『カード・カウンター』★★★★
『魔女の香水』★★★
(満点は★★★★★)
雨が多いですね。梅雨のシーズンだから仕方ないと言ってしまえばそれまでですが。
気分転換に映画はいかがですか?大きなスクリーンで異世界に身を委ねるのも、非日常と言えるかもしれません。
さぁ、今週は2本です!
『カード・カウンター』は、『タクシードライバー』(76)の脚本、監督コンビがタッグを組んだ最新作。
米軍の元上等兵だったウィリアム・テルは、悪名高きアブグレイブ刑務所でのイラク人捕虜虐待の罪により、軍の刑務所に約10年間服役。その間に身につけたのが、“カード・カウンティング”という、ブラックジャックの禁じ手とも言える必勝法でした。
釈放されてからは、ギャンブラーとして、カジノを転々とする日々。決して負けることはなく、かといって大きく勝つこともせず。目立たぬように、生活費を稼いでいたのです。
ある日のこと、とあるホテルで、米軍の元少佐が、セキュリティシステムについてのセミナーを行っていました。少佐の名前を見て、中へと入るウィリアム。そこでウィリアムは、カークという若者から声を掛けられます。
聞けば、カークの父もウィリアムと同じアブグレイブ刑務所にいたと。そして、同様の嫌疑で不名誉除隊になってからは、薬物中毒になり、家族をバラバラにした後、自ら命を断ったと。その時の上司こそがセミナーでしゃべっていたゴード少佐。カークは、自分だけ罪から逃れたヤツが、のほほんと暮らしているのが許せないと言うのです。
ちょうどその頃、ウィリアムは、ラ・リンダというギャンブル・ブローカーの女性から、大金を賭けたポーカーの世界大会への参加を持ちかけられていました。
表に出ることを望んでいなかったウィリアムでしたが、カークのことがどうにも心配になったため、これを了承。カークを誘い、カークと共に、真剣勝負の場に身を置くことになるのですが…。
監督は『タクシードライバー』の脚本を書いたポール・シュナイダー、製作総指揮は同作の監督を務めたマーティン・スコセッシ。
オスカー・アイザック演じるウィリアム・テルは、見るからに孤独で、寡黙で、訳ありな男。
宿泊するモーテルの部屋も、あらゆる装飾をはずし、持参した白い布ですべてを覆うという。そんな行動に心の闇が表れています。
カークのことが身内のように思えたのか、共に行動することは、カークが突発的な行動を取らないよう監視する意味もあったのでしょう。
ふたりの会話から、だんだんと明らかになる、あまりに過酷すぎるウィリアムの過去。
ラ・リンダの存在も、ふたりにとっては大きな心の拠り所になっていたようで。
抜け出せない人生の暗闇に、小さな灯りが点ったかのような3人の出会い。これがどう進展して、どんな結末を迎えるのか。それは、どうぞご自身の目で確かめてみて下さい。★4つ。
『カード・カウンター』公式サイト
『魔女の香水』は、黒木瞳、桜井日奈子主演の“香り”の映画。
若林恵麻は派遣社員。今は、バンケットホールでコンパニオンとして働いています。
いつかは正社員にという触れ込みで就職したのですが、上司のセクハラを告発した途端に契約更新がされなくなってしまった恵麻。
次の会社でも、やる気は空回り。恵麻は必要とされていない自分を蔑むかのように、夜の街へ。自らスカウトの男に声を掛けるのですが、ここでも相手にされず。
ところが、そのスカウトマンが入っていったのが、街に古くからある香水の店。“魔女”の呼び名で親しまれている白石弥生が経営するその店は、不思議な魅力に溢れていたのです。
弥生も恵麻の何かを感じ取ったようで、恵麻に店を手伝ってみないかと誘います。
恵麻は弥生からたくさんのことを学び、自ら起業を決め、新たな人生の一歩を踏み出そうとするのです…。
“魔女”こと白石弥生は、昔、フランスで日本人の調香師と出会い、愛を育み、ふたりだけの香水を作ろうとするのですが、全9種類のうち、No.9だけが未完成。そのままふたりは別れてしまい、弥生は今もその香りを作ろうと、人生を賭けてレシピを探っています。
一方の若林恵麻も嗅覚は優れていて、弥生の店を手伝っている時に出会った金木犀の香りの男性は、恵麻のその後に多大な影響を与える横山蓮という実業家。
このように、香りで繋がったいくつもの糸が、幸せと悲劇とを紡ぎだしていきます。
音楽もそうですが、香りも瞬時にあの頃へとタイムスリップさせてくれるのが魅力。ボクも使い切っていないパフュームがいくつかあるから、さりげなく使ってみようかな(笑)。
この映画は、宮武由衣監督のオリジナル脚本。女性らしいという表現が今は適切かどうかわかりませんが、そんな作品だなと感じました。
それにしても、黒木瞳さんが美しい!まさに美魔女です。★3つ。
『魔女の香水』公式サイト
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