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Pick Up Movie!……2023.1.5 |
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『カンフースタントマン 龍虎武師』★★★★
『恋のいばら』★★★
『ドリーム・ホース』★★★★
『非常宣言』★★★
『ファミリア』★★★
(満点は★★★★★)
2023年最初の映画紹介です。
昨年は198本。残念ながら、200本の大台には届かずでしたが、それでも自己最多は更新したので、映画的には満足の1年でした。
今年も心揺さぶる作品に出会えるのを楽しみに!
さぁ、今週は5本です!
『カンフースタントマン 龍虎武師』は、ドキュメンタリー。
ブルース・リーのカンフー映画が世界中で大ヒット。香港のアクション映画が注目の的になった1970年代。
その後も、ジャッキー・チェンやジェット・リーなど、ハリウッドでも人気の俳優を輩出しますが、そのアクション大作の裏には、身の危険をも顧みない数々のスタントマンがいたというお話。
そんな香港映画のスタントマンたちにスポットライトを当てたのがこの映画で、「龍虎武師」の“武師”はスタントマンのこと。つまり、直訳すると“ドラゴン・タイガー・スタントマン”。それほどに勇猛果敢なスタントマンがいたということなんです。
京劇にルーツを持つ、香港のスタントマンは、京劇のブームが下火になったことで、活躍の場をスタントに移行。激しい競争を勝ち抜いてこそ仕事にありつける世界ゆえ、彼らは決してNOと言わない、強い精神力を身につけるようになるんですね。
とはいえ、体の強さには限界が…。
伝説のスタントマンたちが自身のスタントを語るのですが、その映像のすさまじいこと!死んじゃいますって。
実際、大怪我を負ったことも数知れず。それをケロッと笑いながら話すのですから、驚きです。
正月のTVで「衝撃の映像スペシャル!」みたいなのをやってましたが、その手が好きな人には、こっちのほうがオススメです。ビルの8階から飛び降りるんですよ。“衝撃”は何倍も、何十倍もありますから。
『燃えよデブゴン』で知られるサモ・ハン・キンポーは、監督としては厳しいんですね。でも、そんなサモ・ハン監督に声を掛けられることを誇りに思うスタントマンたち。
出演者や取り上げる作品等、詳細は添付の公式サイトに委ねます。覗いて興味を持ったら、ぜひ劇場へ!★4つ。
『カンフースタントマン 龍虎武師』公式サイト
『恋のいばら』は、奇妙な男女の三角関係の物語。
図書館で働く桃は24歳。
カメラマンの健太朗という恋人がいましたが、最近フラれたばかり。
それでも彼のことが気になる桃が、インスタで健太朗をチェックしていると、どうやら新しい彼女ができたよう。
その子の名前は莉子。ダンサー志望の今ドキ女子で、あか抜けない桃とは正反対。
すると桃は、莉子のインスタからよく行く場所を導きだし、莉子に直接会いに行ったのです。
健太朗の元カノだと自己紹介をする桃。いぶかしげな対応をする莉子に、桃は言います。
「リベンジポルノって、知ってます?」
桃は、健太朗のパソコンに残っているだろう、自分のあられもない写真を消したいだけだと莉子に話します。
初めは相手にしなかった莉子でしたが、自分も思うふしがないわけではなく。次第に健太朗の女性関係のだらしなさにも気付いた莉子は、パソコンのパスワードを盗み見ることに成功。遂には、桃と一緒に健太朗の部屋に忍び込み、パソコンを開こうとするのですが…。
ピンク映画出身の城定秀夫監督が、桃役の松本穂香、莉子役の玉城ティナのW主演で撮った、ちょっぴりアブノーマルな恋愛映画。興味津々で観ちゃいました。
期待したほどの過激さはなかったのですが(笑)、あとで公式サイトを見てみたら、オリジナル作品があると。それは2004年の香港映画『ビヨンド・アワ・ケン』。
その映画は観たことはありませんが、やはりリベンジポルノを巡るストーリーだったよう。
ある種のジェラシーと、こらしめの行動ですよね。
ボクも自分で認める相当な焼きモチ妬きですが(笑)、彼女の携帯は一度も見たことがありません。だって、見たっていいことなんて、ひとつもないでしょ。
だから、彼氏のパソコンは開いちゃダメなんだって。なんて言ったら映画にならないか(笑)。
「恋人同士では観ないでください」が、この映画のキャッチコピー。いやいや、恋人同士で観て語り合ってみてはいかがです?★3つ。
『恋のいばら』公式サイト
『ドリーム・ホース』は、イギリスの実話に基づく競走馬のお話。
イギリス、ウェールズ地方の小さな村。昔は炭鉱の町として栄えていましたが、閉山した今はさびれる一方。
ジャンは夫のブライアンと、この村で二人暮らし。
今では夫に何を言っても空返事。ジャンは、昼はスーパーでレジを打ち、夜は労働者向けのバーで働き、さらには高齢の両親の面倒を看て過ごす毎日。何も変わらず、何の刺激もなく。出るのはタメ息しかありませんでした。
そんなある日のこと、バーにいた税理士のハワードが、競走馬で稼いだ話をしていました。
それを聞いて、ジャンが閃いたのは共同馬主。ひとりじゃ無理でも、たくさんで持てばなんとかなる。
競馬について徹底的に調べたジャンは、村人たちを誘って繁殖牝馬を購入します。
参加したのは、22人の村人たち。種牡馬を選び、種付けをして、産まれた馬にドリームアライアンス(夢の同盟)という名前をつけるんですね。
ジャンは持ち前の行動力で調教師も見つけ、預託先を確保。
そうして調教を積まれたドリームアライアンスが、いよいよデビューの日を迎えたのです…。
このドリームアライアンスは、実在した障害レースの馬。
2009年に、ウェルシュ・グランドナショナルというGVのレースを勝って、ドキュメンタリー映画にもなり、2015年のサンダンス映画祭では観客賞も受賞しています。
実話ですから何もケチはつけられないのですが、これは稀に見る成功例。
極端な言い方をすれば、宝くじに当たったようなもの。一口馬主歴、ン十年のボクが言うのですから、間違いない。これもまた“実話に基づく”です(笑)。
ただ、もうひとつ間違いないのは、この映画のキャッチフレーズにもある「欲しいのは儲けじゃない。胸の高鳴り」という言葉。
あ、いや、ボクは儲けも欲しいかな(笑)。
事実、中央競馬の馬主で、黒字は僅かに4%と言われます。
「じゃ、何で馬主なんてやってるの?」
競馬を単なるギャンブルだと考えている人は、みなさん、そう言います。
その答えがこの映画にある…かな(笑)。
日本と違って、レースの賞金がさほど高くないヨーロッパの競馬。ドリームアライアンスが稼いだ賞金も、総額で137000ポンド。週に10ポンドの出資金で、出資者ひとりあたり1430ポンドの配当だったそう。これは映画のラストにテロップで出てきます。1ポンドが157円だとして、手にした配当は22万4510円。計算してみれば、預託料等は差し引いた金額だと思われますが、それでも人生が変わるような大金を手にしたわけではない。そう、やっぱり得たのは「胸の高鳴り」なんですョ。わかるなぁ(笑)。
夢や楽しみ、打ち込めることを見つけることが、人生において、どれほど大切なのかを教えてくれると思います。
もし、この映画を観て、競馬に興味を持ったなら、まずはこの1冊。拙著『究極の競馬ガイドブック』をお勧めします!
って、宣伝かいっ(笑)。★4つ。
『ドリーム・ホース』公式サイト
『非常宣言』は、韓国のパニック映画。
韓国・仁川空港からハワイのホノルルに向かう、スカイコリア501便。
空港には、この飛行機に騎乗予定の父と幼い娘がいました。パク・ジェヒョクとスミンです。
ジェヒョクは極度の飛行機恐怖症でしたが、スミンのアトピーを考えてのハワイ行きです。
一方、ベテラン刑事のク・イノは、妻から旅行に誘われるも、仕事を理由に断ると、皮肉たっぷりに責められる始末。実は、イノ刑事の妻も、この便でハワイに向かう予定でいました。
空港のロビーで、ジェヒョクとスミンに執拗に絡んでくる男がいます。男の名はリュ・ジンソク。その場はなんとかやり過ごしましたが、なんと同じ便にジンソクが乗り込んできたではありませんか。見つからないように身を屈めるジェヒョクとスミン。
その頃、韓国国内では、1本の動画が話題になっていました。それは航空機へのバイオ・テロの予告動画です。
ここに映っている男を知っていると通報を受け、イノ刑事たちが向かった先で発見したのは、ビニールでグルグル巻きにされた遺体と、モルモットを使ったウイルスの実験ビデオでした。犯人の名は、リュ・ジンソク。そう、機内にいるあの男です。
バイオ・テロが嘘ではないと確信したイノ刑事は、狙われた旅客機に妻が乗っていると知り愕然とします。
離陸から30分後、ひとりの男性客が変死すると、体調の悪化を訴える乗客やCAが続出。
異変に気付いた乗客がスマホを操作。するとSNSでは国内が騒然となっていて、バイオ・テロの標的がこの便であることを知り、機内は瞬く間にパニックに陥ったのでした…。
航空機が緊急事態を宣言した場合、着陸に対して何よりも優先権があるそうで、空港のみならず、基地などへの着陸も認められる場合があると。タイトルの『非常宣言』は、それを表しています。
ところが、未知のウイルスに感染した航空機ですから、そう簡単に「どうぞ、降りて下さい」とはいかないわけで。
ましてや、操縦竿を握る機長や副機長にも、感染の可能性がある。操縦不能になれば、墜落の危険性だってあります。
殺人ウイルスを撒き散らすリュ・ジンソクという男は何者なのか?なぜそんなことをするのか?
それは意外とすぐに明らかにされます。
実は過去のあるジェヒョクにイ・ビョンホン。ク・イノ刑事にソン・ガンホ。韓国の人気俳優が共演したこの映画、パニックになった時に出る人間の本性もまた恐ろしいと描きます。とはいえ、自分だったら冷静でいられるかと言えば、自信はまったくありません。
どこかコロナウイルスの
蔓延初期を思わせる1本。あの頃、人を変な目で見ていませんでしたか?
高度28000フィートのパニック映画。ハラハラドキドキの141分です。★3つ。
『非常宣言』公式サイト
『ファミリア』は、在日ブラジル人と日本人家族の物語。
陶芸を生業とする神谷誠治。
児童養護施設に育ち、若い頃はやんちゃだった誠治でしたが、そんな彼を変えたのは妻の晶子でした。
しかし、晶子はもうこの世にいません。それでも、一人息子の学は立派に育ち、今では一流企業に勤め、アルジェリアにプラント建設の責任者として赴任していました。
そんな学が、現地で結婚した難民出身のナディアを連れて帰国。幸せそうな二人を見て、誠治は頬を緩めるのでした。
学は誠治に言います。「3ヶ月後に建設は完了する。そうしたら、父さんの跡を継いで、ここで焼き物をやる」。
自身の経験から反対する誠治でしたが、学の決意は堅いよう。
そんな時、怪我を負ったひとりのブラジル人青年が、誠治の家に迷い混んできます。彼の名はマルコス。トラブルを起こし、半グレのグループに追われていたのです。
手当てをするも、礼も言わずに逃げ去るマルコス。
この出来事が、誠治たちがブラジル人コミュニティーと繋がりを持つきっかけとなったのです…。
物語のさわりの部分だけを書いてみました。
この映画の試写は、オンラインではなく映画会社の試写室で観させてもらったので、マスコミ用のプレス資料も、公式サイトの解説よりは深く記されています。
その中で、ノンフィクションライターの安田浩一氏が、在日ブラジル人の歴史と現状を書いていました。
それによると、昔、日本人がブラジルに渡り、日系ブラジル人のコミュニティーができると、今度は日本が労働力を欲しがった。政府が“日系”に特例を出したことで、多くの日系ブラジル人が日本にやってきたと。
彼らは祖先に日本人を持つから、日本に対し親近感を抱いて移住を決めるも、日本人は“ガイジン”としてしか見ず、差別の対象として扱われてきた負の歴史がある。
今でこそ、環境は少しずつ変わりつつあるけれど、この映画に出演しているシマダアランは、ほとんどが在日南米人のラップグループ、GREEN KIDSのメンバーで、ラッパーとしての名はFlight-A。彼はルイという若者の役を演じますが、そのほとんどが自分たちのリアルだと語ります。
人種間の偏見やトラブルを他人事だと考えていると、自らにも降りかかってくることがあります。それは時に直接、時に間接的に。
新年からズシリと重い1本ですが、役所広司、吉沢亮、佐藤浩市といった顔なじみの俳優陣が身近なものとして見せてくれます。知って、考えてみてるには、いい契機になるかもしれません。★3つ。
『ファミリア』公式サイト
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