週末公開の映画(オンライン上映版)……2020.5.20
『ケヴィン・オークイン:美の哲学』★★★★★
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』★★★
『ホドロフスキーのサイコマジック』★★

(満点は★★★★★)


このコロナ禍で映画館が閉まり、非常事態宣言が解除になった地域では、一部劇場の営業が再開になったものの、新作がなかなか公開出来ないという状況に。
我々マスコミにもオンラインや、DVDの貸与という形での試写が行われています。
今回紹介する3本は、UPLINKの配給作品。皆さんは、オンライン上映で見ることが出来ます。
それとは別に、今、UPLINKでは2980円から、過去の配給作品を3ヶ月間見放題というのをやっています。
中には、★5つを付けた、『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』。
『ガザの美容室』、『ラジオ・コバニ』、『ラッカは静かに虐殺されている』など、中東の迫真のドキュメンタリー。
『モンサントの不自然な食べもの』、『ブルー・ゴールド』などの、遺伝子組み換えや水の話、などなど、興味深い作品がたくさん見られます。
東京都を含め、まだまだ“ステイ・ホーム”です。この機会にお家で映画をご覧になる、選択肢のひとつにしてみてはいかがですか?
詳しくはUPLINKのホームページで。

さ、今回は3本です!
『ケヴィン・オークイン:美の哲学』は、アメリカを代表するメイクアップ・アーティストのドキュメンタリー。

1962年、ルイジアナ州生まれのケヴィン・オークイン。
誕生後に、同州ラファイエットの夫婦に養子として育てられたケヴィン。
幼い頃から絵を描くことが大好きで、美のキャンパスを女性の顔に求めた彼は、メイクの世界へと進んでいきます。
革新的で、探求心の強い彼のメイクは、80〜90年代多くのモデル、女優、アーティスト、セレブリティたちの信頼を獲得。それを一般女性も、自分で出来るというメイク本を発売。広く人気を博し、それまでになかったメイクアップ・アーティストという地位を確立します。
メイク界の頂点に立ったケヴィンでしたが、流行というものは、必ず揺り返しが来る。主流とは逆のものを求めるうねりが、ケヴィンをも飲み込んでいくんですね。
精神的な辛さに加え、身体の痛みにも悩まされるようになったケヴィンは、鎮痛剤を多用するようになります。
薬への依存が、彼の心身を壊していき、周りから人が離れていきました。
そして、2020年、早過ぎる死を迎えます。

あのナオミ・キャンベルは、ケヴィンの前の椅子にしか座らなかったと。他にもボクらがよく知る著名人が、彼に“美しさ”を委ねていました。
こういう映画を見ていて、いつも思うのですが、やはり人生には基準の0地点があって、ボクらがうらやむような成功を収める人は、プラスも大きい分、マイナスも大きいんだなと。相応の大きな苦悩があるということなんですよね。
みんな成長と共に、自分の器を徐々に大きくはしていくんだけれど、時に諫めてくれる仲間がいるとか、その声を聞く謙虚さが、人生を誤って“溢れさせない”ポイントなんじゃないかなと思うんですョ。
そんなこと言ってるから、自分がちっちゃく収まってるのもよーくわかってるんですけどね(笑)。
伝説になる人生を選ぶか、それとも…。
「幸せってなんだろう」。
夜長に考えるには、いい映画だと思います。満点★5つ。
「ケヴィン・オークイン:美の哲学」公式サイト


『ハウス・イン・ザ・フィールズ』は、モロッコの山奥に住む、ふたりの姉妹のドキュメンタリー。

モロッコのアトラス山脈に暮らすアマジグ族の姉妹、ファティマとカディジャ。
仲良しのふたりでしたが、姉のファティマは、学校を辞め、顔も知らない男性の元に嫁ぐことになります。
大好きなお姉ちゃんと離れ離れになるのが寂しくて仕方ないカディジャには、もうひとつ心配なことがありました。
それは、自分も姉のように、学校を卒業出来ないんじゃないかということ。
勉強が大好きなカディジャの夢は、弁護士になること。そのためにはきちんと学校を卒業したかったのです。
秋、冬、春、夏と季節が巡り、ラマダンが明けたら、ファティマは遠くに行ってしまいます。

美しい四季の移ろいと共に、そんな姉妹の姿を追ったドキュメンタリー作品です。
これもまた、幸せってなんだろうと考えさせられる1本。
時間に追われるかのような社会に生きている我々にしてみれば、彼女たちの時間の流れは、悠久のように感じるかも。
それこそ、ドラマチックな出来事は少ないでしょう。でもそれを“つまらない”とは言えませんよね。
きっと振れ幅は、ある意味小さいのかもしれないけど、下に大きくは振れない分、ボクらより、よっぽど幸せなのかもしれません。★3つ。
「ハウス・イン・ザ・フィールズ」公式サイト


『ホドロフスキーのサイコマジック』は、“カルト界の巨匠”と呼ばれるアレハンドロ・ホドロフスキー監督の最新作。

1929年にチリで生まれたアレハンドロ・ホドロフスキー。90歳を過ぎた今も、精力的に活動を続けています。
彼の作品には熱烈なファンが多い一方で、なかなか理解するのが難しく、過去に紹介した『リアリティのダンス』や『エンドレス・ポエトリー』も、正直“?”が付いていました。
今回の“サイコマジック”というのが、ホドロフスキー監督の考案した心理療法で、アートを使ったセラピーだと。映画には、実際にこのセラピーを受ける人々が出てきます。
さらに、これまでの作品が、この技法によって表現されているというので、何かホドロフスキー作品の、謎を解く“カギ”が見つかるかもと見てみましたが、ボクの陳腐な頭脳と感性とでは、“?”が、さらに増えた感じでした(笑)。
でも、「待ってました!」というファンもいるのですから、あなたもご覧になって、自身で判断してみて下さい。ボクはごめんなさい。★2つ。
「ホドロフスキーのサイコマジック」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.4.9
『囚われた国家』★★★
(満点は★★★★★)


映画館の閉鎖、映画の公開延期、試写会の中止が相次いでいます。
実は今回紹介の映画は、先週末公開の作品が洩れてしまったものを(すみません!)、改めてご紹介するのですが、公開映画館を探してみたら、関東では、茨城県で1館だけでした…。
以前紹介した『ちむぐりさ』も、沖縄でしか公開しておらず。残念です。
一度封切った映画も、コロナが終息したら、改めての公開が出来るといいですね。

今週は先週末公開の1本です!
『囚われた国家』は、SF映画。

2027年、世界は地球外生命体の支配下に。アメリカ政府もエイリアンの傀儡となり、シカゴの中心部に閉鎖区域を作り、地下にエイリアンの居住区を構築したのです。
市民は首にチップを埋められ、行動が制限されています。違反者は地球外追放に。
そんな中、市民は圧政に従属する派と、反抗する派に分かれます。
警察官だった父を、母親と共にエイリアンに殺されたアフリカ系アメリカ人の兄弟、ラファエルとガブリエル。
兄のラファエルは、反政府テロ組織“フェニックス”のリーダーでしたが、テロに失敗し、それ以来、消息がわからなくなっていました。
弟のガブリエルは、父の同僚だったマリガンの世話になりながら、一般市民として生活。同時に兄を捜していて、その行動をマリガンが監視していたのです。
そんなある日の事、ガブリエルはラファエルと再会を果たします。今も身を潜めながら、反体制活動を続けている兄が狙っているのは、市内スタジアムで開催される政府主催の団結集会でのテロでした…。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の、ルパート・ワイアット監督最新作。
面白いのは、エイリアンの映画なのに、エイリアンの登場はさほど多くないところ。どちらかというと、重きを置いたのは人間ドラマのほうだと感じました。
その分、ちょっぴり中だるむというか、派手なSFアクションを期待すると、ハズレてしまうかもしれません。
あらすじはさわりの部分をざっくりと。団結集会のテロのあと、物語は急展開。ラストは「なるほど、そう来たか…」となるはずです。★3つ。
「囚われた国家」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.4.2
『悲しみより、もっと悲しい物語』★★★
『ようこそ、革命シネマへ』★★
(満点は★★★★★)


今週も満点の映画が1本!
「コロナどころじゃねーよ。若いのがいっぱい集まって、ギャーギャー騒いでやがる」。
渋谷で映画の試写を見た帰り、地元のお年寄りが怒ってました。近くのライブハウスのことみたいです。
映画館は静かです。若者よ、コロナ対策をしっかりとして、映画で感性を刺激してはいかがです?

さ、今週は2本です!
『悲しみより、もっと悲しい物語』は、台湾映画。

高校時代に出会ったKとクリーム。
大人になって、Kは音楽プロデューサーとして、クリームは作詞家として活躍しています。
Kは父親を白血病で亡くし、看病に疲れた母は家出。クリームも交通事故で家族を亡くしていて、共に孤独なふたりは、一緒に暮らし始めるんですね。
決して一線を越えないKに対し、クリームは「私が好きなら結婚して」と言いますが、「僕じゃダメだ」とKは拒みます。
実は、Kも父親と同じ白血病に侵されていて、余命宣告もされていたのです。そのことをクリームに悟られてはいけないと努めるK。
それならばと、クリームは歯科医の男性と付き合い始め、結婚を決めます。それを見たKは、安堵するのですが…。

2009年の韓国映画『悲しみよりもっと悲しい物語』の、台湾リメイク版。
オリジナルを見た人なら、裏で進む、もうひとつの物語をご存知でしょう。
でも正直、何が優しさで、思いやりで、真の愛情なのかがわからなくなります。
表現が悪いと批判されるかもしれませんが、Kとクリームに翻弄?された周りの人たちが、それでも幸せだったと思えるかどうかがポイントかなぁ。だって、Kとクリームの幕引きは、別の人の犠牲の上に成り立っているのですから。
作品の良し悪しではなく、ストーリーに、手放しで「感動しました」と言えない自分がいます(笑)。★3つ。
「悲しみより、もっと悲しい物語」公式サイト


『ようこそ、革命シネマへ』は、アフリカ・スーダンのドキュメンタリー。

イブラヒム・シャダッド、スレイマン・イブラヒム、マナル・アルヒロ、エルタイブ・マフディ。
4人は60、70年代に海外で映画を学び、母国に戻って映画制作に携わってきた友人たちです。
ところが、クーデターで誕生した独裁政権の弾圧により、表現の自由が奪われ、4人は思想犯にされたり、海外亡命を余儀なくされます。
それから時が流れ、久々に母国で再会を果たした4人ですが、スーダンに映画の文化は無くなっていたのです。
全国各地を回り、巡回上映をしながら、どんな映画を見たいのか、アンケートを集めるなど、4人はスーダンにもう一度映画をと奔走します。

と、書いていると、『ニュー・シネマ・パラダイス』的な作品を想像するかもしれませんが、さにあらず。
監督も認めているように、これは政治的な映画です。
ボクらはプレスの資料をもらうので、事前にスーダンという国のおおまかな情報を入手出来ますが、そうじゃないとちょっと難しいかな。
スーダン通の人は、楽しめるかも。そうじゃない人には、パンフレットの購入をお勧めします。
ただ、かつて映画に情熱を傾けた老監督たちが、映画を奪われ、それを再生しようとしている姿には、政治もなにもありませんから。
悪い映画ではないんですョ。ただ、娯楽という意味では、ごめんなさい。★2つ。
「ようこそ、革命シネマへ」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.3.25
『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』★★★
『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』★★★★★
(満点は★★★★★)


今週も満点の映画が1本!
もし、こういう素晴らしい作品が、コロナの影響で埋もれてしまったら、とても哀しいなと。
小さな劇場での公開ですが、創意工夫でロングラン上映になることを祈ります。

さ、今週は2本です!
『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』は、南米ウルグアイの元大統領の半生記。

人口345万人の、南米の小国ウルグアイ。
1935年、首都モンテビデオの郊外に生まれ、10代の頃から政治活動を始めたホセ・ムヒカは、20代になると、当時の政府に対するゲリラ活動を行う非合法政治組織『トゥパマロス』に参加します。
軍事独裁政権が誕生すると、ホセを含むメンバーたちは人質として捕らえられ、想像を絶するような拷問を受けつつも、なんとか正気を保ち、解放までの約13年という歳月を、獄中で過ごすことになります。
その中には、後に妻となる、ルシア・トポランスキーもいました。
解放後は、仲間と結成した左派の政治団体から下院議員に立候補し、当選を果たします。
そして2009年、第40代のウルグアイ大統領になると、給与の90%を寄付。自ら、トラクターに乗り、畑仕事も続ける“世界一貧しい大統領”となったのです。

“ペペ”の愛称で、今も国民から愛される元大統領ですが、ゲリラ時代は過激な犯罪行為も行っていたわけです。
ただ、それを上回る政治的善行を人々が認めたということなのでしょう。
「大勢の国民に選ばれたなら、国民と同じ暮らしをするべきだ。特権層ではなくね」。
どこかの国のお偉いさんたちに、聞かせてやりたい言葉です(笑)。
それを実践した大統領ですから、国民に愛されるのも納得ですよね。
それでも政治的反対論者はいるわけで、映画の中でも、街中でそうした国民と言い合いになる場面も出てきます。ふと、“昔の顔”を垣間見るシーン…。
ちなみに、日本の時代劇にある“人情裁き”のような内容を期待して見ると、その期待は裏切られます。あくまで、ひとつの国の大統領のドキュメンタリーだと思って臨んで下さい。★3つ。
「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」公式サイト


『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』は、沖縄に暮らす、ひとりの少女のドキュメンタリー。

当時15歳だった坂本菜の花ちゃん。
石川県珠洲市で旅館を経営する両親のもとに生まれますが、学校でいじめに遭い、ひとり沖縄へと移ります。
彼女が通うのは、『珊瑚舎スコーレ』というフリースクール。そこには夜間部もあり、戦争で学校に通えなかったお年寄りも一緒に学ぶ、個性豊かな学校でした。
「学校で勉強するのが夢だった」と語るおじいやおばあが、瞳を輝かせながら通学するのを見て、菜の花ちゃんは、沖縄では今も戦争が続いていることを実感したと言います。
それでも沖縄のおじいやおばあは明るい。なんでそんなに明るくいられるのかが、不思議で仕方ありません。
一方で、沖縄では基地があるがゆえの事件や事故が次々と起こる。そこで感じたことを、彼女は故郷の北陸中日新聞に『菜の花の沖縄日記』というコラムとして、書き綴ったのです。
この映画は、そんな坂本菜の花ちゃんと、沖縄の日常を追ったドキュメンタリー。

タイトルの『ちむぐりさ』とは、沖縄には“悲しい”を意味する言葉が無いそうで、それに最も近いのが『肝(ちむ)ぐりさ』。「あなたが悲しいと私も悲しい」。
誰かの心の痛みを自分の悲しみとして、一緒に胸を痛めるという意味の言葉だそうです。
ボクは冒頭からウルウルきてました。お年寄りが学校の急な階段をようやく登り、息を切らせながらも、本当に楽しそうに教室にやってくる。
「戦争で学校に来られなかったから、勉強するのが夢でね」。
今の世代には、当たり前のこと。その“当たり前”を奪われた、おじいやおばあの少年期。
「よかったですね」と心の中で思ってたら、同じように、周りからもすすり泣く声が聞こえてきました。
沖縄の問題は難しいです。東京に暮らすボクには、正直どちらも“真”に思えてしまう心もある。
じゃ、沖縄の犠牲はいいのかといえば、それは明らかに“NO”。
でも、「代案は?」と問われれば、答えに窮するわけで…。わからないなら学べと言われても、そこで行動に出られるかというと…。
無責任な言葉ですよね。すみません。菜の花ちゃんに怒られちゃうな。
ただ、これが日本人の大半の、正直な気持ちなんじゃないかとも思うんですョ。
そんなボクらには、沖縄を“知る”必要が絶対にあると思います。
中立的に描かれていたとしても、この手の作品を「プロパガンダだ」とする向きもあると思います。
だからこそ、それは見て判断すればいい。
最後のほうで、埋め立てを眺める漁師さんが、菜の花ちゃんに語るシーンがあります。そこで語られる言葉こそが、“真の中の真”のような気がしました。
その言葉は、ストーリーの結末を話してしまうような感じなので、あえて控えますね。
見た目はいかつい漁師さんですが(失礼!)、優しい。本当に優しい…。それでいて、現状を客観的にしっかりと見ている。沖縄の人って、すごいなぁと思いました。
沖縄テレビ放送局60周年記念作品。報道の“志”もしっかり伝わった、いい映画だと思います。
ヤマトンチュは見るのが義務のようにさえ思える1本。その上で、考え方は人それぞれでいいんじゃないかと。まずは知りましょう。満点!★5つ。
「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.3.19
『カゾクデッサン』★★★
『恐竜が教えてくれたこと』★★★★
(満点は★★★★★)


最近は、届く試写の案内状にも、〔重要なお知らせ〕として、次のような文言が。
「新型コロナウイルス感染症対策の為、試写にお越しいただく皆様にはマスク等の予防、また発熱や咳など体調が心配な方は、どうかご無理をなさいませんようにお願い申し上げます。」
早く、平常に戻りますように…。

さ、今週は2本です!
『カゾクデッサン』は、タイトル通り、家族の在り方がテーマの映画。

恋人のバーで働く、元ヤクザの剛太のもとに、ひとりの少年がやってきます。
彼の名は光貴。剛太の離婚した元妻の子で、実は、本当の父親は剛太だったんですね。
光貴は出世の秘密を知らないまま、新しい父親と幸せに暮らしているはず。
すると、光貴の口から、思わぬ言葉が飛び出します。
「母が交通事故にあって、意識が戻らないんです。病室にきて、声を掛けてもらえませんか?」
連れられて病室に行くと、寝たきりの元妻の姿が。剛太が呼んでも、目を覚ますことはありません。
「なんであんなヤツを連れてきたんだ」。
光貴は父親に怒られます。
「アイツはヤクザだぞ。二度と会うな」。
しかし、光貴は剛太に惹かれ始めていました。
そんな時、父親の独り言から、光貴は自分の実の父親が剛太であることを知ってしまうんですね。
「本当の父親はあんたなんだろ!」
光貴は剛太に詰め寄ります。
次第に暴力的になっていく光貴に、剛太は…。

家族って、どこまでが家族ですか?
これが、この映画のキャッチフレーズです。
血が繋がっていれば?一緒に住んでいれば?
ワケありの状況を揃えることで、その問題を考える舞台を整えました。
映画は時間の中に収めないといけないんだけど、ちょっとあっさりと落ち着いちゃったかなというイメージ。
いいコと、ものわかりのいい大人と(笑)。
もちろん、修羅場もありますが、心の中に刺さったトゲって、そう簡単には抜けないからなぁ。
みんな何かマイナスのものを抱えながら、それでも前を向こうという、再生の物語でもあります。★3つ。
「カゾクデッサン」公式サイト


『恐竜が教えてくれたこと』は、オランダ映画。

11歳のサムは、夏休みを家族と過ごすために、北部の島に来ていました。
サムは繊細な男の子。
「地球最後の恐竜は死ぬとき、最後の1頭だってしっていたのかな」。
死や孤独について、思いを巡らせることもしばしば。
兄が砂浜で骨折、母は頭痛がひどく、父は兄の病院通いに付き合っている。孤独に慣れるにはもってこいだと、バカンスの7日間は、なるべく独りで過ごそうと決めたサムの前に、ひとりの不思議な少女が現れます。
島を散策中に、庭でサルサを踊る女の子を眺めていたら、「一緒に踊ろう!」とサムを引きづり込んだ女の子。名前はテスと。
今までに出会ったこともないタイプの出現に、サムは一目惚れしちゃうんですね。
独りで過ごすつもりだったサムの夏休みが、急に光り輝き始めたのです…。
テスは看護師のお母さんとふたり暮らし。お父さんは、火山の噴火で亡くなって、顔も知らないと話します。
ところが、テスはフェイスブックで父親が生きていることを知り、策を巡らせて、この島に招待したと言うのです。
いい人だったら、娘だと告白したい。もちろんお母さんには内緒で。
それにサムが力を貸し、少年少女のある意味“冒険の夏”が過ぎていくというお話。

なかなかよかったですョ。確かに映画の中では、孤独と恐竜を結びつけているけど、そこまで恐竜にスポットライトは当たっていないので(笑)、この邦題はどうでしょう?
鑑賞後、すぐに思ったのは、「タイトルがもったいないなぁ」ということ。
誰もが体験したことのある、ひと夏の成長物語。よかれと思って頑張ったことが、裏目に出たりしたこともあったよなぁと、あの頃の甘酸っぱい思い出がきっと蘇ると思いますョ。
あ、恐竜ファンは恐竜に期待せずに(笑)。★4つ。
「恐竜が教えてくれたこと」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.3.12
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』★★★★★
(満点は★★★★★)


イベント自粛の中、休日は家で見るエンタメが増えているようで。以前公開の映画も、だいぶ見られているとか。
ボクのHP、takehirohasegawa.comを訪れてもらうと、左のコンテンツ一覧に“コラム”があり、その中の“movie”を選ぶと、過去の作品評を見ることが出来ます。
何を見ようか迷った時に、よかったら参考になさって下さい。

さ、今週は1本です!
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』は、ドキュメンタリー。

ジョンとモリーのチェスター夫婦。
夫のジョンは映画やTVの監督、カメラマンとして、妻のモリーは料理家として活躍していました。
ある日のこと、殺処分になる犬を引き取ることにしたふたり。すると、トッドと名付けたその犬の吠える声がうるさいからと、ふたりはLAのアパートを出なくてはならなくなるんですね。
本当に体にいいものを育てたいという、昔からのモリーの夢を叶えるため、夫婦はこれを機に農場を作ろうと決意。郊外に200エーカーもの広大な農地を購入するのですが、そこは東京ドーム17個分の荒れ果てた土地。
それでも、夫婦は時間を掛け、ひとつひとつ、開拓、開墾。植物、野生動物、家畜、すべてが手を取り合う場所。モリーの頭の中に明確にあった、理想のオーガニック農場を作り上げていきます。

その苦難と喜びの8年という歳月を、カメラマンである夫のジョンが撮り続けたドキュメンタリー作品なんですね。
伝統農法の伝道師や、志を同じくする仲間たちが集まり、力を合わせ、美しい農場を作っていく。そのプロセスに、ボクらは学ぶことがいっぱい。 害だと思っていたことが、実は必然で、それこそが大地のあるべきサイクルなんだと気付かされたり。その中に、人間がいるのに、人間はそのサイクルを、自分たちの都合のいいように壊すばかり。それじゃ、しっぺ返しがくるのも当然ですよね。
地球温暖化、異常気象、今回のようなウイルスの出現…。
すべて、自分たちのまいた種かもしれません。
ツラく、厳しい現実も、ちゃんと見せながらの映像に、本来こうして人間は自然と共存する場を作ってきたのかと。本当に興味深いドキュメンタリー映画です。
文明の中に生きていて、ボクだって、それを手放すことは現実問題として無理。環境問題を声高に主張する気はありません。それでもやっぱり、ボクらは地球という大きな大きな器の中で生かされているんだなと、気付くだけでも違うと思うんですよね。
多くの人に見てもらいたい作品。特に今、まさにお勧めの1本です!満点!☆5つ!
「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.3.6
『劇場版 おいしい給食 Final Battle』★★★
『ダンシングホームレス』★★★
『星屑の町』★★★★

(満点は★★★★★)


いよいよ新型コロナウイルスの影響が、映画業界にも広がってきました。
新作の公開が延期になったり、映画館が一部閉鎖されたり、試写会がなくなったり…。困ったものです。
閉ざされた空間。ボクも、試写会はマスク着用で拝見していますが、咳やくしゃみがなければ、観客はほとんどしゃべらないから、映画館での飛沫感染のリスクは低いと思うんですけどね…。
とにかく、一日も早く、普段の生活に戻りたいものです。

さ、今週は3本です!

『劇場版 おいしい給食 Final Battle』は、人気TVドラマの映画化。

1980年代の、とある中学校。
ここに、学校給食をこよなく愛する“給食マニア”の教師、甘利田幸男がいました。
甘利田にはライバルがいます。それは、美味しく給食を食べることにかけては学校イチを自負するクラスの生徒、神野ゴウです。
午前の授業が終わり、いざ給食の時間。
甘利田は神野の食べ方を気にしながらも、今日の給食の献立を確かめ、ひとつひとつを愛おしそうに口に運びます。
すると、神野は思いもよらない食べ方で給食をアレンジ。
「その手があったか!」と悔しがる甘利田に対し、挑発的にニヤリと笑う神野。
そんな神野が“給食改革”を公約に、生徒会長に立候補します。
ところが、学校全体を揺るがすような知らせが、飛び込んでくるんですね。なんと、教育委員会が、学校給食を無くす決定をしたというのです。
甘利田は、神野は、この窮地にどう対処するのでしょうか…。

テレビ神奈川や、TOKYO MXなどで放送されていた、ややマニアックな?人気TVドラマの映画化です。
なんと言っても、その魅力は、懐かしい給食のメニューにあります。
ソフト麺、揚げパン、クジラの竜田揚げ…。牛乳に入れる“ミルメークいちご”は知らなかったなぁ。微妙なジェネレーション・ギャップかも(笑)。
ボクの給食は60〜70年代。小学校低学年の思い出は、脱脂粉乳だもの(笑)。知らないでしょ?これが美味しくなくて…。
ただ、月に1、2回、ココア味になる。この時だけは、メチャメチャうれしかったのを覚えてます。
あと、ボクらは給食でお米を食べたことがないんですよねぇ。
そんな昔話に花が咲くこと間違いなし!
あらゆる世代で楽しめる1本です。☆3つ。
「劇場版 おいしい給食 Final Battle」公式サイト


『ダンシングホームレス』は、ドキュメンタリー。

アオキ裕キは、チャットモンチーやL'Arc-en-Cielの振り付けを手掛けるなど、一流のキャリアを持つダンサー。
そんな彼が、NYに留学中に、9.11・同時多発テロに遭遇し、ダンスとの向き合い方が変わります。
帰国後は路上生活者、いわゆるホームレスの“肉体表現”に着目するようになるんですね。
個々人が、様々な理由から、あらゆるものを捨てた。そうして最後に残った唯一の持ち物、それが肉体だと。その肉体からほとばしる原始的な動きにこそ、踊ることの真の表現があるということなのでしょう。
アオキは、『新人Hソケリッサ!』なる、ホームレスのダンスチームを作ります。
練習に来たくなければ、来なくてもいい。「人に危害を加えない」以外の“社会のルール”は適用されないのが、逆にルール。
そんな中、『新人Hソケリッサ!』のメンバーは、路上で、また全国の大小のイベントで踊るのです。
つらい生い立ちや、苦しい現状までもが、表現のルーツになる。それでも彼らにとって、踊ることは生きる糧になっているのです。
たまたま、試写の会場に、メンバーの多くが来てました。今も路上生活を続けているようですが、お世辞抜きで、キラキラしてました。ま、自分が映画に出てるのを見た直後ですもんね(笑)。
でも、目標が、生き甲斐があるって、それだけで人を輝かせるんだなと改めて。☆3つ。
「ダンシングホームレス」公式サイト


『星屑の町』は、人気舞台シリーズの映画化。

売れないムード歌謡グループの「山田修とハローナイツ」。
ヒット曲は1曲だけ。でも、それがあるからドサ回りは出来る。
この日は、リーダー・修の、故郷の青年団の誘いで、東北の田舎町に歌いに来ていました。
ショーの前夜、地元のスナックに飲みに行くと、そこはママと娘のふたりで切り盛りしている店。娘の愛は歌手志望だと言います。
メンバーの市村が、酔った勢いで、愛にこう話します。
「付き人として俺たちに付いてくれば、歌手にしてやる」。
そんな市村の話を真に受けて、翌日の会場にやって来た愛。
当然、付き人の話は口からの出まかせで、市村は逃げ回るばかり。
仕方なく即興のオーディションを行うと、愛はなかなかの歌上手。活性化のためにメンバーに入れてはどうかという声も出ますが、賛否両論。メンバー内に亀裂が走ります。
さらに愛の父親が、メンバーのひとりである疑惑も浮上します。
ハローナイツはどうなってしまうのか?また、愛の夢は叶うのでしょうか…。

1994年9月に最初の上演があり、2016年2月の7作目で完結した、人気の舞台シリーズ。
作品を形に残したいという思いで、映画化が実現したそう。
「山田修とハローナイツ」のメンバーは、「太平サブロー・シロー」の太平サブロー、「コント赤信号」のラサール石井、小宮孝泰ら、ベテランお笑い芸人と、でんでん、渡辺哲、有薗芳記ら、個性派俳優たち。
一緒にドサ回りをするキティ岩城に、戸田恵子。愛に、のんという、豪華で賑やかなキャストが出演。それだけでも、何となく楽しそうな絵が浮かびますよね。
ヒット曲が1曲しかないから、ステージのシーンで歌われるのは、懐かしの昭和歌謡の数々!太平サブローも、戸田恵子も歌が上手いので、昭和歌謡ファンは、歌でも楽しめます。
笑って、泣けるドタバタ人情コメディ。
『三丁目の夕日』世代にオススメです!☆4つ。
「星屑の町」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.2.27
『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』★★★★
『レ・ミゼラブル』★★★
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』★★

(満点は★★★★★)


新型コロナウイルスの影響が一段と拡大。
「この1、2週間がヤマ」と政府が見解を発表し、様々なイベント事の自粛を要請。飲み会の中止まで言及するのですから、仕方がないとはいえ、経済は大打撃ですよね。映画業界も大変だと思います。
かと言って、「自分だけは大丈夫」と思うのもよくないわけで。
試写会も中止になったりするのかなぁと、心配しているところです。
“vs未知の脅威”。早く終息に向かって欲しいものです。
さ、今週は3本です!

『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』は、フィンランドを代表する映画監督、クラウス・ハロ監督の最新作。

ヘルシンキで美術商を営む、72歳のオラヴィ。
昔から、家族のことはそっちのけで絵画に夢中だったオラヴィは、一人娘のレアとも音信不通の状態。
今や、オンラインギャラリーの時代で、古いスタイルの画商は資金繰りも苦しく。それでも、最後にもうひと花咲かせたいと、オラヴィは強く心に思っていたのです。
ある日のこと、近所のオークションハウスの下見会で、オラヴィは1枚の肖像画に魅せられてしまいます。
ところが、この絵には署名がない。出どころも不明でリスクが高いと、友人たちは止めるのですが、オラヴィは自分の審美眼を信じ、僅かな裏書きから、この絵の正体を掴もうと調査を始めるんですね。
そんな時、ひとりの少年が店にやって来ます。疎遠になっていた娘レアの息子、オットーでした。
孫の顔にも気付かないオラヴィでしたが、聞けば、学校の職業体験の受け入れ先になって欲しいと。レアの話では、以前に問題を起こしたオットーを引き受けてくれるところがなく、オラヴィを頼るしかなかったと言うのです。
肖像画のことで頭がいっぱいだったオラヴィは、何度か断るのですが、最後は渋々、オットーを店で働かせます。
壊れた家族の関係は、修復出来るのか。あの肖像画の正体は一体…。

これまで手掛けた5本の長編映画のうち、4本がアカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表に選ばれているという、クラウス・ハロ監督。
絵画の謎解きと、家族の絆という、2つの大きなテーマを、バランスよく、見事に描き切った作品だと感じました。
仕事一筋の老画商は、ボクらの父親たちの世代を思わせ、あまり馴染みのないフィンランドの映画でも、感情移入は十分に出来ました。
物語は、その後も問題山積。オラヴィの前に、大きな壁が立ちはだかり、父と娘の間の確執も再燃します。
果たして、どうなっちゃうのか?
衝撃の結末は、是非映画館で。☆4つ。
「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」公式サイト


『レ・ミゼラブル』は、今のフランスの抱える闇を描いた問題作。

パリ郊外のモンフェルメイユ。
今や、犯罪多発地域と化したこの街にあるボスケ団地は、移民や低所得層が暮らす犯罪の温床でした。
そんな団地の治安を取り締まるのが、警察の犯罪防止班“BAC”。クリスとグワダのふたりの担当警官に、のどかな北フランスから赴任してきた、ステファンが加わります。
ムスリム同胞団と麻薬の売人。ロマと黒人たち。ありとあらゆる対立を内包したこの街は、常に一触即発の状況に。
そんな時、黒人の少年が、ロマのサーカス団から、ライオンの赤ちゃんを盗み出したのです。
捜査に乗り出す、ステファンたち。
しかし、この事件が、とんでもない事態を巻き起こすのでした…。

モンフェルメイユは、ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台としても知られる場所。
本当なら、ボスケ団地も開発によって、利便性が向上するはずだったのが、計画の中止で“陸の孤島”となり、その結果、多くの貧困層が暮らす地域になったそう。
ラジ・リ監督は、このモンフェルメイユ出身の黒人男性で、これが初の長編映画。それまではドキュメンタリー作品を撮ってきた監督です。
そんな出自の監督の作品ですから、フィクションであっても、リアリティがある。日本人のボクらが感じる以上に、自国フランスでの反響は大きかったのでしょう。
マクロン大統領もこの映画を見て、「映画の舞台となった地域の生活条件を改善するためのアイデアを直ちに見つけて行動を起こすよう」指示したと、プレス資料にありました。
映画が政治をも動かしたんですね!
EUの問題のひとつが“移民”。フランスは移民国家です。それを語るには勉強不足ゆえ控えますが、世界のとある場所では、こういう問題が起きているんだというのを、知っておくのは大切なことだとも思います。☆3つ。
「レ・ミゼラブル」公式サイト


『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』は、“中国人監督第8世代”の筆頭株と評されるビー・ガン監督の最新作。

ルオ・ホンウは、何年もの間距離を置いてきた故郷・凱里(カイリ)へ、父の死を機に帰還する。
そこでは幼馴染、白猫の死を思い起こすと同時に、彼の心をずっと捉えて離れることのなかった、ある女のイメージが付き纏った。
彼女は自分の名前を、香港の有名女優と同じワン・チーウェンだと言った。
ルオはその女の面影を追って、現実と記憶と夢が交錯するミステリアスな旅に出る…。

すみません。あらすじは、プレス資料のものを“まま”で使わせて頂きました。
記憶と夢と時間の映画?
読んでもらうとわかるように、説明が難しい…(笑)。
ビー・ガン監督は、26歳の時にメガホンをとった『凱里ブルース』で高い評価を得、これが短長編合わせて4作品目。現在30歳の若き才能ということになります。
主人公のルオが映画館に入って、眼鏡を掛けるのと同様に、観客であるボクらも3Dメガネを掛ける。そこから、映画は3Dで進んでいくという仕掛けもあって。
確かに実験的映画というか、途中から3Dというのは、初めてのパターンではありました。
中国映画の様式美というか、新しいのでしょうが、根っこの伝統は継承しているような気がしました。
世界中で高い評価を得ているとのこと。このジャンルの映画を愛する人も、たくさんいるということなのでしょうが、ボクにはちょっぴり高尚過ぎたかな。
歯切れの悪いコメントですみません(笑)。☆2つ。
「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.2.21
『うたのはじまり』★★★★
『チャーリーズ・エンジェル』★★★
『ミッドサマー』★★★
『恋恋豆花(れんれんどうふぁ)』★★★

(満点は★★★★★)


新型コロナウイルスの影響で、「閉鎖された空間が嫌」となると、映画館も打撃が大きいかもしれませんね…。
とにかく、ボクら一人一人が、保菌者にならないように心掛ける。うがい、手洗い、マスクがあればマスクをする。それしかないですもんね。
お互い、気をつけましょう。
さ、今週は4本です!

『うたのはじまり』は、“ろう”の写真家夫婦のドキュメンタリー。

齋藤陽道は、聴覚に障がいを持つ“ろう”のカメラマン。
音楽の授業でも、先生から、「齋藤はいいから」と自分だけ飛ばされて、歌が大嫌いになったと言います。
彼にとって、疑問と向き合うための表現手段こそが、写真でした。
そんな陽道の妻、麻奈美も“ろう”の写真家。
そんなふたりの間に、息子が生まれます。“健聴者”でした。ふたりは息子に“樹”と名付けます。
陽道が樹をあやすうちに、ふと口をついた子守歌。陽道が嫌いなはずの、その“うた”で、樹は泣きやみ、スヤスヤと眠りにつきます。
「うたって、歌ってなんだろうなといつも思うのですが、今日、より思います」。
監督の河合宏樹と筆談で交わした、陽道の言葉です。

ドキュメンタリーです。
途中、「それはないだろう…」と思うような他人の言動もありますが、監督はどんな思いで、そこをカットせずに残したのか。発言者が叩かれないか、ちょっと気になったシーンもありましたが、映画は監督の作品ですから。
でも、ひとつ。
樹は、言葉より先に“手話”を覚えたと。
陽道から、自然と“うた”が口をついたように、樹は自然と“手話”を覚えた。
親と子の在りように、感動を覚えたシーンです。
そのまま、優しい人に育って欲しいなと、切に祈ります。
そう、“うた”は本能に根ざした“祈り”にも似ているのかもしれませんね。☆4つ。
「うたのはじまり」公式サイト


『チャーリーズ・エンジェル』は、すべてを一新した人気シリーズの再映画化。

巨大テクノロジー企業に勤める、天才プログラマーのエレーナ。
彼女が開発したのが、持続可能な革命的エネルギー源の“カリスト”でした。
ところが、エレーナの上司たちは、これを軍事転用すればケタ違いの利益になると、“カリスト”を売却しようとしていたのです。
危険を感じたエレーナは、国際機密企業のチャーリー・タウンゼント社に助けを求めるんですね。
チャーリー・タウンゼント社で特殊訓練を受けたエリート女性エージェントこそが、“チャーリーズ・エンジェル”たち。
司令塔のボスレーがエレーナのもとに送り込んだのは、変装と潜入の名手のサビーナと、元MI6で武器のエキスパートのジェーンでした。
遂には、命を狙われるまでになったエレーナを守り、悪のたくらみを阻止するため、美しく、強い女性たちが、動き始めたのです…。

1976年に、全米でTV放映されると、瞬く間に大人気となり、2000年には最初の映画化が、2003年には第2弾となる続編が公開された『チャーリーズ・エンジェル』。
セクシーで、強い女性にノックアウトされた男性も多かったはず。
実は、その時々の女性像が描かれてもいる作品で、TVシリーズの頃のウーマンリブの時代から、女性が力を合わせようという前回の映画シリーズの時代。じゃ、現代は?というと、機会さえ与えられれば、女性は何でも出来るんだという、女性の力そのものを表現しています。
男の“こズルさ”も描かれていて(笑)、昔からのシリーズ・ファンには、「へっ?まさか、ウソでしょ?」という展開も。
ちなみに、脚本・監督は、女優としても人気のエリザベス・バンクス。司令塔のボスレーとして、自身も出演しています。
さらに主題歌は、アリアナ・グランデ、マイリー・サイラス、ラナ・デル・レイが初コラボ。チャーリーズ・エンジェルさながらの超豪華トリオです。☆3つ。
「チャーリーズ・エンジェル」公式サイト


『ミッドサマー』は、白夜のスウェーデンが舞台の“フェスティバル・スリラー”。

ダニーとクリスチャンは、同じ大学に通う恋人同士。
しかし、ふたりの仲は破局寸前。クリスチャンの心は、既にダニーから離れていたのです。
ダニーには精神的に不安定な妹がいて、その妹が両親を道連れに一家心中をはかります。一瞬にして身内をすべて亡くしてしまうダニー。
ちょうどその頃、クリスチャンは、ダニーに内緒で旅行に行く計画を立てていました。
その旅行とは、スウェーデンからの交換留学生であるペレの故郷で、90年に一度行われるという浄化の“祝祭”に参加しようというもの。
下心もある男同士の旅に、ハッキリ言って女性のダニーは邪魔でしたが、状況が状況だけに、彼女も誘うことにするクリスチャンたち。
総勢5人でスウェーデンに着くと、人里離れた奥地に、ペレが生まれ育った小さな共同体がありました。
“ホルガ”と呼ばれるその村では、共通の白い衣服を身にまとった村人たちの優しい笑顔が、ダニーらを迎えます。
沈まない太陽、咲き誇る花々、陽気に歌い、舞うダンス。
しかし、時が経つに連れ、何かがおかしいと感じ始めるんですね。それこそが、想像を絶する悪夢の始まりだったのです…。

“フェスティバル・スリラー”とは、もらったプレス資料にあった言葉。
普通、スリラー映画は暗闇と共に進行するものですが、この映画の舞台は太陽が沈まない白夜の村。それも、美しい花々や、優しい笑顔の中で展開するからこそ恐ろしい…と。
アリ・アスター監督の過去の作品についての解説があったのですが、それを知ると、この映画がよく理解出来ると思います。
逆に、知らないで見ると、理解するのは少々難しいかも。
かなりショッキングな内容なので、ここに書くのは避けますが、アリ・アスター監督の過去の作品を検索してみて下さい。
ダニーの絶望こそ、監督自身らしいです…。☆3つ。
「ミッドサマー」公式サイト


『恋恋豆花(れんれんどうふぁ)』は、台湾のグルメロードムービー。

大学生の奈央。
父の3度目の結婚が決まり、新しく母になる綾とふたりで、1週間の台湾旅行を勧められます。
距離を近づけたい綾は超乗り気ですが、奈央は気持ちが重たいだけ。
ところが、台湾に着くと、とにかく美味しいものを食べようと話題の台湾グルメの店をハシゴしまくります。
飲茶やスイーツに、ほっぺたが落ちそうになる奈央。時にぶつかりながらも、ふたりは徐々に打ち解けていきます。
そんな時でした。日本に残った父が、軽い交通事故にあったとの連絡が入ります。
綾は帰国しますが、奈央はそのまま残って、台湾ひとり旅。そこで奈央を待っていたのは、素敵な出会いたちでした…。

主演は、『風の電話』での好演も話題となった、モトーラ世理奈。
「ママはね…」と話しかけてくる綾に違和感を覚えながらも、甘いものを前にするとニコ〜ッとなってしまう、多感な年頃の女子大生を上手く演じています。
旅は人を成長させるもので、たくさんの人との出会いが、奈央の人生観を変えていくんですね。
台北、台中、台南と、台湾縦断の旅。
これから台湾旅行に行く人は、ガイドブックを買うより、この映画を見るほうがいいかも(笑)。台湾の魅力が満載です。☆3つ。
「恋恋豆花」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.2.5
『37セカンズ』★★★★
(満点は★★★★★)


先日、ボクのブログを読んで下さってる方から、映画のコラムを楽しみにしていると言われました。
「メジャーじゃないものをたくさん紹介してくれてるから、うれしい」と。
ありがたい言葉です(^-^)。
例えば、月イチぐらいで映画を見る人が「何を見よう」となった時、そりゃ、話題作に行きますよね。それは仕方のないこと。
お金の掛かった話題作も面白いけど、他にもあるよという選択肢になればと思ってます。
と言っても、映画評論家の皆さんと比べたら、数は少ない、少ない。ホント、雲泥の差。
それでも一生モノとの“出会い”って、そんな中にあったりもしますから。
さ、今週は1本です!

『37セカンズ』は、障がいを持つひとりの女性の“生きる”物語。

23歳のユマは、身体に障がいを抱える女性。
離婚をし、シングルマザーになった母の恭子が、常に面倒を見てくれるのですが、それが成人したユマにとって、たまに息苦しく感じるのも事実。
ユマは漫画を描くのが得意で、親友の人気少女漫画家、SAYAKAのゴーストライターとして収入を得ています。
SAYAKAの作品は、ほとんどがユマの手によるもの。なのに、ユマにはまったくスポットライトが当たらない。名声も、多くのお金も、みんなSAYAKAのもの。
ユマも自分自身の名義で頑張ってみたいと、編集者に新しい作品を見せるのですが、「先生の作品に似過ぎてますね」と言われてしまいます。
落ち込んだユマが、公園の片隅で見つけたもの。それは、アダルトコミックの雑誌でした。
思い切って、編集部に電話をしてみると、「原稿を持ってきて」と。ユマはセクシーなシーンも描いたSFコミックを仕上げて、出版社を訪れます。
対応したのは女性編集長。
車椅子姿のユマを見て、「リアリティがないんだよね。作家に経験がないと、いい作品は作れないの」と言われてしまいます。
しかし、その言葉が、ユマの人生を変える一歩を踏み出す、大きなきっかけとなったのです…。
タイトルの『37セカンズ』とは、“37秒”のこと。
ユマが生まれて来る時、息をしていなかった時間です。
その結果、身体に障がいを抱えてしまった。そんなユマを、実際、出産時に障がいを負った佳山明が演じています。
監督のHIKARIは、健常者の女優ではなく、「ユマはどこかに必ずいる」と、オーディションから佳山明を見つけたと言います。
試写状が届いた時、最初はドキュメンタリーかと思いましたが、フィクションなんですね。
でも、様々な現実を知ることになる。

介護に携わるのは介護福祉士だけじゃない、障がいを持つ人の性の問題に対処する人もいる。
漫画だって、少女コミックだけじゃない、アダルトコミックもある。
母の愛情も、友の友情も…。
みんな表と裏があって、実はどちらも“真”。
でも、みんな表ばかりを見ようとするから、事実が見えない。
障がい者も、健常者も、悩みの形が違うだけで、生きるって大変なんだって。そう、誰もが何かしらの問題を抱えながら、懸命に生きてるはずなんです。その“事実”には、障がい者も健常者もないと思うんですね。
一歩踏み出した後のユマから、多くのことを学んだ気がします。
佳山明の体当たりの演技に、感動するはずです。★4つ。
「37セカンズ」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.1.29
『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』★★★
『母との約束、250通の手紙』★★★
『バッドボーイズ フォー・ライフ』★★★

(満点は★★★★★)


試写を行う試写室は、決して広くはない、閉ざされた空間。咳をしてる人がいると、気になってしまって、映画に集中出来なくなってしまいます。今は、新型コロナウイルスが心配ですもんね。
自分が逆に心配を掛けないように、感染はもちろん、風邪にも気を付けないといけません。
さ、今週は3本です!

『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』は、謎解きミステリー。

人気ミステリー作家のハーラン・スロンビー。数々のベストセラー小説で、大金を稼いだ大富豪です。
彼の85歳の誕生日を祝おうと、一族が集まります。
パーティに参加したのは、以下のメンバー。
長女リンダと夫のリチャード、その息子のランサム。
亡き長男の妻ジョニと、娘のメグ。
次男ウォルトと妻のドナ、その息子のジェイコブ。
ハーランの年老いた母ワネッタ。
そして、ハーランの専属看護師マルタ。
みんなキャラクターの強い面々です。
ところが、翌朝、ハーランは、自室で遺体となって見つかります。
第一発見者は、屋敷の家政婦フラン。
自殺か、他殺か。莫大な遺産はどうなるのか?
1週間後、匿名の依頼が名探偵ブノワ・ブランの元に届いたとして、2人の警察関係者と共に屋敷を訪れます。
果たして、事件の真相やいかに…。

殺人事件なら、そこにいるすべてに犯人の可能性がある。その犯人捜しが、コミカルに、またシリアスに行われていきます。
名探偵ブノワ・ブランに、『007』シリーズのジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグ。
長女の息子で、放蕩息子のランサムに、『アベンジャーズ』シリーズのキャプテン・アメリカ役のリス・エヴァンス。
誕生日の翌日に遺体で見つかるハーラン・スロンビーには、『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐役だったクリストファー・プラマー。
他にも豪華な俳優陣が出演しています。
「楽しすぎて、脳みそが、痛い」なんて評価がありましたが、そこまでかどうかは、おそらく笑いのツボ次第(笑)。
社会風刺も散りばめた、凝った謎解きであることは間違いありません。★3つ。
「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」公式サイト


『母との約束、250通の手紙』は、実在のフランス人作家、ロマン・ガリの私小説「夜明けの約束」の映画化。

1950年代半ば、LAのフランス総領事で小説家のロマン・ガリは、妻レスリーとメキシコ旅行に来ていました。
旅先で、具合が悪そうにしながらも、執筆を止めないロマン。
病院に向かう車の中で、レスリーはロマンの鞄の中から書きかけの原稿をそっと取り出し、目を通すと、そこにはロマンと、母ニナとの壮絶な時間が書かれていたのです。
モスクワからポーランドに入った、ユダヤ系母子に人々は決して優しくなく。それでも母は息子を焚き付けます。
「お前はフランスの大使になるんだ」。
「将来、トルストイに、ヴィクトル・ユゴーのような文豪になる」。
時に、詐欺まがいの商売をしながら金を稼ぎ、母子はフランスのニースに転居。ロマンはパリの大学に入り、小説家を目指します。
母に糖尿病がわかった頃、ロマンはフランス軍に入隊。母からは励ましの手紙が毎日のように届きます。
ロンドンへ赴任したロマンは、次にアフリカへ行き、リビアでは腸チフスで入院しますが、どこに行こうと、週に一度は母からの手紙が必ず届いていたのです。
そして、戦地で書き上げたロマンの長編小説「白い嘘」が、遂にイギリスで出版されることになり、喜び勇んで、母の入院先を訪れるのですが…。
今だったら、過干渉で、母子の関係は絶対上手くいかないだろうなというくらい、母は息子を愛し、夢と将来を語り。いや、語るというより、決めつけ、洗脳し。
息子はそれでも、そんな母の言葉が支えとなっていきます。

実話であることがすごい…。
史上唯一、フランスのゴンクール賞を2度受賞し、文豪と呼ばれ、外交官にもなった。つまり、母の言葉通りの将来を獲得したわけですもんね。
なんとなく想像の出来るラストではありましたが、母の愛の深さ、子を持つ母親の強さを、改めて感じました。
事実、試写の後、母の顔が見たくなり、実家に帰ったぐらいですから。★3つ。
「母との約束、250通の手紙」公式サイト


『バッドボーイズ フォー・ライフ』は、マイアミ市警のマイクとマーカスの、人気コンビによるシリーズ最新作。

マイアミ市警の敏腕刑事マイクと相棒のマーカスは、“バッドボーイズ”を名乗る名物コンビ。
ところが、年齢も年齢となり、マーカスは家族の心情を思い、引退を決意するんですね。
一方のマイクは、ハイテク捜査班のAMMOに配属を命じられます。
生意気な若手とぶつかる毎日に、ストレスが溜まるマイク。
実はその頃、犯罪王の女囚イサベルが、20年間、虎視眈々と狙っていた脱獄を実行に移し、まんまと成功させます。
その裏には、獄中で産んだ、息子のアルマンドが関わっていました。
冷酷な殺し屋に育ったアルマンドに、イサベルは“復讐”を命じます。
リストに書かれた警察関係者が次々と殺害されていく中、リストには、なんとマイクの名前も。
イサベルとアルマンドの復讐の魔の手は、確実にマイクに伸びていたのでした…。
ウィル・スミスとマーティン・ローレンスのコンビで、95年の『バッドボーイズ』、03年の『バッドボーイズ 2バッド』に続く、シリーズ最新作です。

あれから17年。少しは丸くなってる…はずもなく(笑)。
でも、マーカスには初孫が生まれますから、時の流れを感じますよね。
マイクはモテ男なので、そのあたりも今作のいい味付けになってます。
いくつになっても、モテる男はモテる。熟年男性の“憧れ”と言いたいけれど、さすがにあれだけのムチャは出来ませんから。マーカスのほうが、まだ現実的かな(笑)。
とはいえ、ファンにとって、コンビ解消は寂しいもの。さらなる続編を期待したいですね。★3つ。
「バッドボーイズ フォー・ライフ」公式サイト
 
 



 
 
週末公開の映画……2020.1.22
『風の電話』★★★
『シグナル100』★★★

(満点は★★★★★)


1月に入って、積極的に試写会へ。
実は、2月半ばから3月は、また忙しくなりそうなんです。
時間が許す今のうちに、たくさん見ておこうと思ってます(^-^)
さ、今週は2本です!


『風の電話』は、岩手県大槌町に実在する“風の電話”と呼ばれる電話ボックスをモチーフにした映画。

東日本大震災で家族を失った、高校生のハル。
震災後は、伯母を頼って、広島に住んでいたのですが、その伯母が突然倒れてしまいます。
病院で昏睡状態の伯母を見舞ったたハルは、あてもなく歩き始め、泣き疲れて倒れてしまいます。
そこに軽トラックで通りかかった公平という男性が、ハルを助けます。
公平は、年老いた母との二人暮らし。そこでハルは、広島で起こった悲しい過去を聞かせられるんですね。
公平に駅まで送ってもらったハルでしたが、自宅とは逆方向の電車に飛び乗ります。ハルの心は、故郷の岩手県大槌町を目指していたのです…。
“風の電話”は、大槌町在住のガーデンデザイナー、佐々木格さんの自宅の庭に実際にある、電話線の繋がっていない電話ボックス。
天国にいる大切な人に繋がる電話として広まり、震災以降、3万人を超える人々が訪れたと言います。
ハルが広島から岩手まで、ヒッチハイクで旅をする中で、様々な人々と出会いながら成長していく、ロードムービー。
生家に着き、今は家の基礎だけになった自宅跡ではしゃぐハルの姿は切なく、“風の電話”に辿り着いて、受話器を手に、天国の両親に語りかける場面は、実際の被災者の皆さんには、ボクらの比じゃない悲しみの感情が沸き起こるんだろうなと。
旅の途中、ハルが出会う人々に、三浦友和、西田敏行、西島秀俊。豪華俳優陣が顔を揃えました。

実は、この映画の試写会に、ハルを演じた主役のモトーラ世理奈さんが来ていて、ボクらに混じって、自身の映画を見ていました。
上映後に、チラッと顔を見たら、泣いてました。★3つ。
「風の電話」公式サイト


『シグナル100』は、橋本環奈主演のサスペンス・ホラー。

聖新学園高校3年C組は、男女合わせて36人のクラス。
ある日のこと、担任の教師が、クラス全員を視聴覚教室に呼び集めます。
そこで生徒たちが見せられたのは、意味のわからない不気味な映像。それは、自殺催眠の映像だったのです。
この自殺催眠は、日常の行動が発動の契機である“シグナル”に。
スマホを使う、涙を流す。何でもない行動が引きがねとなり、壮絶な死に方で、次々と自ら命を落としていったのです。
そのシグナルは全部で100個。催眠を解くには、最後のひとりになること。つまり、35人のクラスメートが死に絶え、自分だけが残る以外に、助かる方法はないというのです。
謎を明かすことのないままに、先生はベランダから飛び降りてしまいます。
教室は、恐怖とエゴが渦巻く、絶望の空間へと変わっていったのでした…。

原作・宮月 新、作画・近藤しぐれの人気コミックの実写映画化。
もちろん学校の敷地外に出るのもシグナル。外に助けを求めることは不可能です。
次は自分かもしれない。シグナルは一体何なのか。
恐怖の中で、なんとか、みんなで助かる方法を見つけようとするのですが…というお話。

人が死ぬ映画があんまり得意じゃないので、「う〜ん」という感じですが(笑)、発想は確かに面白いですよね。
人間の醜さが、あちらこちらに。もちろん、これはフィクションですが、一向に無くなることのない現実社会でのイジメも、根っこにはこんな醜い人間の素性があるんだろうなと思ってしまいます。
絵空事と笑ってばかりもいられません。★3つ。
「シグナル100」公式サイト
 
 
 
 
週末公開の映画……2020.1.15
『記憶屋 あなたを忘れない』★★★
『太陽の家』★★★★
『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』★★★
(満点は★★★★★)


2020年最初の映画紹介です。
評価の星を、白から黒に変えてみました。今更ですが、こっちのほうが見やすいかなと(笑)。
今年も、時間の許す限り、たくさん試写を拝見したいと思ってます。
単館ものも多いので、“お宝探し”のように読んでもらえるといいかも。
さ、今週は3本です!


『記憶屋 あなたを忘れない』は、映画『ツナグ』、ドラマ『JIN―仁―』、『天皇の料理番』などで知られる、平川雄一朗監督最新作。

大学生だった遼一が、恋人の杏子にプロポーズすると、戸惑いながらもOKが。幸せの絶頂にいたふたり。
ところが、翌日から杏子と連絡が取れなくなり、何日か経って、駅で見かけた杏子に声をかけると、杏子は遼一を「どちらさまですか?ちょっと、やめて下さい」と拒むのでした。
その頃、ネット上で、都市伝説的に話題になっていたのが“記憶屋”。人の記憶を消せると言います。
遼一は、今回のことが記憶屋の仕業じゃないかと、記憶屋について調べを進めていきます。というのも、子供の頃、幼なじみの真希が、目の前で記憶の一部を無くしたのを見たことがあったから。
「記憶を消せる人間がいるのは間違いない」。
すると、大学で講義をしていた弁護士の高原も、ある事情から記憶屋を探していました。
ふたりは協力して、記憶屋に会うために、奔走するのですが…。

シリーズ累計50万部、織守きょうやの人気小説を実写映画化した作品。
ミステリーのエッセンスと、恋愛や、親子の情など、普遍的要素が上手く絡まった内容となっています。
ただ、この手のタイトルの作品で、この監督となると、「泣けるっ」的な期待感を大きく抱いてしまうじゃないですか(笑)。ボクも『ツナグ』では、号泣しましたから。
でも、あまりそっちのハードルを高くしちゃうと、泣けないかも。
“謎解きファンタジー”の映画として見ると、たぶん面白いんじゃないかと思います。
おそらく、“人の記憶を消す”力に、功罪の“罪”を強く感じる人が多数だからじゃないかなぁ。『ツナグ』のように、“亡くなった人と繋ぐ”力は“功”のイメージなんでしょうね。
あなたはどう感じるか。ご覧になってみて下さい。★3つ。
「記憶屋 あなたを忘れない」公式サイト


『太陽の家』は、長渕剛、20年振りの映画主演作。

川崎信吾は大工の棟梁。
妻の美沙希、娘の柑奈との3人で、仲睦まじく暮らしていました。
ある日のこと、建設中の現場にひとりの女性が通りかかります。保険の営業レディ、芽依です。
芽依に誘われ、ほいほいとついていく信吾。案の定、保険の契約をさせられてしまうんですね。
独身女性かと思っていた芽依ですが、実はシングルマザー。息子の龍生は父親を知りません。
すると、信吾の中の男気に火がつき、「龍生を一人前の男にしてやる」と宣言。
初めは引っ込み思案の龍生でしたが、次第に信吾に心を開いていきます。
そこで、信吾は約束します。
「俺はお前たちに家を建ててやるからな」と…。

久し振りに、俳優・長渕剛を見ました。
カリスマ然としてしまってからは、気難しいイメージばかりが先行していましたが、やっぱりいい味を出す役者です。
年頃の娘の柑奈が“お兄ちゃん”と慕う、一番弟子の高史に、瑛太が扮するのですが、パンチパーマに剃り込みを入れ、眉毛も細く、鋭く、剃り。瑛太だと言われなければ、わからないかも。そんな役者魂に、凄みすら感じてしまいました。
この映画は“ひっぱたく映画”。
登場人物には、様々な葛藤があります。そんな中で懸命に生きているからこそ、ぶつかることがある。時には手をあげることも。
体罰を肯定するつもりは、さらさらありませんョ。ただ、本当に愛のある痛みなら、きちんと届く。ボクはそう思っているんですね。
この映画でも、よくひっぱたき、ひっぱたかれます。
誰かをひっぱたいた信吾が、今度は女房の美沙希にひっぱたかれる。
「あぁ、そうか。そういうことか…」と、あくまで邪推?ですが、この映画に込めた長渕剛の思いを推し測ってみたりもしました。
そういう意味では、昭和の匂いのする1本です。時代のギャップが、受け入れられるのかどうかも興味深いところです。★4つ。
「太陽の家」公式サイト


『東京パラリンピック 愛と栄光の祭典』は、55年振りに復活上映されるドキュメンタリー映画。

1964年、東京オリンピックが熱狂のうちに終わり、戦後の日本が、世界に成長した姿を見せた後、もうひとつの国際スポーツ大会が幕を開けました。「国際身体障害者スポーツ大会」、愛称“東京パラリンピック”です。
パラリンピックとは、下半身麻痺を表す“パラプレジア”と、オリンピックを組み合わせたもの。当時は下半身麻痺の選手を対象としたスポーツ大会でした。
“パラリンピックの父”と呼ばれる、イギリスのグッドマン博士は、初めて障がい者治療にスポーツを取り入れたひとり。博士の発案の下、「障がいがあっても、やればやれるんだ」と、オリンピックと同時期に、パラリンピックは開かれることになりました。
映画に登場する日本の選手も、リハビリの一環ですから、練習は病院の中。そして、大会では、明るい海外の選手団に驚かされます。
その姿を見て、「イギリスでは、80%もの障がい者が社会復帰して、税金を納めている。我々は年金、つまり税金を食う存在。社会福祉制度の違いがある」と、社会復帰への意欲を取り戻していったと言います。
モノレール、首都高、東京タワーが誇らしげな、1964年、昭和39年の東京の風景。
今の上皇、上皇后両陛下が、皇太子、皇太子妃でいらした頃のお姿も映し出されます。
貴重なフィルムです。オリンピック、パラリンピックイヤーの今年だからこそ、見ておきたいドキュメンタリー作品です。★3つ。
「東京パラリンピック 愛と栄光の祭典」公式サイト