週末公開の映画……2019.2.15

『金子文子と朴列(パクヨル)』☆☆☆☆
『トラさん 僕が猫になったワケ』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


映画の最中、あくびが出そうになることって、ありますよね。作品の良し悪しには関係なく。
でも、その場合、あくびは普通かみ殺します。
ところが、たまにいるんですよ。「ふわぁ〜っ」と音に出す人が。
それを聞くと、物語の世界から、一気に現実へと引き戻されてしまいます。
あくび禁止なんてルールはないけれど、マナーはある。周りに気遣って欲しいものです。
さ、今週は2本です!



『金子文子と朴列(パクヨル)』は、韓国映画。

1923年の東京。
朝鮮人アナキストの朴列は、日本人女性の金子文子と出会います。
ふたりを結びつけたのは、朴列が書いた『犬ころ』という一遍の詩でした。
文子はこの詩に、作者の強靭な意志を感じたのでした。
朴列は“不逞社”なるアナキスト結社を作り、ふたりは同志として活動。
また恋人として、一緒に暮らし始めます。
そんな時、関東大震災が列島を襲います。
同時に、「朝鮮人が井戸に毒を入れ、暴動を起こしている」とのデマが広がるんですね。
政府は戒厳令を発しますが、軍や自警団は多くの朝鮮人を虐殺。
大混乱の中、朴列も文子も、警察に逮捕されてしまいます。
それでもふたりは、獄中から闘おうと誓い合うのでした…。

この映画を見る側がどう捉えるかだと思いますが、巨大権力に立ち向かう一組の男女の、
青春と人生を懸けた闘いの物語として見た時、
我々日本人にとっても感じ入る作品になるのではないかと思います。
この映画のいいところは、すべての日本人を“悪”として描いていないところにもあります。
今、日韓関係はこれまでにないほどにギクシャクしていて、
「いくらなんでも、そりゃないだろう」と思うことも多々ありますが、
これですべてを一括りにして見たらおかしくなる。
反日の旗を降る人ばかりじゃないはずで、そこに目をやることも大事なんじゃないかなと。
デフォルメも含め、描き方ひとつで史実のディテイルは変わってくるでしょうから、
そこを云々言うつもりはありません。
ただ、普段とは違う視点を持たせてくれる力も、映画にはあるはず。
この映画を見終えて、そんなことを思ってました。
韓国では235万人の観客を動員したそう。
向こうからの目は、この映画をどう捉えたんでしょうね。気になるところです。☆4つ。
「金子文子と朴列(パクヨル)」公式サイト



『トラさん 僕が猫になったワケ』は、Kis-My-Ft2の北山宏光の映画初主演作。

猫が大嫌いなのに、猫が主人公の漫画『ネコマン』で人気を博した、漫画家の高畑寿々男。
その最終回を描くことなく連載を中止した寿々男は、
新作を売り込みますが、担当からは一蹴されてしまいます。
「『ネコマン』の続きを描いたほうがいいんじゃないですか?」。
その言葉が寿々男のヘソを、ますます曲げさせていたのです。
寿々男には妻と愛娘がいましたが、
妻がパートで稼いだ給料をギャンブルで使ってしまうようなダメ夫。
そんな寿々男が競輪で大儲け。
意気揚々と帰宅する途中、交通事故に遭い、あっけなく死んでしまいます。
気がつけば、そこは“あの世の関所”。裁判長は寿々男に言います。
「執行猶予1ヶ月。これまでの愚かな人生を挽回して下さい。ただし、猫の姿で」。
寿々男は猫になって、家族の前に戻されたのでした…。

2013年から集英社の月刊YOUに連載された、人気コミックの実写映画化。
この後、寿々男は自分の葬式で猫好きの娘に拾われ、
“トラさん”と名付けられて、また家族と暮らし始めます。
ところが、もちろん言葉は通じないし、
トラさんが寿々男であることに、誰も気づくはずもなく。
寿々男が自堕落な生活を反省するのかと思いきや、いやいややんちゃなままで(笑)。
たぶん、北山宏光の魅力を最大限に描いたんだろうなと。
個人的には、もうちょっとぐっと来るものがあるかなと期待していたものですから…(笑)。
でも、ファンにとっては『Cats』みたいで、楽しい1本だと思いますョ。☆3つ。
「トラさん 僕が猫になったワケ」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.2.8

『アクアマン』☆☆☆
『コードギアス 復活のルルーシュ』☆☆☆
『洗骨』☆☆☆
『小さな独裁者』☆☆☆
『山(モンテ)』☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


2月になりました。
1月の試写は13本。本数的には、まずまずのスタートを切ったかなと(^-^)
2月も時間が許す限り、試写会に足を運ぼうと思います。
さ、今週は5本です!



『アクアマン』は、『ワイルド・スピード SKY MISSION』の
ジェームズ・ワン監督が、舞台を海中に移したバトル・エンターテイメント。

灯台守のトムは、嵐の夜、入り江に打ち上げられたひとりの女性を発見し、救護します。
実は彼女、海底にあるアトランティス帝国の女王・アトランナ。
政略結婚を拒み、逃げ出して遭難したのです。
ふたりは愛を育み、男の子をもうけます。彼の名はアーサー。
しかし、幸せな日々は長くは続きませんでした。海の底から追っ手がやってきたのです。
このままでは家族が危険に晒される。
いつか必ず帰ると誓い、幼いアーサーを残し、海中へと戻るアトランナ。
月日は流れ、大人になったアーサーの元に、メラという海底国ゼベルの王女がやってきます。
メラが言うには、アーサーの異父弟のオームがアトランティス帝国の王位に就いたと。
そのオームが、海を汚す人間を憎み、地上をも統治しようと企んでいると言うのです。
人間と海底人の両方の血を持つ“アクアマン”であるアーサーは、
オームの野望を打ち砕き、地上と海底の平和を保ち、
さらに母との再会を果たすことが出来るのでしょうか…。

いわゆる“ジェットコースター・ムービー”。
スピード感たっぷりに、海の中で、激しいバトルが繰り広げられます。
海底にはいくつもの国があり、考え方も多種多様。
ところが、オームはそれを力で屈服させていくんですね。
アーサー自身が“混血”で、舞台設定しかり、こういうヒーローの活躍に、
現代アメリカが自国の在りようを求めている気がします。
なんて、ややこしいことは抜きにしても、エンターテイメント作品として十分楽しめる1本です。
宇宙に目を向けるのと同様、いや、もっと深い神秘が、
身近な海の奥深くには眠ってるといいます。ある意味、逆転の発想も面白い映画です。☆3つ。
「アクアマン」公式サイト



『コードギアス 復活のルルーシュ』は、大人気アニメシリーズの完全新作映画。

光和2年。世界は再編成された超合衆国を中心にまとまり、平和な日々を謳歌していた。
しかし、平和は突如として終わりを告げる。仮面の男・ゼロとして、
ナナリーの難民キャンプ慰問に同行したスザクが謎のナイトメアフレームに敗れ、
2人は連れ去られてしまった。
シュナイゼルの密命を受け、戦士の国・ジルクスタン王国に潜入したカレン、ロイド、
咲世子はそこで、謎のギアスユーザーに襲われる。
そして、その場には襲撃者にC.C.が居た。
かつて神聖ブリタニア帝国の大軍すらも打ち破った無敵の王国を舞台に、
人々が描く願いは、希望か絶望か。
果たして、ギアスのことを知るジルクスタン王宮の面々と、C.C.の思惑とは…。

2006年から放送が始まったTVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』。
08年に続編が出来、その後も様々な作品が作られていったコードギアス・シリーズですが、
この完全新作劇場版映画は、その08年の続編を受けての物語だそう。
ボクはまったく見たことがないのですが(失礼!)、
友人が「このシリーズは素晴らしい!」と絶賛していたのを聞き、試写に行ってきました。
シリーズの“これまで”を知らない人間がとやかく言うと、ファンに怒られそうなのと(笑)、
ネタバレ禁止の注意書きがたくさんあったので、
上記のあらすじは、資料にあったものをそのまま書き記しました。
あ、C.C.の肩書きが読めず、漢字も探せずで省いたのはご容赦下さい。
ボクのようなシリーズ初心者でも楽しめたので、ファンにはたまらないと思いますョ。
期待して劇場へどうぞ!☆3つ。
「コードギアス 復活のルルーシュ」公式サイト



『洗骨』は、ガレッジセール・ゴリこと、照屋年之監督作品。

沖縄の離島、粟国島。
新城家の母・恵美子が亡くなって4年。
父・信綱の元に、長男・剛と長女の優子が帰ってきます。
粟国島には、一度土葬(風葬)した遺体が骨になった後、その亡骸を一旦掘り起こし、
海水や酒で洗い、再度埋葬する“洗骨”という独特の葬制がありました。
断酒を誓いながら、妻を亡くした悲しみから抜け出せず、酒に溺れる信綱。
既に離婚しているのに、それを言い出せない剛。
勤務先の美容室の店長の子を宿し、シングルマザーとして生きることを決めた優子。
いつしかバラバラになってしまった家族が、ギクシャクしながら、
大好きだった母の洗骨に臨むのですが…。

ミイラ化した肉親の遺体を洗う。怖いくらいの風習ですが、
二度の別れを経験することで、命の継承に感謝し、弔うことの本来の意味を知ると言います。
衛生的観点からも、洗骨が残っているのは、離島でもわずかな地域だけだそうですが、
ガレッジセールのゴリが、本名で、真面目に、時にユーモラスに、家族の再生を描いています。
彼にこんな才能があったのかと、新たな魅力も感じてみて下さい。☆3つ。
「洗骨」公式サイト



『小さな独裁者』は、実話に基づくストーリー。

1945年、敗戦濃厚のドイツ。
脱走兵のヴィリーは、乗り捨てられた軍用車両を発見。
スーツケースの中からナチスの将校の軍服を見つけます。
ヴィリーが軍服に袖を通すと、そこに部隊とはぐれたと言う上等兵が近づき、
「お供させて下さい」と申し出るんですね。
すっかり大尉になりすましたヴィリーは、次々と部下を増やし、
自らの名前を冠した“ヘロルト親衛隊”を結成。
架空の任務を作り、堂々と進軍を始めます。
荒野に建てられた粗末な戦犯収容所に着いた時、ヴィリーの行動はいよいよエスカレート。
独断で、残忍な処刑を推し進めたのでした…。

ヴィリー・ヘロルトは実在の人物。
実際に80人もの兵士を従えていたというヴィリーは、
巧みな嘘と、堂々たる態度で大尉になりすましていたと言います。
ロベルト・シュヴェンケ監督は、「彼らは私たちだ。私たちは彼らだ。過去は現在なのだ。」と。
権力とは何か、人間の残虐性、嘘と真実など、様々な要素が入り組んでいて、
形こそ違えど、現代社会でも起こり得ることだと警鐘を鳴らします。
ドイツの“ネオナチ”然り、日本の“なりすまし詐欺”なども、視点を変えればそうかもしれません。
エンドロールまで、席が立てない1本です。☆3つ。
「小さな独裁者」公式サイト



『山(モンテ)』は、イランの巨匠、アミール・ナデリ監督作品。

南アルプスの麓にある小さな村に、アゴスティーノは、妻と息子と3人で暮らしていました。
ところが、この村では、太陽を大きな山が遮り、農作物が育ちづらかったのです。
人々は次々と土地を捨てて、村を出て行きます。
それでもアゴスティーノは、この村から離れようとしませんでした。
なぜなら、先祖はもちろん、亡くなった娘の墓があるから。
周囲の村に住む人からも異端児扱いされるアゴスティーノ。
遂には、家族まで離れ離れに引き離されてしまいます。
アゴスティーノは決意します。山に戦いを挑むことを…。

「肉体を過剰に酷使しながら、孤立無援の人間の限界突破を描く」
のがアミール・ナデリ監督のスタイルだそう。
そう聞くと、なるほどそのスタイルを貫いた作品だなと。
山はこの世で最も力強いもののシンボル。
そこに、神にも自然にも、人からも見放されたひとりの男が挑むという、哲学的な作品です。
イラン映画はあまり見ませんが、特にこの作品は、商業的目線で評価するものではないのかもしれません。
ただ、巨匠の作品と言えども、感想は自分の心に忠実に。☆2つ。
「フロントランナー」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.2.1

『七つの会議』☆☆☆☆
『バーニング 劇場版』☆☆☆☆
『フロントランナー』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


今、試写の会場での咳がすごく…。
風邪やインフルエンザをもらわないためには、自己防衛しかないですよね。
普段マスクはしないのですが、さすがに無防備ではダメだなと。
まだまだ寒さと乾燥は続きます。お互い、気をつけましょう。
さ、今週は3本です!


『七つの会議』は、池井戸潤原作の企業サスペンス。

巨大企業ゼノックスの子会社である東京建電。
営業部長の北川は、社内の絶対権力者。
課長の坂戸率いる営業一課がノルマを達成し続けているのに対し、
原島課長の営業二課は一向に成績が上がらず。
今日も北川から厳しい叱責を受けていました。
そんな中、一課の万年ぐうたら社員の八角は、あくまでマイペース。
昔は敏腕営業マンだったのが、今では課のお荷物社員となっていました。
坂戸からキツい言葉をぶつけられる八角。
「いくらなんでも、それはパワハラだろう」と、八角は坂戸のハラスメントを訴えます。
デキる課長とぐうたら社員のどちらの主張を取るかは、火を見るより明らか。
なのに会社は、坂戸を左遷したのです。
騒然となる社内。
坂戸の後任として一課の課長に就いたのは、なんとダメ課長だった原島でした。
「八角さんは一体何者なんだ。この会社は何かを隠している」。
原島は、寿退社を控えた一課のOLの浜本と共に、東京建電の謎を探り始めるのですが…。

ボクが中山競馬場のイベントで、この映画の出演者のひとり、
木下ほうかさんとトークショーを行った作品です。主演は野村萬斎。
『半沢直樹』、『陸王』、『下町ロケット』などに出演した
“池井戸潤ファミリー”が総出で脇を固めます。
つまり、紹介したあらすじは、ほんの触りの部分だということ。
その豪華出演陣が小出しで出てくる豪華さ。TBS制作ですからね。
『オールスター感謝祭』的なイメージで見るといいかもしれません(笑)。
エンドロールで、最後に八角が語ること。ここに作者の言いたかったすべてがある。
ボクは「なるほど…」と、ストンと腑に落ちました。
池井戸作品、お得意のパターンではありますが、そこにはTBSの『水戸黄門』にも似た、
安定の面白さがあるのです。☆4つ。
「七つの会議」公式サイト



『バーニング 劇場版』は、
村上春樹の1983年の短編小説「納屋を焼く」を現代韓国風にアレンジした映画。

運送会社のアルバイトをしているジョンス。
ある日のこと、デパートの店頭で売り子をしている女性に声を掛けられます。
彼女はヘミ。実はジョンスの幼なじみでした。
昔話に花が咲き、仲良くなるふたり。
ヘミは夢だったアフリカ旅行に行く間、飼い猫の世話をジョンスに依頼します。
快く引き受けたジョンスは、餌やりのため、毎日ヘミの部屋を訪れるのですが、
一度もその猫を見たことがありません。
見知らぬ男性と一緒に帰国したヘミ。彼の名はベン。
ケニアのナイロビ空港で知り合ったというふたりの親密さに、心がざわつくジョンス。
ベンは高級車に乗り、オシャレな部屋に住むセレブな男性。
両親が不在となり、牛舎で牛の世話をしながら小説家を目指すジョンスとは、
生きる世界が違う気がしていましたが、ヘミを介し、よく3人で会うことに。
ところが、ある日を境に、ヘミが忽然と姿を消してしまったのです…。

見ている間、ずーっとモヤモヤしたものが覆っているような空気感。
ミステリー映画のような、青春映画のような。
いい意味でわかりづらいんです。
例えば、猫。本当にいるのか、本当はいないのか。
ヘミに起こっているはずの出来事も然り。
何が起きているのかを、ジョンスと同じぐらい知りたくなります。
その真相を探し、暴こうとするジョンス。
この映画には、韓国の今の若者の経済格差もひとつの要素として描かれているそう。
日本も同様と言えば同様なんですけどね。
2時間23分の作品。モヤモヤした霧のようなものが晴れるか、否かは、
散りばめられたヒントをもとに、時間内にパズルを組み立てられるかどうかでしょう。☆4つ。
「バーニング 劇場版」公式サイト



『フロントランナー』は、実在の元政治家を描いたストーリー。

コロラド州選出の上院議員、ゲイリー・ハート。
彼は若き天才政治家として、“ジョン・F・ケネディ”の再来とまで言われ、
1988年、史上最年少の46歳で、民主党の大統領候補となります。
大統領予備選の最有力候補に躍り出たハート議員でしたが、
マイアミ・ヘラルド紙のスクープで、情勢は一変してしまうんですね。
それは政治部記者への1本の電話からでした。
「ハート議員が私の友達と浮気をしていて、週末にはワシントンで密会する」と言うのです。
記者が把握していたハート議員の週末のスケジュールは、ケンタッキーでのダービー観戦。
ところが、直前で予定を変更し、ワシントンへと向かうことを知ります。
ハート議員を追って撮ったスキャンダル写真。
これがアメリカの歴史をも変えてしまうことになるのでした…。

タイトルの『フロントランナー』というのは、“最有力候補”という意味なんですね。
実在の、それも存命の人物のスキャンダルを映画化するとは、アメリカって凄いなと。
大統領選挙から撤退し、議員を辞めて以降も、
ゲイリー・ハート氏はアメリカの国防や国際関係における最重要人物として、
様々な要職に就いているんですね。
この天才政治家が大統領になっていたら、アメリカは変わっていた。
そう言われるほどの人物だそう。
政治家に求められるのは、政治の能力なのか、パーソナルな人格なのか。
もちろん両方備わっていればいいのでしょうが、マスコミのあら探しが、
真の政治家を潰してしまっているという声もあるようで。
ジャーナリストの在り方や、政治家評にも一石を投じた作品。
ヒュー・ジャックマン主演作ですが、商業的な映画ではないというか
、正直、ドメスティックなアメリカ国内向けの1本だと感じました。
ただ、アメリカは、日本の最も大事な友好国ですから、
知っておいて損はないと思いますけど。☆3つ。
「フロントランナー」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.1.24

『あした世界が終わるとしても』☆☆☆
『がっこうぐらし!』☆☆☆
『二階堂家物語』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


遅ればせながら、映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見てきました。
ボクはラジオ・パーソナリティですから、
「RADIO GA GA」が流れて来た時には、ぐっと来ちゃいました。
大ヒットするのも納得です。素晴らしい作品でした。
でも、同じぐらい感動を与えてくれる映画は、世の中にたくさんあります。
ただ話題にならず、あまり人目につかないまま、ひっそりと上映が終わってしまうだけ。
そんな作品に、このコラムで光を当てられたらいいなと、改めて感じました。
微力ながら、頑張ります。
さ、今週は3本です!



『あした世界が終わるとしても』は、オリジナルストーリーのアニメ映画。

狭間 真は高校生。幼い頃に母を突然死で亡くし、父は研究所勤めでほとんど家に帰らず。
そんな孤独な真を、幼なじみの琴莉はずっと気にかけ、見守ってきたのです。
高校三年生の秋、初めて琴莉をデートに誘った真。「好きだ」と告げようとしたその瞬間、
琴莉の携帯が鳴ります。真の父が亡くなったという知らせでした。
死因は母と同じ突然死。社会問題化するほど、突然死は増えていたのです。
すると、そこに真にそっくりなジンという男子が突然現れて、こう言ったのです。
「俺はお前だ。お前は俺が守る」。
実は、この世界と相対するもうひとつの世界があって、そこに相対する人物がいると。
どちらかが死ぬと、もう一方の世界の自分も命を落とすと言うのです。
ジンが生きるのは日本公民共和国。コトコという絶対的独裁者が君臨し、真の母も父も、
相対する人物がコトコによって処刑されたから死んだと話すジン。
逆にジンはこちらの世界に来て、コトコと相対する人物を抹殺することによって、
絶対君主のコトコを消すことができると考えたのです。
そのコトコと相対する人物こそ、琴莉だったのです…。

監督、脚本は櫻木優平。
発想が面白いですよね。相対する自分から琴莉を守ろうとする真。
つまり、ある種の矛盾を抱えているわけです。
ちょっと変わったSF恋愛映画かと思って見ていたら、戦闘アニメの要素も出てきて。
資料に“アクション・ラブストーリー”とあった意味がわかったけど、
戦闘シーンが出てきた途端に「んっ?」と。
どっちがメインなんだかわからなくなっちゃったというのが正直な感想です。
アニメファンにはWで楽しめるという感覚なのでしょうか?
感想を聞きたいところです。☆3つ。
「あした世界が終わるとしても」公式サイト



『がっこうぐらし!』は、人気コミックの実写映画化。

私立巡ヶ丘学院高等学校には、学園生活部というクラブがありました。
屋上菜園で自給自足しながら、学校で24時間共同生活を送るという、
女子ばかりのクラブで、部長はりーさん。
他にくるみとゆきがいて、この3人は3年生。さらに2年生のみーくんがいます。
顧問は保健のめぐねえ先生。
一見、普通の高校生活を満喫している女子高生たちですが、この学校、何かが違います。
割れたガラスの破片、血塗られた黒板、そして中庭には“やつら”がいたのです…。

原作は単行本が10巻まで出ていて、250万部を超える人気作だそう。
TVアニメ化もされ、今回、実写映画化と相成りました。
女子高生たちを演じるのは、秋元康プロデュースの“ラストアイドル”たち。
メンバー内オーディションで、4名が選ばれました。
アニメ+アイドルの学園サバイバル映画。こちらもターゲットは絞られている気がします。
原作があるので、言ってもネタバレにはならないでしょう(笑)。
いわゆる“ゾンビもの”です。お好きな人は是非どうぞ!☆3つ。
「がっこうぐらし!」公式サイト



『二階堂家物語』は、イラン人の女性監督作品。

奈良県天理市にある父の種苗会社を継いだ、二階堂辰也。大きな旧家に暮らす、町の名士です。
病気の母ハルと、年頃の娘由子との3人暮らしですが、実は幼い息子を亡くしていました。
それが原因で妻とは離婚。二階堂家には跡取りがいません。
ハルはそれを憂慮し、自分の推す女性と辰也を再婚させようと画策するのですが、
辰也には別に気になる女性がいました。秘書の沙羅です。
沙羅はシングルマザー。
社長の辰也に好意を寄せてはいましたが、もう子供が産めない体であることを告げると、
会社を辞めてしまいます。
由子に婿を取るしかないと考えたハルでしたが、由子には既に意中の恋人が。
その男性が婿養子として二階堂家に入ってくれるかと期待したのですが、
由子が連れてきたのは意外な人物だったのです…。

監督はアイダ・パナハンデ。イラン人女性です。
また、エグゼクティブ・プロデューサーとして河瀬直美の名前があります。
代々続く、名家の家系が途切れそうになる。さぁ、どうする?という話なんですが、
パナハンデ監督が日本の“婿養子”という言葉に着想を得たと言います。
辰也と由子、そしてハル。恋愛も思惑も、みんなバラバラな訳で。
本当なら自分の好きなように生きたいけれど、“二階堂の家”があるから、そうはいかない葛藤がある。
ご近所さんをも巻き込んだ、日本の家の問題を、
イラン人女性監督が描いているというのが興味深いところ。
“選択”はあっても、“正解”はないのかも。
もし自分ならどうする?という目線で見ると面白いかもしれませんね。☆3つ。
「二階堂家物語」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.1.18

『映画めんたいぴりり』☆☆☆☆☆
『バハールの涙』☆☆☆☆☆
『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


先日試写会で、映画が始まるや、隣りの人が睡眠開始。
終わる少し前に起きたようでしたが、上映後に宣伝マンに感想を聞かれて、
「いやぁ、ラストがホント」って、そこしか見てなかったじゃん!
と思ったらおかしくておかしくて(笑)。
ま、たま〜にボクもありますからね。ミントを口に入れても、
太ももをツネっても、どうにも睡魔から逃れられないこと。
著名な評論家さんは、必ず感想を聞かれるから大変です。
さ、今週は3本です!


『映画めんたいぴりり』は、日本で初めて明太子を製造、販売した
「ふくや」の創業者をモデルにした感動物語。

博多の中洲で小さな食料品店「ふくのや」を経営する海野俊之。
妻と2人の子どもを持つ俊之でしたが、バカが付くほどのお人好しで、お節介焼き。
そんな俊之は、戦前日本の統治下にあった、韓国・釜山の生まれ。
“明卵漬”という思い出の味にヒントを得て、
自ら考案した明太子作りに精を出していたのですが、
なかなか満足のいく味が出せません。
まだ貧しかった町には、いろんな境遇の人が暮らしていました。
両親を亡くし、親戚と暮らす、息子の小学校の同級生の英子。
無断で「ふくのや」の真似をして、明太子を作って売っていた石毛。
遠足のリュックと靴が買えずにいた英子には、
名乗ることなく“あしながおじさん”としてそれらを買い与え、
石毛には「明太子はただの惣菜。一緒に明太子を広めていこう」とレシピを教え。
「うちの明太子を食べる人は、みんな幸せになる」と、胸を張っていた俊之でしたが、
あまりに厳しい現実の連続に、心が折れそうになるのでした…。

「ふくや」の創業者、川原俊夫をモデルにした作品で、
テレビ西日本制作の連続ドラマとしてスタート。
好評につき、続編なども作られ、遂に待望の映画化となりました。
俊之には博多華丸、妻の千代子には富田靖子。
どちらも福岡出身で、監督も福岡を拠点とする江口カン。
俊之は本当にお人好しで、困ってる人を見ると放っておけないタチ。
家に上げて食事をふるまうなんて序の口で、“博多祇園山笠”の運営がピンチと知るや、
店の儲けのすべてを寄付しちゃうほど。でも言うんですよ。
「引き揚げ者だった自分たちを優しく受け入れてくれた福岡の人たちへの恩返したい」と。
もちろん、フィクションの部分も多々あります。
でも、ボロボロの服を着て、ボロボロの靴を履く英子への接し方とか、
もうちょっとした場面で泣けてきちゃいます。昭和って、そんな時代だったんだよなぁ。
ボクはお付き合いもあって、正直明太子は『やまや』さんなんですが(笑)、
俊夫さん(劇中は俊之)の考え方で言えば、明太子が食卓を賑わすなら、
メーカーはどこでもOKですよね(笑)。
その代わりと言っちゃなんですが、☆は満点で!☆5つ。
「映画めんたいぴりり」公式サイト



『バハールの涙』は、事実に基づくストーリー。

夫と息子と幸せに暮らしていた、女性弁護士のバハールでしたが、
クルド人自治区に住む家族のもとに帰省した時に、
IS(イスラミックステート)の襲撃を受けます。
男性は殺され、女性と少女は“性奴隷”に。
少年は戦闘員養成の施設に入れられてしまいます。
バハールも夫を殺害され、息子と引き離されましたが、
再会を誓うことで、屈辱の日々を生き抜きます。
ある日のこと、TVでクルド人自治区の女性代議士、
ダリア・サイードのインタビューを目にしたバハール。
「必ず助け出すから、なんとか私に電話して」と、ダリアは強く訴えていました。
バハールは命がけでダリアに電話をかけ、ISの施設からの脱走に成功します。
バハールは、息子を救い出したい一心で、戦うことを決意。
女性戦闘員で構成された“太陽の女たち”に参加するのでした…。

2018年のノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドが、自らも性暴力の被害者として、
女性の救済を訴え続けていたのも、記憶に新しいと思います。
この映画も実際に起きたISによる大量虐殺に着想を得た作品。
実はこの映画にはもうひとりの主役が。片眼の女性ジャーナリスト、マチルドです。
彼女もまたジャーナリストの夫を紛争地で亡くし、自身も片眼を失ない、
愛する娘を国に残しての戦争取材。
強い信念と使命感が、マチルドを戦地へと赴かせていたのです。
そんなマチルドがバハールと出会う。立場は違えど、似た境遇に心を通わせるふたり。
バハールは部隊の隊長になり、女性戦士を率います。
実際にたくさん組織されている女性戦闘員部隊。
イスラムの教えには「女性に殺されたら天国には行けない」
という定義があるようで、これが強い武器にもなっているそう。
バハールの人物像は、エヴァ・ウッソン監督が自ら取材した
クルド人自治区の女性戦闘員たちの実体験から出来上がったそう。
マチルドのモデルは、実在の片眼の女性ジャーナリスト、メリー・コルヴィンと、
ヘミングウェイの3番目の妻で従軍記者だったマーサ・ゲルホーン。
平和な日本にいると、まったくわからない過酷な現実が、
世界にはあるんだというのを知る1本です。☆5つ。
「バハールの涙」公式サイト



『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』は、
ラブホテルを舞台にした密室群像劇。

歌舞伎町のラブホテル。
刑事の間宮は、勤務中にもかかわらず、デリヘル嬢の麗華を指名。
その行為を録画しようと、こっそりビデオカメラをセットします。
間宮は麗華に弱みを握られていて、横領した金を貢いでいました。
そこに、間宮の妻で、婦人警官の詩織が突然の乱入。
デリヘル嬢そっちのけで始まる夫婦喧嘩。
すると、ヤケになった間宮が麗華を銃で射殺してしまいます。
死体の処理に呼ばれたのは、間宮が弱みを握っているヤクの売人ウォン。
遂には、麗華が時間になっても戻らないのを不審に思った
デリヘルのマネージャー小宮がやってきたのです…。

監督、脚本は自らも俳優の宅間孝行。まるで舞台を見ているような映画で、
設定が設定だけによく考えたなぁと思うストーリーです。
次から次へと、関係性と優位性が変わるので、着いていくのが少々大変(笑)。
前に戻って整理しようとすると、逆に置いていかれちゃうからご注意を。
騙し、騙され。それは見ている観客も然り。
映画館の灯りがつくまで、席を立たずにスクリーンに注目していて下さい。
絶対ですョ!☆3つ。
「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.1.11

『君から目が離せない〜Eyes on you〜』☆☆☆☆
『緊急検証!THE MOVIE ネッシーvsノストラダムスvsユリ・ゲラー』☆☆
『蜘蛛の巣を払う女』☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


年が明けてすぐに来る3連休。休みボケが抜けたと思ったら、またですもんね(笑)。
感性が鈍らないよう、映画で刺激をいっぱいもらってはいかがですか?
さ、今週は3本です!



『君から目が離せない〜Eyes on you〜』は、
山崎まさよし初主演作『月とキャベツ』の続編的映画。

売れない劇団員の健太。
ヨガ教室のティッシュ配りのアルバイトをしていたのですが、その教室の、年上の女性講師に一目惚れ。
健太はヨガ教室に入会します。
彼女の名前は麻耶。思い切ってデートに誘うと、一緒に食事には来てくれるものの、そこから先には進めず。
実は、麻耶にはある事情があったのです。
劇団から人気俳優になった廣畑が、麻耶が女優だったことを知っていて、
健太に彼女の出演作、『惑星とレタス』を見せるんですね。
麻耶を劇団の次回作に出演するように誘う健太。
了承し、舞台に上がった麻耶でしたが、突然「ふたりで会うのはもう辞めよう」と健太に告げます。
千秋楽の舞台で、よろけた麻耶を助けようと、自らが怪我を負ってしまう健太。
入院先の病院で、眠り続ける健太の脇にずっと付き添っていた麻耶でしたが、
健太が目覚めると麻耶の姿はありませんでした。
健太は麻耶を探しに、麻耶の故郷へと向かったのでした…。

篠原哲雄監督、山崎まさよし主演作の『月とキャベツ』。
1996年の公開ですから、もう22年も前の作品。
でも、今も群馬県の中之条町で行われている“伊参映画祭”では第1回から上映されていて、
昨年秋で18年連続上映という人気作なんです。
ちなみにボクも出てるんですョ。冒頭のカーステレオから流れてくるDJの声。
篠原哲雄監督がボクに出番を作ってくれました。
エンドロールに名前を見つけた時は、メチャメチャうれしかったです!
その『月とキャベツ』のスタッフが集結。
主演は当時のヒロイン役だった真田麻垂美と、新人の秋沢健太朗。監督はもちろん、篠原哲雄。
さらにすごいのが、何と、あの山崎まさよしがこの映画のために新曲を書き下ろしてくれたという!
きっと彼にとっても特別な映画だったということなのでしょう。
“続編的”とは言いましたが、ストーリーが完璧に繋がってる訳ではなく。
ただ、『月とキャベツ』を知っていると、「ん?もしかして…」と遊び心を感じることが出来るかも。
なんたって、『惑星とレタス』ですから(笑)。
1月12日からシネマート新宿にて、2週間限定のロードショーです。お見逃しなく!☆4つ。
「君から目が離せない〜Eyes on you〜」公式サイト



『緊急検証!THE MOVIE ネッシーvsノストラダムスvsユリ・ゲラー』は、
CS放送で人気のオカルト番組の映画版。

昭和から平成にかけて、様々なオカルトが世間を駆け巡りました。
中でも、代表的な3つのテーマについて、それぞれを得意分野とするオカルト研究家が、
これまで以上の情報を収集して、披露。
ネッシーはいるのか?ノストラダムスの大予言とは一体?
スプーン曲げにトリックはなかったのか?ユリ・ゲラーを超える超能力者は存在するのか?
あまり語っちゃうと、ネタバレになっちゃうから、こんなところで止めておきますが、
ごめんなさい、あまり真新しい感じはしなかったかなぁ…。
ただ、試写会場の映写機が壊れて、開始時刻が大幅に遅れたのですが、
別の試写会でもトラブル続発だったとか。
宣伝の担当氏は「きっと何かの陰謀だと…」。うまいっ。
ボクの☆の数が少ないのも、もしかすると何かの陰謀かも(笑)。☆2つ。
「緊急検証!THE MOVIE ネッシーvsノストラダムスvsユリ・ゲラー」公式サイト



『蜘蛛の巣を払う女』は、『ドラゴン・タトゥーの女』シリーズ最新作。

背中にドラゴンのタトゥーを入れた天才ハッカー、リスベット・サランデル。
新たな仕事は、世界的権威である科学者からの依頼。
彼が開発した、世界中の防衛システムにアクセスし、
核攻撃プログラムを操れるソフトウェア“ファイヤーフォール”を自ら破壊するため、
アメリカの国家安全保障局(NSA)から取り戻したいというものでした。
リスベットはNSAのシステムに侵入し、暗号を盗み出すことに成功するのですが、
一連の行動を事前に察知していた闇の組織“スパイダーズ”に襲われ、
リスベットは暗号データを盗まれてしまうんですね。
そして彼女は衝撃の事実を知ることになります。
“スパイダーズ”の首領は、なんとリスベットの双子の妹、カミラだったのです…。

デヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』から3年後のストーリー。
それが『蜘蛛の巣を払う女』。
今回、デヴィッド・フィンチャーは製作総指揮に回り、フェデ・アルバレス監督がメガホンを取りました。
主演女優もクレア・フォイに代わり、物語はリスベットの少女時代から始まります。
忌まわしい過去。父親の裏の顔。双子の妹は死んだと話すリスベット。
今作では、なぜこんなクールなキャラクターが出来上がったのかという背景を知ることが出来ます。
残忍なのにスタイリッシュ。
現代社会に実在したら、間違いなく女性の心強い味方になっていることでしょうね。
リスベットの黒に対し、妹カミラの鮮烈な赤が脳裏に突き刺さります。
楽しめると思います!☆4つ。
「蜘蛛の巣を払う女」公式サイト

 
 



 
 
週末公開の映画……2019.1.4

『迫り来る嵐』☆☆☆☆
『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜』☆☆☆☆☆
(満点は☆☆☆☆☆)


新年あけましておめでとうございます。
年始にあたり、昨年2018年の、個人的なベスト3作品を発表したいと思います。

『さよならの朝に約束の花を飾ろう』
『ゆずりは』
『あいあい傘』

順不同です。アニメもありますが、どれも家族の物語。すっごく泣ける映画たちです。
たぶん、父の入院、高齢の母の姿など、自分の日常に重なる部分が大きいのかなとも思います。
でも、映画の見方って、ボクはそれでいいと思ってるんですね。
かけられたお金や、人の評価に惑わされることなく、自分がいいと思ったら、
胸を張って「いい映画だったなぁ」と。
このコラムも、そんな映画との出逢いのきっかけになればと思ってます。
今年もご愛読よろしくお願いします!
さ、今週は2本です!



『迫り来る嵐』は、中国映画。

とある地方の町に立ち並ぶ、古い国営製鋼所。
ユィはこの製鋼所の保安部の警備員として働いていました。
実は最近、このあたりで若い女性の連続殺人事件が起きていて、
ユィは自分が犯人を捕まえてやろうと、刑事でもないのに捜査に首を突っ込むんですね。
土砂降りの雨の日のこと。張り込み中のユィは、犯人と思しき不審な男を発見し、
追いかけるのですが、あと一歩のところで男を取り逃がしてしまいます。
その際、ユィを師匠と慕っていた部下を亡くしてしまいます。自責の念にかられるユィ。
しかし、その後も続く殺人事件。
ユィは自分の恋人をも巻き込み、取り憑かれたように捜査を続けるのでした…。

独特の、暗く、じめっとしたトーンに覆われた作品です。
舞台は1997年。香港の返還も近づき、国全体が経済発展に舵を切り始めた中国。
ここでは、置いていかれそうな地方都市の閉塞感が全体を覆っていて、
それがずーっと降り続く雨にも表れていると。
そんな中、ひとりの警備員が刑事気取りで連続猟奇殺人の犯人探しに躍起になる。
その行動はエスカレートしていき、様々な悲劇を巻き起こしてしまいます。
ユィが追いかけていたのは何だったのか。
最後まで気持ちの晴れない映画ですが、それこそがこの映画の“答え”なのかもしれません。
監督は、これが長編デビューとなるドン・ユエ。
ま、見てみて下さい。言葉ではその良さを言い表しづらいのですが、
あちこちに散りばめられた伏線や仕掛けに気付くと面白さが増す、
社会派のサスペンス映画と言ってもいいでしょう。☆4つ。
「迫り来る嵐」公式サイト



『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜』は、
一時代を築いた歌姫の生涯を追った、ドキュメンタリー映画。

1963年、ニュージャージー州ニューアークに生まれたホイットニー・ヒューストン。
母はソウル・シンガーのシシー・ヒューストン、
叔母も人気歌手だったディオンヌ・ワーウィック、ディー・ディー・ワーウィック。
そんな環境に生まれ育ったホイットニーが歌に親しんでいくのは当然のことで、
11歳の時に聖歌隊に入隊。
神に与えられたその声は、1985年のデビュー・アルバム『そよ風の贈りもの』で
世界中から絶賛を浴び、シングルは7曲連続で全米チャートの1位に。
一躍トップスターの座に登り詰めたホイットニーは、その後もヒット曲を連発。
1992年には、当時人気歌手だったボビー・ブラウンと結婚。
愛娘も誕生し、幸せの絶頂にいたのですが…。
夫婦の間にできた深い溝、そして離婚。実父との訴訟問題。
深刻な薬物依存。娘の死。
そしてホイットニー自身も、2012年2月11日にホテルの浴槽で、遺体となって発見されます。
48歳の若さでした。
大量の資料を集め、入念な取材を積み重ねたことがよくわかる内容で、
ファンにとってはショッキングな事実を知ることにもなります。
一方で、彼女の人柄や優しい素顔も垣間見え、
スキャンダラスな部分だけがクローズアップされた晩年を、きっと理解することができると思います。
“運命のいたずら”とでも言うのでしょうか。
良かれと思った行動が、裏目、裏目に出る。人生のプラスとマイナスの振れ幅が一緒だとしたら、
成功もほどほどでいいかなとも思ってしまうほど、
スーパースターならではの逃れられない苦しみが、
彼女を追い詰めていたのは間違いありません。
肉親や元夫など、身近な人々も登場し、よく出来たドキュメンタリー映画です。満点!☆5つ。
「ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」公式サイト