず、
「ロシアの自由のために戦い、命を落とした全ての人々に捧げる」
映画として完成させたといいます。
未だベールに包まれたイメージは否めないロシアの政情。
「ひとつだけ教えて。
(暗殺じゃないとしたら)ポロニウムなんてどこから来たの?」。
遺族の言葉が象徴しているような気がしますが…。
☆3つ。
「暗殺・リトビネンコ事件」公式サイト

「風の外側」は、俳優の奥田瑛二監督作品。
真理子はオペラ歌手志望の女子高生。
通学のフェリーで若いチンピラに絡まれ、鞄を海に投げ落とされてしまいます。
中には大切な楽譜が。
するとそのチンピラの兄貴格の男が海に飛び込み、鞄を拾い上げるんですね。
でも、宝物のような「トスカ」の譜面は見つかりませんでした。
その代わりに、真理子は男にボディガードを依頼します。
実は通学路で、ストーカーにまとわりつかれていたのです。
その日から下校時には真理子に付かず離れずで歩く男の姿が。
しかし名前すら教えようとしない男。
それでも互いに気持ちは惹かれ始めていたのです…。
男にも真理子にも秘密があって、と書き始めてやめました(笑)。
この映画の肝だろうから。
ただ、描きたいことがあまりにたくさん
あり過ぎるんじゃないかなって気がしちゃうんですね。
映画は監督のものだし、
ブログのURLがwww.eijidokudan(瑛二独断).jpだからいいんですけど(笑)。
先程、肝と言ったけどそこが肝じゃないかも知れないし。
ボクにはその確信が持てませんでした。ごめんなさい、☆2つ。
ちなみに真理子役は監督の次女、安藤サクラ。
お母さんの安藤和津そっくりです(笑)。
「風の外側」公式サイト

「線路と娼婦とサッカーボール」は、スペイン映画。
実はこれもドキュメンタリー。
中米グアテマラの“線路(リネア)”と呼ばれる地域には200人の娼婦がいます。
そこで働く彼女たちは、常に死と暴力と差別にさらされているのです。
でも彼女たちには誇りがありました。
ヒモ(情夫)なしで自立して生活してるんだってこと。
育児だってこなしているのです。
そんな彼女たちが差別に抗議するためにと知恵を出し合い、
サッカーチームを作ることになりました。
強くなって注目を集めればみんなが主張を聞いてくれるだろうから。
チームの名は“リネア・オールスターズ”に決定。
グアテマラのアマチュア・サッカー協会に申請してフットサル・リーグに参加。
いよいよ試合の日が来ますが、相手は女子高生チーム。
娼婦vs女子高生?
相手チームの親たちが黙っていようはずがありませんでした…。
試合はもちろん、メンバーひとりひとりの人生にドラマがあって、
それもきちんと追いかけてます。
お国の事情もあるから一概にはボクらの生活とは比べられないんだろうけど、
やっぱり考えさせられるところが多かったかな。
ひとつ、年老いて娼婦をリタイアしたおばあちゃんが出てくるんだけど、
彼女の新しい夫が彼女のために仲間と簡素な家を作るんですよ。
完成した家を見ておばあちゃんが感激するんですよね。
幸せの在り方っていうのかな。
物質的に恵まれてなくても幸せはこういうところにあるんだよって、ねっ。
☆3つ。
「線路と娼婦とサッカーボール」公式サイト

「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」は、
シリーズ第2弾。ニコラス・ケイジ主演の“謎解きサスペンス”です。
歴史学者で冒険家のベンジャミン・ゲイツ。
彼には父と妻と右腕とも言える仲間の天才ハッカーがいて、
お宝探しはお手のもの。
そんなベンの前にひとりの男が現れます。
ゲイツ家の祖先がリンカーン暗殺に関わっていたとする証拠の日記を持っていたのです。
当然、そんなはずはないと日記の謎を読み解こうとするベン。
男の狙いもそこにあったのです。
実はその日記、とんでもない宝の地図でもあったのです…。
“謎解きサスペンス”ですから、あらすじはシンプルに書きましたが(笑)、
周辺はもっと事細かにいろんなことが入り組んでいて、さすが大作。
娯楽作品としてはよくできてると思います。
大統領の秘密文書があって、そこには「アポロは本当に月へ行ったのか」など、
いろんなこと書かれているとか。
アメリカも日本同様、都市伝説ブームがあるようです(笑)。
楽しんで見て下さい。☆4つ。
「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」公式サイト

「ルイスと未来泥棒」も、「ナショナル・トレジャー」と同じディズニー映画。
こちらはアニメです。
養護施設で暮らす12歳のルイス。彼は天才発明家。
でも失敗も多く、それが原因で養子としての引き取り先がなかなか見つかりませんでした。
「本当のお母さんに一度でいいから会いたい」。
そう願うルイスが開発したのが“メモリー・スキャナー”。
忘れてしまった記憶を呼び戻す機械で、
母に捨てられた時のことを思い出せれば母親をさがす手掛かりが見つかるだろうと。
その発表の日、科学フェアの会場にはふたりの知らない人間が。
ひとりは「未来から君を守りに来た」とおかしなこと言うウィルバー少年。
もうひとりは怪しい山高帽の男でした。
すると発表の席で爆発が起こり、
山高帽の男がメモリー・スキャナーを盗んで逃げていくではありませんか。
男の狙いはメモリー・スキャナーに手を加えて、
人の未来を変え、夢や幸せを壊すこと。
そう、ヤツこそが“未来泥棒”だったのです…。
母親への憧憬という普遍的な子供の思いと、夢いっぱいのSFストーリー。
そんなふたつの違ったベクトルをひとつにまとめたディズニーらしい1本。
ウィルバーとルイスが、超未来の乗り物であるタイムマシンに乗りながら、
子供ならではのケンカを始めるシーンもちょっぴり微笑ましかったです。
「白雪姫」から70年の節目を迎えたディズニー・アニメの記念すべき1本。
アニメーション技術の進化は日進月歩です。
こちらも理屈抜きに楽しんで下さい。☆3つ。
「ルイスと未来泥棒」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.12.13

「アイ・アム・レジェンド」☆☆☆
「スマイル〜聖夜の奇跡〜」☆☆☆☆☆
「チャプター27」☆☆☆☆
「ベティ・ペイジ」☆☆☆
「ユゴ〜大統領有故〜」☆☆☆
「夜顔」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先週は公開作品の中に試写を観たものが1本もありませんでした。珍しい…。
今週はその分?まとめてドンと6本です。
久々の☆5つもありますからね。どうぞお楽しみに!
ちなみに「アイ・アム・レジェンド」のみ14日金曜日公開です。
では今週の6本です!

「アイ・アム・レジェンド」は、ウィル・スミス主演の話題作。
ある科学者が発見した新薬。
癌をも治すこの薬の開発について、彼女はこう説明します。
「人間の体を高速道路だとしましょう。
悪いウイルスはそこを猛スピードで逃げ回ります。
でもその運転手を警察官に替えたなら?」。
その3年後、ラジオから合衆国大統領の信じられない声明が流されました。
「みなさん、人類滅亡の危機です…」。
そう、遺伝子操作をした新薬が原因で、空気感染する猛烈なウイルスが誕生。
人類は未曾有の危機にさらされてしまったのです。
そして偶然にも体内に免疫を持っていた男、ロバート・ネヴィル中佐だけが、
唯一の生存者として地球上に残ったのでした…。
愛犬のサムとふたりきり。
AMの電波でメッセージを発信するけれどもちろん誰も応えない。
でも何かがいることは、ロビーの行動から徐々にわかっていきます。
そのあたりの描き方はさすがに秀逸。あとは見た人の好き嫌いかな。
ラストシーンは正直食い足りない気がしちゃいました。
キーワードたる部分とのつながりしかり、
それはアメリカが一番嫌な手法なんじゃないの?と思わせる手段しかり。
おっと、あんまりしゃべっちゃいけませんね(笑)。
ダラダラと下手に長く描いていないのは賞賛に値します。これはホント。
ワクワクドキドキ、歯切れのいい1時間40分ではありました。☆3つ。
「アイ・アム・レジェンド」公式サイト

「スマイル〜聖夜の奇跡〜」は、俳優の陣内孝則監督作品。
タップダンスのプロを目指して上京した修平は、膝を痛めて夢を断念。
恋人・静華の待つ故郷、北海道に帰ります。
教師の口を決め、それと同時に静華にプロポーズする修平。
静華はOKなんですが、そこには手強い父親の存在が。
静華の父が出してきた条件、それは彼がオーナーである
弱小アイスホッケーチームのスマイラーズを全道大会で優勝させること。
修平はアイスホッケーどころか、スケートすらやったことがないのに。
果たしてそんな条件をクリアすることができるのでしょうか…。
この映画のテーマは“奇跡の法則”。
陣内監督には強い信念があります。
それは、頑張れば神様が奇跡をプロデュースしてくれるんだってこと。
修平と静華の恋の行方以上に、
実はチームのメンバーひとりひとりのドラマが主軸なんです。
複雑な家庭環境だったり、不治の病だったり。
“奇跡は自分のためじゃなくて誰かのために頑張った時に起こるんだ”
と監督は言います。
スマイラーズは一丸となって、自分以外の誰かのために頑張るんです。
もう号泣!ボロボロ涙がこぼれちゃいました。
涙腺が弱くなってるとはいえ、ハードルが高くなってるから、
ウルウルはあってもボロボロはあまりないんです。
さらに言えば、しゃくっちゃいましたから(笑)。
家族の愛、初恋の思い出、アイスホッケーの激しさ。
レンジの広い作品です。今年1番のお勧めかも?
ラストもひと捻りあって、なるほどそう来たかとニヤリ。
最初のシーンが効いてるんだなぁ。見逃さないように!
笑いはやや滑り気味ですが(笑)、これがまた肩の力を抜いてくれるハズ。
是非見てみて下さい!もちろん☆5つ!
「スマイル〜聖夜の奇跡〜」公式サイト

「チャプター27」は、
元ビートルズのジョン・レノン暗殺事件を描いた映画。
1980年12月8日、ジョンは凶弾に倒れます。
犯人は今もアッティカ刑務所にいるマーク・デイヴィッド・チャップマン。
そのチャップマンへの200時間にも及ぶインタビューを1冊の本にまとめたのが、
ジャック・ジョーンズ著「ジョン・レノンを殺した男」。その映画化です。
チャップマンが敬愛して止まないジョン・レノンをなぜ殺したのか、
その3日間が克明に描かれてます。
これかなり来ますよ。
ボクが思ったのは屈折したファン心理というよりも、銃社会の怖さかな。
日本でもし銃の所持が簡単に認められていたとしたら、
ストーカーに近いオタク的ファンが同様の事件を起こすだろうって
確信めいた気持ちになりましたから。
あれから27年。ジョンの死の真実。
あなたはこれを見たらどんな感想を持つでしょうか?☆4つ。
「チャプター27」公式サイト

「ベティ・ペイジ」は、
50年代のアメリカで大人気だった伝説のピンナップガールの物語。
1923年、テネシー州ナッシュビルに生まれたベティ・ペイジは、
勉強熱心で敬虔なクリスチャン。
ところが、若くしてした結婚に失敗。
心機一転向かったNYで偶然出会ったカメラマンにモデルを頼まれたことから、
徐々にグラビアの世界へと入り込んで行くんですね。
しかしそれはセクシーなもの。
当時は語ることさえタブーだったセックスの話。
ベティは必要とされることに喜びを感じ、胸を張って仕事をしていたのですが…。
たまにAV女優さんとか見てて思う訳、
「すっごくカワイイのに。ちゃんとした芸能プロのスカウトマンにスカウトされてたら
 このコの人生変わってたのかなぁ…」って。
芸能人は良くてAVはダメだって決め付けられないけど、でもねぇ…(笑)。
出会いは大切です。
ベティも明るく天真爛漫に仕事をしていたようで、
見られないものを見たくなるのは人間の心理。
彼女はいわば裏スター。伝説化していったのもなるほど納得です。
のちのアメリカのショービズ界に多大な影響を与えているようで、
マドンナなんてその代表格。
ボクはこの人のことを知らなかったけど、資料を見たら、
主演のグレッチェン・モルがベティ・ペイジに瓜二つ!
ちっともイヤらしい映画ではないので、
女性はファッションの作品として足を運んでみては?☆3つ。
「ベティ・ペイジ」公式サイト

「ユゴ〜大統領有故〜」は韓国映画。
実在したパク・チョンヒ元大統領暗殺の一部始終を描いた問題作です。
軍のエリートとしてのし上がり、
軍事クーデターを起こして政権トップの座につくと、
独裁的強硬手段で人心を掌握。
反面、韓国を高度成長に導いたとして
今なおその手腕を称える声もあるというパク・チョンヒ元大統領。
1979年10月26日、彼が酒宴の席で射殺されます。
この映画はその日1日を追いかけた作品で、その内容が故人の名誉毀損に当たると、
パク元大統領の遺族が上映禁止を裁判所に訴えて今も係争中だとか。
驚いたのは、いきなり黒塗りの画面で、
「このシーンはソウル中央裁判所の決定により削除されました」の文字が!
また日本語がやたらと出てくるんですね。
当時の日韓関係の違った意味での深いつながりみたいなものを
感じずにはいられませんでした。
ちなみにパク・チョンヒ元大統領の日本名は高木正雄。
この名前が呼ばれる時、日本人としては衝撃が走るかも知れません。☆3つ。
「ユゴ〜大統領有故〜」公式サイト

「夜顔」はフランス映画。正確にはポルトガルとの合作です。
パリの演奏会で偶然にも亡くなった知人の元妻セヴリーヌを見掛けたアンリ。
何とか話がしたくて追いかけるも見失ってしまうんですね。
ふたりは共に初老の紳士と淑女。
ところが、セヴリーヌには秘密があったのです。
夫を深く愛しているがために、彼を裏切ることだけに背徳の興奮を得、
昼だけの娼婦“昼顔”であったという素顔。
それが引き起こした38年前の悲劇。
アンリはそのことについてある事実を伝えたいと
居場所を突き止めたセヴリーヌに迫ります。
そして始まるふたりだけのディナー。
果たしてどんな会話になるのでしょうか…。
1967年のカトリーヌ・ドヌーブ主演作「昼顔」のその後を描いたとされる作品。
四角いスクリーンの中での見え方の美しさにこだわりが感じられます。
気品溢れる良質の舞台を見ているよう。
ただし、いかにもフランス映画。核心の部分がぼやけてるんですね。
この美学がボクにはわからない(笑)。いや、わかるんだけど好きじゃない。
まだまだお子ちゃまなのでしょうか(笑)。
でもこの作品に関しては許せちゃう何かがあります。
出てくる人たちの人生の重さ、深さかな。
聖も俗もひっくるめてね。☆1つプラスして、☆3つ。
「夜顔」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.12.7

「肩ごしの恋人」(11月23日公開)☆☆☆☆
「ダーウィン・アワード」☆☆☆☆
「ディセンバー・ボーイズ」☆☆☆
「マリア」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ごめんなさい、「肩ごしの恋人」は先週末の公開でした。
1週遅れての紹介になります。ご了承下さい。
12月になります。何かと慌ただしい1ケ月。こんなポカをしないようにしないとね。
さ、今週は「肩ごしの恋人」と合わせて4本です!

まずはその「肩ごしの恋人」から。韓国映画です。
カメラマンで独身のジョンワンと、実業家婦人のヒス。
共に32歳の女性。男性の好みがまったく異なるふたりは、親友でした。
ジョンワンには恋人がいます。
彼女が所属するスタジオの取締役、ヨンフです。
ところが彼には奥さんがいます。そう、不倫。
割り切ってクールに付き合っているつもりでも、
時折悩むジョンワンに、ヒスは興味津津。
いつもあれこれと問いただすのでした。
ところが、不倫なんて対岸の火事と思っていたヒスに火の粉が降りかかります。
さえない夫ヒョンシクに22歳の愛人がいることが発覚!
ジョンワンの不倫をも責めるヒス。ふたりの友情にひびが入ります。
そしてヒスは離婚を決意。果たしてふたりの恋愛は?そして友情は?…。
たぶんものすごく女の子目線で描かれた作品だと思います。
男には勉強になる、なる(笑)。
原作は唯川恵の同名小説。
最近、日本の小説が韓国で映画化されるのってトレンドのひとつみたいですね。
主役の女性ふたり、ジョンワンにイ・ミヨン、ヒスにイ・テラン。
このイ・ミヨンがいい女!一発で惚れちゃいました!
役柄じゃなくて美しさにです(*^_^*)。
実年齢は36歳だそう。お、オイラにぴったりだ。
こうやって人は“追っかけ”になっていくのでしょうね(笑)。
どっちも恵まれてるよなぁと思っちゃうようなシチュエーションだから、
共感するか否かは別にして、対極にある恋愛観を提示してくれます。
観たらきっと、恋愛したいしたい病になりますョ(笑)。☆4つ。
「肩ごしの恋人」公式サイト

「ダーウィン・アワード」は、おバカな1本。
“ダーウィン・アワード”すなわち“ダーウィン賞”。
ダーウィンとは、言わずと知れた“進化論”のあのダーウィンです。
じゃこのダーウィン賞とは何かというと、
あまりにもおバカで下らない死に方をした人に贈られる賞のこと。
その表彰理由は「おバカの遺伝子を後世に遺さなかった」から(笑)。
いやいや本当にあるそうなんです。
最初の受賞者は、高層ビルのオフィスに張られた
絶対に割れないと言われたガラスの強度を確かめようと、
自ら体当たりして転落死した男性だったそう。
う〜ん、確かにおバカだ(笑)。
映画の中では、元サンフランシスコ市警の殺人課に所属し、
優秀なプロファイラーだったマイケルが、
血を見ると失神してしまう血液恐怖症が原因で
連続殺人犯を取り逃してしまい、辞職。
調査ならお手のものと、保険会社の入社試験を受けます。
その試験とは、ダーウィン賞なるものの受賞者が、
会社に多大な損益を出させていると。
それを調査し、被保険者に非があることを証明できれば合格だと。
マイケルはまずシカゴに向かいます。
最初の案件は、オフィスの自動販売機の下敷きになって死んだ男性の調査。
男性のシャツの袖が破れていたこと、
取り出し口の奥に男性の指紋が残っていたことなどから、
自販機の奥深くに手を突っ込み、
無理やり商品を取り出そうとして自販機が倒れ、
圧死したことを証明したのです。
他にも、世界一速い車に乗ろうと空軍ロケットのエンジンを入手。
愛車のシボレーに搭載して空高く舞い上がり、空中分解した男や、
愛車の速度を一定に保つオートクルーズ機能を自動操縦と勘違いし、
スイッチを入れて車を走らせ、
せっせとエッチに励んで事故ったおバカな夫婦など、
様々な案件を次々解決していきます。
あなたはこれらの話を信じますか?…。
試写会場は笑いの渦でした。
“おバカ”は今、日本でもブームですからね。
ダメな遺伝子を子孫に遺さないから称えられるという逆転の発想自体が面白い!
信じるか信じないかはあなた次第!☆4つ。
「ダーウィン・アワード」公式サイト

「ディセンバー・ボーイズ」は、
あの“ハリー・ポッター”でおなじみ、ダニエル・ラドクリフ主演作。
舞台は1960年代のオーストラリア。
教会が営む孤児院に暮らす少年たちがいました。
子供のいない夫婦がやって来ては、次々と養子縁組を決めていく。
なかなかもらってもらえない少年たちは、
大きくなればなるほど引き取られる可能性が少なくなっていくのです。
「もうボクには家族ができないかも知れない」。
そんな沈んだ気持ちになっていたマップス、スパーク、
ミスティ、スピットの4人に、海辺での夏休みが許されます。
宿泊先は教会の信者さんの家。
4人が気になって仕方ないのが、近所に住む子供のいない若夫婦。
キレイな奥さんに、バイク乗りのカッコいい旦那さん。
「ボクをもらってくれないかなぁ」。
そんな希望を抱きながら、アピール合戦を繰り返し、
友情にもヒビが入りかけます。
3人よりも少し年上のマップスは、地元の少女と恋に落ち、初めて知るキスの味。
そして知る悲しい別離。
ひと夏の経験は、少年たちをどう変えていくのでしょうか…。
マップス役がダニエル・ラドクリフ。
“あのハリー・ポッターの”とつい言われてしまうのが、
あまりに強烈なキャラを演じた役者さんのつらいところ。
大きな大きな財産でもあり、逆に大きな大きな足かせにもなる。
脱却できるか否かは本人次第?
いやいや自分自身じゃどうにもならないのかも知れません。
ダニエルくんのこれからをあなた自身の目で予見してきて下さい。☆3つ。
「ディセンバー・ボーイズ」公式サイト

「マリア」は、イエス・キリスト生誕前の、マリアとヨセフの物語。
ヘロデ大王の厳しい税の取り立てに苦しめられていたナザレの住人たち。
そんな中、10代のマリアはヨセフとの婚約が決まったと両親から告げられます。
見ず知らずの男性と愛もないのに結婚しなくてはならないの?と
困惑したマリアが駆け込んだオリーブの林で、
彼女は天使ガブリエルから、
「あなたは神から選ばれ、神の子を身籠もる。
 その子はイエスと名付けられ、いと高き方と呼ばれる」と、
告知を受けるんですね。
信じられなかったマリアでしたが、親戚のエリザベトを訪ねたところ、
同じようなお告げがあって、エリザベトもお腹に命を授かっていたのです。
もう受胎などできない年齢にも関わらず。
これを見てあれは本当だったんだと信じたマリアは、
どんどん大きくなるお腹に“奇跡”を感じるのでした。
ところがヨセフはもちろん、両親、
町の人はマリアが神の子を宿したと言っても信じてはくれません。
不義の子を身籠もったと罵られるマリアでしたが、ある晩、
ヨセフも天使ガブリエルの夢を見て、
マリアの言葉が嘘ではないと理解するのです。
周りの冷たい態度の中、逆に強くなる夫婦の絆。
ところが、ヘロデ大王が“救い主誕生”の預言を恐れ、
その子を探し出し、処刑しようと躍起になります。
マリアとヨセフは町を脱出することに。
ふたりの険しい旅が始まるのでした…。
キリスト教の信者さんじゃなくても楽しめます。
というか、信者さんじゃない方がより楽しめるかも?
ファンタジーとして、また信じ合うことの大切さを教えてくれる恋愛の、
あるいは夫婦の物語として秀逸な作品に仕上がってます。
クリスマスに向けてこういう作品もいいんじゃないですか?
デートでも間違いなくOKな1本。おすすめです!☆4つ。
「マリア」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.11.22

「ヒッチャー」☆☆☆
「マイティ・ハート/愛と絆」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

久し振りに試写を見ました。なんて言ったら怒られそう(笑)。今月に入って2本目。
見たかったあれやこれやが見れなくて残念でしたが、体はひとつしかないからね。
1日30時間、1週間が10日欲しい…f^_^;。
さ、今週は2本です!

「ヒッチャー」は、86年のハイウェイ・サスペンスのリメイク版。
春休みを利用してドライブに出掛けた大学生のグレースとジム。
ふたりは恋人同士でした。
深夜になって強い雨となり、見通しが悪くなってきたなと思ったその時、
突然の人影に急ブレーキを踏んだジム。
事故にこそならなかったものの、車はスピン。
しかし、その不気味な人影は道路に佇んだまま。
恐怖心を抱いたふたりは、そのまま立ち去ってしまったのです。
途中立ち寄ったガソリンスタンドに後から現われたコートの男。
そう、先程の不気味な人影です。
グレースは関わることに反対したのですが、
そのまま置き去りにした後ろめたさから、
ジムは最寄りのモーテルまで乗せてくれないかという男の頼みを聞いてしまいます。
まさかこのあと地獄のドライブになろうとも知らずに…。
車の中で男の態度が豹変。男は殺人鬼だったのです。
助けを求めようにも、アメリカは広過ぎます。
またアメリカの殺人鬼はしつこい(笑)。すごい執念!
他のことにそのパワーを向けたらアメリカン・ドリームも夢じゃないだろうに(笑)。
深夜のTVでやってるような昔のB級映画の匂いが、いい意味でプンプン。
でもこれ、近頃「トランスフォーマー」で話題になった、
あのマイケル・ベイ製作作品なんです。
ほぉと関心を持った方は是非!☆3つ。
「ヒッチャー」公式サイト

「マイティ・ハート/愛と絆」は、実話に基づいたストーリー。
ダニエルとマリアンヌ、ふたりは夫婦でジャーナリスト。
夫ダニエルはウォールストリート・ジャーナルの特派員として、
妻マリアンヌはフランスのラジオ局の記者として活躍していました。
9.11のアメリカ同時多発テロ以来、ふたりはアジア各国を回り、
今はパキスタンのカラチに来ていました。
「ある男に会いに行く。夕食までには戻るから」。
帰国前の最後の取材になるはずの夫を見送った妻のお腹には、
新しい命が宿っていました。
ところが約束の時間になっても帰ってこない。携帯電話も通じない。
嫌な予感がしたマリアンヌがダニエルのパソコンを調べてみると、
そこには有力な宗教指導者に会い、
アルカイダに繋がるあるテロリストを調査する計画が書かれていたのです。
危険過ぎる取材。そして知らされる最悪の状況。
夫ダニエルはテロリストたちに誘拐されていたのでした…。
そこから最愛の夫を救おうと務める妻の姿が描かれていきます。
この映画のすごいところは、
実際に事件が起こったパキスタンのカラチでロケが行われたこと。
夫ダニエル・パールが、ジャーナリストとして、
決してテロリストに屈しなかったその姿を、世界中の人に、
また父を知らずに生まれてきた子供のために残したいと
妻マリアンヌ・パールはペンを取って手記にしたそうです。
その思いに、制作側も妥協を許さなかったということでしょうか。
ひとつだけうーんと思ったのは、人種、宗教の価値観の違いが悲劇を生む、
だからみんなグローバルに、
というメッセージがダイレクトに伝わり過ぎるシーンがあるんですよね。
?マークがちょっとついたのはそこだけかなぁ。
マリアンヌにはアンジェリーナ・ジョリー、
プロデューサーのひとりにはあのブラッド・ピットも名を連ねています。
こちらは23日金曜日から。☆3つ。
「マイティ・ハート/愛と絆」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.11.16

「ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた」☆☆☆
「フライボーイズ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

街はクリスマス、映画はお正月映画。話題はいつも“先へ先へ”。
でも自分の速さで歩くことも大切じゃないかなって思います。
今週は2本です!

「ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた」は、
アメリカ南部の田舎町が舞台の1本。
ジョーズ・ダイナーで働くジェンナ。
ジェンナはパイ焼きの名人で、
パイに関しては様々なアイデアが次々と湧いてくるんですね。
喜び、悲しみ、ワクワク、ガッカリなど、
実生活がレシピとなって頭に浮かんでくるのです。
そんな彼女の夢は、隣町のパイ・コンテストに出場して賞金をもらい、
自分のパイの店を出すこと。
ところが彼女には最悪のパートナー、夫のアールがいました。
「オマエはオレのためだけにパイを焼いていればいいんだ」。
こんな視野の狭い、ヤキモチ焼きの夫との間に子供なんていらない。
いつかは逃げ出す覚悟でいたジェンナだったのですが、神様は意地悪。
なんとジェンナのお腹の中には新しい命が宿っていたのです。
内緒でパイ・コンテストに出るために
コツコツ貯めていたヘソクリまでバレてしまう始末。
ところが、産婦人科医のポマター先生と、
手土産のパイがきっかけで深い仲になってしまうんですね。
狭い田舎町。噂が立たないはずがない。
ジェンナの夢は、恋は、そしてパイは…。
たぶんこの作品は、完全に女性目線なんじゃないかなって思うんですョ。
夫、医師、店のオーナー、一緒に働くウェイトレスのドーンとベッキー、
そして気難しくも優しい初老の客と、
それぞれに何かの象徴のような気がするんですよね。
でもそれが何なのかは人それぞれで、
女性なら男性以上にピンと来やすいのかも。
パイを焼き届ける女性の気持ちの奥の奥を、ボクを含め、
世の男性たちはこの映画で勉強しなければいけないかな(笑)。☆3つ。
「ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた」公式サイト

「フライボーイズ」は、第一次世界大戦が舞台の青春映画。
激化する第一次世界大戦。
アメリカは中立の立場で参戦こそしていなかったものの、
自らフランスに渡り、
フランス軍パイロットとして連合国側で闘ったアメリカの若者がいたのです。
そのすべてが自分の強い意志で渡仏したわけではなく、
本国で夢が持てなくなったり、
親に半ば勘当されて来たという若者もいました。
フランス語も話せずに軍隊に合流した彼ら。
新米飛行兵の寿命は3〜6週間。
即、死を覚悟しなければならなかった彼らでしたが、
同じ環境の中で芽生える友情を越えた絆。
仲間の死を目の当たりにしながら、今日も彼らは戦場へと飛び立っていくのでした…。
戦争ものは人がたくさん命を落とすから、見ていてキツいんですけど、
この映画、どこかホワワンというか、拍子抜けした感がある。
なんだろうってよーく考えたんですけど、
おそらくそれは戦時中だという緊迫感に欠けるからだと思うんですね。
空がのどかなんです(笑)。青空が平和な青色なんですよ。
そこに戦闘シーンだけ迫力あるものを持ってきても、
なんか違和感ばかりを感じてしまったんですね。
あくまで個人的な感想ですけど。
実際“ラファイエット戦闘機隊”というアメリカ初の飛行部隊があって、
その実話に基づく映画だそう。
異国の空に命を散らした若者がいたことはしっかり記憶しておかなければなりません。
☆2つ。
「フライボーイズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.11.12

「いのちの食べかた」☆☆☆☆
「カルラのリスト」☆☆☆
「てれすこ」☆☆☆
「転々」☆☆☆
「4分間のピアニスト」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

試写に行けなくて、悲鳴を上げてます(T_T)。
体はひとつしかないので仕方のないところなんですけどね。
できるだけ足を運んで、今後も映画好きのあなたにいい情報をお伝えしたいと思います!
今週は5本です。

「いのちの食べかた」は、食のドキュメンタリー。
実はこの映画、セリフも無ければナレーションも無い。
92分間、ただただ淡々と映像を見せられます。
それは何の映像かと言うと、食肉、魚、野菜、果物、そして卵。
ボクらがスーパーなどで手に取り、
口にする食物はこうやって届けれているんだという衝撃の現実を見せてくれます。
こうして作られるというより、こうしなくちゃまかない切れないという感じ?
コンテンツにして36の映像がシンメトリー、つまり左右対象にこだわった
芸術的なカメラワークであくまで美しく展開していきます。
スーパーで売っている魚の切り身に見慣れている子供が、
魚というのは切り身の形で泳いでるんだと思い込んでたなんて笑い話があるけど、
ボクたち大人だって、さらにその向こう側は全然知らないじゃないかと。
愕然とするかも。
食の安全が危ぶまれている今、必見の1本。
かなりギリギリのシーンもあります。
覚悟して見に行って下さい。☆4つ。
「いのちの食べかた」公式サイト

「カルラのリスト」は、
国連の女性検察官のこちらもドキュメンタリー。
紛争の絶えない世界状勢。
犠牲になるのは、女性や子供などの弱者ばかり。
旧ユーゴスラビア紛争で起きた民族粛清の集団虐殺。
その戦争犯罪人の多くは捕まったものの、大物たちは未だ逃亡中。
なぜなら彼らと利害関係にある国が、彼らを匿っているから。
国連検察官のカルラ・デル・ポンテは戦います。
その姿を追いかけた映画です。
ドキュメンタリーだからこそ見えてくる物語もあって。
まさに“事実は小説より奇なり”ですョ。☆3つ。
「カルラのリスト」公式サイト

「てれすこ」は、小泉今日子、中村勘三郎、
柄本明の3人が主役の人情時代劇。
品川の遊郭で人気の花魁、お喜乃。
なんとか足抜けしたいと、お喜乃に入れ込んでる弥次さんに頼みます。
「実は沼津で病の床にいるおとっつぁんに一目会いたいの」
嘘なんですけどね(笑)。
わかったと弥次さん。そんな時、弥次さんの幼なじみで、売れない役者の喜多さんとバッタリ。
それもせっかくもらった大役をしくじり、自殺を計ろうとしていたところに遭遇。
一命を取り留めた喜多さん、もう一度芸を磨きに西へ行きたいと言う。
ならばと始まった珍道中。果たしてどんな3人旅になりますやら…。
キャストを見て、舞台設定を見て、
なんだか勝手にイメージを膨らませ過ぎちゃったせいか、
正直ちょっぴり食い足りなかったかなぁ。
タイトルの「てれすこ」というのは、落語の演目。
映画の中でも語られます。
でも、あったかい気分でニヤリと笑える1本です。
カイロみたいな温もりが欲しい方は是非。☆3つ。
「てれすこ」公式サイト

「転々」も、ロードムービー。こちらは男2人旅。東京を歩きます。
大学8年生の文哉は、多額の借金を抱えていました。
返済期限はあと3日。そこに借金取りの福原がやってくるんですね。
執拗に返済を求める福原。待ってもらえませんかと懇願する文哉。
すると返済期限の前日、福原がある提案をしてきたのです。
「おまえの借金をチャラにしてやるから、
吉祥寺から霞が関までの散歩に付き合え」と。
さらに100万円もくれると言うではありませんか。
嫌な予感はしたものの、他になす術がない文哉は条件を飲み、
男2人の散歩旅行が始まったのです…。
福原は妻を殺したと。で、桜田門に自首しに行く旅だと。
でもその前に知り合いの女性、麻紀子の家に立ち寄ります。
そこに姪っ子のふふみもやってきて、インスタントの家族が出来上がります。
両親のいない文哉にとって、初めての家庭の温もり。
文哉にオダギリジョー、福原に三浦友和、麻紀子にはまたまた小泉今日子。
こちらも不思議な空気の流れる1本。
グリーンチャンネル近くのラーメン屋さんが出てきましたが、
あなたの知ってる場所が登場するかも?☆3つ。
「転々」公式サイト

「4分間のピアニスト」は、ドイツ映画。
刑務所で受刑者にピアノを教えている女性ピアニストのクリューガー。
そこで彼女はとんでもない才能の持ち主であろう女性服役囚を見つけます。
彼女の名はジェニー。
音楽に一生を捧げてきたクリューガーにとって、
ジェニーの才能を開花させることが
最後にして最大の務めと考えたクリューガーは、
所長を口説き、個人レッスンを認めさせます。
ところが尖ったナイフのようなジェニーとは、ことあるごとに衝突します。
それでもめげないクリューガー。真正面から彼女にぶつかっていくのでした…。
ジェニーが悪の道に走ってしまった理由、原因があるのはもちろんですが、
クリューガーにも人に言えない秘密があったりします。
手錠をかけ、後ろ手にピアノを弾くシーンは圧巻。
もちろんその他のピアノのシーンも息を飲む迫力。
少し前に、タレントやスポーツ選手のわがまま放題が物議を醸し出しましたが、
クリューガーのような指導者がいたら。
そう思って見てたのはボクだけじゃないはず。
魂のぶつかり合いが素晴らしいものを生む。なかなかの感動作です。☆3つ。
「4分間のピアニスト」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.11.1

「ブレイブワン」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週は1本。公開は11月1日です。

「ブレイブワン」はジョディ・フォスター主演作。
NYの人気ラジオDJ、エリカ。
婚約者で医師のデイビッドとの挙式も間もなくで、
幸せの絶頂にあった彼女を、突然の不幸が襲います。
デイビッドと、愛犬を連れて近くの公園を散歩している途中に、
暴漢にあってしまいます。
最初は金をせびり、反抗するデイビッドだけではなくエリカまでをも殴り、
蹴る3人の若者たち。
気付くとそこは病院のベッドの上。エリカは3週間寝込んでいたと。
そして、最愛の彼はもうこの世にはいないと知らされます。
愕然とするエリカ。
外に出るのも怖く、意を決して足を運ぶ警察も対応はおざなり。
エリカが自らを守るために手にしたもの。それは銃でした。
彼女が引き金を引く時は意外と早くやってきました。
立ち寄ったコンビニで、男が妻である店主を撃ち殺したあと、
エリカに気づき近付いて来るんですね。
その時、彼女は初めて人を撃つことになります。
何かが変わった。
エリカの中で、確かにこれまでとは別の自分が生まれていたのです…。
このあと彼女は地下鉄の中の暴漢も撃ち殺してしまいます。なんの躊躇も無しに。
殺されるのはみんな犯罪者。
一体誰の仕業なのか?マスコミは騒ぎたて、英雄視する声まで挙がります。
唯一の話し相手はNY市警のマーサー刑事。
でも最初は暴行事件の被害者として接し始めたエリカに、
感じ出す殺人の匂い。エリカの行動は悲しい必然なのか?
暴力の連鎖が国や人種、宗教間では語られても、
実はその根っこである個人のレベルで起こっている“銃社会”アメリカ。
でも銃こそ使わなくったって日本も同じような状況にあります。
言葉の暴力で死を選択させるような陰湿なイジメ、
自らの欲望を満たすためだけの身勝手な理由による殺人…。
なんら変わらないと思いません?
TVのニュースを見る度に思います。
かけがえのない人を殺されたこの被害家族が、
犯人に手を掛けたとしても、果たして人は、
法は、その人を裁けるのだろうかと。
あくまで仮想ですが、自分の立場に置き換えて見てみて下さい。
考えさせられますよ。☆3つ。
「ブレイブワン」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.10.25

「アフロサムライ」☆☆☆
「ヴィーナス」☆☆☆☆
「この道は母へとつづく」☆☆☆
「スターダスト」☆☆☆☆
「象の背中」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ジョディ・フォスター主演作「ブレイブワン」は11月1日木曜日公開。
こちらは来週ご紹介!今週は5本です!

「アフロサムライ」は、日本アニメの逆輸入作品。
“一番”と書かれたハチマキを巻くものは“神”。
アフロの額には“二番”と書かれたハチマキが巻かれていたのです。
これすなわち“一番”への挑戦権。
“二番”を持つアフロの命を狙って、世界中の剣客がやってきます。
実は“一番”のハチマキはアフロの父が巻いていたんですね。
“一番”を倒すということは、幼い頃に殺された父の敵を取るということ。
果たして思いは叶うのでしょうか…。
アフロの声と制作総指揮はサミュエル・L・ジャクソン、
音楽はRZAというアメリカン・ジャパニーズ・アニメ。
そのアニメ制作は日本のGONZOです。
アフロも“一番”に辿り着くまでにいろいろ経験していく訳ですね。
殺さねば先には進めぬ究極の選択なんかもあって。
情や非情の部分は外国の人にわかるのかなぁ?
和洋折衷、不思議な感覚のサイバーアクション時代劇。
楽しめますョ。☆3つ。
「アフロサムライ」公式サイト

「ヴィーナス」は、老いらくの恋を描いたイギリス映画。
70歳を過ぎたベテラン俳優のモーリスと、親友のイアン。
イアンの元に暫く姪が同居することになったといいます。
いいコだといいなぁと期待に胸を膨らませていたイアンでしたが、さにあらず。
モーリスがイアンを観劇に誘おうと部屋を訪ねると、
そこには慇懃無礼な若い娘がひとり。
ショックで外出どころじゃないというイアンを置いて、
モーリスは嫌がる姪のジェシーを誘って演劇へ。
芝居はつまらなかったのですが、
観客のひとりが若い頃のモーリスの大ファンだったと大興奮。
ジェシーはこの老人がなかなかの有名人だったんだと知るのです。
バーに行こうとジェシー。飲み過ぎたふたりでしたが、
モーリスはしっかりジェシーを部屋まで送り届けます。
その日から、モーリスの心の中に、
長いこと忘れていたあの感情が涌き上がってきていたのです…。
「男っていくつになっても」
これがこの映画のキャッチコピー。
50以上も年が離れたおじいちゃんと若い娘に、
“好意”とは言っても同じ感覚を求めるのは無理。
それでも頑張るモーリスの姿が、滑稽で、あったかくて、
でもロマンチックで、切なくて。
いやいや若いコと飲むとすぐ人生語り出すようになっちゃった
自分を重ね合わせちゃいました(笑)。
おいおい、まだ70歳の人と重ね合わせるのはいくらなんでも早いだろ、
と自分でつっこんだりして(笑)。
どんなふうに年を取ってるのかなぁ。
「男っていくつになっても」。大正解でしょう!☆4つ。
「ヴィーナス」公式サイト

「この道は母へとつづく」は、ロシア映画。
極寒の孤児院。ここに暮らす子供たちが、
この環境から抜け出す唯一の手段。
それは裕福な家庭の養子になること。 今日もイタリア人夫婦がやってきて、
ひとりの少年との養子縁組を決めていきました。 その少年の名はワーニャ。おとなしい6歳の男の子です。
みんなは半分嫉妬から“イタリア人”と呼んでうらやましがるけど、
果たして外国へ行くことは本当に幸せなことなのだろうか?
ワーニャにはわかりませんでした。
そんな時、少し前に養子にもらわれていった
ムーヒンの実の母が施設にやってきます。
ムーヒンに会いたい。涙ながらに訴える彼女を、院長は冷たく突き放します。
「私にはあの子しかいないって気付いたの」。
その言葉を聞いて、
本当のお母さんへの思いがぐっと込み上げてきたワーニャは、
母親探しの旅に出るのでした…。 実話に基づくストーリーだそう。
あるだろうなと思う話だけになんとも切なくて。
ブローカーみたいな人がいて、人道的にどうこうより、
現実問題として、そんな貧しい孤児院をやっていくためにはお金が必要。
そのお金はそうでもしなくちゃ捻出できない訳ですよ。
みんなが幸せになる手段ならいいんだけどね。考えさせられます。
でも子供たちはみんな逞しいですっ。
これなら生きていけるはずと確信できるところに救いがあるかな。☆3つ。
「この道は母へとつづく」公式サイト

「スターダスト」は、イギリス生まれのファンタジー映画。
イギリスの外れにあるウォール村にはその名の通り、
“壁”がありました。
「その向こうには絶対に行ってはいけない」。
その教えを、村人たちは昔からしっかりと守ってきたのです。
しかし、その掟が破られてしまうんですね。
18歳のトリスタンはヴィクトリアに片思い。
ようやくデートに誘った晩、流れ星が壁の向こうに落ちるのを見ます。
「あれを愛の証しとしてプレゼントするから」。
村の掟を破り、トリスタンは壁の向こうへと進入するのでした…。
壁の向こうは魔法の国。実はトリスタンの父も壁を越えたことがあるんですね。
DNAだなぁ(笑)。トリスタンの出世の秘密もそこにあり?
流れ星はかわいい女性で、
若返りの薬になる彼女の心臓を狙って魔女たちも襲いかかってきます。
最初はヴィクトリアのために流れ星を探し、助け、
守ってきたトリスタンでしたが、そんな彼の冒険が、
次第にトリスタンを大人にしていくんですね。
そして知る本当の恋、会ったことのない母親。
宇宙系SFファンタジーというと、飛び道具ビシバシで、
無理矢理つじつまを合わせるものも多い中、
これはストーリーもしっかり練られてました。
大人が楽しめるSFファンタジーに。
さすがイギリス映画って感じ。
ボクの感性にイギリスものは本当によく合います。
あなたはどうでしょうか?☆4つ。
「スターダスト」公式サイト

「象の背中」は、役所広司、今井美樹主演作。
家族愛を描いた感動作です。
建設会社の部長、藤山幸弘、48歳。
妻とふたりの子供を持つサラリーマン。
そこそこの地位と、幸せな家庭を持った彼に突き付けられた非情の通告。
それは、末期癌による余命半年の宣告でした。
愕然とする幸弘。しかし彼は、どうせ助からないならと、
延命治療を拒み、今まで通りの生活を選択します。
妻と娘には内緒で、息子にだけ明かす幸弘。
ところが会社で倒れ、家族全体の知るところとなるんですね。
「俺は、死ぬまでは生きていたいんだ」
幸弘は家族にそう告げ、しっかり前を向くのでした…。
朝10時の試写で見たけど、しまったと後悔(笑)。だって、ねぇ。
決して明るい作品じゃないから。
象は死ぬ時に群から離れてひとり墓場へ向かうと。
この映画のタイトルにはそんなエピソードが含まれています。
果たして幸弘の死に様は?
健康でいなくちゃいけないなって思うはず。
確かに健康一番です。☆3つ。
「象の背中」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.10.18

「インベージョン」☆☆☆
「クワイエットルームにようこそ」☆☆☆☆
「ナルコ」☆☆☆
「ヘアスプレー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

いろいろあって大忙し。試写の予定をズラさなくてはならなくなると、
もう見られない話題作もあったりして。ああ悲しい…。
今週は4本です!

「インベージョン」は、ニコール・キッドマン主演のサイエンス・ホラー。
精神科医のキャロルの元に、別れた夫タッカーから、
息子のオリバーに会いたいという連絡が入ります。
「別れて4年、そんなこと一度も言ってこなかったのに。今さらなぜ?」
タッカーらしからぬ言葉を不思議がるキャロル。
一方、患者の中に「主人が別人に思えて」と泣き出す女性が。
何かおかしいと感じつつ外に出ると、街の雰囲気が違うんですね。
行き交う人に表情が無い。
オリバーをタッカーの元に送り届けたその晩、
ネットで見ると世界規模で家族が別人になっているという書き込みが。
確かに別人のようだったタッカーの顔を思い出し、
「オリバーが危ない」と感じたキャロルはオリバーの元へと急ぐのでした…。
タッカーは爆発したスペースシャトルの対策チームの一員。
どうやら謎の生命体がタッカーの体内に入ったようなんです。
医師仲間と調べたところ、謎の生命体に感染したら、
睡眠が“変異”を呼び起こすんだと判明。
キャロルもタッカーから感染源である液体を吐きかけられてしまいます。
発症せずにオリバーを助けるためには寝てはいけない。
感染者に襲われないためには表情を消さなくてはいけない。
果たしてオリバーを無事救い出せるのかというお話。
斬新なのか、そうでないのか?テーマの設定が微妙だったかも。
ニコール・キッドマンもすっかりホラー女優になっちゃった?
なんて言ったらファンに怒られちゃうかな(笑)。☆3つ。
「インベージョン」公式サイト

「クワイエットルームにようこそ」は、内田有紀の9年振りとなる主演映画。
気付いた時には真っ白な部屋の中。
5点拘束でベッドに固定されて身動きが取れなくなっていたとしたら。
あなたならどうします?
ライターの明日香は締め切り過ぎの原稿を抱え、頭を悩ませていました。
容赦無く鳴る催促の電話。焦れば焦るほど進まない仕事。
そして…。気が付くとベッドの上に固定されていたのです。
丸2日寝ていたと知らされた明日香は「締め切りが!」と慌てるんですが、
クールな看護婦さんは
「早期退院で自殺を繰り返されては病院の責任問題になりかねませんから」
とサラリ。
「自殺?あたしが自殺?」
まったく状況が把握できない明日香なのでした…。
舞台は精神科の入院棟。明日香は薬物過剰摂取でここに連れて来られたのです。
ここにはいろーんな人がいます。
みんな何らかの闇を心に抱えて闘っているのです。
“個性的な”人たちと接することで自分を見つめ直す明日香。
この映画ですごいなって思ったのは女優魂!映画主演久々の内田有紀はもちろん、
拒食症の少女を演じるためにさらにダイエットをしたはずの蒼井優、
多面性を持つ腹黒ババアに大竹しのぶ、
知性の陰に潜む闇を演じきった中村優子などなど。
みなさん実にお見事でした。
明日香の恋人役に宮藤官九郎、監督に松尾スズキとくれば「大人計画」。
ブラックなユーモアの中に見え隠れするシリアスな人間模様。
なかなかのデキですョ。☆4つ。
「クワイエットルームにようこそ」公式サイト

「ナルコ」は、“ナルコレプシー”という、
どこでも発作的に眠ってしまう睡眠障害の男性が主人公のコメディー映画。
小さい頃からナルコレプシーに悩まされてきたギュス。
デート中だろうと、エッチの直前だろうと、突然バタン、グー。
そんな訳で恋愛もままならなかったギュスでしたが、
ようやくひとりの理解ある女性パムと出会い、結婚。
ところが障害を隠して就職してもすぐにバレてクビ。
仕事を転々とするギュスに、わかっていてもイライラが募るパム。
そんな時、ギュスはあることを思い付きます。
寝てる間、夢の中の自分はなんでもやれちゃうスーパーマン。
これを得意のマンガにして描いてみたらどうだろうと。
家族のために頑張って描き始めるギュスでしたが、
悲しいかな、パムには遊んでいるようにしか見えなかったのです。
そんなある日、ギュスは不審な車に跳ねられて、
なんと昏睡状態に陥ってしまったのです…。
パムは浮気に走る。
ギュスのマンガはセラピー仲間のププキンに盗まれて大ヒット作になる。
可哀相なギュスでしたが、ある日、奇跡的に目覚めるんですョ。
そこから物語は面白くなっていく。
実際にある障害ですから、あんまりコミカルには描けないよなぁとも思うんですけど、
でもそこは絶妙のバランス感覚で補ってます。
個性的な1本ですョ。☆3つ。
「ナルコ」公式サイト

「ヘアスプレー」は、人気ブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
舞台は60年代のアメリカ、ボルチモア。
ダンスとオシャレが大好きな女子高生のトレーシーは
地元TV局の人気番組『コーニー・コリンズ・ショー』を見るのが一番の楽しみ。
夢はいつか番組のレギュラーになって、憧れのリンクと踊ること。
ところがその夢を叶えるには、トレーシーはあまりにポッチャリさん。
当の本人はまったく気にしていないんですけどね。
そんなある日のこと、番組オーディションがあると知ったトレーシーは、
母エドナに相談するも猛反対を受けます。
実はエドナもトレーシーと同じような体型。
「恥をかくだけよ」。エドナはトレーシーとは対照的に、内に籠っていたのです。
ところが父ウィルバーは大賛成。
「夢を叶えてビッグになってこい」と背中を押してくれました。
オーディション当日、ほとんど門前払い的扱いで帰されたトレーシー。
やっぱりダメかと諦めかけていたんですが、
ハイスクールのダンスパーティーで軽やかに、
コミカルに踊るトレーシーを見た番組のホスト役、
コーニー・コリンズが彼女をスカウト。
見事レギュラーの仲間入りを果たすや、
持ち前の明るさでみるみる人気者になっていくのでした。
これを面白く思わなかったのが、
番組の女性プロデューサーのベルマと、その娘アンバーでした。
「トレーシーが来るまではアンバーが女子の人気No.1だったのに…」
この番組には視聴者の人気投票で決まる
「ミス・ヘアスプレー・コンテスト」があります。
全米のプロデューサーを呼んでの一大イベント。すなわちスターへの登龍門。
ベルマは娘のためにトレーシーを陥れようと画策するのでした…。
トレーシー母子はLLサイズのファッション店のイメージ・ガールに選ばれるなど、
母エドナも明るくなりました。
いまだ人種差別の多かった時代。
それでも黒人とフランクに仲良くしていたことで
差別反対デモに参加したトレーシーとエドナ。
それが警察沙汰になり、そのゴタゴタの最中にコンテストは進みます。
果たして“ミス・ヘアスプレー”の座は誰の手にってお話。
とにかくPOPでカラフルな映画です。
トレーシー役のニッキー・ブロンスキーは18歳の新人女優。
個性的なルックスを活かすとしたら、
この次の作品はどんな役?って気になっちゃいます。
02年に大ヒットのブロードウェイ・ミュージカル。
でも元々は87年、ジョン・ウォーターズ監督によるカルト・ムービー。
DIVINEという伝説のドラッグクイーン(オカマちゃん)が主役の映画でした。
母エドナに扮するのは女装したジョン・トラボルタ!ですから、
ある意味カルトのDNAは受け継いだのかも(笑)。☆4つ。
「ヘアスプレー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.10.13

「キングダム―見えざる敵―」☆☆☆
「僕がいない場所」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「来週は無さそう」だなんて失礼。ありましたf^_^;
今週は2本です!

「キングダム―見えざる敵―」は、“9.11”を受けての、
アメリカのテロとの戦いを描いた作品です。
サウジアラビアにある石油会社の外国人居住区で自爆テロが起こります。
死者約100人、負傷者はその倍以上にも上る大惨事。
犯人はサウジ警察の制服を着て、盗んだ救急車を使ったもの。
その爆弾もおそらく軍の持つ高性能爆弾だろうと推測され、
主犯は力のあるアルカイダのアブ・ハムザではないかとの見解が示されました。
これにはFBIを送るべきだというアメリカ側の意見も、
サウジの統治能力を疑われてはと、サウジアラビア側が却下。
しかしFBIのフルーリーは、同僚の爆死を知り、
何としてもこの手で解決したいと、さまざまな手を使って、
フルーリーを含む4人のFBIチームをサウジアラビアに送ることを許可させるんですね。
期間はわずかに5日間。果たして真犯人にたどり着くことはできるのでしょうか…。
文化も宗教も異なり、いろんな制約の中で捜査が始まったものの、やはり遅々として進まず。
それでも王子の理解を得て本格的な捜査が可能になると、
いよいよ事件の核心部分へと近付いていきます。
ここからクライマックスまではハラハラドキドキ!
でも本当にこの映画の言いたかったことは、
おそらく最後にボソッとしゃべる互いの一言でしょう。
聞き逃さないように。これが現実です。☆3つ。
「キングダム―見えざる敵―」公式サイト

「僕がいない場所」は、ポーランド映画。
孤児院に預けられている少年クンデル。
詩人を夢見る彼でしたが、とにかく反抗的で友達もいません。
ある日脱走を試みたクンデルは、久し振りに母親の元に帰ります。
ベッドの人影に喜んだのも束の間、母親は知らない男性の腕の中でした。
明らかに邪魔なクンデルの存在。
泣きながら走り出すと、川べりに一艘の船を見つけます。
錆びてボロボロの船でも、クンデルにとっては暖かい自分だけの場所。
道の向こうには豪華な屋敷に灯りが燈っていました。
気が付くと、自分と同じ年ぐらいの女の子が、
お酒の臭いをプンプンさせながら笑っているではありませんか。
少女の名はクレツズカ。そう、向かいの裕福な家の娘でした…。
クレツズカはおブスな女の子。ボクはそうは思わなかったけど(笑)。
彼女には美少女の姉がいて、すごいコンプレックスを感じながら生きていたんですね。
クンデルも自分の環境には負い目がある。
それでもひとり生きてるから、たくましさはクンデルが上。
クレツズカはクンデルのことが好きになります。
食べ物を差し入れたり、こっそりお風呂に入れてあげるなど、接近するふたり。
最初は見て見ぬフリをしていたクレツズカの家族でしたが、
おままごとのような幸せな日々は、そう長く続かなかったのです。
暗い。実に暗いけど、闇の中にポッと燈るロウソクの小さな灯りがすごく明るく、
暖かいように、この映画にもそんなほのかな温もりが散りばめられています。
無情のラストは予想できるかなぁ。ちょいとひとひねり?
そっかぁ…と切なくなりますが、致し方ないかな。
気になる方は見に行ってみて下さい。
クンデルのたくましく生きる姿は見習わないとね。☆4つ。
「僕がいない場所」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.10.04

「白い馬の季節」☆☆☆
「大統領暗殺」☆☆☆
「ローグ・アサシン」☆☆☆
「ロケットマン!」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

来週は映画コラムの更新が無いかも。
というのも今のところ13日公開の映画で試写を見たものが無いんです。
珍しい…。
今週は4本です!

「白い馬の季節」は、モンゴルが舞台の映画。
遊牧民として、妻のインジドマと息子のフフーと暮らすウルゲン。
ところが干ばつ続きで毎日のように羊が死んで行きます。
フフーの学費も払えず、生活にも困ったウルゲンは、
親戚に牧草地を借りに行くも、どこも状況は同じ。
自分の生活で手一杯。
インジドマは収入の足しにと、道端でヨーグルトを売ります。
でもほとんど売れません。
馬も羊も売って、町に行くしかないと訴えるインジドマでしたが、
遊牧民としての生活しかしてこなかったウルゲンには
なかなか決心がつかないのでした…。
アイデンティティと環境問題。
2つの大きなテーマが横たわっているようです。
タイトルにもある“白い馬”は、
家族とずっと一緒に暮らしてきたサーラルという馬のこと。
一度は手放すんですが、
町のディスコのいかがわしいショーの小道具として使われてるのを見て、
ウルゲンは無理矢理連れ戻すんですね。
まるで自分が辱められているようで耐え切れなかったのでしょう。
この家族の将来は?
時代の変化だけでなく、内モンゴルの砂漠化という
環境破壊も大きく影響している現実。
派手な展開はほとんどありませんが、なかなか深い1本です。☆3つ。
「白い馬の季節」公式サイト

「大統領暗殺」は、大胆なシナリオが物議を醸し出したとされる作品。
何と言っても、現役大統領が暗殺されたという設定なのですから。
2007年10月19日、シカゴのホテルで演説を終えたブッシュ大統領が、
リムジンに乗り込もうとしたその瞬間、何者かに銃撃されてしまいます。
2発の銃弾は大統領に命中。そして死亡。
世界中に衝撃が走ります。
警察とFBIが捜査を始めると、デモを行なっていた過激派のリーダー、
イラク戦争の復員兵、イスラム過激派など、
犯人に結び付く有力情報が続々と集ってくるんですね。
そして、犯人逮捕。
この世界を震撼させた事件はこれで幕を閉じるのかと思ったのですが、
新聞の片隅に載った小さな記事が、すべてを覆すのでした…。
各国で上映拒否や辞退が相次いだという話題作。
確かに題材が題材ですから。
ちなみに監督はイギリス人のガブリエル・レンジ。
以前、イラク戦争でアメリカの若者が多数命を落とす中、
ブッシュ大統領が追悼の演説をして、
奥さんの腰に手を回して歩き出す姿をTVで見ました。
でも大統領夫妻の行き先は、バカンスを取るための保養地だと。
人の大切な子供をまるで駒のように戦地に送り出し、
たくさんの命が失くなってる最中にバカンスだと?
なんだこの指導者は?と思ったのを今でも覚えてます。
この映画が現実のものにならないことを祈りつつ。☆3つ。
「大統領暗殺」公式サイト

「ローグアサシン」は、ジェット・リー主演作。
日本の“ヤクザ”役で、石橋凌も出演しています。
FBI捜査官のジャックとトムは、
“伝説の殺し屋”ローグを追い詰め、銃撃。
仕留めたかに思えたのですが、数日後、
トムと彼の家族はローグによって惨殺されてしまいます。
パートナーを殺されたジャックは、ローグに復讐を誓うんですね。
3年後、ジャックの管轄であるサンフランシスコでは、
中国系マフィアと日本のヤクザが激しい縄張り争いを繰り広げていました。
その抗争の炎に油を注いでいたのはあのローグだったのです。
どちらの味方にもなり、どちらをも裏切る。
何の目的で?いったいローグとは何者なのか?
果たしてその真実は…。
これだけだとつかみどころが無いでしょうが、
意外な事実が隠されているというか、
謎めいたローグが最後に観客をアッと言わせます。
この映画、デヴォン青木が石橋凌の娘役で出てるんですが、
彼女見た目は日本人なんだけど、発音はまさに外国人の片言ジャパニーズ。
外国の人が見る分にはわからず違和感が無いのかも知れないけど、
ボクらにはどうも座りが悪くて(苦笑)。
脚本はまずまずよく練れてるなと思うのですが、
正直そこがどうしても引っ掛かります。相殺して、☆3つ。
「ローグアサシン」公式サイト

「ロケットマン!」は、タイのアクション映画。
1920年代のタイの農耕地帯。牛飼いから牛を盗む牛泥棒。
その牛泥棒から牛を奪っては
貧しい人に分け与えていたひとりの若者がいました。
彼の名はロケットマン。
かつて両親を牛泥棒に殺された彼は、
かたきを探しながら憎き牛泥棒を次々と撃退していったのです。
山と積んだロケット砲を自在に操るロケットマン。
そんな彼が遂に、探していた憎き敵と相対する時がやってきたのでした…。
いろんな登場人物が出てきますョ。
悪の閣下、黒鬼とその娘、謎の妖術使い、
サル人間にトラ人間などなど。
ロケットを自在に操るって、道も無い広い荒野でさぁ、
なぜ悪人たちがここを通るってわかってロケットを積み上げてるの?
なんて考えちゃったらもうダメでした(笑)。
理屈じゃないのはわかってるんだけど、ボクはダメなんですよ、こういうの。
いや、完全に好き嫌いの世界だと思います。ごめんなさい。☆2つ。
「ロケットマン!」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.9.27

「エディット・ピアフ 愛の讃歌」☆☆☆☆☆
「幸せのレシピ」☆☆☆☆☆
「ストレンヂア」☆☆☆
「パーフェクト・ストレンジャー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週末公開作品はおすすめの映画がたくさん!
是非映画館に足を運んでみて下さい。
では今週の4本です!

「エディット・ピアフ 愛の讃歌」は、
越路吹雪の代表曲「愛の讃歌」のオリジナル・シンガーとして知られる、
フランス人女性歌手の波瀾万丈の一生を描いた伝記映画です。
1915年、第一次世界大戦の真っ只中、
パリに生まれたエディット・ジョアンナ・ガション。
後のエディット・ピアフです。
父は大道芸人で今は軍隊へ。
母は歌手志望で、道で歌って稼ぐ少しのお金が、母子の唯一の収入でした。
戦争から戻った父が、ほったらかしにされていたエディットを連れて、
自分の母親が営む娼館へ。
そこで働く娼婦たちにかわいがられたエディットでしたが、
体が弱かったこともあって重度の角膜炎を患い、
3歳の時に視力を失ってしまうんですね。
娼婦たちと何度も何度も教会へ行き、聖テレーズに祈りを捧げます。
すると3年後、奇跡的に視力が回復。
聖テレーズの十字架は生涯彼女の心の拠り所となるのです。
そんなある日、父が突然戻ってきて、
自分の大道芸の助手をやらせるために連れて行ってしまいます。
さえない父の芸をよそに、エディットが歌うと何倍ものチップが投げ込まれる。
自分の歌が人の心を動かすんだと知った瞬間。
エディット、15歳のことでした。
父から独立し、街で歌い、恋にも落ち、子供を産むも2歳で亡くし。
そんな彼女に目を着けたのはパリの名門クラブのオーナー、ルイ・ルプレでした。
そのルイがエディットを見て、「小さな君はまるでピアフ(雀)のようだ」。
大歌手エディット・ピアフはこうして誕生したのです…。
成功と挫折の繰り返し。
“禍福はあざなえる縄の如し”を地で行く人生だったエディット・ピアフは、
1963年、47歳でこの世を去ります。
この映画のすごいところは、エディットの壮絶人生だけでなく、
主演女優、マリオン・コティヤールの演技にもあります。
10代から47歳までのエディットを演じていて、特に晩年、
薬や酒でボロボロになったエディットはまるで老女のよう。
そのメイクには毎回5時間も掛けたそう。
年代によって、また感情によって喜怒哀楽異なるエディットの表情、
表現を演じ分けた、鬼気迫る演技は必見です。
芸術の秋にふさわしい1本。おすすめです。☆5つ。
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」公式サイト

「幸せのレシピ」は、
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演のあったかいラブ・ストーリー。
マンハッタンの高級レストラン“22ブリーカー”。
毎日予約のお客さんでいっぱいの超人気レストランです。
その理由は何と言っても美味しい料理。
女性料理長のケイトが作る完璧な料理が、舌の肥えた客をも唸らせていたのです。
ところがその完璧主義も“両刃の剣”。シェフに挨拶をと望むお客さんにも無愛想。
ましてや料理にケチをつけようものなら大激怒。
レアの焼き方がまずいと言われた客の前に
生肉の塊をドンと叩き付けるなどの光景をしょっちゅう見せられていた店のオーナーは、
ケイトにカウンセリングを受けにいくよう命じます。
四六時中、料理のことしか頭にないケイト。もちろん恋愛にも縁がない。
ところがそんなケイトの人生をガラリ一変させるアクシデントが起こるのです。
それは唯一の肉親、姉の突然の交通事故死でした。
姉には9歳の娘、ゾーイがいます。
そのゾーイを引き取って母親代わりを務めることになるのですが、
これがなかなかうまくいかない。
自慢の料理も口さえ付けてもらえません。
そんな中、職場に戻ったケイトはビックリ!
何と自分の聖域たる厨房に男がいるではありませんか!
それもラジカセから大音量で音楽を流し、
軽口を叩きながら料理を作っている軽薄そうな男が。
聞けばケイトが休んでる間に雇い入れた副料理長のニックだとか。
ケイトは呆然と立ち尽くすのでした…。
ここから始まるケイトとニックの物語。
実はニックは某有名店の誘いを断ってこの店に来たんです。
それは評判のケイトと仕事がしてみたかったから。
でも完璧主義者のケイトは絶対にこの場所は譲らないと。
しかし、姪っ子のゾーイはなぜかニックの作るパスタなら美味しそうに食べるのです。
なぜ?どうして?
恋愛はマイナスから始まった方が加点式で
“好き”が増えていくからいいというのは今や定番のお話。
ケイトとニックも入口はそんなでした。
ただもうひとつ、根っこの部分が同じだというのが大きかったはず。
ふたりにとっては共通の“料理”です。
“子はかすがい”という言葉があるけれど、共通の趣味や生きがいも立派な“かすがい”。
ふたりをつなぎ止めてくれていた気がします。
ボクは自分の経験上、結婚生活がうまくいかなかったことについていろいろ悩みました(笑)。
でもこの映画に、「根っこが違ったんだから仕方ないさ。
いいとか悪いとかじゃないんだって」と慰めてもらったんじゃないかなと。
妙に清々しく試写会場をあとにしたのを覚えてます(笑)。
うまく行ってるふたりは再確認を、
危機にあるカップルには何かヒントを与えてくれる1本ですョ。☆5つ!
「幸せのレシピ」公式サイト

「ストレンヂア」は、BONES(ボンズ)制作の時代劇アニメーション。
荒果てた戦乱の時代、中国から日本に渡って来た天涯孤独の少年、仔太郎。
彼の身体には驚くべき秘密が隠されており、
それを追って謎の武装集団も日本に上陸していたのです。
荒れ寺に身を隠していた仔太郎は奇妙な剣士“名無し”と出会います。
最初は反目し合うも次第に心を開くふたり。
しかし強靱な追っ手が、すぐそこに迫っていたのです…。
この映画も演者がすごくて、それは誰かというと、
名無しの声をやったTOKIOの長瀬智也。
声優初挑戦だったらしいんですが、声だけの演技ってホント難しいんです。
よく洋画の日本語吹替え版あるでしょ?
あれ見てガッカリした経験のある人いませんか?
名のある役者やタレントさんだからといってうまくできるとは限らない。
感情込めても演じている側が思うほどには表情になってないことが多いんですよね。
その点、長瀬くんはすごい。たいしたものです。さすが一流芸能人!☆3つ。
「ストレンヂア」公式サイト

「パーフェクト・ストレンジャー」は、
ハル・ベリー、ブルース・ウィリス主演のサスペンス・ミステリー。
やり手の女性新聞記者、ロウィーナ。
彼女が半年もの歳月を掛けて追ってきた上院議員のスキャンダルが、
上層部の圧力で揉み消されてしまいます。
納得のいかないロウィーナは迷わず新聞社を退社します。
数日後、彼女の元に1本の電話が入ります。
それは幼ななじみのグレースのお母さんから。
聞けばグレースがNY郊外で変死体となって発見されたと警察から連絡があり、
その遺体確認を頼めないかという内容。愕然とするロウィーナ。
なぜなら会社を辞めたその日に、
地下鉄のホームで偶然グレースと会って言葉を交わしていたからなんです。
その時の会話を思い出してみると、グレースが口にしていたのは、
広告業界の超大物、ハリソン・ヒルとの不倫のことでした。
ネットで知り合い深い仲になるも、最近は冷たくされ音信不通になったと。
このことを新聞で暴いてくれないかという復讐話だったのです。
ロウィーナは幼ななじみの死の真相を探るべく、
偽名を使って派遣社員としてハリソン社に潜入するのでした…。
“完全なる別人”というタイトルにヒントあり。
「ラスト7分11秒まであなたは騙される」と、
TVのCFがあおってますが、確かに最後はエッと思わされます。
登場人物は他にも、ハリソンの妻、秘書、ロウィーナの恋人、
新聞社時代の同僚などなど、たくさん。誰かが嘘をついている訳で。
あ、もう言わない(笑)。
ラストでエエ〜ッと思わされていると、
更にその次に待っているエエエ〜ッの衝撃(笑)。
ラストのカットは必見のオチ。
よくできてます。面白かったですョ!☆4つ。
「パーフェクト・ストレンジャー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.9.21

「アーサーとミニモイの不思議な国」☆☆☆
「ヴォイス・オブ・ヘドウィグ」☆☆☆☆
「さらばベルリン」☆☆☆
「サルバドールの朝」☆☆☆
「ファンタスティック4:銀河の危機」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

早くもお正月映画の試写案内が届くようになりました(@_@)。
ボクらの世界では来年の話をしても鬼もちっとも笑わないみたいです(笑)。
さ、今週は5本です!

「アーサーとミニモイの不思議な国」は、
あのリュック・ベッソン監督が手掛けたファンタジー映画。
アーサーは10歳になる男の子。そのアーサーの家が今大変なことになっています。
明日までに借金を返さないと出て行かなくてはならないのです。
そんな時、アーサーは屋根裏で、
失踪したおじいさんが残した宝の地図を発見するんですね。
冒険好きのアーサーは宝探しの旅に出ます。
とは言っても、そのお宝があるのは体長2ミリのミニモイ族が住むミニモイの国。
果たしてアーサーは財宝を手に入れることができるのでしょうか…。
そのミニモイの国はアーサーの家の裏庭にあります。近い(笑)。
アーサーはミニモイ族に変身してミニモイの国に潜入。
そして愛と勇気の冒険が繰り広げられていきます。
声の出演も豪華ですよ。マドンナ、デイヴィッド・ボーイ、ロバート・デ・ニーロ、
そしてラッパーのスヌープ・ドッグなどなど。
フランスのファンタジーものはやっぱりアメリカのそれとは少しだけ感覚が違う。
detailの部分だと思うけどね。素直な心で楽しんで下さい。☆3つ。
「アーサーとミニモイの不思議な国」公式サイト

「ヴォイス・オブ・ヘドウィグ」は、ジョン・キャメロン・ミッチェルの代表作
「ヘドウィグ&アングリーインチ」のアンサー・ムービー的作品。
「ヘドウィグ&アングリーインチ」は、
生まれた時から男であることに違和感を感じていたヘドウィグが、
性転換手術もして、自分探しの旅に出ると。
でもオチンチンが1インチだけ残ってしまって、
それがヘドウィグの“怒りの1インチ”だってお話でした。
監督・主演のジョン・キャメロン・ミッチェルは、
自身もゲイであることをカミングアウトしてるんですが、
彼と音楽プロデューサーのクリス・スルサレンコが、
ヘドウィグが劇中で唄う歌たちのトリビュート盤を作ろうと企画するんですね。
これがチャリティー盤になるんですが、何のチャリティーかというと、
NYにはゲイの若者のための公立の高校が作られました。
日本じゃちょっと考えられないでしょ?
でも“人と少し違う”というだけでいじめられたり、
迫害されたりしてきた青少年を受け入れるためということで実現したんだそうです。
創設者の名を付けて、ザ・ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールというんですが、
やはり「税金の無駄遣いだ」などの反対意見も出て、
事実、創設者のハーヴェイ・ミルクは反対派の人間に射殺されてしまったそう。
だからその高校を含め活動する団体へのチャリティーということで始まった企画。
その主旨に賛同してアルバムに参加したのは、
ヨーコ・オノ、シンディ・ローパー、ベン・フォールズ、
ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツなど実に豪華な面々。
映画はそのアルバムの制作課程と、ハーヴェイ・ミルク高校の生徒の中から
数人にスポットライトを当ててのドキュメンタリーとなっています。
個性的でありたいと思いつつ、一方で違い過ぎると逆に不安を感じたりもする。
ファッション、思想、ボクたちだってみんなそう。
“自分らしいってどういうこと?”というのを考えさせられる1本です。
ちなみにこのアルバムは『ウィッグ・イン・ア・ボックス』というタイトルで、
日本でもエイベックスから4年前に既にリリースされています。
「愛の起源(ザ・オリジン・オブ・ラブ)」という曲がすっごくいい曲で、
ちょっと紹介しましょうか。
昔、人間は腕と足が2組ずつ、大きな頭に顔が2つあって、
いろんなことに便利だったけど、まだ愛は知らなかったと。
性は3つあって、男男と女女と男女。
ある時、人間の力を怖れ始めた神様が人間を真っ二つに切り裂いたそう。
で、切り離された互いが互いをじーっと見つめていて、痛みも同じだけ共有したと。
これが初めて知った“愛の痛み”で、今でも人間は自分のくっついていた半分の体、
すなわちパートナーを探しているんだと。これが愛の起源なんだと。なんかいいでしょ?
そんな中、男男と女女は切り離されてゲイになったということになる訳ですかね。
気になる人はお取り寄せで是非!☆4つ。
「ヴォイス・オブ・ヘドウィグ」公式サイト

「さらば、ベルリン」は、モノクロ作品。
あえてその色にしたところにこの映画の核たる部分があるようです。
1945年のドイツ・ベルリン。
第二次世界大戦の敗戦を受け入れたこの国に、
多くの連合国軍の関係者がやってきていました。
アメリカ従軍記者のジェイクもそのひとり。
でもジェイクにとってベルリンは、思い出の地でもあったのです。
なぜなら彼はここで通信社を経営していたから。
そんなジェイクには会いたい女性がいました。昔の恋人、レーナです。
再会を果たすジェイクとレーナ。
しかしレーナは、もう以前の彼女では無くなってしまっていたのです…。
戦時下で、したたかに生きて行くにはどうすべきか、
またどうしなくてはならなかったのか。
様々な登場人物の表と裏の顔と共に、
あの時代のベルリンが天然色以上に生々しく描いています。
ちょっとわかりづらいところがあって、見終わって正直眉間にシワを寄せていたボクですが、
試写に来られる年配の方の話を小耳にはさむと、この映画は良いと。
ジェネレーションギャップなのかなぁ?
ちなみに、ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット、
トビー・マグワイヤと出演陣は豪華です。☆3つ。
「さらば、ベルリン」公式サイト

「サルバドールの朝に」は、70年代のスペインで起こった実話に基づくストーリー。
独裁国家だったスペインに生まれた、ごくごく普通の青年、
サルバドール・プッチ・アンティック。
しかし人よりわずかに正義感が強かった彼は、周りの心配をよそに、
反体制運動へと傾倒していきます。
その活動資金を得るための銀行強盗。それも彼らの中では正義だったのです。
仲間の裏切り、罠、警官への誤射、殺人、そして逮捕。
サルバドールは何とか生き延びたいと願うのですが、
待ち受けていたのは受け入れがたい過酷な運命でした…。
まず、70年代のスペインが独裁国家だったなんて。知らなかったです。
初めは看守もサルバドールをゴミのように扱うのですが、
接点を持ち始めるとなぜ反抗するのか、その純粋な根っこの部分に打たれ始めるんですね。
死刑を言われ、彼を救い出せと、国の内外から声が上がるんですが…。
もう少しやり方は無かったんだろうか。それを若さと言って片付けるには、
サルバドールは生きることに執着があり過ぎたような気がします。
そこが今でもいい意味で英雄として祭り上げられない理由なのかも?
でも彼の死が母国スペインに教えたものは大きかったはず。
それでも決して英雄の死ではなく、
単なるひとりの青年の死として語り継がれているのだそうです。☆3つ。
「サルバドールの朝に」公式サイト

「ファンタスティック4:銀河の危機」は、
人気アメリカン・コミックの実写化。シリーズ2作目です。
宇宙放射線を浴びたことで超人と化した4人。
伸び縮みなど自在に体を変化させるリード、
透明になれる紅一点のスーザン、スーザンの弟で火の玉になって空を飛ぶジョニー、
岩石ボディに強大なパワーを秘めたベン。
今じゃヒーローとして全米の人気者でした。
平和な毎日を過ごしていたある日のこと、
銀色の人間のような生命体が、銀色のサーフボードに乗って空を飛んでいるのを発見。
“シルバーサーファー”と名付けたその生命体について調べてみると、
なんと彼の現れた惑星は、例外なく8日以内に消滅しているのです。
地球滅亡の危機を果たしてファンタスティック4は救えるのでしょうか…。
実はリードとスーザンは結婚することになっていたのですが、
それどころじゃなくなってしまいます。
なんかかなりちりばめられた小ネタが正直う〜んって感じだったかなぁ。
シルバーサーファーも意外と…、あ、言えない(笑)。
ちょっと辛口だけど、ごめんね。☆2つ。
ちなみにこの作品は、21日金曜日の公開となっています。
「ファンタスティック4:銀河の危機」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.9.13

「ストンプ・ザ・ヤード」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

8月に見たたくさんの映画たちが続々公開となる時期。
今週は1本です。嵐の前の静けさ?では早速いきましょう!

「ストンプ・ザ・ヤード」は、ダンス・バトル・ムービー。
デュロンとDJはストリート・ダンスを得意とする仲のいい兄弟。
ダンス・チームを作っていて、
クラブでダンス・バトルを行っては相手チームを打ち負かし、
観衆の喝采を浴びていました。
ところがある夜のこと、マズい相手と戦うことになり、
「ヤツラの地元なんだから花を持たせてやれ」という兄デュロンの言葉を、
弟のDJは無視。独り突っ走る形で相手の鼻をへし折ったのでした。
顔に泥を塗られて黙っている連中じゃない。嫌な予感は的中します。
帰り道を待ち伏せされ乱闘となり、なんとデュロンが射殺されてしまうんですね。
あの時、兄の忠告を受け入れていたなら。
悔やんでも悔やみ切れない夜になってしまったのです。
兄の遺志だった大学進学をと、DJは心機一転、
LAから伯父伯母の住むアトランタへと引っ越します。
実は伯父が植木や芝の管理を任されていたのがトルース大学。
そんな関係も手伝って、DJはこの大学への入学が許されました。
昼は勉強、放課後は芝刈り。これがDJの日課となったのです。
ところがそんなある日、DJの目はひとりの女子学生の姿に釘付けになります。
彼女の名はエイプリル。エイプリルのあとを追ったDJは、
偶然“ストンプ”の現場に遭遇します。
黒人学生で作る友愛会のダンス・チームによる一糸乱れぬダンス。
それがストンプでした。
この大学には2つの友愛会、ガンマとテータがあって、
互いにライバル視していたんですね。
とは言っても、ガンマはストンプの全国大会を7連覇中の名門。
エイプリルの恋人、グラントもこのガンマのメンバーだったのです。
夜の大学のクラブ・パーティで、「俺の女に近付くな」とDJを牽制するグラント。
そのグラントを得意のストリート・ダンスで圧倒するDJ。
それを見ていたガンマとテータの幹部たちはそれぞれに、
DJの才能に興味を持ち近付いてくるのでした…。
ストンプとは、正しくは“数世紀前のアフリカン・ブート・ダンスを起源とする舞踏で、
ステッピングとかステッピンとも呼ばれ、正確なステップを踏みながら、
手足で音を立ててリズムを刻むもの”だそうです。
多くの人間が関わりながら、統一された動きで魅了する。
DJには最も苦手な部類のこと。でも彼は兄の言葉を思い出すのです。
独り突っ走る自分を止めてくれようとした兄の言葉を。
DJがどちらに入るか、エイプリルとの恋はどうなるのか、それは見てのお楽しみ。
恋愛の方のストーリー展開も意外とよくできてました。
冒頭のストリート・ダンスのバトルも、ストンプのバトルも、どちらもすごい迫力です。
全編見所って感じ。音楽もいいので、
ダンス系好きの人は大きなスクリーンで是非!☆4つ。
「ストンプ・ザ・ヤード」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.9.8

「GROW―愚郎―」☆☆☆☆
「ミリキタニの猫」☆☆☆
「ロンドン・コーリング/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

9月になって専門学校の授業も再開。映画の試写に行ける時間がぐっと減りました。
そんな中でも朝10時の会なら行けるんですけど、う〜ん、起きられない。
睡魔に勝てない(笑)。
無理して行っても試写の最中に寝ちゃってはと言い訳をして
目覚まし時計を止める自分がいます。困ったものですf^_^;
さ、今週は3本です!

「グロウ―愚郎―」は、いわゆる“ゴースト・ストーリー”。
酒乱の父のDVに悩み、学校ではいじめられ、17歳の敦は自殺を決意します。
薄暗い廃屋に入り込み、首を吊ろうとしたその時、
3人の学ラン姿の男が現れ、こう言ったのです。
「おいおい兄ちゃん、ここで死なれちゃ困るのぉ」。
それは伝説の不良、泰三、鉄治、淳一でした。
この3人、学ランは着てても年はとうに30オーバー。
それでも醸し出すオーラが違うと、敦は現状打破のため、
放課後になると毎日3人の元へと通うようになります。
男とは何か、生きるとはどういうことか、3人は敦に教えていくんですね。
しかし、この3人、実はすでにこの世を去っていたのでした…。
いじめっ子から逃げる逃げ足の早さから陸上部の顧問にスカウトされたり、
クラスのひとりの女の子に気に掛けてもらったりと、
敦も目標を見つけて徐々に成長して行きます。
ストーリーに目新しさは無いけれど、
武骨で不器用に真直ぐな不良たちがとても輝いて見えるのです。
何が“良”で、どうしたらそれを否定する“不”の文字が付いて“不良”となるのか。
現代の“いいコ”の方が、よっぽど怖いかも知れませんョ。
考えちゃいました。☆4つ。
「グロウ―愚郎―」公式サイト

「ミリキタニの猫」は、アメリカに生きる87歳の日本人路上生活画家の話。
ジミー・ミリキタニ。1920年、カリフォルニアに生まれ、
母の故郷である広島に帰るも軍国主義を嫌がり、芸術に生きようとアメリカに戻ります。
しかしそのアメリカが彼を含む日系人を強制収容所に送り込んだため、
その抵抗の証として自らアメリカの市民権を放棄したのです。
戦後も当然何の恩恵も受けられず、路上生活を余儀なくされることになります。
自らをアーティストと胸を張るジミーは、6歳から猫を描いてきました。
その絵を買ったことから親交の深まった女性監督のリンダ・ハッテンドーフが、
彼を自分のアパートに呼び寄せ、共同生活を始めます。
そしてジミーの数奇な人生を一緒に追って行ったのです。
リンダのリサーチでわかる様々な事実。日本とアメリカとの、また個人と国との戦い。
アイデンティティとは何か、
あの時代、自分が自分でいるためにどんな自分でいなければならなかったのか。
いろいろ考えさせられるはず。 でもファミリー・ネームの持つパワーを思わされる場面があります。
このミリキタニ氏は漢字で“三力谷”と書くそうです。
そう多くない名字であったこと、
それが年老いたジミーに希望の光を与えてくれることとなります。
まるで先祖が守ってくれたかのような。
遠くアメリカの地でも、やはり彼は日本人だったのかなと。☆3つ。
「ミリキタニの猫」公式サイト

「ロンドン・コーリング/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」は、
80年代を代表するパンクバンド、クラッシュのボーカル、
ジョー・ストラマーの生涯を描いたものです。
インド生まれの外交官の父と、スコットランド出身の優しい母の間に、
1952年に生まれたジョン・メラー。
彼こそが“掻き鳴らす者”という意味の“ストラマー”を名乗ることになる
THE CLASHのボーカル、ジョー・ストラマーでした。
青年期は美術学校で絵画を学び、74年にロカビリーバンド、
101ers(ワンハンドレッドワナーズ)を結成。
シングルもリリースするんですが、あるライブで彼らの前座を務めたのが、
あのセックス・ピストルズで、
あまりの衝撃にジョーの中のすべてが吹っ飛んだといいます。
その後、パンクバンドのクラッシュに参加。
翌年バンドはCBSと契約。
70年代後半から80年代初頭のパンクシーンを
牽引する存在へとのし上がっていくのです。
ところがバンドによくあるメンバーの不仲、
酒、クスリ、金銭問題などでクラッシュは空中分解してしまいます。
ジョーは言います。
「大きなステージでやればやるほど歌に責められる気がするんだ」。
わかる気がするかなぁ。
だって世の中の不条理や時代の矛盾に普通の人目線で怒り、
叫んでいたパンク魂が、こんな大きな商業ベースのステージで
歌ってていいのかという話ですよね。
そして世の音楽ファンからは「あれはポップバンドだよ」
という声も聞こえるようになる。
それ以上にショックだったとジョーが語るのは、
後のイラク爆撃の爆弾の弾頭に、彼らの代表的ヒット曲のひとつでもある
「ROCK THE CASBAH」の文字があったこと。
TVでその映像を見ながら、ジョーは泣いたそうです。
その後、ずっと音楽ができない状態が続いたんですが、
晩年、彼は本当にやりたい音楽を見つけるんですね。
それがジョー・ストラマー&ザ・メスカレロス。
そのバンドのライブのために街でチラシを配るジョー。
若い女の子は彼を知らないから、まったくもって素っ気ない(笑)。
あのジョニー・デップやU2のボノがリスペクトするアーティストですよ。
でもジョーはいい顔で笑うんです。一番印象的なシーンかも。輝いてたなぁ。
さらに、仲違いしたギタリストのミック・ジョーンズと久々の共演になったのも、
02年、ロンドンの消防士たちへの慈善公演の小さなステージでした。
パンクに目覚めた頃の、あの最初のジョー・ストラマーに戻った瞬間でもありました。
しかしそのわずか1ケ月後、
ジョーは自宅で心臓発作のために死亡してしまいます。50歳の若さでした。
傲慢さも、成功も、挫折も、崩壊も、そして再生も。
生き様自体がパンクだった彼の一生。
クラッシュの音楽を知らなくても大丈夫!是非見に行ってみて下さい。
チラシを配るジョーのあの笑顔に満点の☆5つ!
ちなみにサントラは『ザ・フューチャー・イズ・アンリトゥン』。
“まだ将来は書かれていない”すなわち“人は何だって変えられるんだ”
という彼のメッセージがタイトルで、
ソニー・ミュージック・インターナショナルからリリースとなっています。
「ロンドン・コーリング/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.8.31

「明るい瞳」☆☆☆
「チャーリーとパパの飛行機」☆☆☆
「ブラック・スネーク・モーン」☆☆☆
「ルーツタイム」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

8月は22本。映画評論家でもないのに(笑)よく見たなぁと、
自分でも感心しちゃいます。
いい作品もありましたョ。紹介する日が楽しみです!
さ、今週は4本です!

「明るい瞳」は、フランス映画。
フランスの小さな村で兄夫婦のガブリエル、セシルと暮らす、ファニー。
人とコミュニケーションを取ることが苦手なファニーは、
兄ガブリエルとはまずまずうまくやっているものの、
兄嫁のセシルとはウマが合いません。
ある日、街でセシルの姿を見つけたファニー。
後を付けて行くと、セシルが知らない家に入り、
兄ではない男性と抱き合っているではありませんか。
そう、浮気の現場を見てしまったんですね。
セシルもファニーに気付き、ハッとします。
家に帰って、気まずい空気が流れる中、ガブリエルが帰宅。
言葉でうまく伝えられないから黙ってはいるものの、
嘘でごまかすセシルにイライラがつのるファニー。
遂にはキレて、セシルに傷を負わせてしまいます。
この家にはもういられない。そう思ったファニーは車に乗ってひたすら東へ、東へ。
ところが深い森の中に迷い込んでしまいました。
そこで出会ったのは、ファニーにはわからないドイツ語を話す男性、
木こりのオスカーでした…。
オスカーの言葉がわからないから、苦手な言葉は必要ない。
それが逆にファニーには安心できたのかも知れません。
ボクが言うのも何だけど、言葉って難しいものですからね。
こちらの意図していない内容で相手に届いちゃうこともある。
「そんなつもりで言ったんじゃないのに…」。
“大人のためのおとぎ話”とプレスにはありました。
何か教訓を学び取ることができるかも。☆3つ。
「明るい瞳」公式サイト

「チャーリーとパパの飛行機」も、フランス映画。
チャーリーのパパは軍のパイロット。
なかなか家には戻れないパパが久し振りに帰って来るクリスマスの夜。
チャーリーは約束していた自転車のプレゼントと共に、
パパの帰りを心待ちにしていたんですね。
ところが遅れて帰ってきたパパのプレゼントは自転車ではなく、飛行機の模型。
いくらパパの手作りと聞いてもあんまりうれしくはありませんでした。
すぐにまた出張に出てしまうパパ。
しかし、そのパパがなんと事故で亡くなってしまうのです。
哀しみにくれるママとチャーリー。
チャーリーは、パパからの最後のプレゼントとなってしまった飛行機を
愛しそうに抱いて寝ます。
すると不思議なことが起こります。
飛行機がひとりでに動き始めたのでした…。
シンプルに削ってあるだけの飛行機。白いグライダーのような模型です。
しかしそこには最新の技術とパパの魂が込められていたんですね。
これからその飛行機がいろんなドラマを引き起こし、
パパの愛もいっぱい知ることになります。
CG全盛期に手作りの暖かさが伝わってくる映像。
もちろんCGも使ってはいるんですが、
主役のひとりでもある“パパの手作り飛行機”同様の温もりを感じられる1本です。
ちなみに原作はベルギーのコミックだそう。
夏のアニメで映画に興味を持ったお子さんと見るにはいいかも知れません。
まだちょっとムズかしいかな(笑)。☆3つ。
「チャーリーとパパの飛行機」公式サイト

「ブラック・スネーク・モーン」は、サミュエル・L・ジャクソン主演作。
アメリカ南部の田舎町に住んでいたラザラス。
元は地元の小さな酒場で歌うブルース・シンガーだったのですが、
結婚してからは畑を耕し、地道にコツコツと生活をしていました。
ところが、そんな生活に飽き足りなかった妻が、
事もあろうかラザラスの実の弟と関係を持ってしまうんですね。
怒り狂うラザラス。気持ちを落ち着かせる術が彼には見つかりませんでした。
そんなある日、家の近くにほとんど裸の状態で血を流し倒れている白人の少女を発見します。
連れ帰り看病するラザラス。朦朧とする意識の中で、
汚い言葉と恋人だろう男の名前を繰り返し叫び続ける少女。
ラザラスは少女の心に巣くう闇を見つけます。
そして彼女の心に光を当ててあげることこそ神が与えた自分の使命と、
少女を太い鎖でつなぎ、逃げられないようにするのでした…。
善意の監禁?ラザラスにとってはそうでしょうが、少女はビックリ。
気付けば目の前に知らない黒人男性がいて、
自分は知らない家の中で鎖につながれているのですから。
彼女の名はレイ。幼い頃に受けた性的暴行で心身共に傷を負い、
セックス依存症になってしまったのです。
極度の不安症を抱える恋人のロニーと支え合っていたのですが、ロニーが兵役に。
その間、ロニーの友達と関係を持ってしまい、
その友達とトラブルになって殴られ車から落とされた場所、
それがラザラスの家の近くだったんですね。
このあとロニーは兵士として不適合ということで除隊を命ぜられてしまいます。
またまた心の傷を深めて町に帰ってくるロニー。
唯一の拠りどころであるレイを探すも見つからない。
やっと見つけたらなんと黒人の家で監禁状態。ドラマはまだまだ動きます。
ただ、自分が妻に逃げられたことへの自分自身への贖罪なのか、
ラザラスにあったのは「なんとかこの子を助けたい」の一心であったことは確か。
果たしてそれが伝わるのかどうか。
ボクはラストシーンを見てもハッピーエンドとは言えないんじゃないのかなぁと。
もちろんこれだけじゃ何のことやらさっぱりわからないと思いますが(笑)。
闇vs闇に闇が絡んでくるみたいな映画です。ますますわかんないかな(笑)
ちなみにタイトルは伝説のブルース・シンガー、
ブラインド・レモン・ジェファーソンの曲から取ったそう。
ソウルが“魂”の歌だとすればブルースは“本能”の歌。
映画も同様に深層心理を描いています。☆3つ。
「ブラック・スネーク・モーン」公式サイト

「ルーツ・タイム」は、アルゼンチン監督がジャマイカで撮ったレゲエ映画。
バブーとジャー・ブル、ふたりのラスタマンが
赤黄緑の派手なオンボロ車にレコードを載せ、街を走ります。
一応これ、移動式レコード・ショップなんです。
突然目の前に現れたヒッチハイクの男。
聞けば、彼女の体調が悪く病院に行きたいので乗せて欲しいとのこと。
最初は断るふたりでしたが、病人を見捨てたとあっちゃ
ラスタマンの誇りに関わると彼らを車に乗せるんですね。
「嘘だったら承知しないからな」。
しかしよく見ると、男はさっきまでラジオでしゃべっていた人気DJ。
なんか怪しい。デートじゃないの?
街の病院へというふたりに対し、バブーとジャーは「西洋医学は“悪”だ」と、
薬草で何でも治すと評判のボンゴ・ヒューという
ラスタの医者のところへ連れて行こうと強引に山中へ。
街へ行けと言うDJたち。
さぁこの珍道中、どんな結末が待っているのでしょうか…。
ゆるいです。かなりゆるゆる(笑)。
起承転結とか抱腹絶倒を求めて行くと裏切られるかも。
ジャマイカの人もすべてがラスタファリアンじゃないですからね。
それは鳥取が全部砂地だっていうのに近い誤解(笑)。
西洋文化をバビロンと言って悪とみなし、アフリカ回帰を唱え、
ジャーを唯一神として崇めるのがラスタファリアン。
なんとなく彼らの日常が垣間見れる1本。ただしボクにはゆる過ぎました。
ボクの生活は完全にバビロンだからね(笑)。☆2つ。
「ルーツ・タイム」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.8.22

「親父」☆☆☆
「シッコ」☆☆☆☆☆
「ショートバス」☆☆☆☆
「スピードマスター」☆☆☆
「TAXI4」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ボクのやっているNACK5「ザ・グレイテスト・ヒッツ!」で、
最近映画会社から頂戴するグッズをプレゼントすることが多くなりました!
ありがたいことです。あなたも是非応募してみて下さいね。
さ、今週は5本です!

「親父」は、人気劇画の実写化。主演は千葉真一です。
プロボクサー志願の伸吾はチンピラ仲間との縁が切れず警察沙汰に、
姉の洋子はヤクザの恋人に暴力を振るわれアザだらけ。
そんな2人の子供を心配そうに見守る母、敏子。
3人家族の歯車が狂ったのは、父、竜道が亡くなったあの火事からでした。
お盆を間近に控えたある夜、実家に逃げ帰っていた洋子を迎えに来た恋人の津川。
むろん殴る蹴るの暴力三昧。姉を助けることのできない伸吾。
泣き叫ぶ敏子。そんな時、玄関にあの強かった父、竜道が現れたのです…。
最初は感動の家族映画かと思ったんですが、原作のタッチを見ると、
おそらくコミックの要素もあるのかなと。
ならば千葉真一の熱い、いや熱苦しい?演技も納得。
なんて完全真面目モードだったら怒られちゃいますね(笑)。
もちろん感動のシーンもそれなりにぐっと来て、
単館レイトショーものにしてはまずまずです。☆3つ。
「親父」公式サイト

「シッコ」は、モノ言う映画監督、マイケル・ムーアの最新作。
アメリカの医療問題に鋭くメスを入れた話題作です。
アメリカは国民皆保険制度、つまり国民がみんな何らかの形で
保険に加入するシステムが無いんです。
じゃあどうしてるのかと言うと、民間の保険会社の保険に掛け金を払って加入、
ケガや病気の際には審査を受けて保険金が下りると。
しかし民間の企業ですから、利潤を追求する。するとどうなるか?
保険会社はあれこれ難癖付けては保険金を払わないようになる訳です。
審査に当たるのも当然医師なんですが、数多く“却下”すればするほど出世するという、
ホントに病んだシステムになっていて、
そこには政治家と保険会社の癒着も存在するんですね。
その裏で、助かるものが助からなかった命もたくさんあるというのです。
例えば20代で癌になった女性が治療を受けたいからと申請すると、
「あなたの年齢でその癌になることはありえない。ゆえに却下」。はぁ?
また工場で2本の指を誤って切り落としてしまった男性の話も出てきます。
病院で提示されたのは
「中指なら6万ドル、薬指なら1万2千ドル。どちらをくっつけます?」
。保険に加入していなかった、というより入れなかった彼は
“安い”方の薬指を選択したそう。えぇっ?
どちらも嘘のような本当の話。
ならばと他の先進国を訪ねるムーア監督。
カナダ、イギリス、フランス、みんな国がしっかり補償しているんですね。
アメリカの仮想敵国たるキューバですらそう。
高額医療費に悩む人や、9.11のボランティアで肺をやられた消防士を
キューバに連れて行くムーア監督。
アメリカじゃ120ドルの薬がキューバじゃ5セントなんですね。
あの体を張った消防士のみなさんはヒーローだったんじゃないんですか?
そんなアメリカ人にキューバの医師は言います。
「何も心配しないで。大丈夫、治してあげますから」。
でもここでひとつ考えてみて下さい。
ムーア監督は日本をいいサンプルとして取り上げてないのです。
国民皆保険の国なのに何故?答えはこの映画を見ればわかります。
老人医療費の自己負担問題など、日本もこれまたプチ・アメリカ。
他の国々がうらやましくなりますから。
きちんと信頼の置ける政府、制度ならいくらでも税金払うけど、
それによって一部の人間の私服を肥やされるんじゃね。
是非見てみて下さい。
特に議員バッヂを付けているあなた!見て下さいよ!☆5つ。
「シッコ」公式サイト

「ショートバス」は、「ヘドウィグ&アングリーインチ」の監督、
ジョン・キャメロン・ミッチェルの話題作です。
舞台はNY。1軒のアンダーグラウンドなサロン
“ショートバス”がありました。
ここは愛に彷徨う男女が集う場所。
人生に足りない何かを、また本当の自分を求めて、
今宵もたくさんの人々がやって来ていました。
物語の主な登場人物は7人。
カップル・カウンセラーのソフィアと、その夫、ロブ。
ゲイのカップル、ジェイムズとジェイミー。
そんなふたりに憧れる美男子のセス、そしてジェイムズのストーカー、カレブ。
さらにもうひとり、SMの女王、セヴェリン。
みんな満たされずにいたんですね。
例えばソフィア。
彼女は数多くのカップルの悩みを聞いては的確なアドバイスで救ってきた。
しかし実は当の本人が、人に言えない悩みを抱えていたりするのです。
不思議な運命の糸に手繰り寄せられるようにショートバスに集まる人々。
元NY市長もいれば、ドラッグクイーンもいる。
みんなが素の自分をさらけ出していたのです…。
この映画、かなり性描写の多い作品。
いきなり衝撃の自慰シーンから始まります。監督はSEXの映画ではないと、
あの9.11事件のあと人々が“つながる”ことの例えだと言います。
前作もそうだったんですが、とにかく独自の切り口で人生を描く監督です。
まずは先入観無しで見てみて下さい。☆4つ。
「ショートバス」公式サイト

「スピードマスター」は、日本のカーアクション・ムービー。
夜の埠頭で繰り広げられるチューニングカー・バトル。
圧倒的速さを誇っていたのは、
大手チューニングカー・ショップの跡取り息子の勇弥でした。
金にものを言わせ、父親同様のやりたい放題。
今、親子で狙っているのは、町の修理工場“桜井モータース”の乗っ取りでした。
腕の良かった辰二が倒れ、客足の遠のいていた桜井モータース。
一人娘のまひろが何とか立て直そうとするんですが、
勇弥たちの魔の手が伸びるんですね。
そんな時現れたのが、口数の少ないどこか謎めいた青年、はやとでした。
彼が桜井モータースの再建に力を貸すことになるのですが、
勇弥の嫌がらせは執拗に続きます。
そしてついにバトルで白黒着けようということになるんですね。
果たして勝敗の行方は…。
アメリカのカーアクションものでは「ワイルドスピード」が人気のシリーズになりました。
日本では道が狭いから、峠を攻めたり、
立体駐車場を駆け上がるなどの工夫を凝らした映画が多かったんですが、
若干近未来に時代を設定しているのか、
この映画は完全にスピード勝負の作品になっています。
主役の中村俊介がまるで韓流スターのような雰囲気でクールにはやとを演じています。
車好きの方は是非どうぞ。☆3つ。
「スピードマスター」公式サイト

「TAXI4」も、カーアクション。
リュック・ベッソン監督の人気シリーズ第4弾です。
どんな無理な注文も聞いてしまうタクシー・ドライバーのダニエル。
ドジな刑事エミリアンとの珍コンビは健在でした。
そんなエミリアンのいるマルセイユ警察に、
ヨーロッパ最凶の凶悪犯を護送せよという任務が下ります。
ところが案の定、エミリアンのドジで犯人を逃がしてしまうんですね。
エミリアンの妻で、美人で切れ者の刑事、ペトラが潜入に成功。
すると犯人はペトラにメロメロになり手離そうとしない。
そこへ何も知らずに現れたエミリアン。このドタバタ劇の結末やいかに…。
フレンチ・コメディーです。ま、シリーズ第4弾ともなればマンネリも仕方ないかなと。
そこに“偉大なる”という形容詞が付くまで続けることでしょうか。
でも本国フランスでは根強い人気があるようです。気になる方は見てみて下さい。
前作までを知らなくても十分楽しめます。☆3つ。
「TAXI4」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.8.15

「キャプテン」☆☆
「伝染歌」☆☆☆☆
「遠くの空に消えた」☆☆☆
「Tokyo Real」☆☆☆
「ベクシル」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、映画でもドキュメンタリーものがものすごく面白い!
映画のネタになるぐらい、世の中おかしなことがたくさんあるってことでしょう。
“事実は小説より奇なり”。おかしな時代に生きてるボクら。
たくさん映画を見て、
自身の判断基準をきちんと設定しておく必要があるのかも知れません。
さ、今週は5本です!

「キャプテン」は、ボクらの世代がリアルタイムの、
ちばあきお漫画の実写化です。
墨谷二中に転校してきた谷口タカオ。
野球が大好きな彼は、3年生ながら野球部に入部します。
ところが弱小チームの墨谷二中野球部は、
今日もキャプテンが退部届を出したばかり。
ドタバタ続きなんです。
そんなところへ即戦力とも言える3年生の加入。
聞けばあの名門青葉学院の野球部だったとか。
すぐにバッターボックスに立たされた谷口は、
まぐれでホームランを打ってしまうのです。
そして彼はキャプテンに。学校新聞でも救世主誕生の大騒ぎ!
青葉学院じゃ控えの控えのさらに控えの球拾いだったのに。
過酷な現実を谷口は乗り越えることができるのでしょうか…。
ホントは超の付く下手っぴだということがすぐにバレてしまいます。
しかし、情熱家の父、愛情たっぷりの母、丸井、
イガラシといった個性的な後輩たちに支えられて、谷口は頑張るんですね。
ボクも高校時代、応援団の合間に軟式野球愛好会なるクラブに所属。
名前は軟弱なれど、硬式には進まなかったり、進めなかった野球上手の集まり。
まさに谷口と同じ野球が好きなだけのボク。
初打席はこれまた谷口と同じ、まぐれの超特大ホームラン!
ボールが向こうの山の奥に消えていったのです。
「すげぇな、長谷川!」。そこから即4番。
でも運痴のボクにまぐれが続くはずがない。
「4番バッターは5打数1安打でもいいんだ。
 ここぞという時にその1本を打ってくれれば」。
今でもしっかり覚えてます。優しい言葉だったよなぁ(T_T)。
ボクは運動はホントにダメ。谷口くんみたいなガッツは欠片もなかったです。
主役の布施紀行くん、たぶんキミの演技もいろいろ言われると思うよ。
でも役柄同様の頑張りで乗り越えて!あえて辛口で☆2つ。
「キャプテン」公式サイト

「伝染歌」は秋元康作のホラー。
ある歌を歌うとその人間はなぜか自殺してしまう。
その歌は五井道子の「僕の花」。
実際に、ある女子高校では
その歌が原因と思われる連続自殺事件が起こるのです。
そのことをカルト雑誌が嗅ぎ付け、
友達を失った女子高生たちと一緒に真相を探るべく動き始めます。
そして敢えてみんなで「僕の花」を歌ってみるのですが…。
都市伝説ブームに乗って、何やら本当にありそうな題材を
よく見つけてきたなという感じです。
発想の勝利。でも実際に1930年代に「暗い日曜日」という歌があって、
それを聴いたたくさんの人が
自殺をするという社会現象がヨーロッパであったそうです。
音で驚かせる訳でもなく、じわりじわりと迫る恐怖。
飽きずに見ることができました。残暑の季節にヒンヤリおすすめ。☆4つ。
「伝染歌」公式サイト

「遠くの空に消えた」は、“セカチュー”でおなじみ、行定勲監督作品。
「何かを信じられなくなった時、信じ続けるパワーをくれる映画を撮りたい」。
監督はそんな言葉を残しています。
のどかな田舎町が揺れています。空港建設を巡る争いです。
推進派の新リーダーとしてやってきた楠木。
息子・亮介を連れての赴任でした。
転校先の学校でさっそくガキ大将・公平からの洗礼を受ける亮介。
でもそれを契機に、ふたりはどんどん仲良くなっていきます。
もうひとり、UFOの存在を信じるというちょっと変わった女の子、
ヒハルとも出会います。
この町の良さを少しずつ知っていく亮介。
強引な父のやり方にだんだん嫌気が差してきて、親子で揉めたりもします。
大人のやり方はわからない。
ならばボクたちが行動を起こさなくちゃ。
亮介たちはある計画を実行しようとするのです…。
ヒハルがUFOを信じてるのには理由があって、
出て行った父はUFOに連れ去られたんだと。
でもいつか自分たちの元へ必ず帰ってくるんだと。
でも彼女は薄々気付いていました。お父さんはもう戻って来ないってこと。
子供はちゃんと見てるんです。
しがらみのない目線で、大人の行動を。
奇跡が起こらないなら自分たちで起こそう。
そんなポジティブな気持ちを教えてくれる1本。
ただ、勝手にすっごいことを期待し過ぎちゃったかな。
もしくはものすごい感動をね。それは最後にドカンと来るのではなく、
端々で感じるべき作品なのかも知れません。☆3つ。
「遠くの空に消えた」公式サイト

「Tokyo Real」は、人気携帯小説の映画化。
今風の18歳、女子高生のアヤ。
友達に誘われて渋谷のクラブへ。
途中、友達は売人からヤクを購入。
でもアヤは気乗りせずに、もらった薬を胸のポケットにこっそりしまいます。
しばらくいたクラブの中で、
アヤはひとりの男とぶつかって飲みものをこぼし、
男の洋服を汚してしまうんですね。
そこへ現れた別の男が機転を利かせてアヤを救うのですが、
これが実はデキレース。
アヤは駐車場で複数の男にレイプされてしまいます。
朝、家に戻ると娘のことにはまったく無関心な母親の姿が。
自暴自棄になったアヤは、胸ポケットにしまっておいた薬を飲み込むのでした…。
そこから始まる転落人生。見るも無惨な物語。
薬物の類は絶対ダメですョ。
すごく変な話ですが、もしそれでSEXしちゃうと、
普通のエッチじゃ絶対に届かない絶頂感を知る。
ところが、普通のエッチじゃ届かないから、もう満足しなくなる。
あの快感をもう一度ってなもんで、またクスリに手を出す。
女性は特にダメ。
だって快感の度合いは男性とは比べものにならないと言うじゃないですか。
もう廃人への道をまっしぐらな訳です。
ストップ!薬物!です。☆3つ。
「Tokyo Real」公式サイト

「ベクシル」は、アニメの話題作。
舞台は2077年の日本。
バイオテクノロジーとロボット技術が世界を牛耳る時代。
御家芸とも言える分野で世界のトップに立った日本でしたが、
国連から様々な危険性が指摘されることになります。
それに対して強気の日本が出した答えは、なんと“鎖国”でした。
アメリカの特殊部隊・SWORDから送り込まれた女性兵士ベクシル。
潜入に成功した彼女が見た日本の姿は、想像を絶するものだったのです…。
試写会でこんなにたくさんのお客さんが集まっていたアニメ映画は、
ボクの経験では宮崎駿作品ぐらいかなぁ。
とにかくその注目度はすごいようです。
監督、プロデューサーなどは添付のオフィシャルHPでチェックしてみて下さい。
わかる人にはわかるはず。今や日本が世界に誇る産業のひとつがアニメですから。
でもご安心を。アニメで鎖国にはならないはずですから(笑)。☆3つ。
「ベクシル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.8.9

「オーシャンズ13」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近には珍しく今週は1本だけ。
ファンの中には早や先行ロードショーで見たという人も多いはず。
ちなみにいつもの土曜ではなく10日金曜日の公開です。ご注意下さい。
ではその1本を!

「オーシャンズ13」は人気シリーズの3作目。
ジョージ・クルーニ、ブラッド・ピット、
マット・デイモンら引き続きの豪華俳優陣に加え、
今回はアル・パチーノも参加。話題になっています。
固い絆で結ばれたオーシャンズのメンバー。
その中のひとり、資産家のルーベンが心筋梗塞で倒れ、
生死の境をさまよっています。
それには訳がありました。
世界を股にかけるホテル王、ウィリー・バンクが
ラスベガスに巨大カジノを立ち上げようとルーベンに持ち掛けたんですね。
ルーベンはある理由からバンクを信じ、その話に乗ります。
オーシャンは、「あいつとだけは手を組むな」と再三忠告したのですが、
ルーベンは聞く耳を持ちません。
結局は騙されて、すべてを失ってしまったんですね。
そしてあまりのショックで倒れてしまったのです。
ルーベンがバンクを信じた理由、それは、
「フランク・シナトラと握手をしたことがある」。
ただそれだけだったのです。
「ラスベガスに生きる男にとって、
 シナトラの手を握ったということは“絆”なんだ」。
ルーベンとはそんな熱い男だったのです。
オーシャンズのメンバーはそれを知って怒り心頭!
みんながルーベンの病床へと駆け付けました。
そして誓った“リベンジ”。
「バンクを潰してやる」。
もちろん紳士的な彼らですから、一度はバンクの元を訪れ、
すべてを返した方が身のためと警告するのですが、せせら笑うバンク。
ならばとスイッチの入ったオーシャンズのメンバーたち。
一流の復讐劇が今、幕を開けるのでした…。
今回は舞台がラスベガス。
きらびやかな雰囲気がオーシャンズにはよくお似合い。
バンクはルーベンから乗っ取ったホテルを改装し、
最新の人口知能を持つセキュリティ“グレコ”で警備をしてるんですが、
オーシャンズはそれに挑み、財産だけでなく、
プライドまでをも奪い取ってやろうとするんですね。
バンクのプライド、それは最高のホテルに与えられる“5つダイヤ賞”。
「バカだなぁバンクってヤツは。素直に警告を聞いときゃいいのに」と、
まるで自分がオーシャンズの一員になったかのような目線で楽しめる悪人退治。
カジノのお披露目の日に、
あっちこっちで仕掛けたジャックポットが飛び出すんだけど、
あんなカジノだったら絶対に行きたいっ。
行きつけのパチンコ屋に来てくんないかなぁ、オーシャンズ(笑)。
痛快です!☆4つ。
「オーシャンズ13」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.8.4

「おやすみ、クマちゃん」☆☆☆
「カート・コバーン アバウト・ア・サン」☆☆☆
「消えた天使」☆☆☆
「トランスフォーマー」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

8月になりました。ボクが講師をしている学校が休みなので、
今まで以上にたくさんの作品を見ることのできる月になりそうです。
いい作品に巡り会えるのが楽しみ!
さ、今週は4本です!

「おやすみ、クマちゃん」は、ポーランドの人形アニメーション。
1975年から87年にかけて、
ポーランドの国営放送でOAされていた人気シリーズです。
毎回ベッドに入る前のクマちゃんが、
その日あった出来事を振り返ってみんなにお話するというスタイルで、
母国では絶大なる人気を誇ったそう。
その中から、春夏秋冬、
季節ごとに選んだ全10話をオムニバス形式でまとめたのがこの映画なんです。
ボクが試写を見に行った日は“チャイルド・デー”。
子連れの母子でいっぱいだったんですが、
ブログにも書いたから覚えてる人もいるかな、
クマちゃんの問い掛けに子供が答えたり、
宣伝会社のプロモーターがスクリーン前で公開日などを説明していたら、
「すみませ〜ん、もっと大きな声でしゃべって下さぁ〜い」と子供の声(笑)。
ほのぼのとした空気が流れてました。
お父さん、お母さん、お子さんにお決まりのアニメばかりじゃなく、
よかったらこういう映画も見せてあげて下さいね。☆3つ。
「おやすみ、クマちゃん」公式サイト

「カート・コバーン アバウト・ア・サン」は、
27歳の若さで自ら命を断ったNIRVANAのボーカル、
カート・コバーンのドキュメンタリー映画。
日本でも「病んだ魂」というタイトルで発刊された、
マイケル・アゼラッドの著作本の、
取材のために行なった25時間にも渡るインタビューを再構成、
映画化したものなんですね。
マスコミ嫌いのカートが唯一心を開いていたのがマイケルだったそうで、
監督のAJ・シュナックとマイケル・アゼラッドが
同様の信頼関係で結ばれていたことから映画化が実現したとか。
絶頂期になぜ?愛する妻がいながらなぜ?。
たくさんの“なぜ?”にカート自身の肉声が、
ヒントを遺してくれているかも知れません。
ファン必見です。☆3つ。
「カート・コバーン アバウト・ア・サン」公式サイト

「消えた天使」は、リチャード・ギア、
クレア・デインズ主演のサイコ・サスペンス。
18年に渡り公共安全局に勤め、
性犯罪登録者を監視し続けてきたバベッジ。
退任まであと18日。その期間は、後任の若き女性、
アリスンの指導に当たることになりました。
ふたりで担当登録者の元を回るのですが、
バベッジのあからさまに強権的で強引なやり方に、
アリスンは距離を置こうとします。
そんなある日、女子大生の失踪事件が起こります。
乗馬ブーツが落ちていたことから、誘拐事件の可能性が高く、
バベッジは犯人が自分の監視している
登録者の中にいると確信するんですね。
まさかと信じないアリスン。
果たして真犯人は本当にいつものメンバーの中にいるのでしょうか…。
性犯罪は他の犯罪に比べて、再犯率が高いと言います。
だからこそ監視が必要で、日本でも今、
性犯罪者に限っては住所など明らかにすべきだという
声が挙がってるぐらいなんですね。
アリスンがバベッジについていけないと思ったのは、
その登録者たちがパッと見普通の人で、昔のことも悔いてるように見えたから。
しかし、バベッジはそうじゃないと言います。
確かにTVのニュースなんかでも、
「いやぁ真面目そうで挨拶もきちんするし、
 そんなことする人には絶対見えませんでした」、
なんて隣近所の住人の声が流れたりするじゃないですか。
人格とはまた別の、もうひとつの別人格なんでしょうか。
驚愕のラストシーンを楽しみに。
“羊の皮を被った…”じゃないけど、
親切なあの人が、なんてことがあるかも知れません。
女性は気を付けて下さいね。
映画自体、面白かったですよ。☆3つ。
「消えた天使」公式サイト

「トランスフォーマー」は、
「アルマゲドン」のマイケル・ベイと、
あのスティーブン・スピルバーグが手を組んで話題のSF超大作です。
中東カタールに駐留中のアメリカ特殊部隊。
そこに現れた1機の戦闘ヘリ。
領空侵犯との再三の忠告も無視して基地に下り立ったそのヘリを囲む兵士たち。
その時、突然そのヘリが戦闘ロボットに変わり、
圧倒的パワーで基地を粉々にしていきます。
「あれは一体何なんだ」。唖然とする本国の国防総省。
その正体、実は宇宙からやってきた謎の金属生命体だったのです。
彼らは携帯電話、CDプレイヤー、車、ジェット機など、
大小さまざまな機械類にトランスフォーム、
すなわち“変身”をして地球に侵入を始めます。
その頃、人類初の南極探検隊員を先祖に持つ16歳の少年が、
当時使っていたとされる眼鏡や道具を
ネット・オークションで売りさばこうとしていました。
しかし、1銭にもならないガラクタと思われたその眼鏡こそ、
遥か彼方からやってきた金属生命体たちが追い求めていたものだったのです。
少年はもちろん、そんなことを知るよしもありませんでした…。
最近少しCFの見せ方も変わってきましたが、
それでもたぶん多くを語らない方がいいのかなぁと。
人類vsエイリアンで、人類の叡智でどこまで戦えるのか、
というんじゃ実はないんです。
それはいい意味で裏切られますから。
随所に小ネタもちりばめて笑わすような演出もあって、
なんていうとますますわかんなくなっちゃうかな(笑)。
でも「驚異の映像革命」と謳うぐらいだから、
トランスフォームの瞬間や戦闘シーンは確かにすごかったですョ。
2時間24分、飽きることなくスクリーンに釘付けでした。
そもそもが合体系や変身系のおもちゃからヒントを得たそう。
おそらく日本のアニメも、
巨匠2人に影響を及ぼしているかと思いますョ。☆4つ。
「トランスフォーマー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.7.29

「オープン・ウォーター2」☆☆☆
「天然コケッコー」☆☆☆
「レミーのおいしいレストラン」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

夏休みに入って行楽地は人、人、人…。
行楽地と言っても今や六本木、
表参道など都心が普通にそうですから。
余計暑さが増す今日この頃。
飛び込みたくなる涼しい映画館(笑)。
さ、今週は3本です!

「オープン・ウォーター2」は、飛び込んで後悔したお話。
前作はサメでしたが、今回はまた違ったストーリーでゾッとさせる
“海洋サバイバル・パニック”映画です。
旧友の再会の場はメキシコ湾。
事業に成功したダンの豪華クルーザーで
久し振りに会おうと集まった仲間たち6人。
意気揚々とマリーナを出発します。
お酒も回ったところで「泳ごう」と
高さのあるデッキから次々海に飛び込むみんな。
そしてそろそろ船に戻ろうなったその時、
大変なことに気付くんですね。
そう、ハシゴを降ろしていなかったのです。
船体の周りはツルツルで、掴まるところはどこにもない。
メキシコ湾の沖の沖ですから、船もそうは通らない。
サメの心配もある。だんだんと冷えてくる身体。
果たして彼らは生きて帰れるのでしょうか…。
前作はダイバー夫婦が船に置いてかれてしまい、
サメに襲われるという実に救いの無い内容。
ただ淡々と時間だけが過ぎて行く中、見ている方も鼻でため息、
みたいな感じだったんですが、
2作目は人数が多い分、動きはありました。
とはいえ、重った〜い気分で席を立つのは前作同様なんですけどねぇ。
夏の水の事故はみなさん、気を付けて下さいよ。
ちなみに☆3つは前作より☆増えてます。
「オープン・ウォーター2」公式サイト

「天然コケッコー」は、くらもちふさこのコミックの映画化。
自然に囲まれた田舎の分校。
小学校と中学校が一緒で、生徒はわずかに6名。
みんな家族のように仲良くしていました。 年長さんは中2の右田そよ。
ひとりでトイレに行けないさっちゃんが一番小さな小学1年生。
そんなのどかな学校に、東京から転校生がやってきます。
そよと同じ中学2年生の大沢広海くん。
初めての同級生、それも東京からの男の子。
そよは胸をときめかせるのでした…。
田舎の女の子と東京の男の子。
ギャップもあるし、環境にもそう簡単にはなじめない。
でも広海がやってきたのには訳があって、
彼のお母さんは地元出身の美都子。
男に捨てられて帰ってきたんだと、
たちまち噂が広まります。
そんな大人の事情はよそに展開していく甘酸っぱい青春ドラマ。
中学2年生だから、初恋の味かな。
特別「感動した!」とかいうタイプの話じゃないけど、
ゆっくりほのぼのと進むストーリーに、
東京生まれ東京育ちのボクなどは田舎を擬似体験した感じになりました。
夏休みって感じの1本です。☆3つ。
「天然コケッコー」公式サイト

「レミーのおいしいレストラン」は、
「ファインディング・ニモ」などでおなじみ、
ピクサー制作の話題のディズニー3DCGアニメ。
天才的な味覚と嗅覚を持つネズミのレミー。
一族の食事の際の毒味役として、その才能は発揮されていました。
しかし、レミーには夢があったのです。
「いつか一流のシェフになりたい」。
一方、こちらはパリの高級レストラン“グストー”。
オーナーシェフのグストーが亡くなり、
副料理長だったスキナーが後を継いでからというもの、
その金儲け主義に評判はガタ落ち。
最高の5つ星から、4つ星へと降格になっていました。
そこへひとりの青年リングイニがやってきます。
ゴミ処理係として雇われた彼でしたが、
つい店のスープに手を加えてしまうんですね。
料理は好きだけど、からきしセンスの無いリングイニ。
当然スープは台無しに。それを見ていたレミーが、
見かねてちょこまかと動き回り味を整えていきます。
その光景を見て呆然とするリングイニ。
その時、スキナーが厨房の異変に気付きます。
リングイニがスープの味を変えたと知って大激怒!
即刻クビを言い渡すんですが、そのまま出したスープが客に大好評!
ギリギリのところでクビは回避されることになったんですね。
ところが今度はレミーが見つかってしまいます。
厨房にネズミがいると知られたら一大事と、レミーは捕らえられ、
その処理をリングイニが命じられます。
その途中、ひょんなことからレミーに人間の言葉を理解できることがわります。
そこで2人、いや1人と1匹は、
コンビを組んで世界一のシェフになろうと誓うのでした…。
料理のスパイスよろしく、物語にも女性シェフとの恋や、
辛口料理評論家との対決、レミーとの仲違いなど、
しっかり味付けがなされています。
レミーはリングイニの帽子の中で髪の毛を引っ張って彼を操作するんですね。
鉄人28号の正太郎くんみたいなものだ。って古過ぎてわかんないかな(笑)。
ネズミが料理ってどうなの?なんて疑問は愚問。
だってディズニーのメインキャラクターともいえる、
ミ…やミ…は一体なあに?ねっ(笑)。
映像も柔らかく、夢もあって面白かったですよ。☆4つ。
「レミーのおいしいレストラン」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.7.19

「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」☆☆☆
「フリーダム・ライターズ」☆☆☆☆
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、午前10時の試写と格闘してます。
「格闘?」。そう、格闘(笑)。
10時開映ということは9時半には会場に着きたくて、
場所にもよるのですが8時半には家を出なくてはなりません。
すなわち8時前に起きる。これがすなわち“格闘”なのです(笑)。
何勝何敗だろう?
10時の試写のいいところは、
人気の作品でもボク同様眠気にノックアウトされちゃう人が多いようで(笑)
空いてるんですね。
なんて言いながら今日も負けちゃいましたf^_^;
さ、今週は3本です!

「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」は、
チベットの目の不自由な子供たちが
エベレスト登頂に挑むドキュメンタリー。
チベットでは、盲目で生まれたのは
前世の悪行が原因で悪魔に取り憑かれているとされ、
ひどい差別を受けているのだそう。
そんな中、自身も盲目であるドイツ人女性教育者のサブリエが、
中国当局の反対を押し切り、チベットに盲学校を作ったのです。
数年後、子供たちに勇気を与えたいと、
盲人として初めてエベレスト登頂に成功した
アメリカ人登山家のエリック・ヴァイエンマイヤーを
学校に招いたことがきっかけで、
子供たちによるエベレスト挑戦のプランが浮上します。
心配する親に対し、自分の運命を変えたいと
小さな心にしっかりとした意思を持つ子供たち。
結局6人の少年少女がこの登山に果敢に挑むことになりました。
果たして彼らの挑戦は成功するのでしょうか…。
エリックはもちろん、
大人のインストラクターやガイドが大勢付いての登山。
大人でも厳しいのに、盲目の子供たちにできるのか?
何かあったら責任は誰が取る?
反対意見はたくさんありました。
それ以上に子供たちの熱意が大人をつき動かしたという感じでしょうか。
「船頭多くして舟山に上る」の喩えよろしく、
途中、大人たちは折りにつけ意見をぶつけ合います。
みんな子供のことを考えてのものなんですが、
どの結論が子供たちにとって最高の選択肢なのか。
答えなんてないんです。
答えはずっと先に子供たちがそれぞれに出すものだから。
子供たちの小さくて大きな勇気と頑張りに感動するだけでなく、
価値観や教育の難しさなど、いっぱい考えさせられた1本です。☆3つ。
「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」公式サイト

「フリーダム・ライターズ」は、実話に基づく教師と生徒の感動作。
94年のLA、ロングビーチ。
2年前に起きたロス暴動による人種間のいがみ合いが続いていた頃、
ウィルソン高校の学内抗争もまた例外ではありませんでした。
そんな時、203号教室に新任の国語教師が赴任してきます。
彼女の名はエリン・グルーウェル。
弁護士になるはずの白人女性がなぜこんな劣悪な環境の高校に来たかというと、
彼女にはある理想があったからなのです。
それは「法廷で子供を弁護するのでは遅過ぎる。
その前に教室で子供を救うべきだ」というものでした。
しかし現実は厳しく、
上流階級の白人女性の言うことなど彼らが聞くはずもなかったのです。
それでもめげずに真摯に生徒と向かい合ってきたある日のこと、
心無い差別による陰湿なイジメが明るみに出ます。
エリンは第二次世界大戦中の大虐殺、ホロコーストを例に挙げ、
「『アンネの日記』で読んだでしょ?」と言うと、
生徒はキョトン。そう、本を読むことすらなかったのです。
生徒に本を与えるべきとのエリンの主張も学校側に簡単に却下され、
それならばとエリンは授業が終わるとパートで働いて本代を稼ぎました。
新品の本に目を輝かせる子供たち。
それを見たエリンはひとつの提案をします。
「あなたたち、ひとりひとりで日記を書いてみない?
読んで欲しい時はあそこの棚に入れてちょうだい」
その日記を通してわかる子供たちの過酷な現状。
エリンはなんとかしなくてはと思いを新たにするのでした…。
母親から見放されている黒人のマーカス。
父が徹底的に黒人を憎んでいるスパニッシュ系のエバ。
カンボジア移民のシンディ。
母子でアパートを追い出されてしまったミゲルなど、
とにかく生徒が抱えている問題は深刻でした。
かくいうエリンも実は既婚者なんです。
夫の面倒を見ている余裕もなく、すれ違いに気付かないエリンは、
「ねぇ聞いて聞いて、今日学校でね…」と成果が挙がった喜びを話すのですが、
夫は素直に応援することはすでにできなくなっていたのです。
なんかわかるんだよなぁ、どっちの気持ちも。
離婚経験者ですから(笑)。ちょっぴり、いや、かなり痛かったです。
最初は感動の押し売りっぽく思える節もあったんですが、
途中からグイグイ引き込まれて、最後はぐっときて涙がポロリ。
言いたいけど言えないドラマが最後に待ってます。
子供たち、いい青年に育ちました!
ハンカチ用意して劇場へどうぞ。☆4つ。
「フリーダム・ライターズ」公式サイト

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」はシリーズ第5作。
14日から先行ロードショーが行われ、正式には20日金曜日からの公開です。
「“闇の帝王”ヴォルデモートが蘇った」
この騒動に、ファッジ魔法大臣は
ダンブルドア校長が大臣の地位を狙って嘘をついていると邪推。
ホグワーツとダンブルドアを監視するために
意地悪なオバサン教師のドローレスを送り込みます。
ホグワーツ魔法学校の5年生になったハリー・ポッターは、
それならばと自らが集めた秘密同盟“不死鳥の騎士団”を結成。
ヴォルデモートとの壮絶な戦いが始まろうとしていたのです…。
と、ほとんどプレスの受け売りですみません(笑)。
先週もチラリと書いたけど、この第5作はマニア向けかなぁ。
ボクは正直あんまりよく面白さがわかりませんでした。
1作目も小説読んだ人の方がきっと楽しめたはずの“文章の映像化”。
2〜4作目は楽しめたけど、今回はまた疎外感を感じちゃいました。
敢えてそうしたのかな?
媚びてマンネリ化するより、マニアの中で伝説化を狙うみたいな。
その土俵でもファンは十分いるもんね。
ハリー・ポッターも大人になりました。
サザエさんのように年を取らない魔法を使えるといいんだけどね(笑)。
ごめんなさい、敢えて辛口にさせてもらいました。☆2つ。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.7.12

「ファウンテン 永遠につづく愛」☆☆
「LESSON!」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

「ハリー・ポッター 不死鳥の騎士団」の先行上映は14日から。
詳しくは来週書きますが、
ややマニア向けの作りになってきたかなぁというのが個人的な感想。
見たらあなたの意見を聞かせて下さいね。
さ、今週は2本です!

「ファウンテン 永遠につづく愛」は、深い深い夫婦の愛の物語。
医師のトミーは、新しい薬の開発に躍起になっていました。
それには理由がありました。
愛する妻イジーが、不治の病に冒されていたのです。
イジーはその運命をしっかり受け入れていて、
残されたわずかな時間をトミーと一緒に過ごしたいと願います。
そんな妻の呼び掛けに怒鳴りつけてしまうほど、研究に没頭するトミー。
どちらも互いを心底愛していればこその態度、行動だったのです。
そんなトミーにイジーは、自分が書いている未完の物語を手渡します。
「最後の章はあなたが書いて…」。
そしてイジーは発作を起こし、倒れてしまうのでした…。
わかるんだよね。ふたりの気持ち。どっちもね。
ボクは死別じゃなく離婚だけど、一生懸命だったのは同じ。
でもその一生懸命さは残念ながら相手に響かなかったからね。
究極の選択。どちらも正解かも知れないし、間違いかも知れない。
この場合、生まれて来た以上いつかは死ぬのだから、
最後は「幸せだった」とこの世を去らせてあげられたらと思いますよね。
それが相手にとって何なのか。
わかったら見送る方も幸せでしょう。
トミー、それが見つかるといいね。
なんで☆が少ないかというと、何となく宗教色が強過ぎたから。
見ればわかります。
ラストは、へっ?という感じにボクはなってしまいました。
残念。☆2つ。
「ファウンテン 永遠につづく愛」公式サイト

「LESSON!」は、
社交ダンスを通して成長して行く若者を描いた青春映画。
NYのスラム街。
社交ダンス教室を主宰するダンサーのピエールは、
黒人の若者が停めてあった車をメチャメチャに壊している現場に遭遇します。
その車の持ち主は、彼が通っている高校の校長の車。
翌日、ピエールは学校に出向き、
校長に「生徒の更生に協力したい」と申し出ます。
「その方法は?」と問われ、返した答えは「社交ダンス」。
ダメ元でと、特に問題児ばかりが集まる
“居残り学級”の教師になったピエール。
中にはあの車を壊していたロックもいました。 「社交ダンスだぁ?」。
日頃ヒップホップしか聴かない彼らはまったくの無視だったのですが、
ピエールの教室から最もセクシーなモーガンを連れて来て
デモンストレーションを行なうや、
今まで見たことの無いキレのある動きに生徒たちはノックアウト。
元々ダンス好きの連中ですから、
徐々に社交ダンスのステップも踏むようになって行くんですね。
想像以上の上達ぶりに驚いたピエールは、ひとつの提案をします。
「おまえたち、大会に出て優勝賞金をもらう気はないか?」…。
社交ダンスは、男女ペアでやるんですが、互いを尊重し、
相手を受け入れなければならないという、
意外やメンタル面ではタフなものなんだそう。
あのロックは、実の兄をラレッタという同じクラスの
女生徒の弟に殺されているんです。
そのロックにラレッタとペアを組むよう命じるピエール。
初めは「ふざけんな!誰がこいつなんかとっ」と互いに拒んでいたのですが、
それぞれに見えて来たそれぞれのあまりに厳しい現状に、
憎しみを超えた共感が生まれます。
正直ラストシーンは「ええ〜っ」って感じでしたが、
ま、こんなのもありかなと(笑)。
ピエールにはアントニオ・バンデラスが。
スパニッシュ系のフェロモンを撒き散らしてます(笑)。
ちなみに実話に基づくストーリーです。☆3つ。
「LESSON!」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.7.5

「スクリーミング・マスターピース」☆☆☆
「ジーニアス・パーティ」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週の新作公開の土曜日は、07年7月7日。
777の3つ並び。
何か良いことがあるかな?
同じ映画で感動する人って感性が近いかも。
そんな出会いを求めて、いざ映画館へ(笑)。
今週は2本です!

「スクリーミング・マスターピース」は、
アイスランドの音楽を紹介する映画。
アイスランドのアーティストといえば、ビヨークなんかがそう。
氷と岩山と冷たい海に囲まれたアイスランドは、
そもそも海賊たちの休憩地だったとか。
その海賊たちが住み着くようになって国ができたそうで、
長く厳しい冬を楽しく乗り切るための
娯楽としての音楽という部分もあって、
そんな伝統的な古代詞を語るように歌う
“リムール”という歌唱法も紹介されています。
厳しい自然の中に生きているからこそ、
逆に自然の大切さも知っているアイスランドの人々。
アイスランドは環境先進国でもあります。
最後にビヨークが言います。
それぞれの国に国歌があるけど、
そのほとんどが“自分たちが最も優れている”みたいな排他的な歌だと。
そうじゃなくて地球全体で歌うような
真の意味でグローバルな歌が今こそ必要なんじゃないかと。
ホント、国単位でどうこう言い争ってる場合じゃないですよね。
もう地球は間違いなく悲鳴を上げていますから。
25を超えるアイスランドのアーティストが登場します。
音楽ファン必見です。☆3つ。
「スクリーミング・マスターピース」公式サイト

「ジーニアス・パーティ」は、7本のアニメーション作品のオムニバス。
4℃の元に集まった、
日本が誇る気鋭の映像作家たちによる短編集です。
福島敦子、河森正治、木村真二、福山庸治、二村秀樹、
湯浅政明、渡辺信一郎。
ボクはあんまりこちらのジャンルに明るくないので、
知らない人たちばかりですが、その中の1本、
渡辺監督の「BABY BLUE」という作品で
柳楽優弥と菊地凛子が声優に初挑戦して話題になっています。
高校の文化祭が、きちんとした研究発表の場と、
模擬店やお化け屋のような遊びの場に2極化していたように?
この“パーティ”も意外やアカデミックな部分が多く、
もしかするとマニアや専門家ウケする映画かも。
アニメは世界に胸を張れる日本の文化です。
その“今”を知っておくのもいいでしょう。☆3つ。
「ジーニアス・パーティ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.6.29

「石の微笑」☆☆☆
「シュレック3」☆☆☆☆
「そして、デブノーの森へ」☆☆☆☆
「100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!」☆☆☆☆
「ボルベール〈帰郷〉」☆☆☆
「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

本当に暑いですね。試写をハシゴすると、
時間がいっぱいいっぱいで急いで走ることもしばしば。
汗がブワッと。
隣りに座られたほうは嫌だろうねf^_^;。ごめんなさい(笑)。
さ、今週は6本です!

「石の微笑」はフランスのラブ・サスペンス。
まだ独身のフィリップは、
妹の結婚式で花嫁付添人を務めたセンタが気になって仕方ありません。
式のあとひとり先に帰宅したフィリップ。
ところが雨に濡れたセンタがやってきて、
ふたりは激しく抱き合うんですね。
自分は女優の卵だといい、怪しい洋館の地下室に住むセンタ。
彼女のことを知れば知るほどわからなくなっていくフィリップ。
ある日、センタは言います。
「私を愛しているなら4つのことをやって。
木を植える。詩を書く。同性と寝る。そして誰かを殺す」。
この言葉の裏には、一体何が隠されているのでしょうか…。
フランス映画をポジティブに見ようとすると、
やはり言葉の言い回しや雰囲気、ムードを楽しむということなのでしょう。
フィリップがセンタに惹かれる理由として、
まずは肉体的な魅力こそあれど、その先がわからない。
不思議なコ過ぎたら引いちゃわないかなぁ、
なんて考えちゃこういう映画はつまらない。
不思議ちゃんだからこそ発言も詩的になるのですから。☆3つ。
「石の微笑」公式サイト

「シュレック3」は、ご存じ大人気シリーズの第3弾。
愛するフィオナ姫と結ばれた心優しい怪物シュレック。
ある日、姫の父であるハロルド国王危篤の報せが届きます。
国王はシュレックに言います。
「次の王はおまえだ」
自由気ままに生きていきたいシュレックは冗談じゃないと。
他に誰かいないのかと尋ねると、
アーサーという若者がいると教えてハロルド国王は息を引き取りました。
アーサーに会うため旅に出るシュレックに、フィオナは伝えます。
「わたしたち、ベイビーができたのよ」
その頃、王の座を諦め切れない男がひとり。
そう、チャーミング王子です。
彼はシュレックがいない間におとぎ話の悪役を集め、
フィオナ姫を含め、おとぎ話のお姫さまたちを幽閉してしまうんですね。
帰国したシュレックはビックリ!
さぁ果たしてシュレックたちは姫を救い出せるのでしょうか…。
シリーズ3弾と聞くと、
マンネリでつまらなくなるイメージも湧きがちですが、
いやいやこれは笑えます。
なんだかギャグがドリフ風(笑)。
いろんなところからネタを拾ってくるハリウッドの昨今。
そうはいってもまさか制作スタッフが
ドリフを見ていたとは思いませんが(笑)。
子供のためにと映画館に同行したパパ、ママの方が笑えるかも。
かわいい?ベイビーにも注目です。☆4つ。
「シュレック3」公式サイト

「そして、デブノーの森へ」も、ミステリー・ロマンス。
フランス、イタリア、スイスの合作映画です。
人気作家のセルジュ・ノヴァク。
素性をまったく明かしていないことがますます読者の興味を沸き立たせ、
今では文学界の話題の中心になるほど。
セルジュの正体はダニエルという男。
義理の息子の結婚式に出席するため、
彼は南イタリアのカプリ島へ向かうんですが、
途中でひとりの若い女性と知り合います。
積極的な彼女の言うがままに夜を共にしたダニエル。
翌朝、結婚式に出席したダニエルは愕然とします。
息子の花嫁は、昨夜激しく愛し合ったあの女性だったのです…。
これはストーリーのあくまで触り。
ふたりの出会いは偶然?それとも必然?あるいは仕組まれた罠?
登場人物、設定、ストーリー展開など、なかなかよく練れてました。
「なるほど、そうだったのか」と最後はあなたも唸るはず。
あまりピンと来ないことの多いフランス映画ですが、
イタリア、スイスとの合作が成功?面白かったですョ。☆4つ。
「そして、デブノーの森へ」公式サイト

「100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!」は、
大記録となったホームランボールの争奪戦ドキュメンタリー。
07年10月7日、
サンフランシスコ・ジャイアンツの主砲バリー・ボンズが、
年間最多ホームラン記録を塗り変える
73号のホームランをライトスタンドに打ち込みます。
殺到する人々。それもそのはず、
このボールにはとてつもない値段が付く可能性があるのです。
このボールを捕ったのはアレックス・ポポフという男。
かと思いきや、高々とボールを掲げ、
はにかむように笑っていたのはパトリック・ハヤシでした。
「俺の捕ったボールを横取りした」とアレックス。
「いや転がってきたんだ」とパトリック。
たまたまいたTVクルーがカメラで押さえてはいたけれど、
決定的瞬間は??。
周りにいた人々も巻込んで、
捕ったのはアレックスだ、いやパトリックだと大騒動に。
結局この話は法廷闘争に持ち込まれます。
ホームランボールを巡るこの争い。
果たしてどんな結末が待っているのでしょうか…。
打ったボンズ本人は
「オークションで売って、そのお金を半分ずつすりゃいいだろ」
と困惑顔。
高値が付いた例としては
98年のカージナルスのマーク・マグワイヤの放った、
シーズン70本のホームランボールが270万ドル、日本円にして約3億円!
ジャンボ宝くじの1等前後賞付きを
自分の手でつかみ取るようなもんですからね。
「事実は小説よりも奇なり」。面白かったです。
結末はもちろん言えませんが、
人間、欲の皮が突っ張ると
ロクな事にならないとだけ言っておきましょう(笑)。
ちなみに今ボンズ選手はハンク・アーロンの755本塁打まであと数本。
こちらの争奪戦もすごいことになりそうで…。☆4つ。
「100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!」公式サイト

「ボルベール〈帰郷〉」は、ペネロペ・クルス主演作。
母子愛を描いた作品です。
失業中の夫を支え、15歳の娘パウラを育てるライムンダ。
彼女の周りに様々な生と死が訪れます。
本当の父じゃないからと、パウラに関係を迫った夫を、
パウラが包丁で刺し殺してしまい、最愛の伯母が亡くなり、
隣人のブランカも病に倒れます。
かと思えば死んだと思っていた母が実は生存していた…。
こういう書き方だとホラーかミステリーみたいですが、
いやいや違いますから誤解のないように(笑)。
監督の母親へのオマージュでもあるようで、
「ラ・マンチャへ戻ることは、母の胸に戻ること」。
「この映画を通して、
私は人生のパズルに“死”というピースをはめることに成功した」
と語っています。
スペインというお国柄か、ボクにはピンとは来ませんでしたが、
映画の持つ魅力のひとつ、
醸し出す雰囲気に浸り込むというのはこういう作品でできることなのかなぁと。
心の小旅行に誘われた感覚が残るはず。
あなたも体感してみて下さい。☆3つ。
「ボルベール〈帰郷〉」公式サイト

「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」は、
人気イタリア人俳優のドキュメンタリー。
没後10年のマルチェロ・マストロヤンニの生涯を描いた作品。
巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」(1960)
などで知られるイタリアの二枚目俳優。
子役でも活躍していた彼が、
20世紀中後期にかけて出演した映画はなんと160本超。
確かにイイ男です。
ボクは正直この人を知らないのですが、オフショットを含め、
ファンにはたまらない映像なんだろうなと。
ファッションなんかもお洒落のお手本になります。
なんて書いてると、
「そんな軽い言葉で語るな!」
なんて怒られちゃうかな。
ごめんなさいm(__)m。☆3つ。
「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.6.21

「エマニュエルの贈りもの」☆☆☆
「ラッキー・ユー」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

ハリー・ポッター最新作
「不死鳥の騎士団」の完成披露試写に行ってきました。
あえて感想は言いませんが、
みなさんの評価がいろんな意味で楽しみです。
ちょっと意味深?
さぁ今週は2本です!

「エマニュエルの贈りもの」は、西アフリカのガーナに住む、
ひとりの義足の青年の勇気と感動の物語。
障害を持って生まれてきたエマニュエル・オフォス・エボワ。
ガーナでは障害のある人は“呪われた者”として差別を受け、
物乞いをして生きて行くしか道が無いそうなんですね。
ところがエマニュエルの前向きな姿勢が、
そんな運命を自ら変えていくのです。
まずは単身アメリカを訪問。
自転車の提供を要請し、
もらった自転車を片足で漕いでガーナを横断
(距離にして東京〜大阪間に当たるとか)。
次にやはりアメリカでトライアスロンにチャレンジ。
特別賞を受け、その賞金を元に、
自国の障害児のためのエマニュエル基金を設立します。
アメリカ全土を感動の渦に巻込んだ
エマニュエルの数々の行動は自国でも注目され、
念願だったガーナ国王に謁見。
障害者法案を議会に提出、可決成立となるのです。
ワクチンの不足などから、
ガーナでは全人口の約10%が障害を持つ人で、
その数は200万人を超えるとか。
そんな現状にエマニュエルが立ち向かったんですね。
同様に、いやもっと不遇な運命に翻弄され、
それでもなお頑張るアメリカのアスリート仲間や、
明るい母の愛に支えられ、
エマニュエルは常に前向きに生きていこうとするのです。
ぬるま湯人生のあなた(含むボク?)、
叱咤激励されに行ってみてはいかがですか?☆3つ。
「エマニュエルの贈りもの」公式サイト

「ラッキー・ユー」はラスベガスが舞台の物語。
質屋に質草としてデジタルカメラを持参し、
やり手の女主人と交渉する男。
いつもより多額の金を手渡し、女主人は言います。
「アンタ、金なんか借りに来ないでこの商売やればいいのに。向いてるよ」。
男の名はハック。プロのポーカープレイヤー。
強気で知られる彼でしたが、
その強気が逆に命とりにもなっていたのです。
そんなハックの戦いぶりをじっと見つめる男がいました。
伝説のポーカープレイヤー、LC・チーバーです。
実はチーバーはハックの実の父親。
しかし幼い頃、母とハックを捨てて出て行ってしまったのです。
ハックは彼を憎んでいました。
ある日、ハックはバーでひとりの女性と知り合います。
歌手を目指してラスベガスにやってきたビリーです。
姉のスザンヌはカジノで働いていて、偶然にもハックの知人でした。
スザンヌはビリーにこう忠告するんですね。
「ギャンブラーは絶対ダメ」。
しかし徐々に深い仲になっていくハックとビリー。
初めて夜を共にした次の朝、
ハックはビリーの財布からお金を抜いて、
ひとりカジノへと向かいます。
「ちょっと借りるだけだから」。
そう心の中で呟きながら…。
物語の始まりはこんな感じ。
とんでもない男でしょ?
ビリーも当然怒り心頭。
でもちょっと悪いぐらいがいいのかなぁ。
くっついちゃ離れてを繰り返すふたり。
ただ、ハックは本当に反省していたんです。
初めての後悔?でもポーカーはやめられない(笑)。
そこで彼は父が伝説となった、
ラスベガスNO.1のポーカープレイヤーを決める
トーナメントに出場を決意。
でもまずは参加費を作らなきゃならない。
さらに優勝するには父親はもちろん、
まさに今風の、ネットポーカーのチャンピオンなど、
あまたいる強豪を負かさなければならないのです。
さぁハックに勝利の女神は微笑むのか?
ビリーはハックの元に戻ってくるのか?というお話。
なかなか駆け引きは面白く描かれてましたョ。
“ポーカーフェイス”なんて言葉があるくらいだから、
ポーカーは奥が深いのです。
でも仮にハッピーエンドで終わったとしても、
その先を考えると、このふたり、
特にビリーにはあんまりハッピーとは言えない気がしません?
だってやっぱりハックはギャンブラーだもん。
性格はなかなか変わらないんじゃない?
ギャンブルは遊びの範囲内じゃないとね。
最近パチンコ、競馬にハマってるというあなた(含むボク?)、
是非見てみて自問自答してみて下さい。☆3つ。
「ラッキー・ユー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.6.15

「キサラギ」☆☆☆☆
「きみにしか聞こえない」☆☆☆
「ストレンジャー・コール」☆☆
「ゾディアック」☆☆☆
「ハリウッドランド」☆☆☆☆
「ブリッジ」☆☆☆
「ラストラブ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

最近、ホントに忙しくて。
忙しいから無理してでもその日に試写に行く。
しかし睡眠が足りないから眠い。眠いから途中で寝てしまう。
ああ悪循環f^_^;。
この欄の説得力がなくならないよう、頑張ります。
さ、今週は7本です!

「キサラギ」は舞台を見てるかのような1本。
グラビアアイドル如月ミキの自殺から1年。
ファンサイトで知り合った5人の男が彼女の一周忌に集まろうと会合を開きます。
家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、イチゴ娘。
ネット上では交流のあった5人ですが、顔を合わせるのは今日が初めて。
みんなが言います。「ミキちゃんは自殺なんかする子じゃない」。
その時、ひとりが声を上げるんですね。
「その通り。ミキちゃんの死は自殺なんかじゃない。殺されたんだ」…。
ネタがバレるといけないから言わないけど、
この5人はそれぞれにミキちゃんとつながりがあって、
彼女の死の真相を紆余曲折ありながら解明していくという話。
これがよーくできていて、かなり面白い!
小栗旬、ユースケ・サンタマリア、
小出恵介、香川照之、ドランクドラゴンの塚地武雅。
濃いメンバーだけどトゥーマッチにならない演出も絶妙で、
オチも無理なく設定されてます。
舞台好きの人は是非どうぞ!
たぶん制作費も安く上がってるはず。
当たりゃ大儲けだぞ(笑)。☆4つ。
「キサラギ」公式サイト

「きみにしか聞こえない」は、
「キサラギ」にも出ている小出恵介と、
成海璃子主演の切ない青春ラブストーリー。
ある日、オモチャの携帯電話を拾ったリョウ。
不思議なことにこれが鳴って、
向こう側から若い男性の声が聞こえてきたのです。
相手の名はシンヤ。
そのうち携帯電話が無くても頭の中で着信音が鳴り、
会話ができるようになりました。
さらにわかったのは、
こっちと向こうでは1時間の時差があるということ。
会話を重ね、日が経つにつれ、
互いに会いたいという気持ちが大きくなってくるんですね。
そして交わす「会おう」の約束。
しかしその直前、思いもしなかった事故が起こるのです…。
ありがちなと言ったら失礼だけど、そんなに新鮮味は感じなかったなぁ。
頭の中で携帯が鳴るという特別な設定だけど、
今の若い人たちにはこういうのがいいのかな?
原作は乙一の人気小説。
お恥かしながら、成海璃子ちゃんの演技を初めて見ました。
透明感のあるそのたたずまいに、キュン(笑)。
この子はデカくなるぞと確信しました。
えっ、遅れてるって?すみません(笑)。
璃子ちゃんのかわいらしさに☆1つ増し!☆3つ。
「きみにしか聞こえない」公式サイト

「ストレンジャー・コール」も携帯電話がモチーフ。
といってもこちらはサスペンス・ホラーです。
ベビーシッターのバイトで丘の上の一軒家に来た女子高生のジル。
夜、彼女の携帯電話に見知らぬ男から電話が掛かってくるんですね。
不審な電話は何度も繰り返し掛かってきます。
「子供の様子を見てみろ」。
男はすぐ近くに潜んでいたのです…。
携帯を使ったホラーはたくさんありますよね。
こちらはアメリカらしく、霊象ではありませんが。
こちらもツールこそ今だけど、新鮮味は?という感じかな。
夏先取りでヒヤッとしたい人はどうぞ。☆2つ。
「ストレンジャー・コール」公式サイト

「ゾディアック」は、
未だ未解決の猟奇殺人事件を描いたサスペンス・スリラー。
1969年7月4日、カリフォルニアで1組のカップルが銃撃されます。
女性は死亡、男性はかろうじて助かるんですが、
約1ケ月後、新聞社にゾディアックと名乗る男から犯行声明文が届くんですね。
それには暗号文も添えられていました。
それから、ゾディアックは殺人を重ねます。
その度マスコミに送りつけられる暗号文付きの犯行声明。
犯人はいったい誰なのか?どんな人間なのか?
証拠は増えていくにも関わらず、捜査は難航していくのでした…。
警察、新聞社に勤める何人かは謎解きに没頭。
結果、大切なものを失ってもいくんですね。
未だ解決されていない事件だけに、
スカッとした結末は無く、ちょっとモヤモヤしたものが残ります。
が、アメリカの人々にとっては関心の高い事件なのでしょう。
果たして日本での評価はどうか?気になるところです。☆3つ。
「ゾディアック」公式サイト

「ハリウッドランド」も未解決事件の映画化です。
1959年6月16日、TVドラマ「スーパーマン」シリーズの主演俳優、
ジョージ・リーブスが死亡。
頭に1発の弾痕があったため、自殺と断定されるのですが、母親がそれを否定。
シモという探偵を雇い、独自の捜査を進めます。
そこでわかったいくつかのこと。
ジョージがまだ無名時代、あるパーティでひとりの女性と恋仲になります。
その女性は映画会社MGMの重役エディの妻、トニーでした。
エディはギャング上がりの陰のフィクサー。
しかし妻の行動には寛大でもあったのです。
「欲しいものは何でもあげる」。
ジョージはこうしてスーパーマンの役を手に入れたのです。
しかし年月が過ぎ、ジョージの気持ちも変わり始め、トニーとは破局。
新しい恋人レオノアと婚約。落ち込むトニーの姿にエディは激怒。
一方のレオノアもかなり気性の激しい女性で、
ジョージの死の直前に婚約を破棄されたとの噂も。
果たしてジョージの死は自殺?それとも殺人?…。
主要な登場人物の中で架空のキャラはシモのみ。
観客はシモの目線で事件を推理します。
ただしジョージの母親が探偵を雇ったのは事実だとか。
当時、映画とTVじゃ役者の格が全然違ったこと、
スーパーマンのイメージが強過ぎて他の仕事が取れなかったことなど、
ジョージも悩んでいたのでしょう。
ただ、子供たちにとっては大好きなスーパーヒーローの死、
それも発表は自殺ですから、ショックだったと思いますよ、ねぇ。
こちらは結論について、いくつかの仮説を提示していくので、
そうモヤモヤ感が残らない作りに。
50年代のハリウッドのトーンが何ともいい雰囲気で、
その点でも楽しめるはずです。☆4つ。
「ハリウッドランド」公式サイト

「ブリッジ」はドキュメンタリー映画。
今や自殺の名所となったゴールデンゲート・ブリッジから
飛び降りた人たちの人生を追った作品です。
04年から1年間、橋が見える位置にカメラを据えて、
ずーっと回し続けた結果、
約2週間に1人の割合で飛び降り自殺があったそう。
これまでにも1937年の開通以来1300人がここで命を絶っているといいます。
彼らの心中とは?
家族、恋人、友人、そして飛び込む直前に言葉を交わした人々などの
インタビューで構成された1本。
日本も自殺者は増えるばかり。よその国の出来事ではないのです。
正直☆の付けようが無いので、真ん中にしておきます。☆3つ。
「ブリッジ」公式サイト

「ラストラブ」は、田村正和、伊東美咲主演のラブロマンス。
NYでサックスプレイヤーとして活躍する阿川明。
しかし最愛の妻を亡くしてしまいます。
もっと家族に目を向けていればと後悔した明はサックスを置き、
帰国し、友人の経営する旅行代理店に勤めます。
ある朝、ゴミ出しの分別を注意されたのが清掃局員の上原結。
偶然にもその後、NYで再会するのです。
30歳ぐらいの年の差。
落ち着いた大人の物腰に、結は恋愛の相談をするなど、
徐々に心を開いていくんですね。 明のまだ小さな娘、佐和とも打ち解けて、
結は無くてはならない存在になっていき、
また結にとっても明が大切な人になっていくのです。
明がもう一度サックスを吹こうと動き出したその時、
非情にも医者から余命3ケ月であることを宣告されるのです…。
田村正和節炸裂(笑)。好きな人にはたまらないでしょう。
この映画のターゲットは、間違いなく“団塊の世代”のおじさまたち。
「夢よ、もう一度」なのです。
それ自体はいいんですけど、
なんかそれが露骨に見えちゃったのが嫌だったかなぁ。
新橋あたりに、田村正和風のおじさんが増えたりして(笑)。☆2つ。
「ラストラブ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.6.7

「300」☆☆☆☆
「選挙」☆☆☆☆
「プレステージ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

今週の3本はそれぞれに面白かったです!
特に「プレステージ」は満点でも良かったぐらい。
ある意味3本とも“戦い”の映画。
気になったら3本とも是非見てみて下さいね!では順にご紹介!

「300(スリーハンドレッド)」はヘロドトスの「歴史」にもある
テルモピュライの戦いを描いたアクション映画。
紀元前480年、スパルタ王レオニダスの元に、
ペルシア王クセルクセスの使者がやってきます。 「服従か、死か」。
レオニダスの返事は、使者を葬ることで示されました。
この瞬間、200万人以上の兵を持つとされるペルシャ軍を敵に回したのです。
スパルタの兵力はわずかに300。
しかし彼らに、“服従”“退却”“降伏”の文字はありませんでした…。
筋骨隆々の男たちがぶつかり合う、まさに“動く彫刻対戦”?
映像の色使いも、ややセピア掛かったトーンで
劇画タッチの雰囲気を醸し出すのに成功しています。
300で100万、200万と戦うなんて、時代劇でも無理(笑)。
それでも怯まないのがスパルタの男。
なんたって“スパルタ式”なる言葉が現代にも残ってるんですから、
すごいです。愛、自尊心、信頼、裏切り…。
人間は何千年経とうと変わらないのかも知れません。
個人的にはペルシア王クセルクセスの
なんとも妖しいルックスが良かったです(笑)。☆4つ。
「300(スリーハンドレッド)」公式サイト

「選挙」は実際の選挙に密着したドキュメンタリー。
市議会議員の補欠選挙に自民党の候補として
立候補することになった山内和彦氏は、
東京で趣味の切手コイン商を営む40歳。
政治にはまったくの素人である彼が、
縁もゆかりもない川崎市宮前区から出馬。
2005年、小泉政権の追い風吹く中とはいえ、
ズブの素人がどうやって選挙戦を戦っていくのか。
そこには自民党という組織があり、
こうして選挙活動をやっていくんだというのがわかる作品。
面白かったです。
古参の選挙参謀みたいな人がたくさんいて、
その人たちの言う通り動く、まさに“駒”。
そのおっちゃん、おばちゃんたちの口うるさいこと!
おじぎの仕方から何から文句の言われっぱなし。
「何をやっても怒られ、何をやらなくても怒られ」
とは山内さんの弁(笑)。
選挙活動が終わった時の“終わったぁ”感は
映画を見たボクですら感じるんですから、
実際の先生たちはもっとなんでしょう。
そりゃもうそこで燃え尽きる訳だ。
こんだけ頭下げりゃ“先生”になったら
反動で頭も上がるってなもんでしょ(苦笑)。
昔ちょっぴり議員にでもなろうかなって思ったこともあったけど、
やーめた(笑)。
あんなの見ちゃったら、ボクには絶対選挙は無理だね。
映画の中で、奥さんが愚痴をこぼすシーンがあります。
というか選挙事務所のおばちゃんたちへの不満が
山内さんとふたりきりの車の中で大爆発!
それが面白いのなんの(笑)。
でも、これからもお付き合いがあるだろうに
あんなに言っちゃって大丈夫なのかなぁとすっごい心配(笑)。
参議院選を前に、ある意味、日本国民必見の1本かも知れません。
ちなみに海外の映画祭では軒並み大ウケだったそうです。
変な国だと思っただろうなぁ(苦笑)。☆4つ。
「選挙」公式サイト

「プレステージ」は、19世紀のロンドンを舞台に、
ふたりの人気マジシャンの壮絶な戦いを描いた作品です。
あるマジシャンの元で修行をしていた
若手マジシャンのアンジャーとボーデン。
アンジャーには同じ一座で助手を務める妻がいました。
ところが大技の水中脱出の際に
腕を縛ったロープが解けず水死してしまうんですね。
その手を縛ったのはボーデン。
アンジャーはこの時から復讐の鬼と化し、ふたりの争いは始まったのです。
互いを蹴落としたい一心で腕を上げていく両者。
ある日、ボーデンが瞬間移動の新技を成功させます。
仕掛けがわからず焦るアンジャー。
その時、彼が取ったのは、
ボーデンの元に美貌の女助手オリヴィアを送り込むことでした。
オリヴィアは“テスラ”なるものの存在を知り、アンジャーに伝えます。
それはエジソンと肩を並べるほどの天才科学者
ニコラ・テスラのことだったのです。 ニコラ・テスラが発明した電送瞬間移動装置。
ボーデンも手に入れることのできなかった
この壮大なる仕掛けを持ってロンドンに戻り、大成功を収めたアンジャー。
今度はボーデンが慌てます。
観客になりすまし、舞台裏に潜入したボーデンが見たものは、
舞台の下に置かれた水槽の中で今にも溺れ死のうとしているライバル、
アンジャーの姿だったのです…。
いやぁよーくできてます。
アンジャーとボーデンの争いもまさにシーソーゲーム。
ボーデンは結婚して妻とひとりの娘がいます。
このことも妻を亡くしたアンジャーには面白くない訳。
でもボーデンの奥さんが、
「あたしはもうこんな生活には耐えられないっ!」と絶叫するんですね。
アンジャーが送り込んだオリヴィアとの浮気のことかなと思ったんだけど、
そうじゃない。
違うんだなぁ、これが。最後にわかります。
アンジャーの死の真実も、ボーデンの妻の絶叫も、
瞬間移動装置“テスラ”の謎も、みんなわかる。
劇中の中国人のマジシャンのマジシャン哲学にヒントあり?
あ、もう言えない(笑)。
監修はあのデビッド・カッパーフィールド。
ドンデンデンのデンのデンのデンぐらい(笑)。
2回、3回見ても必ず楽しめます。 えっ?じゃあなんで☆5つじゃないのかって?
ちょっと“テスラ”が気に入らなかったのさ(笑)。
でもこれが無いと話は成り立たないからね。
おっとしゃべり過ぎちまったぜ。あぶない、あぶない(笑)。☆4つ。
「プレステージ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.6.1

「Academy」☆☆
「あるスキャンダルの覚え書き」☆☆☆
「ザ・シューター 極大射程」☆☆☆☆
「女帝」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

北野武、松本人志と日本を代表する2人の“お笑い”が監督した2作品、
「監督・ばんざい!」と「大日本人」が公開となります。
今週、日刊スポーツで、たけしさんの
3日間の短期集中インタビューをやってました。
初めは役者さんに遠慮して、カメラワークや
編集で何とかなるさと注文を付けなかったと。
だから慣れが必要なんだと松本“新”監督にエール。
見比べるのは面白いかも知れませんね。
今週は3本。
「ザ・シューター 極大射程」は1日早く、1日金曜日の公開です。

「Academy」は青春映画。
オーストリアの名門芸術学校AAAに入学した若者たち。
演劇、音楽、ダンス、美術と、
さまざまなジャンルに世界中から生徒が集まります。
AAAには厳しいルールがあって、1年後、
ダメの烙印を押された生徒は学校を辞めなければなりません。
果たして同期のみんなは無事進級、
そして卒業することができるのでしょうか…。
オーストリア映画ですが、
日本からは辻ちゃんとの“できちゃった婚”で話題の杉浦太陽、
高橋マリ子が参加してます。
その杉浦太陽演じる隆が男性とディープキスしたりと
かなりそれぞれのキャラクターはエキセントリック。
青春ものながら自己投影はちょっと難しかったかも。
今の当たり前の学校に不満を持ってる生徒諸君にはいいかな。
意外や自分の学校がよく思えるかも?☆2つ。
「Academy」公式サイト

「あるスキャンダルの覚え書き」は、
ドロドロした人間模様を描いた1本。
イギリスの学校に赴任してきた新任の美術教師シーバ。
彼女になにかと優しくするベテラン女性教師バーバラ。
シーバは品のある美人で人妻。バーバラは年配の独身女性。
バーバラはシーバとの出会いを勝手に運命だと信じ、
職場の先輩後輩を超えた付き合いを望み、
妄想をどんどん膨らませていくんですね。
ある日、シーバは15歳の教え子と肉体関係を持ってしまいます。
それを知ったバーバラは嫉妬に狂うのですが…。
飼い猫と日記しか友達のいないバーバラ。
シーバとより親密になった日は日記に
星のシールを貼って思いを書き連ねていきます。
まさにストーカーなんですよね。
以前書いた、ちょうど試写室にいらしたおすぎさんが
「これはホラーよ、ホラー!だって一番怖いの、ババアのレズが!」
って言ってたのがコレ(笑)。まさにそんな(どんな?)映画です。
でもちょっと気になるでしょ?見てみて下さい。☆3つ。
「あるスキャンダルの覚え書き」公式サイト

「ザ・シューター 極大射程」はマーク・ウォールバーグ主演作。
海兵隊の特殊部隊に所属する射撃の名手スワガー。
アフリカのある国で偵察任務に就いていたところ、
敵の猛攻撃に合い、長年の相棒ドニーを失います。
援軍を要請したにも関わらず来るはずの軍隊が来ない。
ドニーには国で待つ妻がいたのに。彼らは裏切られたのです。
軍隊を辞めたスワガーの元に軍の大物がやってきます。
遊説中の大統領の暗殺計画を掴んだと。
厳重な警戒網を張ってはいるが、スナイパーはその外から狙ってくるはずで、
それが可能な場所を特定して欲しいというのです。
過去の苦い経験から何度も断るスワガーでしたが、渋々了承。
ある場所を割り出します。
そこで大統領の演説が行われる日、暗殺ポイント近くに同行。
援護のためにスコープを覗いたその時、2発の銃声がします。
1発は大統領に向け、
もう1発はなんとスワガーの背中に放たれたのでした…。
殺されたのは大統領ではなく、横にいたエチオピア大司教。
スワガーも戦地を生き抜いた経験で、
致命傷を負いながらもなんとか逃げ出します。
「いったいどういうことなんだ?」。
事態が把握できないまま、
彼が向かったのは死んだ相棒の妻サラの家でした。
なんと犯人はスワガーだと軍が発表。
結局またすべて仕組まれて裏切られたわけです。
スワガーはサラと真実の戦いに出るんですが、
プレスにあった“サバイバル+シューティング+サスペンス。
全ての要素が融合した本格アクション”。
まさにその通りでなかなか面白かったですョ。
ひとつすごく気になったことがあって、
スワガーとサラの男と女の関係がその後どう発展するかはわかりません。
でも、劇中では1度もキスをしないのです。
戦死したドニーへの礼節か、それとも現実問題、
アメリカでは今大切な妻や恋人を残して
戦地に向かっている兵士がいるわけですから、
彼らに余計な心配をさせまいという配慮なのか。
簡単にチュッとはいうわけにはいかなかったんでしょうね。☆4つ。
「ザ・シューター 極大射程」公式サイト

「女帝」はチャン・ツィイー主演の古代中国を舞台とした恋愛映画。
王妃ワンは、皇帝の寵愛を受け、絶大な権力を握っていた女性。
ところが突然皇帝が死去します。
それは王位を狙う弟のリーの仕業でした。
皇帝には息子のウールアンがいたのですが、
実は彼とワンはかつては互いに想いを寄せ合った仲。
ワンが王妃になった時、
その想いを断ち切るために人里離れた場所に隠れ住み、
歌舞に明け暮れていたのです。
即位したリーはそのままワンを王妃として迎えます。
再び浴びるように寵愛を受けるワン。
しかし彼女の胸の中には、
愛したふたりの男を奪われた復讐の炎が燃えていたのです…。
中国(香港)映画だから、
その映像の豪華絢爛さは想像がつくかと思います。
シェイクスピアの「ハムレット」をアレンジしたストーリーで、
見た目の豪華さだけじゃなく、きちんと話もよく練られていて、
始めに2時間13分と聞いた時には「そら来たか」と思いましたが(笑)、
飽くことなく楽しく見ることができました。
「女帝」と書いて“エンペラー”と読ませる。
牝馬ウオッカが勝った日本ダービーじゃないけれど、
女性の強さを再確認しなければいけない時代なんでしょうね(笑)。☆4つ。
「女帝」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.5.24

「インビジブル・ウェーブ」☆☆
「毛皮のエロス」☆☆☆
「しゃべれども しゃべれども」☆☆☆☆
「ボラット」☆
追加:「寂しい時は抱きしめて」☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

19日公開の「寂しい時は抱きしめて」の紹介を忘れてしまいました。
失礼しました。今週改めて感想を書かせてもらいますね。
という訳で、今週は5本です!

「インビジブル・ウェーブ」は、浅野忠信主演。
タイ、オランダ、香港、韓国の合作で、アジア各国のコラボレーション作品。
香港のレストランで働くキョウジ。ボスの妻とは男女の関係にあったのですが、
それがバレて、ボスはキョウジ自身に妻の殺害を命じます。
毒殺の翌日、いつものように出勤すると、
「休暇を楽しんでこい」と、金、書類、チケットなどのすべてを渡され、
キョウジはプーケットへと向かいます。
行く船の中からすでにただならぬ気配を感じていたキョウジ。
小さな赤ちゃんを抱いたショートカットの女性ノイ、
気安く話し掛けてくる怪しいアロハの男。
キョウジの旅がただの休暇でないことは明らかでした…。
東南アジア独特の空気感が漂っていて、そこに浅野忠信の雰囲気もハマっています。
スカッとするタイプの作品じゃないから、このテンポというかストーリーの流れも含め、
好きな人には好きな1本じゃないでしょうか。
先日亡くなった鈴木ヒロミツさんのバンド、
モッズの懐かしい曲がある種大切な役割をも果たしています。☆2つ。
「インビジブル・ウェーブ」公式サイト

「毛皮のエロス」はタイトル以上に個性的な作品。
実在した女性カメラマン、ダイアン・アーバスに贈ったオマージュだそう。
50年代のNY。裕福な毛皮商人の娘として生まれたダイアン。
今はカメラマンである夫の妻として、また良き母として過ごしていた彼女でしたが、
何故かある種の息苦しさを感じていたのです。
そんなある日、同じアパートに新たな住人が引っ越してきました。
奇妙な覆面で頭をすっぽり覆ったその姿に、ダイアンは引き付けられてしまうのです…。
実はダイアンは性的フェチシズムがあって、いわゆる“フリーク”好きなんです。
覆面の男は多毛症で顔まで毛むくじゃらの“ライオンマン”。
彼と知り合うことで、同様の仲間たちを紹介され、
ダイアンは至福の歓びを得ますが、家庭はもちろん…。
プレスの言葉を借りれば、「好奇心と欲望に生きた女性の偏愛エロス」。
主演のニコール・キッドマンの体当たりの演技にドキッとします。
一方で性的事件が後を絶たない理由みたいなものを垣間見た気も。
我慢ができないというか、
歯止めが効かない精神構造の現代社会においてはさらに、ね。☆3つ。
「毛皮のエロス」公式サイト

「しゃべれども しゃべれども」は、国分太一主演の下町人情物語。
東京の下町に生まれ育った今昔亭三つ葉。真打ちを目指す二つ目の落語家です。
ある日のこと、師匠である今昔亭小三文が講師を務める
カルチャー・スクールの話し方教室に同行した三つ葉は、
講義の途中で席を立つ若い女性の態度に腹を立て、あとを追います。そしてひと悶着。
「ならば俺の高座を聞きに来い!」
勢いでそうは言ったものの、彼の落語もまだまだ。そんな若手が出られる早朝寄席。
高座に上がった三つ葉と視線の先にいたのはこの前の女の子!
動揺する三つ葉の噺はいつもにも増してボロボロになってしまいました。
彼女の名は五月。ものすごく美人なのに、人としゃべるのが苦手で、
他人に対しなかなか心を開けずにいたのです。
「どうしたらしゃべれるようになるの?」
彼女は三つ葉に聞くのでした。
三つ葉は祖母の春子とふたり暮らし。
自宅はお茶の教室をやってるんですが、そこに通う郁子に恋心を抱いていたのです。
その郁子から三つ葉は相談を受けるんですね。
「大阪から引っ越してきた甥っ子の優が、東京の学校になじめずにいるの。
  落語でも覚えて人気者になれないかしら」
断り切れない三つ葉は話し方教室を始めます。生徒は五月と優。
そこに背の高い、サングラスにマスク姿の男が現れます。
無愛想なこの男、実は元プロ野球選手の湯河原。引退後、解説者になったものの、
上がり症でまったくしゃべれずにいて、噂を聞いたと、教室の門を叩いたのです。
何とも風変わりな3人の生徒に、
三つ葉はうまくおしゃべりを教えることができるのでしょうか…。
コミュニケーション下手で心を閉ざしている五月、
お調子ものの優、不器用な湯河原。そして本人もまだ発展途上の噺家、三つ葉。
ぶつかって、ののしりあって、失敗して、成長するお話。
ボク自身、しゃべることの難しさはよくわかってるし、学校で先生やってるし。
なんか三つ葉とリンクする部分が大きかったなぁ。
すごいなって思ったのは国分くんの落語。
そんなに簡単なものじゃないよ、落語は。
で、最初は案の定、イマイチだなぁって思ったのね。
でも話が進むにつれて、ストーリー的にもひと皮剥けたあとの三つ葉の落語はうまいっ。
それを演り分けていたとしたら、国分太一恐るべしです!☆4つ。
「しゃべれども しゃべれども」公式サイト

「ボラット」は、カザフスタンの国営放送の看板レポーターであるボラットが、
プロデューサーと一緒にアメリカに渡り、NY、ワシントンDC、
ミシシッピ、ヴァージニア、ジョージア、アラバマ、テキサス、カリフォルニアと、
おバカな旅をする“お騒がせ”ロードムービー。
ただ、そのお騒がせ振りが賛否両論だそう。ボクは否…。
ごめん、あまりのお下劣さに横を向いちゃいました。
ま、ワーストイズベスト。かえって気になるって人はどうぞ。☆1つ。
「ボラット」公式サイト

そして先週紹介し忘れた「寂しい時は抱きしめて」。
こちらは恋愛映画。
それもタイトルの通り、体の関係でしか愛を感じられない女の子の物語。
両親の不仲、結婚寸前まで元彼との関係を捨てられない従姉妹など、
いろんな嫌な男女関係を見てきたライラ。
男性とは体でだけ満たされてればいいと、そんな恋愛体質になっていたのです。
いつものようにクラブに踊りに行ったライラと目があったのはデビッド。
恋人と一緒にいたようですが、お構いなしに絡み合うライラとデビッドの視線。
後日改めての再会に、ふたりの仲は急激に加速して行ったのでした…。
これが今風の恋愛なのかも知れないけど、ボクにはまったくわからない。
というか、身体の関係から始まる恋がそう長く続くとは思わないんですけど。古い?
で、求めるものはどんどんエスカレートしていくんだから、男は大変だよなぁ(笑)。
すぐ浮気しそうじゃない?こういう女の子。そんな心配はないのでしょうか?
ボクは入口がそこだと恋愛には発展しないよ。☆2つ。
「寂しい時は抱きしめて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.5.18

「アパートメント」☆☆☆
「JUST FOR KICKS」☆☆☆
「リーピング」☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


5月はGWもあったけど、珍しくここまで4本だけ。
後半追い込むことになりそうです(笑)。
いい作品に出会えますように。さ、今週は3本です。

「アパートメント」は、韓国ホラー。
アパレル・メーカーに勤め、販促のチーフを任されているセジン。
彼女の住む高級マンションの向かいにある「幸福アパート」。
ここでは最近住人が変死体となって発見される事件が多発。
窓から外を眺めていたセジンはあることに気付きます。
なぜか夜9時56分になると、向かいのアパートのすべての照明が消えるのです。
気になったセジンは自らその謎に迫ろうとするのですが…。
クリスマスのディスプレイを上司に否定され、落ち込みながら帰った夜、
地下鉄のホームで見知らぬ女に声を掛けられ、
あやうく自殺の道連れにされそうになったセジン。
その日から彼女の身の回りに不可解な出来事が起こります。
音などでバーンと驚かすのではなく、ストーリーで怖がらせるタイプのホラー。
夏まで待てないホラー・ファンは序章として是非。☆3つ。
「アパートメント」公式サイト

「JUST FOR KICKS」は、スニーカーの映画。
スニーカーがひとつの社会現象となり、
レアなものだとかなりの高値で取り引きされてもいますよね。
そんなスニーカーを追い掛けたドキュメンタリーがこの作品です。
70年代後半、音楽、ダンス、アートなど、
NYで生まれたストリートカルチャーを総称してヒップ・ホップと呼んだのですが、
ブロンクスの貧しいブレイク・ダンサーたちが、
「踊りやすいから」という単純な理由で選んだのが“スニーカー”。
でもそこに色を塗ったり、紐にこだわったりして他人との差別化を計ってきました。
こうしてスニーカーはヒップ・ホップの必須アイテムになっていきます。
80年代に入ると、エアロスミスの名曲をサンプリングした
「WALK THIS WAY」の大ヒットで知られるRUN―DMCが、
「MY adidas」という曲をリリース。
そのライブ会場では多くの観客が
3本線のスニーカーを高々と掲げる光景が見られるようになります。
さらに、バスケットのスーパースター、
マイケル・ジョーダンがNIKEのエアジョーダンというモデルを履いてプレイ。
数々の新記録を樹立してきましたが、実はあの靴、NBAの規則違反で、
ジョーダンは毎試合罰金を払いながらゲームに参加していたそうなんです。
知ってました?
これらの現象に目を付けた各メーカーが、
こぞって各界人気スターとのコラボレーションを画策。
うまくいったところは何匹目かのどじょうにありつけたという訳なんですね。
そんな一連の流れを、
スニーカー・マニアの有名人たちのインタビューを交えて追い掛けた作品。
見終えると、自分のはもちろん、他人の足元まで気になっちゃう1本です。
ちなみにこの映画はMTVシアター第1回作品。
音楽と映像の切れやバランスは見事です。
スニーカー・マニアのみならず、音楽ファンにもおすすめです!☆3つ。
「JUST FOR KICKS」公式サイト

「リーピング」もホラー映画。
聖教者として布教活動につとめていたスーダンの地で、夫と娘を失ったキャサリン。
その時、彼女は信仰を捨てました。
今は「すべての奇跡は科学で証明できる」と大学教授になり、
すべての不思議な現象にメスを入れてきたのです。
ところが、新たに依頼のあったルイジアナの森と沼の町、
ヘイブンの一件は違っていました。
ひとりの少年が命を落としてから起こる数々の不可思議な現象。
川の水は血のように赤くなり、生き物が息絶えていたのです。
しかしこれはまだほんの序章に過ぎなかったのです…。
死んだ少年の妹、ローレンがすべての元凶だと言う村人たち。
ローレンが背負ったものとは?またキャサリンに課せられた本当の役割とは?
TVCFでもイナゴの大群が飛ぶシーンやってました。
視覚的グロさでは「アパートメント」よりこっちかな。
旧約聖書の“十の災い”をなぞるなど、いかにもキリスト教的ホラーです。
お国によって、見る人によって怖さは違うんでしょうね。☆3つ。
「リーピング」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.5.11

「赤い文化住宅の初子」☆☆
「スモーキン・エース」☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

以前も書きましたが、「赤い住宅の…」を見た帰り道、
パチンコをやって負けたその時、
「ごめんね、初子ちゃん。こんなお金の無駄遣いをして…」と
うなだれて帰ったものです(笑)。
この話をこの映画の企画プロデューサーにしたら、
「それっていい話…かなぁ?」と大笑い。
気になる人は是非映画館へ!
今週は2本です!

その「赤い文化住宅の初子」。
中学3年生の初子は、古い文化住宅で兄との2人暮らし。
父は蒸発、母は病気で亡くなっていたのです。
高校を中退して働く兄の僅かな給料と、
思いっきり安い初子のラーメン屋さんでのバイト代が2人の収入。
でも兄は風俗にパチンコと、お金をどんどん使ってしまうのでした。
初子には夢があります。それは大好きな三島くんと同じ高校に進学すること。
でも兄は言います。「俺だけ中退して、おまえは進学かっ」。
初子はそんなお兄ちゃんでも大好き。進学か就職か迷いに迷うんですね。
「何で東高に行けない?」
三島くんに聞かれても答えられない初子。
怒って去って行く三島くん。初子の青春は果たして…。
親切なおばさんが実は××だったり、
蒸発した父ちゃんが△△したり、大変なんです、初子ちゃん。
でもね、暗いんだなぁ。暗過ぎる。初子ちゃん、もっと言いたいことは言わなきゃダメだって。
というかそれは“言うべきこと”なんだよ。
見ていて少しイライラも溜まっちゃいました。
優しくないなぁ、オレ(苦笑)。☆2つ。
「赤い文化住宅の初子」公式サイト

「スモーキン・エース」は、
痛快“ハイテンション・バイオレンス・ムービー”(業界用プレスより)。
ラスベガスの超人気マジシャンのエース。
仕事柄、数多くのマフィアと知り合いになるんですが、何を勘違いしたか、
エース自身がマフィア気取りで悪事に手を出すんですね。
ところが、素人の強引なやり方が裏社会を混乱に陥れ、
エースも警察に逮捕されてしまいます。
エースは大切な情報源。FBIは司法取引を持ち掛けますが、
マフィアはそうなっては一大事と、エースの命を狙います。
ボスのスパラッザはエースの“心臓”に100万ドルの懸賞金を用意。
その金を目当てに集まる名うての殺し屋たち。
対するはエースの身柄を無事確保したいFBI。
エースの運命やいかに…。
主要な登場人物だけでも20人を超えます。
それがみんな銃を撃ちまくるからそれはそれはたくさんの人が命を落とします。
時期が時期だけにいかがなものかとも思うけど、
ごめんなさい、不謹慎ながら面白い!
本格派サスペンス・アクションじゃなくて、コメディの要素がたっぷりなんです。
「キル・ビル」思い出してもらうと近いかも。
とにかく出てくる殺し屋たちが実に個性的。
例えば、キレまくりのクレイジーな3兄弟とか、
指紋を消すために自分のすべての指先を食いちぎった元傭兵、
セクシーな女2人組、誰も素顔を知らない変装名人、
謎のスウェーデン人などなど。
ある有名人気俳優なんて、あっという間に死んじゃいますから(笑)。
でもちゃーんとストーリーは着地点があって。
「赤い…」のあとはこれ見て下さい(笑)。☆4つ。
「プルコギ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.5.4

「プルコギ」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

GWいかがでしたか?
火曜日に1作品だけ試写を見に行ってきました。
たくさん人が来ていたところを見ると、
みなさんあんまり出掛けないんだなと。
なんとなく親近感(笑)。
さ、今週は1本です。

「プルコギ」は焼肉ムービー。
人気料理番組「焼肉バトルロワイヤル」。
勝ち続けていたのは巨大焼肉チェーン店“トラ王”の御曹司、トラオ。
“赤肉”と呼ばれる正肉を使った斬新な料理で並居る評判店を撃破。
その勢いはTVの中だけにとどまりませんでした。
トラ王チェーンは強引なやり方で買収を重ねて行ったのです。
しかしどうしても業績の上がらない地区があったんですね。
それは北九州。
調べてみるとそこには焼肉の達人、
韓老人が“白肉”と呼ばれる内臓系の肉を使って 評判の店
“プルコギ食道”があったのです。
煙と油が染み込んだ小さな食堂。
そこで働いていたのは韓老人の元で焼肉修行をしているタツジと、
韓老人の孫娘ヨリ。
細かい仕事まできっちりこなすこの店の味は、
地元の人たちにずっと愛され続けていたのです。
そこへ突然現われたトラオ。
“赤肉”vs“白肉”の闘いが始まろうとしていました…。
実はタツジには生き別れた兄さんがいて、
なんて書いちゃうとみなさん先読みしちゃいそう(笑)。
でも誰が見ても即わかるからなぁ。
食べ物商売でライバル店の存在が大きいのはリアリティとしてわかります。
うちの実家も寿司屋ですから。
うちがプルコギ食堂なら、トラ王は“回転寿司”かな(笑)。
ただ、そこにエンターテイメント性を加えようとすると、ね。
“渡鬼”じゃないけど、身近な話題に魅力を感じるのが食堂物語。
スケールが大きくなるとどうかなぁ。見てみて下さい。☆2つ。
あ、でもこの映画を見たあとに
焼肉食べたいって思ったら映画の勝ちかも知れませんねっ(笑)
「プルコギ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.4.27

「ストリングス〜愛と絆の旅路〜」☆☆☆
「BABEL」☆☆☆☆
「モンゴリアン・ピンポン」☆☆☆
「恋愛睡眠のすすめ」☆☆

GWはどこに行ってもすごい人。こんな時こそ映画でしょ。
シネコンではしごするもよし、名画座で過去の作品に触れるもよし。
人気のロードショーものも、ちょっと外れた映画館に行くと空いてたりします。
郊外ということじゃなくて、都心の穴場があったりするのです。
探してみて下さい!
では今週の4本です!

「ストリングス〜愛と絆の旅路〜」は、04年のデンマーク作品。
ひもで吊されたあやつり人形のマリオネットが演じる映画です。
舞台はマリオネットの国、バベロン王国。
体のあちこちから糸が出ていて、その糸ははるか天上まで伸びていました。
糸が切れるということはそのパーツを失うこと。
つまり、頭の上の糸が切れるというのは死を意味するのです。
バベロン王国はもう何百年もの間、争いが続いていました。
専制君主として国民に苦しい思いをさせていた国王も、
本当は平和を望んでいたのか、その座を息子のハル王子に譲ると。
そしてこの国を平和に導いてくれと遺書を残して、
自ら頭上の糸を切ったのでした。
ところが、これを見ていた国王の弟のニゾは
ハルに王位を取られてたまるかと遺書を破り捨て、
敵対する一族の長サーロの仕業だとハルに吹き込むんですね。
父を暗殺されたと信じたハルは、
かわいい妹のジーナの反対を押し切り、敵討ちの旅に出ます。
しかし、初めて城の外に出たハルは愕然とするんですね。
長年続いた内戦の結果、治安の悪化は目を覆うものがあり、
兵士はやりたい放題。無惨な奴隷の姿、父の死を喜ぶ者たち。
これがヘバロン王国の現実だったのです。
サーロの情報を得ようと市場へ行ったハルは、
そこで野性的な美しさと芯の強さを併せ持つひとりの女性ジータと出会います。
この出会いがハルの運命を変えていこうとは。
その時、彼はまだ気付いていなかったのです…。
このあとも数々の困難に遭遇するハル。
ニゾの暗殺指令、純真な妹ジーナの死。
市場で会ったジータは実は敵族の戦士。
でも彼女が求めていたのは自由と平和でした。
禁断の恋心を抱く2人。
この世界では運命の人とは糸が天上で結ばれてると言います。
果たして2人の糸は?
この映画のすごいところは、
あやつり人形をあやつり人形として見せているところ。
すぐにこんがらがっちゃうじゃんと考えるのは野暮(笑)。
CGも何も使わず描き出す世界に浸って下さい。
日本版の監督は「新世紀エヴァンゲリオン」でおなじみ、庵野秀明氏。
ピュアな心で感動して下さいね。☆3つ。
「ストリングス〜愛と絆の旅路〜」公式サイト

「BABEL」は、アカデミー賞6部門7ノミネート作品。
日本人女優、菊地凛子が助演女優賞にノミネートされ、話題になった作品です。
モロッコの山あいに暮らす一家。
大切なヤギを襲うジャッカルを撃つために、一丁のライフルを購入します。
2人のまだ幼い兄弟がその銃を持って山の上へ。
互いの腕を競うかのように試し撃ちをするんですね。
見ると山道に1台のバスが。
弟はそのバス目掛けて1発の銃弾を放ったのです。
そのバスは観光バスで、アメリカ人夫妻の妻の鎖骨の上を銃弾は撃ち抜いていました。
鮮血にまみれる妻。慌てふためく夫。
夫婦にはアメリカに残してきた2人の幼い子供がいました。
メキシコ人のベビーシッターに預けてきたものの、事件にあって帰れない。
子供には内緒で、彼女にあと数日子供を預かってもらえないかと頼みます。
ところが彼女もまた息子の結婚式でメキシコへ帰らなくてはならない。
しかしベビーシッターの代わりはいない。
そこで彼女は2人の子供をメキシコに連れて行こうと決めるんですね。
結婚式も無事終わり、帰国のため、甥の車で国境までやってくるのですが、
検問で甥が飲酒運転で捕まりそうになります。強行突破をはかる甥。
車は道を外れ、甥は逃走。
ベビーシッターと子供たちは砂漠に置き去りにされてしまうのです。
一方、モロッコで使われたライフルを調べてみると、
所有者に日本人会社員が浮上します。
聞けばモロッコにハンティングに行った際、
地元ガイドにお礼として置いてきたと言います。
この会社員、経済的には豊かだけれど、家庭内に問題を抱えていました。
アメリカ国内では、すわテロリストの犯行かと大騒ぎに。
モロッコ、メキシコ、アメリカ、そして日本。
この悲しみの行き着く先はどこなのでしょう…。
みんな問題を抱えているし、抱えてしまう。
アメリカ人夫妻は3人目の子供を赤ちゃんのうちに亡くしてしまい、
そこから夫婦仲がギクシャクし始めて、
それで夫が気乗りのしない妻を連れてのモロッコ旅行でした。
また、ライフルの持ち主だった日本人会社員の妻は自殺していて、
障害を持っている10代の娘も自分自身のことで、
また家族のことで、愛を求めてさまよっていたのです。
モロッコの一家も子供を逃がそうとする父と息子に
警察の銃弾が容赦なく降りかかり、
メキシコではベビーシッターが砂漠で子供たちを見失ってしまう。
この映画のテーマは“コミュニケーションの壁”だと監督は言います。
「バベル」とは“バベルの塔”のことで、
人間が神に近づこうとしてこの塔を建てようとしたことが神の逆鱗に触れ、
それまでは同じ言語でひとつだった人間をバラバラにしたと言われているそう。
言語、文化、人種、貧富の差など、人々を隔てる壁はたくさんあります。
でも、それを乗り越えるには“愛”しかないんだと。
なかなか難しい映画だと思います。
ストーリーが展開していくうちに登場人物たちが実は繋がってたんだ、
というタイプの映画とはちょっと違うかな。
先入観抜きで見てみて下さい。☆4つ。
「BABEL」公式サイト

「モンゴリアン・ピンポン」は、内モンゴルを舞台にした純朴な1本。
広大な自然の中で伸び伸び暮らすモンゴルの人々。
お話は少年ビリグが川から流れてきた
1個のピンポン玉を拾ったことから始まります。
さて、これは何だろう?
お祖母さんに聞けば、精霊の宝物“光る真珠”だと言うけど、
いっこうに光らない(笑)。
友達との間でも、ふわふわと軽い小さなこの白い玉が話題の中心になりました。
そんなビリグの住む地域にも都会の文化はどんどん入り込んできます。
行商人の持っていた雑誌には都会の暮らしが載っていて、
父さんは草原に家を建てようと頑張ります。
TVも買いました。でもなかなか映りません。
ところがある日のこと、
その映りの悪い画面でビリグたちは“卓球”の存在を知るのです。
「卓球は国技。玉は国家の玉」というアナウンスを聞いたビリグたちは、
こりゃ大変なものを拾ってしまった、
国の大切なものなら返しに行かなくては、と旅に出るのですが…。
ホントにピュアです。
その分見てる方は正直たいくつなところもあるけど(笑)。
旅に出ても、すぐに疲れて眠っちゃう。
親に内緒で出たからそれはそれは怒られる。
なんか自分の子供の頃を思い出しません?
きっと今の子供たちはTVゲームやりたくて家にこもる。
逆に「たまには外で遊んできなさい!」って怒られてるのかもね(笑)。
このピンポン玉がいろんなドラマを生み出します。
ボクらもあったよね、酒蓋とかチェーリングとか、
自分たちだけの付加価値付けて大事にしていた宝物。
ああ懐かしい。こうしてみんな大人になっていくのです。☆3つ。
「モンゴリアン・ピンポン」公式サイト

「恋愛睡眠のすすめ」は、フランスのラブ・コメディ。
ステファンは仕事も恋もなかなかうまくいかない引っ込み思案な男。
現実逃避ばかりしていて、寝る時に見る夢に幸せを託しているんですね。
そんな彼のアパートの隣りの部屋に、気になる女性が引っ越してきます。
ひょんなことから仲良くなるんですが、それが恋愛にも発展しそうになるのに、
ステファンはすぐに夢に逃げる。
だから今の状況が現実なのか、それとも夢の世界での出来事なのか、
だんだんわからなくなってしまいます。
彼女にしてみれば自分の気持ちを疑われてるように感じてしまうのも当然。
こんなステファンの恋が実る日は来るのでしょうか…。
映像に工夫があって、やはり夢と現実の描き方にメリハリがある。
ポップでかわいらしいものが多く、どちらかというと女の子向きの映画かな。
いわゆる“妄想”?これが好きな人は意外とリアリティ感じちゃうかも!?
ボクもついついつらい目の前から逃げちゃいそうですが、
しっかり現実直視でいかなくてはならないので(笑)。
ごめんなさい、☆2つ。
「恋愛睡眠のすすめ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.4.19

「こわれゆく世界の中で」☆☆☆
「フライ・ダディ」☆☆☆
「星影のワルツ」☆☆
「ラブソングができるまで」☆☆☆☆☆
「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」☆☆☆
「ロッキー・ザ・ファイナル」☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

「ロッキー・ザ・ファイナル」は20日金曜日の公開。
その他は土曜公開です!今週は6本。さっそく行きましょう!

「こわれゆく世界の中で」は、大人の恋の物語。
決して治安の良い場所とは言えないロンドンのキングス・クロス。
この町の大規模な再開発を担当している会社の共同経営者、ウィル。
ウィルには、結婚こそしていないけれど、10年共に暮らしているリヴという女性がいました。
また彼女には前夫との娘ビーがいて、ビーは心のバランスをうまく取ることのできない13歳。
こうなったのは夫と別れたからだと自分を責め続けるリヴ。
仕事と特殊な家庭環境の狭間で、ウィルも少し疲れていました。
そんな時、何者かがオフィスに侵入。パソコンなどが盗まれてしまいます。
それも2回。ウィルは自ら見張りに立ちます。 するとひとりの少年が。
追いかけると、逃げ込んだのは共同住宅の部屋。
入口には“仕立て屋”のちっちゃな看板が掛かっていました。
翌日客を装い訪ねてみると、中から女性がひとり。
少年の母親です。ジャケットの修繕を頼みつつ話を聞くと、
ボスニアから逃げるようにロンドンに亡命してきたと、
その厳しい現状を語り始めたのでした…。
少年の母の名はアミラ。ウィルはアミラと恋に落ちてしまいます。
でもアミラは、自分の息子がウィルのオフィスで盗みを働いたことを、
ウィルからではなく息子の口から知るのです。
じゃあなぜウィルは自分に近付いてきたのか?当然、疑心暗鬼になってしまう。
環境や生い立ちの違う男と女。一方で、リヴやビーとの暮らしはどうする?
複雑に絡み合う恋の結末やいかに、というお話。
ジュード・ロウが主演の映画なんですが、まるでロンドンの霧のように表情は曇りっぱなし。
「ホリデイ」の彼とはまったく違います。
社会派恋愛作品と呼んでもいいぐらい背景には重いものがあって、
単に不倫とか情事とか、そんな言葉では片付けられないストーリー。
それでも最後はちょっぴり晴れ間が覗く感じかも。☆3つ。
「こわれゆく世界の中で」公式サイト

「フライ・ダディ」は韓国映画。
ごく普通のサラリーマン、ガピル。
ある日、一人娘のダミが、
カラオケボックスで見知らぬ高校生の男に殴られ入院したと。
病院に駆け付けたガピルの元に、加害者の少年とその学校の教師が謝罪に来ました。
ところが少年はもちろん、教師までまったく反省の色がない。
ガピルは逆にそんな連中にやり込められてしまったのです。
少年の名はテウク。聞けばボクシングの高校チャンピオンだとか。
自分の不甲斐なさを棚に上げ、訳も聞かずダミを叱り付けるガピル。
そんな父に失望するダミ。
娘の信頼と愛情と、父親としての威厳を取り戻すべく、ガピルは決意します。
刺し違えてでも、テウクに謝らせてやるんだと。
そしてガピルはテウクの学校に乗り込んで行くのでした…。
襲撃は失敗。でもガピルはひとりの少年と出会います。
テウクを倒したことのある武道の達人、スンソクです。
そこでなんとかスンソクに弟子入りして、リベンジを果たそうと頑張るのです。
ありえないっちゃありえない(笑)。
普通のおっちゃんが40日の特訓で
高校のボクシング・チャンピオンを負かせるなんて夢物語でしょ?
でもね、勧善懲悪だから応援しちゃうんだなぁ。
結末は見てのお楽しみ!☆3つ。
「フライ・ダディ」公式サイト

「星影のワルツ」は、写真家・若木信吾監督作品。
04年に亡くなった祖父・琢次を描いた1本。
若木信吾は、写真の被写体としても祖父を撮り続けていて、
99年に「Takuji」という写真集も出しているそうです。
その祖父への愛情が、プライベートな境界を越えてまで伝わって来るかどうか。
監督の実際の友人たちも出演してます。
ボクはう〜んって感じだけど、作家の吉本ばななさんは「私は泣いた」と手記を寄せていました。
感性の鋭い人には逆に超越して届くのかな。
おじいちゃん、ごめんなさい。☆2つ。
「星影のワルツ」公式サイト

「ラブソングができるまで」は、
ヒュー・グラントとドリュー・バリモアのラブ・コメディ。
80年代の音楽シーンで爆発的な人気を誇った5人組男性グループ、POP。
メンバーだったアレックスは今じゃすっかり過去の人。
元POPの看板を掲げて、街の小さなイベントで歌う毎日。
でもそんな仕事でさえ今では取るのが難しくなっていたのです。
そんなアレックスに起死回生のチャンス到来!
それは若者に大人気のカリスマ女性シンガー、コーラ・コーマンの新曲を書くこと。
とはいってもこの仕事、他に7人にも発注されていて、
ボツなら一銭にもならないという厳しいもの。
さらにタイトルも決っていて、「WayBackIntoLove」。
最近失恋したコーラの実体験から、
テーマは“愛を取り戻す方法”に決められていました。
曲を書くのは10年振り。詞はからきしダメというアレックス。
あまり気乗りがしないまま、新進気鋭の作詞家と曲作りに取り掛かるんですが、
どうもこの作詞家とはウマが合わない。そんな時、
アパートの植木に水やりのアルバイトに来ていた女性が気になるフレーズをポロリ。
彼女の名はソフィー。
実は彼女も作家を目指していたのですが、
同じ作家で年の離れた恋人に活字でひどい目にあわされて以来、
ペンを置いていたのでした。
キラリと光るソフィーの詞のセンスに惚れ込んだアレックスは、
一緒にラブソングを作ってくれないかと迫ります。
ところが絶対にNOと拒むソフィー。
しかし家に帰って2児の母である姉のローンダに事の一部始終を話すと、
ローンダは熱狂的なPOPファンであることが判明。
そんな姉の後押しもあって、ソフィーは渋々協力することになりします。
締め切りまであと3日!素敵なラブソングは出来上がるのでしょうか…。
80s好きならメチャメチャ楽しめる1本。
POPは、ワム!とか、
カルチャー・クラブ、デュラン・デュランなんかと同じ位置付けなんです。
実は映画の中で、TV番組出演のオファーが来る。
それが80年代の懐かしのアーティストが
ボクシングをやって勝ったら歌うことができるって番組なのね。
で、アレックスが聞く訳ですよ、「他にどんな人が?」って。
すると、REOスピードワゴンだとか、TheFlockOfSeagulls、
ティファニーにデビー・ギブソンなんて名前が出てくる。
笑える人には笑えます(笑)。
ヒュー・グラントの演技は好き嫌いが分かれるはず。
ボクはこの人、2枚目半をやらせたら抜群だと思ってるのね。
この映画の中でも、からきしダメな詞でソフィーに歌を捧げるシーンがあるんだけど、
これがまた不器用だからこそグッとくる。
最近確かに涙腺弱いけど(笑)、それにしても涙がポロポロこぼれてしまいました。
80sファンは小ネタで笑えて最後は泣ける1本。
もちろんその時代を知らなくても、十分に楽しめるあったかい映画です。
恋人と行ったら、帰りにカラオケで、
下手でもいいからラブソングを1曲歌ってもらいたくなるような作品ですョ!
☆5つ!
「ラブソングができるまで」公式サイト

「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」は、ロシアの偉大なるチェロ奏者、
ロストロポーヴィチの半生を綴ったドキュメンタリー。
ドキュメンタリーだからストーリーは割愛させてもらいますが、
あの小沢征爾が兄と慕い、人気ソプラノ歌手のガリーナ・ヴィシネフスカヤを妻に持つ、
80歳の音楽家がロストロポーヴィチ。
旧ソビエト時代から意外や反体制の人だったようで、
弾圧も受けつつ、それでもその実力が何にも代えがたい存在だったのでしょう。
お茶目な言動はこの国の人としては意外な感じ。
クラシックファンは特に楽しめるかと思います。☆3つ。
「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」公式サイト

「ロッキー・ザ・ファイナル」は、ご存じロッキー・シリーズの最終章。
無敵と言われた世界ヘビー級チャンピオン、アポロ・クリードとの熱戦から30年。
ネバーギブアップの精神で世界中の多くの人に勇気を与え続けたロッキー・バルボア。
今では引退して地元フィラデルフィアでレストランを経営。
ロッキーに会いたいと来るお客さんに、当時を語って聞かせる毎日でした。
妻エイドリアンはガンで他界。
ひとり息子のロバートは、父があまりに有名であるがゆえに
“あのロッキーの…”と言われるのが嫌で父を避けていたんですね。
孤独を感じるロッキーが、ふと立ち寄ったBARのカウンターで働いていたのが、
シングルマザーのマリー。 実は彼女、30年前は不良少女。
ロッキーにタバコを注意され、家まで送られたのを覚えていたのです。
ロッキーにも遠い記憶がよみがえります。
この再会をきっかけに、マリーはもちろん、マリーの息子ステップスとの交流が始まります。
それはまるで心の隙間を埋めるかのような行動だったのですが、それでも拭い切れない喪失感。
それを埋めることができるのはやはりボクシングしかなかったのです。
しかしプロのライセンスは再発行されず、息子のロバートからは猛烈な反対にあってしまいます。
それでも信念を貫き通すことでボクシング協会も折れ、ライセンスを獲得します。
とはいっても再び世界チャンピオンになろうなどと大それたことは考えておらず、
プロとしてリングに上がれればと思っていた矢先のこと。
TVの企画で、強過ぎて不人気の現役チャンプ、
ディクソンとロッキーが戦ったらどっちが強いかというのを
コンピュータが弾き出したバーチャルマッチをOA。
ディクソン大苦戦!
これを見ていたディクソンは面白いはずがない。
またディクソン側のプロモーターも、イメージアップや話題作りになると、
ノンタイトルでのエキシビションマッチを提案します。これを受けるロッキー。
彼が戦うのは、自分を応援してくれている大切な人のため。
マリー、ステップス、そして何より、自分を見失いかけている息子ロバートのため。
再びネバーギブアップの精神で、ロッキーはリングに上がるのです…。
1946年生まれのシルベスター・スタローン。
60歳のロッキーは健在です!
スピードじゃかなわないからと、磨きをかけたのがパンチの重さ。
過酷なトレーニングを積んで行く中で、そこにひとつのリアリティが生まれます。
この人は背負うものが重ければ重いほど、強くなるんだなと。
展開も何もかも読めるのに感動しちゃう。
わかってるのにやられちゃいます(笑)。
あの音楽もあってこそのロッキーだなと改めて。
“偉大なるマンネリ”とは偉大なんだということでしょう!☆4つ。
「ロッキー・ザ・ファイナル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.4.12

「輝ける女たち」☆☆☆☆
「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」☆☆☆
「クィーン」☆☆☆☆
「恋しくて」☆☆


仕事仲間のM氏。彼の映画の好き嫌いはボクと結構似たところがあります。
今ヒットしているある映画についてかなりご立腹のようで、
「最低!久しぶりに金返せと思った。長谷川さんも絶対ふざけんなと怒ると思うよ」
いわゆる生意気な主人公が改心していく内容で、その最初があまりにもひどい。
同じ道を目指している人たちに失礼だし、悪影響だと。
ボクは見ていないので、なんとも言えないのですが、でもわかる気がする。
ハリウッドものでしたが、ここでもそんな感想を何度か書きましたもんね。
メリハリをつけようとするがあまりの表現なんだろうけど、
いかがなものかというのは確かにあります。
嫌な映画と知りつつも、これは見に行かなくてはと妙な使命感が(笑)。
あなたもボクの印が☆2つだろうと、
それで逆に興味を持ったら是非是非劇場に足を運んで下さいねっ。
では今週の4本です!

「輝ける女たち」は、フランス映画。
カトリーヌ・ドヌーヴとエマニュエル・ベアールという2大フランス女優の競演。
ニースで繁盛しているキャバレー“青いオウム”。
今夜も人気女性シンガー、レアの歌を聞きにお客さんが集まっていました。
ところが女装アーティストでオーナーのガブリエルが突然世を去ります。
ガブリエルのことを父のように慕っていたマジシャンのニッキーは、
店の所有権を譲られるものと思っていたのに、ガブリエルが遺したのはニッキーにではなく、
ニッキーの2人の子供、ニノとマリアンヌにでした。
ニノは別れた妻アリスとの間にできた男の子。
マリアンヌは幼なじみで今は別の男性と結婚しているシモーヌとの間にできた女の子。
ニノは会計士で、同性愛者。
マリアンヌは出版社の編集者で、子供ができないことで夫とうまくいってません。
そんなバラバラの家族が、ガブリエルの死によって久しぶりに集まります。
“青いオウム”をどうするか。現実的で若いふたりは売却を主張するのですが…。
以前言った、フランス映画が苦手なボクが面白い!って思ったのはこの作品。
歌手のレアも含め、登場人物のそれぞれに、それぞれがここまで背負ってきた人生がある。
それをフランス人らしく個人として主張しながら、
それでも人間臭い部分もしっかり描いているのです。
そして人間臭い結末に向かって話は進んで行くという、
ボクには意外なほどすんなり入ってきたフランス映画でした。
もちろん練りに練った人間相関図があって、思いもよらない事実があったりもするんですが、
これがまたややこしくないんです。
良かったですョ。おすすめです!☆4つ。
「輝ける女たち」公式サイト

「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」は、
イケメン俳優たちによるカンフー・アクション映画。
生き別れになった2人の兄弟、タイガーとドラゴン。
タイガーは、親と離れ離れになってしまった子供たちが武道を習いながら暮らす
「龍虎門(ドラゴン・タイガー・ゲート)」で成長。
一方の兄は、秘密結社「江湖」の一味になっていました。
とあるいざこざの中、兄弟は偶然再会。まっすぐな弟の姿に葛藤を覚える兄。
実は「江湖」のボス、マーも、いまでは娘のシャオリンとの平穏な暮らしを望んでいて、
犯罪組織の元締めである巨大犯罪組織「羅刹門」からの脱退を申し出るんですね。
ところがそれを許さない「羅刹門」のボスがマーを虐殺。
マーを守ろうと深い傷を負ったドラゴンは、シャオリンをタイガーに預け、復讐に向かいます。
しかし「羅刹門」の魔の手は「龍虎門」にまで伸びていて、
ウォン師もまた殺されてしまったのです。
立ちはだかる敵の力は一枚も二枚も上。
それでもタイガーは、兄と自分と「龍虎門」のために強大な悪に立ち向かっていくのでした…。
ここにもうひとり、ターボというヌンチャクの使い手が、
ウォン師の教えを乞いに「龍虎門に」やって来る。
こてんぱんに叩きのめされるターボ。
そんなウォン師をやっつけちゃう「羅刹門」のボスというのは恐ろしく強い!
ここからはもう完全ワイヤーアクションの世界(笑)。
その前に彼らはある人のもとに修行に行くんだけどね。
B級映画かと思いきや、さにあらず。かなり面白かったですョ。
見終わったら肩で風切って歩いちゃうかも(笑)。☆3つ。
「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」公式サイト

「クィーン」は、現イギリス女王のエリザベス女王と、ロイヤルファミリーを描いた作品。
1997年8月30日、ダイアナ元皇太子妃の乗った車が、パリのトンネル内で大破。
翌日早朝に届いたダイアナ死亡の一報。
王室を離れてもなお人気が高かった人だけに、
この年首相に就任したばかりのトニー・ブレアはイギリス国民の感情を考え、
推敲を重ねた追悼文を発表。これが国民の心を打ってブレア人気は急上昇。
一方、元妃を厄介者と思っていたエリザベス女王は、
「ダイアナはすでに民間人」との立場から王室専用機での遺体の運搬をも最初は拒否。
公式声明も出さず、宮殿に半旗を掲げることすらしなかったのです。
国民の怒りはエリザベス女王へ。ブレア首相は女王へ進言しようとするのですが、
「英国君主に何を言う」と女王は苛立ちをつのらせるばかり。
ダイアナを殺したのはパパラッチだという批判をかわすために、
マスコミの女王バッシングは日を追うごとに激しくなります。
「私は誰よりもこの国の国民を知っている。
この異常なムードを作ったのはマスコミで、
本来イギリス国民が示す品位ある哀悼表現とはまったくかけ離れています」
ところが、かけ離れていたのは女王の方だったのです…。
97年5月に、選挙に勝ってブレア首相が誕生するところから物語は始まって、
事故の起きた8月30日からの1週間がこの映画の肝となります。
まず実在の、それも現君主を描くというその発想がすごい。
女王を演じたヘレン・ミレンはこの映画でアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。
気品と誇り、強さとそして一瞬だけ見せた哀しさ。
脚本のピーター・モーガンも、取材に取材を重ねて本を仕上げたそう。
10年前の、今なお謎に包まれた部分の多いダイアナ元妃の死。
その内側が一部でもこうして明らかになるのは、
ワイドショー好きじゃなくても興味の湧くところです。☆4つ。
「クィーン」公式サイト

「恋しくて」は、石垣島を舞台にした青春映画。
バンド活動に夢を見出だした若者たちのお話。
高校生になった加那子は、幼なじみの栄順と同じ学校でばったり。
加那子の兄でボス格のセイリョウの鶴の一声でバンドをやることになります。
実は加那子たちの両親は音楽家。今は自らが経営するバーで歌う母・澄子、
加那子が4歳の時にいなくなってしまったピアニストの父。
加那子はその時から歌が歌えなくなってしまったのです。
組んだバンドの名前はセイリョウズ。 セイリョウはドラム、栄順が歌。
あとはギターひとりいるんですが、加那子のパートは栄順の横で気弱な栄順に歌わせる役。
学年も上がり、いつも一緒にいる栄順と加那子。
ある日、ふたりはお互いの気持ちを確認します。プラトニックなかわいい恋。
さてバンドが目指すは学園祭のステージ。
ところが想像していた以上にみんなうまくてあえなく予選で落選してしまいます。
「旅に出る」と出て行ってしまうセイリョウ。
バンドはいったいどうなってしまうのでしょうか…。
栄順たちが3年になった文化祭でバンド演奏が禁止になると、近くの高校にも声を掛けて、
“八重山バンド天国”なるイベントを企画。
エッというような悲しい出来事もありつつ、このあとバンドは東京へ向かうんですね。
登場人物の名前、タイトル、話の展開などから、
BEGINの話?と思いがちですが、あくまでフィクション。
でも最後はサプライズな演出が待っています。
地元の若者を主役級に起用した、中江裕司監督(ナビィの恋)の決断をどう見るか。
確かにリアリティは出ても、その分沖縄の、石垣の、空気、景色に頼ってしまった感は否めません。
厳しいかな。☆2つ。
「恋しくて」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.4.5

「ブラッド・ダイヤモンド」☆☆☆
「ふるさと-JAPAN」☆☆
「プロジェクトBB」☆☆☆
「ママの遺したラヴソング」☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

先日、マスコミ関係者と偽って試写室に入ってきた男がいました。
しょっちゅう携帯を見るから光が気になるし、
持って入ったペットボトルをグルグル回し、
揚句の果てに床にツバを吐く始末。
上映中に何人もの人が何回も注意してるのにまったく意に介さず。
“非常識”を越えて“おかしい”。
終演後、みんなで囲んで怒るも、まったく動じない。
危ないから警察を呼んだ方がいいという話にまでなりました。
かわいそうなのは作品ですよね。まったく…。
今週は4本です。

「ブラッド・ダイヤモンド」は、レオナルド・ディカプリオ主演作。
アフリカ西部のシオラレオネ共和国。
内戦の続くこの国で、漁師として生業を立てていたソロモン。
医者になりたいという自慢の息子の夢を叶えてやりたい。
その一心で頑張ってきたソロモンでしたが、ある日突然悲劇が訪れます。
反政府軍RUFの襲撃に合い、家族はバラバラにされてしまうんですね。
ソロモンが連れて行かれたのはダイヤモンドの採掘場。
ここで取れたダイヤが、闇ルートを回って、RUFの活動資金となっていたのです。
たとえほんのわずかでも盗もうものなら即射殺。
そんな厳しい監視下で、ソロモンはとんでもなく大きなピンクダイヤを発見します。
「これがあれば家族が探せる」。そう思ったソロモンは、
死をも覚悟でこのピンクダイヤを隠すのでした。
一方、裏ダイヤの密売で大金を稼いでいたのがダニー・アーチャーという白人の男。
ある日、家畜の背中にダイヤを埋めて運ぼうとしたところを見つかって逮捕されてしまいます。
ところが入れられた刑務所で耳にしたピンクダイヤの噂。
またその男が、反政府軍のために働いたとして逮捕され、
この刑務所にいることもわかったのです。色めき出すアーチャー。
しばらくして釈放されたアーチャーが行きつけのBARに行くと、
そこにひとりの白人女性がいました。彼女の名はマディ。
聞けばマディはジャーナリストで、血塗られた紛争ダイヤ、
つまり“ブラッド・ダイヤモンド”の真相を追っているといいます。
アーチャーがその密売人だと知り、しつこくつきまとうマディ。
うとましく思うアーチャー。
しかしこのあとこの3人が、不思議な運命の糸で繋がっていくのです…。
アーチャーはソロモンからピンクダイヤのありかを知りたい。
その見返りとして家族の居場所を必ず突き止めると約束。
そのためにはマディの情報網としての協力は不可欠で、
アーチャーはマディに“ブラッド・ダイヤモンド”の仕組みを話すと交渉を進めるのです。
悪役のディカプリオは正直なかなかボクの中にすんなりと入ってこないんですよ。
「ハァン?」なんて凄んでも、なんかね…(苦笑)。
先入観を持って見てはいけないんですが、
“レオ様”のイメージができあがっちゃってるのかも。
映画としては面白かったですョ。☆3つ。
「ブラッド・ダイヤモンド」公式サイト

「ふるさと-JAPAN」は、アニメ映画。古きよき日本を描いた1本です。
昭和31年の東京・深川。町の小学校に音楽の女先生が赴任してきます。
坂本理恵子先生。
第二次世界対戦で特攻隊として命を落とした兄の遺言で音楽教師になった坂本先生は、
年末の地区合唱大会に出場しようと働きかけます。
そんな時、6年4組にも新しい仲間がやってきました。
神戸からの転校生、宮永志津です。歌のうまい志津、学級委員長のアキラなど、
6年生で合唱団を結成し、練習に励むんですが、
ガキ大将のゴンたちがある事件を起こしてしまいます。
そしてなんとその中にアキラもいたのです。
果たしてみんなの夢である合唱大会への出場はなるのでしょうか…。
実はこのあとまだ悲しい出来事が起こるんですね。後悔してもし切れないアキラ。
そんなひとつひとつの経験が、少年を大人にしていくんですけどね。
なんとなく、“昭和”という良い時代背景に頼り切っちゃった気がするかなぁ。
物語としての深みはあまり。そこがちょっと残念でした。
アニメの登場人物の口の開き方とセリフが合わないというのも、
今の時代ではどうなんでしょうね。ごめんなさい、☆2つ。
「ふるさと-JAPAN」公式サイト

「プロジェクトBB」は、ジャッキー・チェンのアクション・コメディ。
泥棒チームを組む3人の男たち。サンダル、フリーパス、大家。
でも彼らにはポリシーがありました。自分たちがやるのは盗みだけ。
人の命や尊厳に関わる悪事には手を染めなかったのです。
3人はそれぞれに問題を抱えていました。
サンダルはギャンブルに狂い、父親から半ば勘当されている状態。
若いフリーパスは18歳の時に勢いでした結婚を後悔しており、
最年長の大家は20年前に我が子を亡くして以来、妻が心を病み、
人形を大切に育てるという環境に暮らしていたのです。
それぞれがそれぞれに行き詰まって、遂に掟破りの行動に出ます。
それは3000万ドルの身代金が懸かった赤ちゃんの誘拐。
暗黒街のボスを父に持つ男と昔付き合っていた女性がいて、
今は普通に結婚をして子供をもうけたのですが、
それが自分の子だろうと昔の恋人だった男は言い張ります。
ボスにしても自分の孫かも知れないとなればやっきになる。
そこで3人に誘拐を依頼したのですが…。
赤ちゃんを手に入れてからがさぁ大変。もともと極悪非道の男たちではないので、
慣れない手付きで赤ちゃんの面倒を見るうちにどんどん愛情が湧いてきちゃうんですね。
やっぱりこんなこと、やっちゃいけなかったんだって。
すごく斬新なことがあるわけじゃないけど、逆に言えばわかりやすくて楽しめる1本。
タイトルからして何となく中身が見えるかなぁと、
そう期待せずに足を運んだ試写でしたが、予想した以上に面白かったです!
☆3つ。
「プロジェクトBB」公式サイト

「ママの遺したラヴソング」は、ジョン・トラヴォルタとスカーレット・ヨハンソンという、
コンビとしては異色の2人が組んだあったかい1本。
ずーっと会っていなかった母の、突然の死。
生家から遠く離れたフロリダの地で、
学校にも行かずだらだらと毎日を過ごしていたパーシーは
久しぶりにニューオーリンズの家を訪れます。
出迎えたのはふたりの見知らぬ男、ボビーとローソンでした。
ボビーは元大学の文学部の教授、ローソンはボビーを慕う作家志望の青年。
母の遺言で、この家は3人に残されたと言います。
知らない男との生活などふざけるなとパーシーは立ち去ろうとするのですが、
今更だけど、どうしても母のことを知りたいと考えを改め、
奇妙な3人暮らしを始めるのです。
小生意気なパーシーを毛嫌いするボビーは、
パーシーをさっさと追い出したくて仕方ありません。
それでも一言、二言と会話を交わすうちに、
ゆっくりですがだんだんと確実に打ち解け合う3人。
ボビーは9年前のある事件がきっかけで家族を失うんですが、
それにはローソンが絡んでいた。
ローソンはそのことでずっと自分を責め続けて来たんですね。
今は酒浸りのボビーも重い病に侵されている。
パーシーもまったく自分の将来が見えない。
そんな3人の共同生活。さらにこの家の権利についての事実が判明すると、
3人の間に再び亀裂が入ってしまいます。
いよいよ出て行こう。そう思って荷物を整理していたパーシーは、
母から自分に送られた1通の手紙を発見するのです…。
ボクは最初、家にいた2人の男を見て、ローソンは若者だけど、
ボビーは年齢からしてパーシーの父親なんだろうと勝手に思い込んで見始めちゃったから、
最後に感動するというより、「あ、そういうことだったの?」と
自分の入口の間違いを訂正しながら物語を巻き戻すのに躍起でした(笑)。
あ、ボビーがパーシーの父親かどうかじゃないんですよ。
舞台設定を間違えちゃったってこと。意外と多いんじゃないかなぁ。
同じ間違いをする人。そんな気がする。
ゆえに若干、入り込むのが難しい映画ではあります。
05年のゴールデン・グローブ賞(主演女優賞)にもノミネートされていた作品が
ここまで日本で公開されなかったということからも推して知るべしかも。
でもね、この映画、音楽がいい。
舞台がニューオーリンズだから、ブルースやフォークがたまらなく心を打つんですョ。
特にスクリーンに訳詞が出る曲は、曲の魅力に浸って下さい。
そこがポイント・アップで、☆4つ。
「ママの遺したラヴソング」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.3.28

「情痴 アヴァンチュール」☆☆
「ポリス インサイド・アウト」☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

今日は「ラブソングができるまで」という映画の試写を見てきました。
よかったなぁ〜。ヒュー・グラント扮する80年代のスター歌手が、
ダサイ歌詞の歌を歌うんですが、それ聞いててポロリポロリと涙がこぼれてしまいました。
恥ずかしくて、手のひらで顔を隠しちゃいました(笑)。
ウルウルすることはあっても、また溢れ出そうになることはあっても、
なかなかこぼれ落ちることはないんですョ。4月半ばの公開。
詳細はまたその時に。あー、恋がしたいっ(笑)
さ、今週は2本です。

「情痴 アヴァンチュール」は、ボクの苦手なフランス映画(笑)。
一応ベルギーとの合作ではあります。
パリのアパートで恋人と同棲中のジュリアン。
仕事帰りの彼がアパートの入口で見たもの、それはひとりの裸足の女性でした。
物言いたげな瞳が気になり、後を追ったものの見失ってしまうんですね。
すると今度はスーパーでバッタリ、次はパブでバッタリ。彼女の名はガブリエル。
あの夜とは違ってとても美しく品のある容姿にガブリエルは魅せられます。
しかし再び、裸足で夜の街に現れたガブリエル。
そう、ガブリエルは夢遊病者だったのです…。
ジュリアンにはセシルという恋人がいるんだから、深く関わらなきゃいいのに。
ま、ガブリエルには、セシルにない何かがあったということなんでしょうね。
恋愛なんてそんなもの。
ガブリエルには子供がいて、当然その父親たる男がいて。
2組の男女の三角関係ならぬ、四角関係。
ひとりひとりの深層心理や性格分析が面白いのかも知れないけど、
世の中変てこな事件や事例で溢れちゃってるだけに…。☆2つ。
「情痴 アヴァンチュール」公式サイト

「ポリス インサイド・アウト」は、
03年にロックの殿堂入りを果たした人気ロックバンド、ポリスのドキュメンタリー。
ポリスは、ベース、ボーカルのスティング、ギターのアンディ・サマーズ、
ドラムスのスチュアート・コープランドからなる3人組。
実は彼らの活動はわずかに5年。
えっ、そんなに短かったっけ?と思わせるほどのスピードとインパクトで、
音楽シーンを駆け抜けて行ったのです。
この映画はドラムスのスチュアートが、
“スーパー8”という8ミリカメラで撮っていた、彼らの素顔満載の1本なんです。
パンク、ニューウェーブがメインストリームだった70年代末にデビュー、
安いモーテルに泊まりながらの全米ツアー、
街の小さなレコード店で数少ないお客さんにサインをする姿から、
プライベートジェットで世界各国を飛び回り、
身動きすらできないほどのファンに囲まれる姿まで、
彼らを取り巻く環境の変化、
わずかな時間で一気に頂点に昇り詰めることのすごさと怖さを見て取れる作品になっています。
ステージの上ではドラムセットの後ろにカメラを据えているから、
まるでコンサートスタッフになったかのように、
またメンバーのプライベートショットではリラックスした表情も見れ、
まるでポリスのマネージャーになったかのよう。
ただし古いカメラだから、画像が揺れるんです。車酔いに似た気分の悪さが少々…(笑)。
来日した際の映像もあるから、
あの時、僕は私はポリスを追いかけてたんだという人は見てみて下さい。
もしかしたらあなたが映っているかも知れませんョ!☆3つ。
「ポリス インサイド・アウト」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.3.25

「ヘレンケラーを知っていますか」☆☆☆
「ホリデイ」☆☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

今週は北海道に行っていたため、試写を1本も見られませんでした。
来週はその分も見まくるつもり(笑)
今週は本数こそ2本ですが、いやいやいい作品が公開となります。
それでは早速紹介していきましょう!

「ヘレンケラーを知っていますか」は、目と耳の両方が不自由な老女と、
リストカットを繰り返す少年の交流を描いた物語。
人里離れた小さな家に住む絹子は78歳の老女。
実は若い時に視力を失い、不幸にも続けて聴力を失ってしまったのです。
自分の腕に傷をつけずにはいられないリストカットを繰り返す15歳の少年・祐介が、
ふとしたきっかけで絹子と出会います。
そして目も耳も不自由であることを知るのです。
祐介は、絹子の人とのコミュニケーションの方法や、
これまでの人生が気になって仕方ない。
そこで時間のある時には顔を出して、いろんな話を聞くようになります。
憧れの男性と結婚したにも関わらず、
障害を持ったがゆえに自ら別れを切り出さなくてはならなかったこと。
目や耳の代わりになってくれていた母の死。
本当は街に帰りたい、でも周りの人が受け入れてくれない現実。
懐かしい潮の香りを嗅ぎたいことなどなど。
そんな2人の触れ合いが、閉ざしていた祐介の心をだんだんと開かせていったのです…。
この手の映画は「大変だよな」とか「かわいそう」といった同情の目で見やすいでしょ。
でもこの作品は違いました。盲聾者の女性が主人公だけど、
同情なんて感情とはまったく別の部分で感動できる作品になっています。
初めて人生の目標を見つけた祐介が、
これまで無駄にしてきた時間を取り戻そうとするかのように頑張るのです。
素直に感動できる1本。☆3つ。
「ヘレンケラーを知っていますか」公式サイト

「ホリデイ」は、キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、
ジュード・ロウ、ジャック・ブラックら豪華キャストで送るラブ・ロマンス。
9600キロも離れたロンドンとビバリーヒルズ。
そこに2人の女性、アイリスとアマンダがいました。
アイリスはロンドンの新聞社勤め。
もう終わってると知っていながらズルズル引きずっている同僚ジャスパーとの恋。
その日も彼の優しい言葉に心揺らしながらロビーの人だかりに目をやると、
何とジャスパーがみんなの前で別の女性との婚約を発表してるではありませんか。
家路につく途中で、涙が止まらないアイリス。
一方、ロスのアマンダは映画の予告編を作る会社の社長さん。
作曲家のイーサンと同棲していたのですが、彼の浮気が原因で破局。
彼を家から追い出してしまいます。
ところがアマンダにも恋愛下手の部分が相手を追い詰めてしまうという欠点があったのです。
自分を変えなきゃいけないと考えた女性が2人、パソコンに向かいます。
アイリスは長旅に出ようとロンドン郊外の家をレンタルに出し、
アマンダも気分転換に旅に出ようと長期滞在の物件を探していたところで、互いにヒット。
メールでやりとりをしているうちに意気投合! ならば家を交換するだけじゃなく、
その間は車も家具も何でも使っていいことにしようという契約を結ぶのです。
こうしてアイリスはビバリーヒルズへ、アマンダはロンドン郊外へ。
あまりの豪邸に目を疑うアイリス、素朴な田舎暮らしにホッとするアマンダ。
すると2人の元にそれぞれ男性がやってきます。
アイリスのところにはアマンダの仕事仲間だというまるでコメディアンのようなマイルズが、
アマンダのところには酒に酔ったから泊めてくれないかと
アイリスのイケメンの兄グラハムがやってきます。
まさかこれが運命の出会いになろうとは。4人はこの時まだ気付いてはいなかったのです…。
実はマイルズにはマギーという恋人がいる。グラハムの携帯はいつも女の名前で着信がある。
最初はせいぜいアバンチュールの相手だろうぐらいにしか思ってなかったのですが、
男性2人の本当の姿を知るや、アイリスもアマンダも恋に落ちちゃうんですよ。
でももうすぐどちらも自分の国に帰らなきゃいけない。
9600キロも離れた“超・長距離恋愛”なんて無理。
さぁこの2つの恋はどんな結末を迎えるのでしょう?
あるシーンでグラハムが泣くんですョ。ボクはそれを見て泣いちゃいました。
もしかしたら女性より男性の方がグッとくる映画かも?
特に恋愛に(懲りずに?)夢を抱いているボクのようタイプにはたまらない1本です。
出会いを求めてあなたもきっと旅に出たくなりますョ。文句なし。☆5つ。
「ホリデイ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.3.17

「口裂け女」☆☆
「ステップ・アップ」☆☆☆
「デジャヴ」☆☆☆
「ナイトミュージアム」☆☆☆
「ハッピーフィート」☆☆☆☆
「フランスコの2人の息子」☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)
ある試写の会場でおすぎさんを見かけました。
映画は、年老いた女性の、それも同性愛のストーカーのお話。
いかがでしたか?と配給会社のプロモーターに声掛けられたおすぎさん、
「やだ、こんなホラー映画っ」だって(笑)。
聞いてて笑っちゃいました。リアリティのあるお言葉でした(笑)
さ、今週は6本です!

「口裂け女」は、正真正銘のホラー作品。
27年前の不気味な噂が再び。マスクをした女に「私、キレイ?」と聞かれ、
怖々「うん」と答えると、「これでもかっ」とマスクを取る。
すると口が耳まで裂けているという口裂け女の伝説。
その発祥の地(という設定)の静川町に、またもや口裂け女が現れたという。
次々姿を消していく子供たち。
小学校教師の京子と昇は生徒を守ろうと、噂の真相へと踏み込んで行くのでした…。
この映画、残酷なシーンは徹底的にエグい。制作陣は討論に討論を重ねて、
あえてこういう表現を残したとマスコミ用プレスにはありました。
賛否両論あったそう。
批判するんじゃないけど、どっちかともし意見を聞かれたら、
個人的には“否”かな。
つまり、現代社会がこういう描写を反面教師と取らずに、
刺激としてエスカレートさせるような風潮にあると思うんですよね。
この映画が描く口裂け女の生まれた訳、京子や昇との意外な関連性など、
確かに今の社会問題に一石は投じています。
あとはあなたが見て判断して下さい。☆2つ。
「口裂け女」公式サイト

「ステップ・アップ」は、ダンス映画。
ボルチモアの貧しい環境に育ち、たいくつしのぎの犯罪に手を染めながら毎日を過ごし、
夢見ることさえ諦めた、少年タイラー。
ある夜、仲間と名門メリーランド芸術学校に忍び込んで、講堂の備品を壊し放題の悪ふざけ。
当然ガードマンに捕まり、警察へ出頭。
裁判所から命じられたのはメリーランド芸術学校での200時間の労働でした。
その頃学校は卒業制作のまっ只中。ダンス科のノーラも懸命に練習中でした。
実はこの卒業制作の発表会は、ダンス業界の重鎮も多数出席。
夢を叶えるためのオーディションのようなものだったのです。
用務員の仕事をしながらノーラを見つめるタイラー。
ところが彼女の相方が足を怪我してしまうんですね。
そこでダンスなら任せとけと練習相手を買って出るタイラーでしたが、思いの重さが違う。
遅刻はするし、とにかくいい加減な行動ばかりのタイラー。
果たしてノーラの夢を懸けた発表会は成功するのでしょうか…。
過去にもダンス作品はいっぱいありますが、この映画、「サタデー・ナイト・フィーバー」、
「フラッシュダンス」、「セイブ・ザ・ラスト・ダンス」、「フットルース」に次ぐ、
歴代5位の興業収入だとか。
ノーラはバレエ、タイラーは白人ながらヒップ・ホップですから、
いくらダンスが得意と言っても合わせるのは大変。
でもノーラへの恋心もあって、タイラーは変わっていきます。
初めて自分の目標を持つんですね。
区切りの季節。何かに頑張ろう、新しく始めよう、逆に何も見つからないんだという人も、
ヤル気をもらいに行ってみて下さい。☆3つ。
「ステップ・アップ」公式サイト

「デジャヴ」は、デンゼル・ワシントン主演のミステリー・サスペンス。
タイトルからもわかるように、時空を越えて展開されるストーリー。
主人公のダグはアメリカ連邦法執行機関に属するATFの敏腕捜査官。
500名以上の死傷者を出したフェリー船・スタンプ号爆破事件の捜査中に、
美しい女性の死体と出会います。彼女の名はクレア。
彼女が犯人と関わりがあったはずと感じたダグは、
“4日と6時間前”の映像のみが見れるという
FBIの最新技術「タイムウィンドウ」でクレアの部屋を映し出します。
ダグの脳裏に浮かぶまるで過去に体験したかのような感覚“デジャヴ”。
これは一体何を意味しているのでしょうか…。
こういう映画はストーリーを説明しない方がいい。
余計、訳がわかんなくなっちゃいます(笑)。
ダグは過去のクレアを見ていて、なんとか助けたいと。
でも今の世界じゃ彼女は既に死んでるんですね。さぁどうする?
プロデューサーはあの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジェリー・ブラッカイマー。
まぁどうしてもタイムスリップものは矛盾をはらんでますからね。
ボクが考え過ぎなのか「でもさぁ…」と、ちょっぴり腑に落ちない部分もあって。
いやいや矛盾じゃなく、ボクの頭脳が足りなくて理解できないのかも知れないけど(笑)。☆3つ。
「デジャヴ」公式サイト

「ナイトミュージアム」は、博物館の展示物がみんな動き出しちゃうんだから、
これこそ矛盾してるだろと突っ込まれそうですが(笑)、
この作品はファンタジーですから。
何をやっても続かないNY版“だめんず”のラリー。妻とは離婚、現在失業の身。
しかし妻が連れて出た息子のニッキーには父親として尊敬されたいし、愛されもしたい。
きちんと職に就こうと、門を叩いた職業紹介所に紹介されたのが自然史博物館の警備員の仕事。
でも、何かおかしい。そう、この博物館の展示物は、夜になると動き出すのでした…。
その裏には悪党たちの悪だくみもあったりして。こういう映画は発想の勝利ですかね。
難しく考えずに、ケラケラ笑えればいいのでしょう。
もちろん親子の絆を描いた愛情物語でもあります。☆3つ。
「ナイトミュージアム」公式サイト

「ハッピーフィート」は、踊るペンギン・アニメ。
南極に住む皇帝ペンギンたち。今は卵がかえって子供たちが生まれる季節。
そんな中、くちばしからではなく、足から出て来たマンブル。
内緒だけど、お父さんが卵を暖めていた途中で、あやまって転がり落としてしまったのが原因?
このマンブル坊や、やっぱり他のペンギンとは違っていて、みんなは上手に歌うのに、
彼だけはどうにも調子っぱずれ。
その代わり、抜群のリズム感で自然と華麗なステップを踏むんですね。
そんなマンブルを皇帝ペンギン界の長老は災いの根源だと言います。
それを聞いた傷心のマンブルは、それから長い長い旅に出るのでした…。
キレイですよ!この映像。
ペンギンの毛といい、数といい、本当に技術は日々進歩してるんだなと改めて。
他人(いや他ペンギン?)と違ってたっていいじゃん。
Smapの歌じゃないけど、それがオンリーワンなんだって教えてくれるのと、
もうひとつは環境問題に一石を投じている点。
別の観点で言うと、音楽はいわゆるダンスクラシックス満載で大人が楽しめ、
愛くるしいペンギンの映像は子供も楽しめるという、言ってみればどちらも“一石二鳥”。
あれっ?ペンギンって、鳥だよね?
じゃ石ぶつけて落としちゃうこんな表現はこの作品にはタブーかな?
なんてオチも付けたところで(笑)、☆4つ。
「ハッピーフィート」公式サイト

「フランシスコの2人の息子」は、実話に基づいた作品。
本国ブラジルでは2200万枚のCDセールスを誇るミュージシャン、
ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノの物語です。
どこまでも広い大地のブラジルの田舎で、小作農として畑を耕すフランシスコ。
貧しい生活でしたが、妻エレーナと、7人の子供と幸せに暮らしていました。
明るい家庭の礎になっていたのは、ラジオから流れてくる音楽。
子供たちにもとにかく音楽を教えようと、生活費をも楽器に換えてくるフランシスコ。
これじゃ子供に食べさせるものも買えないと、
涙を流す母の姿を見た長男のミロマズルと弟のエミヴァルは、
バスのターミナルで路上ライブを行い、小銭を稼ぐのでした。
それを見た興業主のミランダが、これは商売になると、歌手としての契約をもちかけます。
こうしてまだ幼い2人の兄弟はプロとしてのキャリアをスタートさせるのですが、
その先には予想だにできなかった悲劇が待っていたのです…。
ブラジルでは527万人以上を動員したというこの映画。
国のスーパースターの自叙伝ですから、
この記録的ヒットもうなづけます。でも彼らを知らなくたって感動できる1本。
それは世界共通の“親の愛”。
国民性は違うからそこまでポジティブになれるかなぁというのはあっても、
不可能を無理矢理にでも可能にしてしまう父フランシスコと、
父に夫唱婦随の母エレーナ。“事実は小説よりも奇なり”に、心動かされます。☆3つ。
「フランシスコの2人の息子」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.3.9

「ラストキング・オブ・スコットランド」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)

先日見た試写で、フランス映画嫌いのボクがぐっと来たフランス作品がありました。
自分でもちょっとビックリ!
魚貝類は無理だけど(笑)、 映画の食わず嫌いだけはやめようと、
先入観抜きで色々見てるとこんなこともあるんですね。
また公開の時期にここでご紹介しましょう。さ、今週は1本です!

「ラストキング・オブ・スコットランド」は、
アフリカのウガンダ共和国の実在の暴君、イディ・アミン大統領を描いた作品です。
1971年のウガンダ。軍のクーデターにより、ひとりの新たなリーダーが誕生しました。
それがアミン大統領。彼は若い頃、国のボクシング・ヘビー級チャンピオンとして大人気。
軍でも英雄ということで、国民の支持や人気は絶大なものがあったのです。
そこに若きスコットランド医師のニコラスがやってきます。
立派な医師の父を持ち、何不自由ない環境で育ったニコラスは、これでいいのかと自問自答。
「地球儀を回して指さしたところへ行こう」
そんな安易な気持ちで選んだ場所、それがウガンダだったのです。
ニコラスが赴任したムガンボ村には、先に白人の医師夫婦がいました。
「未だに住民の8割は私たちより呪術師に頼る」と、
その先生たちが苦笑いするそんな村にも新しい大統領は演説にやって来たのです。
興味津々で演説を聞きに行くニコラス。
熱狂する人々を見て、渋々同行した医師の妻は言うのです。
「前大統領の時もこうだったわ」
帰宅しようとしたふたりを追ってきた1台の車がありました。
それは大統領の部下の車でした。聞けば大統領がケガをしたと。
急いで現場に向かい治療をするニコラス。
その時の行動力と手際の良さを大統領はいたく気に入るんですね。
さらにニコラスがスコットランド出身だと知ると、
その戦いの歴史から、「ウガンダの次にスコットランドが好きだ」と着ていたシャツを交換までして。
後日、大統領の使者がやってきて、「大統領があなたを主治医として迎えたいと言っている」と。
大統領に仕えるということはこの国に仕えるということだから、
つまりは国民のためになるんだと自分に言い聞かせ、ニコラスはムガンボ村を去り、
大統領の元で贅沢な暮らしに入ります。
しかしこの時ニコラスはまだ、この大統領の恐ろしい素顔を知らなかったのです…。
ニコラスは自分の行動がいかに愚かなものか、
まったく気付かないままにウガンダでの日々を過ごして行きます。
そして知る現実。自分のせいで犠牲になった本当の善人…。
自らの命を危うくして、その時初めて彼は気付くのです。
この映画を見ていて思い出したのは、イラク戦争の時、
周りの声を無視して危険地帯に入って行き、武装勢力に捕まった人々のこと。
解放された人もいれば、命を落とした人もいましたよね…。
“自己責任”という言葉が言われました。
甘いニコラスの考えと自己中心的な行動が引き起こした出来事は、まさに自己責任。
愚かだぞ、ニコラス。
ちなみにアミン大統領役のフォレスト・ウィテカーは、
この役で見事今年のアカデミー主演男優賞を獲得しています。
友好的な、臆病な、そして残忍な大統領の表情を演じ分けた演技力はさすがです。
最後にニコラスは架空の存在であることを付け加えておきましょう。
ただし、彼を作ったことで大統領の恐ろしさが伝わってきたのは事実。
この作品のもちろんキーマンとなっています。☆4つ。
「ラストキング・オブ・スコットランド」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.3.1

「今宵、フィッツジェラルド劇場で」☆☆☆
「ダウト」☆☆☆
「パフューム ある人殺しの物語」☆☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)
NACK5のポッドキャスティング「シネマライフ」で紹介できる映画は毎週1本。
ゆえに、いい作品がダブると悩みます。
じゃ次週に回そうかなと思うとそこにもまたいい作品があったりして。
逆の場合もあるんですけどね…(笑)。4月から他にも映画をしゃべれる場面ができるかも。
決まったらまっ先にお知らせしますねっ。
さぁ今週は3本です!

「今宵、フィッツジェラルド劇場で」は、ミネソタ州セントポールにある劇場の物語。
地元FM局WLTの公開生放送が行われてきたフィッツジェラルド劇場。
ところが、テキサスの大企業がこのラジオ局を買収したため、
30年も続いた土曜の夜の名物番組も終わってしまうこととなりました。
最後とあって格別の思いでやってくる出演者や番組スタッフ。
いよいよ最後の放送の幕が切って落とされるのです…。
この番組には進行役の男性総合司会がいて、
曲と曲の間やミュージシャンの入れ替わりの際に“生コマ”、
つまり生のコマーシャルを入れるんですね。アナログの良さがとても懐かしく。
音楽もカントリーミュージック満載。
古き良きアメリカのエッセンスを出しつつ、それが終焉を迎え、
皆が新たな一歩を踏み出すという日。
もちろんこの夜、さまざまなドラマが生まれもします。
またそれがちょっぴりファンタジックに描かれていたりもするんですね。
メリル・ストリープ、リンジー・ローハン、トミー・リー・ジョーンズら豪華キャストが出演。
監督はカンヌ、ベネチア、ベルリンと世界3大映画祭で最高賞を受賞したロバート・アルトマン。
実は昨年秋に81歳で亡くなり、これが遺作となりました。
まるで自分の死を悟っていたかのように、人気のベテランシンガーが、
自分の出番のあと、楽屋で安らかな顔で息を引き取るシーンがあるのですが、
それに対してアルトマン監督は「老人の死は悲劇ではない」とコメントを残していたそう。
ラジオに携わる人間にとって、温もりのある放送というのは、みんなが目指すところでもあります。
確かにそんな1本です。☆3つ。
「今宵、フィッツジェラルド劇場で」公式サイト

「ダウト」は、どんでん返しの推理サスペンス。
元警官で今は地方検事のフォード。彼の恋人は地方検事補のノラ。
そのノラから連絡が入り、聞けばレイプ事件に遭遇し、犯人のアイザックを射殺してしまったと。
フォードはノラの正当防衛を信じたいけれど、
証拠が無ければいくら恋人だからと無条件に助けるわけにはいきません。
そこへ殺されたアイザックの友達だという、ルーサーという男が現れます。
そしてこれは計画された殺人だと言うのです。彼はこの事件の詳細を語り始めます。
その内容はノラの話とは正反対。果たしてどちらが本当のことを話しているのか。
ひとつひとつ紐解いていくうちにわかってきた真相とは…。
ストーリーはもちろんもっと複雑なんだけど、ここで説明すると返って難しくなるからやめましょ(笑)。
誰も顔を知らない裏社会の実力者ダニーという男がいて、このダニーが誰なのか、
これを見破るのがひとつのカギになるのだけれど、もちろん最後までわからない。
“どんでんでんのでん”ってな感じだから、結末を知ったあとで確かめながら見ると実はすごく面白いのかも。
一度見ただけじゃわからない?なんたってタイトルが“ダウト(疑う)”だもんね。
映画の中ではそれぞれ信じることが難しく、見る側からしても観客はストーリーを疑うはず。
人種問題も絡んでいて、その辺りもいい意味でストーリーを複雑にしています。
「なぁに、一発で看破してやる」と自信のあるあなたは是非チャレンジしてみて下さい!☆3つ。
「ダウト」公式サイト

「パフューム ある人殺しの物語」は、1985年のドイツのベストセラーの映画化。
18世紀のパリを舞台にした、連続殺人の話です。
セーヌ河の沿岸にある魚市場。ある店の女が急に産気づくんですね。
女は奥に入ってひとりで子を産みます。男の赤ん坊を魚のはらわたの中に捨てるや、
何もなかったかのように魚を売る女。
ところがその赤ん坊が大きな声で泣き声をあげたため、女は通報され、
子殺しの容疑で逮捕。絞首台で処刑されます。
残された子はジャン・バティスト・グルヌイユと名付けられ、
将来、人買いに労働力として売ることだけを考えている冷徹な託児所に引き取られていきます。
友達もできずただ大きくなるグルヌイユ。
しかし彼は気付きます。自分に特殊な能力があることを。
それは、驚異の嗅覚。とんでもない悪臭の中に産み捨てられた彼は、
代償として何キロ先のものをも嗅ぎ分けられる鼻をもらったのでした。
13歳になったグルヌイユは、皮なめし職人として売られていきます。
ただただ黙々と仕事をする彼に初めて訪れた転機、それはパリに商品を納めに行った日のことでした。
青年になっていたグルヌイユは、初めて経験する、街のさまざまな匂いに魅かれます。
焼きたてのパン、ワイン、そして香水。
我を忘れてそれらの匂いを楽しんでいたその時、グルヌイユに衝撃が走るんですね。
心臓も止まらんばかりの得も言われぬ香り。それはプラム売りの少女の香りでした。
後をつけて行き、ひとり作業をする少女にそっと近付き匂いを楽しむグルヌイユ。
しかし気付いた少女が悲鳴をあげたため、彼は少女の口を手でふさいでしまいます。
ピクリとも動かなくなった少女。
しかしグルヌイユは、慌てるどころか、少女の匂いを存分に楽しんでいくのでした…。
実はこのあとグルヌイユは、やはり商品を納入しに行った香水屋で才能をアピール、
これは使えると思った店主が引き取って、香水の調合師にするんですね。
グルヌイユは売れ筋の香水をどんどん生み出していきます。
しかし彼の望む究極の香りはこんなものではなかったのです。
そう、もう想像つくと思うけど(笑)。
この映画の売りは“驚愕のラストシーン”。 いや確かにビックリ!
香港の武将モノなんかですさまじい数のエキストラに圧倒されることがありますが、
この映画もそんな感じ。見た目だけじゃなくて、ラストのオチもね。
いやぁ2時間27分、あなたはきっとスクリーンに釘付けです。究極のフェチシズム!☆5つ。
「パフューム ある人殺しの物語」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.2.23

「キャプテントキオ」☆☆
「さくらん」☆☆☆☆
「素敵な夜、ボクに下さい」☆☆☆
「BOBBY」☆☆☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)
スケジュールが合わずに見ることのできない映画がいつも何本かあります。
例えば二者択一の場合、頂いた試写状をじっくり見て決めるんですが、
選んだ方が今ひとつだった時、「あっちはどうだったんだろう…」と
すっごく気になって仕方なくなります(笑)。これも一種の職業病?
さ、今週は4本です!

「キャプテントキオ」は近未来の東京を舞台にした青春コメディ。
マグニチュード10の大地震に襲われた日本列島。
特に壊滅状態になった東京は、政府により日本国から切り捨てられてしまったのです。
無法地帯となった東京は、バイタリティ溢れる若者でいっぱい。
そこにやってきた2人の青年、映画好きのフルタとロック好きのニッタ。
片や映画作りの仲間と出会い、片や夢だったロックのライブ情報がまったく入らずイライラ。
そこにひと癖もふた癖もある新・東京都知事たちが絡んで、すったもんだの大騒動に。
2人の青年の明日は、そして友情はどうなるのでしょう…。
なんてこれだけじゃ何のことやらって感じかな(笑)。
とにかく無法地帯と化した東京で、夢を追いかける若者のお話。
フルタにはウエンツ瑛士が、都知事には泉谷しげるが、と言えば何となく見えてきます?
ただそのドタバタぶりがボクにはピンと来ないんだなぁ。
「こういう楽しさがわからないなんてオジサンの証拠だよ」と言われるなら、
素直にオジサンだと認めましょう(笑)。ごめんね、☆2つ。
「キャプテントキオ」公式サイト

「さくらん」は土屋アンナ主演の話題作。
漫画家・安野モヨコの原作。監督は女性監督の蜷川実花。
江戸の遊郭、吉原に売られてきた8歳の少女、きよ葉。何度も脱走を図っては失敗。
その度に折檻を受けるも懲りずにまた逃げようとする。
その気性の激しさと、類い稀なる美貌を持って、きよ葉も17歳に。
そして店に立つや、江戸中の話題となって行きます。
18歳でいよいよきよ葉も花魁に。
名を日暮と改め、吉原一の花魁になるまでに成長しました。
しかし吉原は言ってみれば金魚鉢。日暮も外じゃ生きられない金魚鉢の中の金魚。
でもそれじゃあ満足できないのが日暮の性根。
2度と咲くことが無いと言われている吉原の桜の木に、桜が咲いたら出ていってやるんだと、
きよ葉の頃から決めていたのです…。
とにかく豪華な出演陣。
花魁役の木村佳乃、菅野美穂が体当たりの艶技を見せているのが男性にはまたたまらないはず。
“総天然色”というより“超天然色”!
今までにない色彩感覚にまず引き込まれ、音楽も椎名林檎ですからハマるハマる。
“ドS”の日暮が、惚れた旦那の前じゃ子猫のようにゴロニャンと甘えちゃうんだから、
あぁやっぱり女は怖い(笑)。
とにかく五感で感じる映画です。☆4つ。
「さくらん」公式サイト

「素敵な夜、ボクに下さい」はカーリングを介しての、韓国人男性と日本人女性の恋物語。
韓国カーリングの男子代表ジンイルはワンマンな性格。
大事な試合を個人プレーで落としてしまうんですね。
監督からクビを言われ、気分転換のため、日本にいる後輩の元を訪ねます。
ジンイルは人気俳優のカン・スヒョンにそっくり。
日本に来て早々、バッタリ出会った売れない女優のいずみも勝手に彼をカン・スヒョンだと勘違い。
片言の日本語で言った「素敵な夜、ボクに下さい」の口説き文句にホイホイ乗って、
男女の関係になってしまうのです。
「韓国映画で共演して、アタシもこれで大スター!」。しかし朝目覚めたら彼はいませんでした。
ジンイルの後輩は青森に。いずみの故郷も青森。すぐさま2人は青森でバッタリ。
しかしいずみの友達で、熱狂的なカン・スヒョンファンの裕子が、あれはスヒョンさまじゃないと。
じゃ誰?ということでわかったのが、カーリングの選手だということ。
愕然とするいずみでしたが、とにかく有名願望の強い彼女。
「それならカーリングでオリンピックに出て有名になってやる!」
友達や妹と猛特訓を始めるのですが…。
映画での日韓交流。一応これ、日本映画です。
とにかく吹石一恵演じるいずみのわがままぶりが鼻につくつく。
それぐらいじゃないとメリハリが出ないのかも知れないけど、
少し前のハリウッドものでもそうだったけど、
あんまり度が過ぎるとその主人公が改心したって、
見ている側は幸せを祈れなくなっちゃうんだよなぁ。
ただし、国境を越えてのラブロマンスというアイデアには応援の拍手を。☆3つ。
「素敵な夜、ボクに下さい」公式サイト

「BOBBY」は、アメリカの政治家、
ロバート・F・ケネディが暗殺された1968年6月5日にスポットを当てた作品。
ちなみに同じく凶弾に倒れたJFKことジョン・F・ケネディはロバートの実兄。
変わっていくはずだったアメリカ。
その変革の旗手となるはずだったボビーに希望の光を見出だしていた登場人物22人の6月5日を通して、
アメリカの光と闇を描き出しています。
舞台はLAのアンバサダーホテル。
その日は民主党の大統領候補を選ぶカリフォルニア予備選挙の日。
当時のアメリカは、ベトナム戦争が泥沼化、
さらに黒人の人権問題で戦ってきたルーサー・キング牧師が暗殺されるなど、
暗いニュースばかりが流れていたのです。
そんな中、ベトナム戦争の拡大停止、貧困の撲滅、
人種問題や環境問題にも精力的に取り組んできたアメリカの希望の星が、
ボビーことロバート・F・ケネディだったのです。
この日アンバサダーホテルにいた、登場人物22人を簡単に紹介しましょう。
このホテルの生き字引とも言える年老いた元ドアマンと元ホテルマン。
現支配人と、ホテルの美容室で働く妻。
そして支配人の不倫相手の美人電話交換手と、 それを知っている交換手仲間。
堅物のレストランマネージャーに博識な副料理長。
さらにメキシコ系見習いコックの先輩と後輩。
オハイオから女優志望でやってきたコーヒーショップのウエイトレス。
この日の勝利パーティで歌を披露する人気女性シンガーと、
彼女のアルコールを心配するマネージャーでもある夫。
ベトナム行きを阻止するために偽装結婚をする若いカップル。
2度目の新婚旅行をカリフォルニアでとやって来たNY社交界の名士とその新しい妻。
ボビーに共感し、スタッフとして働く2人の若者と、その部下である2人の新米ボランティア。
共産主義のチェコから取材に来た女性新聞記者。
部屋に閉じこもりっきりのヒッピーのドラッグディーラー。
彼らを通して、アメリカの当時が見事にあぶり出されています。人々がボビーに期待していた理想。
ところが銃という暴力によって希望の光が消されてしまうのです。
流れ弾は他の人々をも巻き添えにしました。
それぞれの人に当たった弾丸が何を意味するのか、また何を象徴するのか。
これらすべてに意味がある。深い内容になっています。
アメリカにとって大きな意味を持った日ということは、世界にとっても大きな意味を持った日ということ。
もしボビーが大統領になっていたら…。
イラク戦争、無くならない暴力。40年経った今も、人は何も学んでないじゃないか。
監督でもあり、俳優としても出演しているエミリオ・エステベスはそう言いたかったのではないでしょうか。
見ているボクらも、07年の、まさに今現在のことじゃないのかと思うはずです。
是非見てみて下さい。文句なく☆5つ付けたいと思います。
「BOBBY」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.2.15

「ドリームガールズ」☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)
「バベル」の試写に行ってきました。すごい人で、普通30分前から受付開始なんですが、
40分前に行ってギリギリ。そうなると当然入れない人続出で、
その対応策として比較的近所にある別の配給会社の試写室で15分遅れで上映をするという。
なんかライバルとも言える映画会社同士が協力するなんて素敵だと思いません?
さ、今週は1本です!

「ドリームガールズ」は、歌手になることを夢見た3人の女の子の物語。
1960年代のアメリカ、デトロイト。スターになることを夢見る、エフィー、ローレル、そしてディーナ。
エフィーのパワフルなボーカルを中心にこの3人で組んだ黒人コーラスグループがドリーメッツでした。
この日も公開オーディションに参加、見事なパフォーマンスで観客を魅了するのですが、残念ながら落選。
なぜなら初めから優勝者は決まっていたからなんです。
ショービズの裏の世界にガッカリする彼女たちに、ひとりの男性が声を掛けてきました。
彼の名はカーティス。彼もまた、これから音楽業界へ乗り込もうとしていた若き情熱家。
人気黒人男性シンガー、ジミー・アーリーのバックコーラスの仕事があると言うカーティスに、
あくまで自分たちが主役を目指すと突っぱねるエフィでしたが、
ローレルとディーナの説得に折れて、3人はカーティスと仕事を始めます。
すると“ジミー・アーリー&ドリーメッツ”のパワフルなステージは大好評。
デトロイトのみならず、アメリカ中の人気者になっていきます。
バスであちこちへ移動するメンバーたち。若い彼女たちに恋心が芽生えるのも自然な状況で、
エフィはカーティスと、またローレルはジミーと、恋に落ちていったのです。
そんなある日、カーティスはドリーメッツの独り立ちを提案します。
名前も変えて、ドリームガールズとして。しかしカーティスのアイデアにはひとつの爆弾を抱えていました。
それは、メインボーカルをエフィではなく、ディーナにすること。 ソウルフルなエフィのボーカルより、
ルックスもsexyで白人ウケするディーナを真ん中にして売り出した方が商売になると考えていたのです。
ところがカーティスの恋人でもあるエフィはこれに猛反発。
それからというもの、エフィは何かとトラブルメーカーとなり、グループ内に亀裂が生じるようになりました。
そこで下した結論。それは、エフィをクビにすることでした…。
このあともお話は波乱万丈。様々な人間模様が繰り広げられていきます。
成功って何だろう?夢を叶えるってどういうこと?そして幸せの本当の意味とは?
60〜70年代がリアルタイムの人も、そうでない人も、音楽ファンは是非見てみて下さい。
ミュージカル仕立てにもなっているので楽しめると思いますョ。
ディーナには元ディスティニーズ・チャイルドのビヨンセが、ジミーにはエディ・マーフィーが、
そしてカーティスにはジェイミー・フォックスが扮しているんですが、
エフィ役の新人、ジェニファー・ハドソンが今年度各映画賞の台風の目。
この作品での演技が高く評価され、助演女優賞の候補としてあちこちで名前を聞くと思います。
覚えておいて下さいね。☆4つ。
「ドリームガールズ」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.2.9

「華麗なる恋の舞台で」☆☆☆☆
「守護神」☆☆☆
「Gガール 破壊的な彼女」☆☆☆
「DOA デッド・オア・アライブ」☆☆☆
「天国は待ってくれる」☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)
ゴールデングローブ賞やアカデミー賞のシーズンになると、やっぱり映画の世界は活気づきますよねっ。
賞に関係なくてもいい作品いっぱいありますから。どうぞ劇場に足を運んでみて下さい。今週は5本です!

「華麗なる恋の舞台で」はアネット・ベニング主演のコメディ。
舞台は1938年のロンドン。人気女優のジュリア。夫マイケルは元俳優で、今は彼女の舞台を仕切る興業主。
公私共に充実した毎日かと思いきや、同じことの繰り返しに飽き飽きしているのがジュリアの現実でした。
そんな時、マイケルの元で働きたいと、ひとりの若きアメリカ人青年がやってきます。
彼の名はトム。トムはジュリアの大ファン。
親子ほども年の違うふたりでしたが、なんと禁断の恋に落ちてしまうのです。
ところがそれが最高の刺激になって、やる気と活気を取り戻したジュリア。
しかし、甘い日々はそう長くは続きませんでした。
そう、若いトムに、若い恋人ができたのです。
彼女の名はエイヴィス。エイヴィスも女優の卵でした。
エイヴィスはトムに言います。「ジュリアと仲良しなら、次の舞台であたしの出番を作ってと頼んでよ」。
さらに彼女はジュリアの夫マイケルにも取り入っていたのです。
そのことを知り、プライドも女心もボロボロになったジュリアでしたが、
トムの願いを聞き入れ、エイヴィスをキャストに加え、より彼女が引き立つようにとマイケルに演出を頼みます。
「おかしい。ジュリアが優しすぎる…」
そりゃそうでしょう。だってジュリアは“大女優”なんですから…。
この映画、カナダ、アメリカ、ハンガリー、イギリスの共同制作なんですが、
テイストとしてはボクの大好きなイギリス映画の味が一番濃く出た感じ。
それは舞台がロンドンだからというんじゃなくて、痛快な結末がちゃんと待っているからなんですね。
イギリス映画ってスカッとした最後が多いから好き。ハッピーエンドじゃなくてもね。
主演のアネット・ベニングは48歳、絶世の美女(だとボクの好みで)。
柔らかさもある美人でまさにハマり役。ただし、このタイトルと30年代の衣装をポスターなんかで見ちゃうと、
きっと若い人たちは敬遠しちゃうんじゃないかなぁ。
すっごく良くできたコメディなのに、そこがもったいない。
宣伝会社さん、タイトルもうひとひねり!頑張って!☆4つ。
「華麗なる恋の舞台で」公式サイト

「守護神」はケビン・コスナー主演の救難士の物語。
人命救助にすべてを捧げた“伝説のレスキュー・スイマー”ベン・ランドール。
ところが、ある救出任務で大切な相棒を失ってしまうんですね。
心に傷を負ったベンは第一線を退き、後進の指導に当たるため、
エリート養成のAスクールに教官として赴任します。
そこで出会った元高校水泳チャンプの訓練生ジェイク。
才能はあるのに、仲間を信じようとしない彼は、ベンとも衝突を繰り返します。
実はジェイクにも彼にしかわからない辛い過去があったのです。
似た境遇のふたりは妥協を許さない訓練の中で信頼関係を育み、ジェイクは無事スクールを卒業。
ベンもジェイクに刺激され、現場に復帰します。
同じ基地の配属になったものの、メキメキ頭角を現すジェイクに対し、
過去をどうしても拭い切れず思うような活躍ができないベン。
ところが、高波でSOSを出した漁船の救助に向かったジェイクが、
なんと転覆した船に閉じ込められてしまいます。助けに行けるのはベンただひとり。
果たしてベンは無事ジェイクを救い出すことができるのでしょうか…。
記憶が正しければ、エンディングはブライアン・アダムスの歌じゃなかったかなぁ。
違ったらごめんなさい(笑)。彼のハスキーボイスのロックチューンがハマる、男臭い1本。
こちらはハリウッドの王道って感じです。☆3つ。
「守護神」公式サイト

「Gガール 破壊的な彼女」はユマ・サーマン主演のスーパーウーマンもの。
NYで今一番の話題と言えばGガール。正義の味方として圧倒的な強さで悪を倒すスーパーウーマン。
ある日、恋人と別れて久しいマットが会社の同僚と地下鉄に乗っていたら、素敵なメガネの女性が目の前に。
マットは同僚のけしかけに応じてナンパしようとします。
その時、ひったくりが彼女のバッグを盗んで電車から逃げたのです。追いかけるマット。
犯人は逃がしてしまうんですが、この事件がきっかけで、彼女はデートの誘いにOKの返事を出します。
ところが、彼女はGガール。
会っていても、何かおかしいと感じていたマットは、彼女の口からその事実を知らされるんですね。
「自分の恋人がGガールだなんて!」。驚きと喜びが交差するマット。
しかし、エッチをすれば壁を突き破る、怪しい悪党に付きまとわれる、彼女は超の付くヤキモチ焼き。
だんだんマットの心は離れていきます。そして別の女性に恋心を抱いてしまうのです。
そうと知ったGガール、怒らせたらこのコは怖いっ。さぁ果たして、この恋の結末やいかに…。
ドタバタのSFラブコメディ。
他にもたくさんのカギを握る登場人物はいるんですが、それは見てのお楽しみ。
ユマ・サーマンで期待しちゃうとちょっと中身が薄っぺらいかなと。
でもその薄っぺらさを楽しむなら、理屈抜きで楽しめる1本ではあります。
誰です?うちのかあちゃんに比べたら…なんて言ってる人(笑)。☆3つ。
「Gガール 破壊的な彼女」公式サイト

「DOA デッド・オア・アライブ」は人気格闘ゲームの実写版。
世界中の格闘家の頂点を決めるトーナメント、それが“DOA”。
東シナ海に浮かぶドアテク島に選ばれし格闘家たちが集まります。
主催は科学者のドノヴァン博士。賞金は1000万ドル。
しかしそこには何やら不穏な匂いが立ち込めていたのです…。
女忍者のかすみ、かすみを心配して追ってきたリュウ、女盗賊のクリスティー、
女子プロレスラーのティナ、かすみを抜け忍として追うあやね、
ドノヴァンの女戦士エレナなどが競うDOAトーナメント。
そのコスチュームがセクシーで、これこそ理屈抜きに楽しむ1本。
ケイン・コスギのハリウッドデビューが話題になっているのはこの作品です。
男性目線で(笑)☆3つ。
「DOA デッド・オア・アライブ」公式サイト

「天国は待ってくれる」はV6の井ノ原快彦、元EXILEの清木場俊介、岡本綾主演の友情ドラマ。
東京は築地。武志と薫の通う小学校に転校生がやってきました。彼の名は宏樹。
口下手の宏樹と、率先して仲良くしたのが武志と薫。
男子2人に女子1人の友情は、大人になっても続いていたのです。
築地の市場で働く武志、市場を見下ろす新聞社で働く宏樹、そして銀座の文具店で働く薫。
久々に3人が揃ったある日、突然武志が言います。
「俺、薫にプロポーズする!」。
戸惑う薫、そして宏樹。恋のベクトルは、告白こそしていなかったものの、薫と宏樹で向きあっていたのに。
「いいんじゃないか。お前ら昔からお似合いだし」。
宏樹のその言葉でプロポーズを受け入れてしまう薫。
喜ぶ武志にアクシデントが起こります。
結婚式当日に、運転していた車が事故を起こしてしまうんですね。
武志は意識不明の重体に。一命は取り留めたものの、
あれから3年、今も武志は病院のベッドで意識は戻らないまま。
3人の関係もあの日からずっと動くことなく、ただいたずらに時が流れていくのでした…。
とまぁこのあと、さらなるドラマが待ってるんですが、なんとなく「感動させますよ」、
「さぁ感動して下さい」って感じが、ボクには強過ぎちゃったかなって。
あくまで個人的な感想ですよ。
あと築地市場で初のロケということなんだけど、頻繁にインサートされる、
忙しく動き回る市場の様子を映した定点カメラの映像がいつも(たぶん)一緒なのね。
これはもしかしたら眠ったままの武志を表してるのかも知れないけど、
その深読みに行き着く前に、「えっまたこの絵?」ってなっちゃうんだなぁ…。
主演のそれぞれにファンが多いだろうから怒られちゃいそうだけど(笑)、ごめんね、やっぱり☆2つ。
「天国は待ってくれる」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.2.2

「スターフィッシュホテル」☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)
試写会の会場で落ち着きのない人が隣りに座ると大変。
気が散ってしまうんですね。
この前は一番前に座ってる男がツンツン頭を気にして、しょっちゅう髪の毛をさわって。
ボクは2列目、その男の斜め後ろに座ってたんですが、もうその動き、
手、肘が、邪魔で邪魔で。
その男の左隣りの人も手のひらで顔の横に壁を作るようにして、
男の動きが目に入らないようにしていました。
仕方ないので肩をポンポンと叩いて気付かせてやりました。
マナーの問題はみんなそうですが、自分を客観的に見れな過ぎ。
気をつけましょうね。さ、今週は1本です。

「スターフィッシュホテル」は、不思議なトーンのミステリー映画。
建築会社に勤めるサラリーマンの有須は、設計会社に勤務する妻のちさとの二人暮らし。
唯一の楽しみは、ミステリー作家黒田の書く幻想的な小説を読むこと。
ところがあまりにのめり込んでいるせいか、有須は毎晩悪夢にうなされていたのです。
東北に出張した際に泊まったホテルがスターフィッシュホテル。
ネオン管の看板が印象的で、古めかしく、どこか異国情緒漂うホテル。
そこで知り合った謎めいた女性、佳世子。体の関係を持ってしまった有須と佳世子。
不倫はスターフィッシュホテルで続いていきました。
ある日のこと、妻のちさが忽然と姿を消してしまいます。
同時に有須に降りかかる数々の不思議な出来事。
そしてなんと作家黒田の新作は「スターフィッシュホテル」。
その内容はまるで有須の私生活をそのままに描いたかのよう。
これは現実?それとも悪夢?有須は答えを求めて彷徨い続けるのでした…。
と、これだけじゃよくわからないと思いますが(笑)。
うさぎの着ぐるみの男、謎の会員制クラブ、探偵事務所の名刺など、
カギとなる小道具もたくさん出てきて、見ているボクらもいろいろ推理しながら話は進んでいくんですが、
最後まで見てもスカッとは終わりません。
それがいいんじゃないって言われちゃうとそれまでなんですが(笑)。
主演の佐藤浩市の演技も含め、雰囲気やトーンは抜群にいいんですけどね。
間違いなく好みの問題。ごめんなさい。☆2つ。
「スターフィッシュホテル」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.1.23

「おばちゃんチップス」☆☆
「輝く夜明けに向かって」☆☆☆
「幸福な食卓」☆☆☆
「魂(たま)萌え!」☆☆☆
「ユメ十夜」☆☆☆
「ルワンダの涙」☆☆☆
「ワサップ!」☆☆☆

今週は一気に7本。数が多いので早速紹介していきましょう!

「おばちゃんチップス」は、大阪を舞台にした人情コメディ。
方言の研究をしたいからと、東京の一流建築会社を辞めて、大学勤務のため大阪にやって来た修平。
とは言っても非常勤講師で給料は安く、下宿先は昔ながらの雑貨屋さん。
その店を営む千春は町の名物おばちゃん。千春おばちゃんの特製チップスは近所で大評判。
ところがこの店も、町の再開発で地上げ屋に狙われていたのです。
部屋の窓を開けると、目の前は若いホステス、麻衣子の部屋。
何度か話をするうちに互いに惹かれ合っていく2人でしたが、
交際に踏み切るにはそれぞれに越えなければならない秘密を抱えていたのです。
ある日、千春おばちゃんの様子がおかしくなります。痴呆が始まったのです。
そしてわかった千春おばちゃんの多額の借金。
このままではこの店を地上げ屋に売らなくてはならない。
そうしたら名物の特製チップスも食べられなくなる。
そこで修平は菓子メーカーに千春のチップスの製品化を直談判しに行くのですが…。
船越英一郎、京唄子、倖田來未の妹misonoらが出ているこの映画、
“原色大好き”な大阪のおばちゃんの毒々しさみたいなのを楽しみにしていっちゃったせいか、
意外にあっさりで。監督は東京人。関東風の味付けが隠せなかったかも。
こういうのは徹底的にコテコテがよろしゅうおま(笑)。すんませんな、☆2つ。
「おばちゃんチップス」公式サイト

「輝く夜明けに向かって」は、南アフリカの人種差別“アパルトヘイト”の物語。
黒人差別がまかり通っていた1980年の南アフリカ。
精油所で働くパトリックは妻と2人の娘を持つ父親。
政治に無関心なパトリックは、黒人としてのごく普通な生活を、
平凡ながら幸せに送っていました。
ところが彼の勤務する精油所がテロの手により爆破されるんですね。
白人による捜査の手がパトリックにも伸びてきました。
実はパトリックは少年サッカーの監督をやっていて、チームが大会の決勝に進出。
同行するには勤務を休まなければならず、偽の診断書を提出していたのがバレて疑いを持たれたのです。
囚われの身となり、無実を主張するパトリック。
しかし拷問はパトリックのみならず、愛する妻にまで及びました。
妻を守るため、自分がやったと言わざるを得ないパトリック。
その後の調べで無実がわかり釈放されるのですが、彼は家族の待つ家には戻らず、
対白人組織ANCの門を叩いたのでした…。
伝記ものと並んで最近多いのが、こういった民族紛争や人種問題などをテーマにした作品。
白人側の中心人物であるニック大佐もパトリックと同じく妻と2人の娘の父親なんですね。
そのニックに向かって、パトリックはこう言い放ちます。
「私の子供は『父親は正義のために戦った』と語り継ぐだろう。でもあなたの娘はあなたの事を何と言うかな?」
アパルトヘイトをもちろん身近な事として感じることはできませんが、
今ボクらの周りに多発しているいじめの問題も、
何か人間の根っこにある卑劣なものという意味では似た部分があるのかも知れません。
誇りを踏みにじられることへの怒り。憎しみの連鎖。
考えさせられます。☆3つ。
「輝く夜明けに向かって」公式サイト

「幸福な食卓」は、ちょっと変わった家族の物語。
父・弘、母・由里子、兄・直、妹・佐和子からなる4人家族の中原家。
今から3年前。教師だった父さんの心が突然“壊れた”のです。
それからというもの、母さんは家を出て近所で一人暮らしを始め、
成績優秀だった兄さんは大学進学を辞め農業を始めて。
それでも父、兄、妹で仲良く暮らしていたある日の朝、
父さんが朝食の席でこう言ったのです。
「父さん、今日で父さんを辞めようと思うんだ」なんとか平穏無事にやってきた中原家に、
またひとつ大きな波紋が広がるのでした…。
女性に人気の作家、瀬尾まいこの小説の映画化。
ちょっと設定が特殊なんだけど、その特殊な設定を生きる4人の、
見えてる表の顔と見えない裏の顔とがあって、どちらも実は人間臭かったりするのです。
表と裏がどの役割でどう組み合わされると家族ってうまくいくのだろう?
ボクはパズルのように考えてしまいました。
親兄弟は無償の愛でいいんだろうけど、この殺伐とした世の中じゃ、
誰かが誰かを演じないと家族ですらうまくは回らないのかも。
思うがままだと“切り刻んじゃう“のが現実だとしたら悲し過ぎません?☆3つ。
「幸福な食卓」公式サイト

「魂萌え!」は、桐野夏生の小説の映画化。
東京の郊外の一戸建てに住む敏子は専業主婦。
定年を迎えたばかり夫と、海外に行ったっ切りの長男と、
彼氏と同棲を始めると家を出た長女との4人家族。
ところが、その夫が突然、心臓発作で死んでしまうのです。
葬儀が終わって帰宅すると、夫の携帯電話が鳴ります。
電話の相手は敏子の知らない女性。
夫の死を知らせると激しく動揺する電話の向こうの女。
敏子は夫に自分の知らない秘密があると、第六感で感じるのです。
「どうぞお線香をあげに来て下さい」
敏子の言葉に感謝しつつ、家までやってきた女。
聞けばなんと10年も夫と付き合っていたと。死んだその日も会っていたと。
何も知らず、ただ黙々といい妻、いい母、
いい主婦をやってきたこの数十年に敏子は腹立たしさを覚え、家を飛び出します。
そう、敏子の危うい“冒険”が始まったのでした…。
よく“××デビュー”と言うけど、こと遊びに関しちゃデビューが遅くなればなるほど質が悪くなる。
敏子さん、痛々しいですって。でも夫が愛人にそこまで尽くしていたと知れば知るほど怒り心頭。
彼女にとっては報復的第2の人生のスタートなんだろうなぁ。
こちらは関口家。「幸福の食卓」の中原家と比べてみても面白いかも。
この関口家の面々もかなりのわがままさんばかり。
ただしこちらの方が中原家よりもリアリティのある家族像。
それだけにあまた存在すると言われる世の離婚予備軍の女性たちが見たらどう思うのかなぁと。
男としてものすごく興味があるところです。☆3つ。
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「ユメ十夜」は、夏目漱石の「夢十夜」を10名の有名監督が短編で綴ったオムニバス作品。
不思議な世界観をそれぞれに不思議なトーンで描き出しています。
今からちょうど100年前、漱石が自分で見た10の夢を書いたのが「夢十夜」。
夢って時間軸も登場人物もよじれちゃうから、
ボクらが自分の見た夢を人にちょこっと話すのだって大変なのに、
漱石のそれを映画にしちゃおうっていうんだからもう大変。
この映画は理屈で考えずに感性で感じて下さい。
ちなみに監督は、実相寺昭雄、市川崑、清水崇、
松尾スズキ、天野喜孝などなど。すごいです。☆3つ。
「ユメ十夜」公式サイト

「ルワンダの涙」は、アフリカのルワンダ共和国の民族紛争の物語。
BBCの記者が見た“ルワンダ虐殺事件”が描かれています。
1994年、100日で100万人が殺されたというこの惨劇は、
フツ族とツチ族の長い民族対立がもたらした悲劇だったのです。
そもそもの対立は、植民地時代に西洋諸国がルワンダを占領下に置いたことから始まっており、
自国に都合のいいように両部族を分断し、権限を与え、憎しみの構図を作ってきた訳です。
ところがこの虐殺が始まった時、それまで置かれていた国連派遣軍は撤収、
ヨーロッパ各国は知らぬ存ぜぬの態度を取りました。
この映画では、事態の収拾に奔走する2人のイギリスの民間人にスポットを当てています。
それでも最後は2通りの選択肢があって、それぞれがそれぞれ別の道を選びます。
でもどちらも正しい選択だったに違いありません。
わずか10年ちょっと前に起こった現実の出来事ですからね。
改めてそのことに驚かずにはいられません。☆3つ。
「ルワンダの涙」公式サイト

「ワサップ!」は、LAに暮らすラテン系の若者のストーリー。
治安の悪いサウス・セントラルに住むラテン系の少年たち。
仲間は7人。周りはヒップ・ホップ好きの黒人だらけだけど、
彼らはスケボーに乗り、周囲に迎合することなく、パンク・ロックをこよなく愛していました。
ゆえに黒人たちとは対立の構図にあり、つい先日も仲間が黒人に銃で殺されたのです。
そんなある日、7人はスケーター・ビデオでよく見ていたボーダーの聖地とも言える
ビバリーヒルズ高校の“9つの階段”を目指してビバリーヒルズへ。
するといきなりかわいいセレブの女の子に逆ナンされます。
家を教えられ、あとで遊びに来てと誘われるんですが、
そこに白人の警官が現れ、スケボーは禁止だと。
つまり地元の人間じゃないだろと。
素直に聞くはずもない彼らは、警官をおちょくって1人が逮捕されてしまいます。
残った6人はさっきの彼女たちの家へ。
そこでいい雰囲気になるのですが、その女の子たちのボーイフレンドとかち合っちゃったからさぁ大変。
乱闘になり、散々暴れた末、高級住宅街の家から家を、庭から庭を逃げる彼ら。
ところが途中で仲間の1人が家の住人に撃たれてしまうんですね。
途方に暮れる5人でしたが、彼らは何かを悟ったかのように自分たちの住む町へと戻って行くのです…。
戻って行くというより、戻って行くしかないんだってことかな。
彼らにとってはどこも一緒だということに気付いたのかも。
ただかなり違和感があったのは、仲間や兄弟が逮捕されようが撃たれようが、心配こそすれ、
助けに行こうとかどうなったか見に行こうとはしないんですよ。
試写のあと話した宣伝会社のプロモーターさんは、仲間は生きていくための術なんだと。
兄弟であったとしてもそうで、それくらい生きることに厳しい環境なんだと教えてくれました。なるほど。
笑顔で町に戻る5人。心の奥底をふーんと想像できることはできても、理解することはできませんでした。
それこそどことも国境を接しない島国日本ではあまりピンとこない話ではあります。
ピンとこないからこそ映画で疑似体験しておくのは意外と大切なことだったりして。
だって昔と比べたら、日本だって外国人の数はものすごく増えてるから。
わからないことをわからないままでいいとするよりも、
チラッとでも垣間見て考えるというのは大切かも知れませんね。
地元のストリート・キッズを起用し、
地元の無名のパンク・バンドの楽曲を用いたところにリアリティの追及があります。☆3つ。
「ワサップ!」公式サイト

なんか今週はそんな紛争ものや闘争ものなど、アイデンティティを考えさせられる映画がたくさん。
あ、家族だって考え方によっては小さな国家だったりして。
とにかく興味を抱いてくれたら、1本でも見てみて下さいね!

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.1.17

「ディパーテッド」☆☆☆
「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」☆☆☆☆
「マイ・シネマトグラファー」☆☆☆

(満点は☆☆☆☆☆)

だいたい試写というのは、13時、15時30分、
18時(または18時30分)開映というのが中心で、
早いと10時、遅いと20時なんていう試写もあります。
13時からの映画を見て、電車で次に移動すると、だいたい15時を回ります。
2時間を超えるものだとホントにギリギリになっちゃう。
「ふぅ、間に合ったぁ」と思って試写状を受付に出すと、
「これ、別の作品ですけど…」なんてことが年に1、2度あるんですね。
試写会場の間違い。そんな時は本当にガッカリしちゃいます。
こんなに必死に急いだのにって。実はこの文章を打っている今日がそうだったんですよ。
精神的にとーっても疲れました(苦笑)。
さぁ気を取り直して。今週は3本です!

「ディパーテッド」は、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、
ジャック・ニコルソンら豪華出演陣で話題のサスペンス大作。
貧困、犯罪、そして人種差別。
ボストン南部の劣悪な環境に生まれ育った2人の男、ビリーとコリン。
まったく面識も接点も無い2人でしたが、奇遇にも共に目指したのは警察官でした。
ビリーは犯罪者の一族に生まれ、そんな自分の運命を振り払いたいと正義の道を選び、
一方のコリンは幼い頃からまるで父親のように優しく面倒を見てくれたマフィアのボス、
コステロに情報を流すために警察に潜入しようという、まさに正反対の目的での志願。
ビリーもコリンも優秀な成績でボストン州警察のSIU、
すなわちマフィア撲滅チームに配属となります。
ところが就任初日、ビリーは上司から耳を疑うような任務を言い渡されます。
「オマエの家系は犯罪者の血筋だ。まず疑われることはないだろう。
コステロに近付いて子分になれ。
そして囮捜査官としてコステロ逮捕に全力を挙げるんだ」
ビリーが囮捜査官であること、それは命令を下した上司2名しか知りません。
こうしてマフィアと警察に、それぞれスパイが1人ずつ潜入。
命懸けの情報戦が始まったのでした…。
この映画は02年に大ヒットとなった香港映画「インファナル・アフェア」をベースに、
マーティン・スコセッシ監督がメガホンを取った作品。
ディカプリオがこの主演で、
悲願のオスカーに手が届くかというのも話題になってますよね。
“嘘”っていうのは、つき通すならどんどん塗り重ねていかざるを得ないもの。
ちょっとしたほころびからどんどん自分を追い詰めることになります。
やっぱり嘘はダメだってことですな。
「ディパーテッド」というのは“死者”の意味。
エッと思うような終盤の展開に、なるほどこのタイトルかと、
その意味を納得するかも知れません。
古臭い表現ですが、スリルとサスペンスの2時間32分。
どうぞハラハラドキドキしてきて下さい。☆3つ。
「ディパーテッド」公式サイト

「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」は、結合体双生児のお話。
胸の脇で体がつながっている双子の兄弟のトムとバリー。
人の目につかないようにと育てられた2人でしたが、
将来を案じた父親が18歳の彼らをイベントの興行主に売ってしまうんですね。
さぁどう売り出そうかと考えた興行主は、2人に音楽をやらせようと思いつきます。
トムはギター、バリーはボーカル。
楽器を手にするのはもちろん、ロックを聴くのも初めてだったのですが、
偶然にも2人には音楽の才能がありました。
ハードなトレーニングの成果もあって、メキメキと上達するトムとバリー。
バックのバンドメンバーも集めて、
ザ・バンバンという名前で初めてのステージに立ちました。
観客は兄弟の特異な姿に容赦ない言葉をぶつけたのですが、
マイクを握るバリーは怯むどころかまるで反撃するかのような
攻撃的パフォーマンスでオーディエンスに立ち向かったのです。
その反骨の姿勢がまさにロック魂だとの評価を得て、
もつろんルックスの特異さも話題になり、
ザ・バンバンは一躍スターダムにのし上がっていきます。
新曲の切ないバラードも大ヒット。
自らの運命を呪うかの如きリアリティのある詞も聞き手の心をつかみ、
さぁ次はアルバムの制作だと、外からは順風満帆に見えたトムとバリーでしたが、
急激に変化した環境のその裏で、2人は精神的にかなり参ってしまっていたのです。
それを埋めるかのような酒とドラッグの日々。
悲劇がすぐそこまで近付いていることをまだ誰も知らずにいたのです…。
設定は60年代のイギリス。カメラワークも含め、
まるでドキュメンタリーのように見えるんですが、これ実はフィクションなんです。
よーくできてますョ。パンクの生まれた国、
イギリスならではといった感じでしょうか。
時代の寵児とも言えるスーパースターって、
現実の世界でも悲劇的最期を迎えることが多いですもんね。
ニルヴァーナのカート・コバーンしかり、
それが人生を“駆け抜けた”証しだとしたら切な過ぎるけど…。
音楽ファンなら必見の1本です。☆4つ。
「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」公式サイト

「マイ・シネマトグラファー」、こちらはドキュメント。
実在の名カメラマン、ハスケル・ウェクスラーの80歳の日常を、
息子のマーク・ウェクスラーが撮った作品です。
ハスケルはアカデミー賞の撮影賞を2度受賞している“伝説の撮影監督”。
実に頑固なカメラ職人で、撮影にあたったジャーナリストの息子マークに、
「ドキュメンタリーとは…」と叱り、けなし、口うるさく注文をつけます。
それでもアメリカの映画史に多大な影響を与えてきたとされる人物です。
ジョージ・ルーカス、ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス、
ジュリア・ロバーツといった著名人の言葉が、
ハスケルの偉大さを物語っていました…。
本物のプロが抱く“こだわり”、それは“自信”に裏付けられ、
その“自信”は“経験”が築き上げる。
この映画を見て、そんなことを改めて感じました。
自惚れと自信は紙一重。
でもその差って実はすごく大きいんだってことも。
でも宝物であるはずのカメラを手放す父の姿もまた現実。
ボクの親父も75歳で現役の寿司職人。
いつか板場に立たなくなるのかなぁと思うとちょっぴり寂しくもなっちゃいました。
すごく感動的なことが起こるとかいう映像じゃありませんが、
事実は小説より奇なり。
プロとはなんぞやというのを知りたい人は是非。☆3つ。
「マイ・シネマトグラファー」公式サイト

 
 


 
 
 週末公開の映画……2007.1.13

「jackass number two」☆
(満点は☆☆☆☆☆)
07年最初の映画紹介です。今年もたくさん試写を見させて頂いてここで紹介し、
みなさんが劇場に足を運んでくれるきっかけになるといいなと思います。
では早速いきましょう。今週は1本です!

「jackass number two」は、ホントにおバカでお下劣な映画。
今年最初に紹介するのがこの作品かと思うと情けない…(笑)。
本当に「うんことゲロ」の映画なんです。見た時は口をあんぐり!
スタントマンたちが数々のクソ下らないことに挑戦していくんですが、
笑えるのもあれば気持ち悪くなるのもあって、例えば、
尻に牛の焼印(それもチンチン型)を押しつけたり、肛門からビールを飲んだり…。
そんなのばっかり50タイトル以上。映画館ではゲロ袋、失礼、エチケット袋を配るそうです。
ボクも馬のザーメンを飲むシーンでは吐きそうになりました。オエッ。
初めてじゃないかな☆1つ。
でもね、1つってことはそれだけ突出した映画だってこと。
実はこれがシリーズ第2弾。
02年秋の第1弾は、全世界で8000万ドルもの興行収入をあげちゃったそう。
たまらなく好きな人もいるはずです。
ものは試しで覗いてみては?思い出すだけで、オエッ…。
「jackass number two」公式サイト